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神様の試験場  作者:
6/6

地下に潜むモノ

羽の生えた淡い光の塊が頭上でゆらゆら揺れる。


照らしだされる二手に分かれた地下水路の前で二人は立ち止まっていた。


「どうしますか」


「もちろん二手に分かれる」


困ったようなアシュトンの問い掛けに簡潔に答え、紫色の石がはまったシルバーのブレスレットをなげわたす。


「これは?」


危なげなく受け取りブレスレットを眺める相棒に、


「魔力を込めると対と繋がる、何かあったら使え」


そう伝え炎の塊を手のひらの上に生み出すと、それを頼りにアレキシアは左の水路へ進んでいく。


「………あ、はい!気を付けて!」


一泊遅れて声を掛け、アシュトンも慌てて右の水路へと進んでいった。




そうして二つの水音が遠ざかり、沈黙に包まれた地下水道の中で―――




ザバ…バシャッ…




姿の見えない何かが水路を逆行していった。





――――――――――




「ラグ坊、居るかい?」


眼鏡を掛け何処か知的な空気を纏ったエルフの女は、『騒乱』の中に入るなりカウンターの向こうの人物にそう声をかけた。


「あら、お久しぶりですルクレア師匠(せんせい)

ラグなら所用で明日まで帰りませんけど…?」


明るく返事をしたあと、少し困ったように答えを返した低めの声にルクレアはふむ、と口をへの字に曲げた。


「そうか…時にヴァネスよ、地下水道の調査依頼は誰か行ったかえ?」


「地下水道の調査…?…ああ、うちのメンバーが引き受けてるわね。今調査真っ最中じゃないかしら?」


カウンター脇にあるノートを確認ながら答え、ヴァネスはそれがどうしたのかと視線だけでルクレアに問い掛ける。


「…昨日からウチの記者のユリシスが地下水道の調査に行っているんだけどね、連絡が無いのだよ。」


真面目な子だから調査の時は毎日報告をくれるのだがね、と付け加えその記者のものであろう情報が書かれた用紙をテーブルに置いた。



「厄介な事になってないと良いのだが」



テーブルの上に置かれた用紙には青髪に焦げ茶色の瞳をした、いかつい容姿の男の写真が乗っていた。




――――――――――




「困りました」


アシュトンは確認するように呟く。

周囲は蛍火に照らされ視界は良好である。

問題は目の前の鉄格子だ。端に扉があり鉄格子の向こうに行こうと思えば行けるが、そこには鍵が付けられている。


「ここから先は下水でしょう。扉はありますが鍵が付けられている…壊したら八つ裂きにされちゃいますね。」


誰に言い聞かせるでもなく呟きながら腕を組んで立ち止まり、やがて一つ頷くと


「アレキシアと合流しますか」


先に進むという選択肢をあっさり放棄しくるりと身を翻す。

しかし数歩進んだ瞬間、嫌な気配を感じて咄嗟に後方に飛び退いた。


頭上の蛍火が突然揺れ、上から何かに押さえ付けられたかのように落下する。


何かは派手な水音を立てて水の中に浮かびあがる。

その姿を確認する前にアシュトンはブレスレットに魔力を込めた。ブレスレットから伸びる光の筋を視界の端に収めながら、腰の双剣を抜き油断無く構える。


「これはこれは………とんでもない生き物でしたね」


蛍火が照らしだすのは自らを体内に取り込んだ、黒色の透明なスライムと呼ばれるゲル状のモンスターの姿。


そして蛍火が照らしだすのはそれだけではなく――――




半分ほど溶けかけた骨や頭蓋が剥き出しの人体、そしてスライムの中で藻掻く人の姿だった。

*******人物紹介*******


名前:ルクレア=ザークシーズ

種族:エルフ

年齢:753才

身長:170cm

職業:新聞社『聞き耳』編集長


ウェーブのかかった緑色の髪に山吹色の瞳。丸眼鏡を愛用する知的な雰囲気の女性。

ラグが赤ん坊の頃からの知り合い。

新聞社『聞き耳』の凄腕編集長、性格男前で多くの部下を従えている。




名前:ヴァネス・ガロッタ・カルサーヴィナ

種族:ヒューマン

年齢:41才

身長:183cm

職業:『騒乱』の従業員


パーマのかけられた銀髪に翠の瞳。女性より女性らしい、つまりオネエな人。

胸にパットを入れ女性物の上着を着用している。

『騒乱』と《羽虫の集い》の経営・会計担当、ラグの留守中は《羽虫の集い》の事を一任されている。

ギルドメンバーからは母親のように慕われているが、怒らせると怖いと恐れられている。

ルクレアはラグ経由で知り合って魔法を教えてもらった師匠。




蛍火→拳大の透明な石に妖精のような四つの羽が付いた物。

魔力を込めると光り、魔力を込めた人物から一定の距離を取りながら浮かんで周囲を照らすアイテム。

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