㉞傷口に塩を塗り込まれちゃった王子
◇ ◇ ◇
ソルとステラとオネエマッチョのアレンによってテキパキとお茶の用意が整うと、みんなで休憩室に移動する。
広い休憩室にでん、と置かれた丸テーブルにお茶がセッティングされていて、それぞれが席に着席する。
三段のティースタンドはメリル専用のと、その他の人用が別々に置かれ争いが起こることはない。
メリルの隣には王子と男の子が左と右に座ることになった。
「メリルの婚約者のアンドリュー王子殿下でいらっしゃいますか? 初めまして。僕は隣からやってきたジェレイアス・ヴォレイニクと申します」
お茶が給仕され皆が一息つくと、初対面の男の子が初めてしゃべった。
王子はそのような家名には覚えが無かったけれど、アクアオッジ家は平民である農家とも数々の交流があるし、姓があるということは裕福ではあるのだろうと、その自己紹介に引っ掛かりを覚えはしたものの、『隣というのはアクアオッジ家の隣家のことだろうか』と、誰も何も言わないのでそのままになった。
それよりもメリルのことを呼び捨てなのが気になる……
ジェレイアスは魔王国出身なので、アクアオッジ領の『隣』というのはウソでは無かった。
「メリルと婚約していられるなんて、本当にアンドリュー王子殿下は尊敬に値します……ですが、僕も負けてはいられません。王子殿下はライバルですね。手強くて何よりです」
「ちょっ! ジェレイアスなにを」
メリルが慌てて遮ろうとしたが遅かった。
王子から冷気が噴き出した。
「ジェレイアス……。それは冗談でも笑えないな。君は幾つだい? メリルや僕よりかなり年下に見えるんだが」
「あ、僕ですか? 四歳です。大人の身体に成長するまでは早いのでじきに身長も追いつ……もごっ!」
……今、何と……?
「ジェレイアス! ソルが話があるそうよ! ほら、行って!」
メリルはジェレイアスの口を塞いでいた手を離して、無理矢理彼を席から立たせると彼のお尻をバン! と叩いて送り出した。それを見て固まる王子。
……僕は今何を聞いた……? そして何を見たんだ……?
向かいの席ではウィルフレッドが、あちゃ~という顔をして額を手で抑えた。
"あの魔族、メリルに気があったの!?"
"あ、ああ……我も驚いた……"
本気で驚く精霊たち。
「オンドリャ王子で、ででんかっ! 彼が言った言葉は全部冗談ですからっ!」
噛み噛みのメリルに名前まで間違えられ、王子は更に傷口に塩を塗り込まれたみたいな顔になってしまった。
精霊は見えないし、声も聞こえていないので、ジェレイアスが長女カーラの起こした騒動からこっち、魔王国からやってきている魔族だなんて、思い付くものでもないだろう。
もっとも、生まれも経歴も第三王子にいつ鑑定されてもいいように【偽装スキル】でカモフラージュされていて、本当に四歳だなんて、ヒトには分からないのだけれど――
アクアオッジ家にはどんどん秘密が増えていき、王子の片思いと偏愛はますます混迷を極め、そうして学園生活はやってくる──
今度こそ、おしまい♪
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次回
『辺境伯一家の領地繁栄記』第三章:学園編~双子たち、目立ちたくないとは真逆~
とうとう双子が王都の学園に入学します。
通学の足はドラゴン、王子と同学年、「今年の新入生はみんな【スキルツリー】も個性的らしいな」という評価のもと、目立ちたくない双子が希望通りにいくわけもなく……
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