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『辺境伯一家の領地繁栄記』第二章:スキル育成記~最強双子、成長中~  作者: 鈴白理人
今日もアクアオッジ家は平和です

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㉕殺すか殺さないか


 男たちが抵抗しているうちに、火柱が一瞬にして勢いよく伸び上がった。

 夜の闇と沈黙を引き裂くかのように、赤光があたりを照らして轟音が空気を濁らせる。

 灰が炎に飲み込まれて爆ぜ、耳をつんざく破裂音と焦げ臭い匂いがあたりを満たし、僅かに残った建物の残骸までもが穴に吸い込まれていく。



「うわああああああ!」

「何だこれは! 引きずられる!?」


 叫びまでもが渦に呑まれ、かき消される。

 男たちの恐怖に支配された瞳は、地獄の口へ落ちていく運命を直感し、見開かれていた。


 ──ただ一人、アンドリューを除いて。


 彼は、ただ静かに立っていた。

 熱風が頬を叩き、外套が荒れ狂う風に翻弄されても、彼は揺らがなかった。

 まるで渦そのものが彼を避けているかのように、灰の一粒すら彼の身体に触れることはない。


 虹彩が幾重にも光を放ち、縦に細まった瞳孔は、ただ穴の奥の紅い輝きだけを捉えている。


 ──あそこに、目的のモノがある。


 男たちの悲鳴も、炎の轟きも、彼には遠い雑音に過ぎなかった。

 耳に届いているはずなのに、意識の奥底で押し流され、意味を成さない。


 一人の男がとうとう力尽きてバランスを崩し、尻もちをついた。


 それでも引き込む力は止まらない。爪が土を掻き、指が擦れて血が滲んでも、必死の抵抗は無残に打ち砕かれる。そこいらの灰と同じ物質でしかないのを残酷に物語っていた。


 抵抗虚しく、ズリズリと穴に引き込まれていく……


「助けてくれ!! どうか!」

「助けてくれええ!!」



 


 ダメだ。

 こいつらを殺させちゃいけない……!

 穴に吸い込まれたら命はない。



 だが、ここにいるのは人身売買に関わっている奴らで、辿ればソルを隷属させた事件に辿り着く。悪しき者なのに、殺してはいけない矛盾。


 アンドリューは相反する思いに冷や汗を流した。


 おそらくこいつらは穴の中のモノに『喰わせるために』送り込まれてきたに違いない。探し出す物を詳しく知らされていないのが何よりの証拠だ。



 そんなことになったら、()は力を取り戻してしまう!

 喰らわせて力を与えちゃいけない!



 ……だが、なんでそんなことまで分かるんだ?

 どうして確信できる?


 額から汗が流れ落ちる。

 心臓が不安定に脈打ち、耳の奥にかつて聞いた耳障りな金属音のような声が、しきりに"こっちへ来い"と訴えかけてくる。

 視界の端で、逆さまになった額縁が幻影となって、ゆらりとちらついた。



 ──ああ、そうか。


 唐突に理解がやってくる。

 身体の奥底に眠るスキルの断片……


 僕には【古代生物の依代 Lv-】スキルが──





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