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『辺境伯一家の領地繁栄記』第二章:スキル育成記~最強双子、成長中~  作者: 鈴白理人
今日もアクアオッジ家は平和です

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⑭怖がりメリル

「……この扉、なんで気付かなかったんだろ……」

 メリルがそう言うと、王子がちょっと考えて答えた。

「これは脳が騙されるように出来ている錯覚だ。視線が自然とカーブの先に誘導されるんだ。まるで『ここには何もない』って言い聞かせるみたいに。しかも【魔力感知】じゃないと見つけられないようになってるんだろうね」


「う~……ヘンテコな館だなあ」


「そうだね。まあ、こういう状況の場合、明らかに良くないことが起こる……扉が閉まって二度と開かなくなったり……扉の向こうは鮮血部屋だったり……」


「まあ、そうだよね……好奇心で入るなんてやめておけばいいのに、って思われて最初にやられちゃうやつ」

 

 ぎゃ~。王子ヤメテ―聞きたくないー。ウィルまでなんてこと言うんだー。



 ……あれ? 怖がってるのわたしだけ?

 

 わたしたちがそんなことを言っている間に、ソルがトラップがないかどうか確認してくれている最中だ。


 ソルの目がいつになく細く鋭くなっている。まるで、記憶の中の何かと照らし合わせているように。

 ソルは元々無口だけれど、子供の頃に感じた気配をこの屋敷で覚えた、というのが関係しているんだろう。いつもと違って肩に力が入っていて、緊張しているのが分かる。


 ここにその答えがあるんだろうか……



 そしてお約束の、ギギギギギーという重苦しい音と共に扉がゆっくり開いた。


 空気がしばらく動いていなかったんだろう、すえたような匂いとあたり一面、乾いた埃が肺に入ってまでまとわりつくような空気が、扉を開けたことで霧散した。

 狭い踊り場からいきなり急勾配の下り階段になっている。

 まるで階段が奈落に吸い込まれているみたいで、静まりかえった闇が場を支配していて……目を凝らしても何も見えない。


 階段の途中で灯りの届かない場所の影が蠢いた気がして──全身が一瞬硬直した。


 地下室!?

 やだあ。このお話はホラーじゃないのにぃ。

 わたしの知ってる今日も平和なアクアオッジ家と違いすぎる!


 灯りだけでは下り階段の全容は分からなかった。

 下るにつれて階段が完全に闇と同化している。

 

「ねえウィル、ほんとにこんなとこに絵なんてあったっけ? 前回はどうやって入ったの? それと、精霊たちはどこ?」


 自分だって入っただろ? ってウィルフレッドは思ったけれど黙っておく。

「んー。前回はもっと普通に入れたと思うんだよね……最初に見つけたとき僕らはまだまだ子供だったし。精霊たちはみんな出てこないんだ。どうやら、僕たちの新しいスキルのことを話し合ってるぽいけど……」

 最近よくあるんだよ。そう言いながら立ってる位置を変えて、わたしたちの一番後ろに移動した。


 わたしが怖がりなの知ってるから、しんがりを務めてくれるみたいだ。

 先頭ソル、わたしと王子、ウィルの順番で階段を下りることになる。


「精霊が話し合うって……新しいスキルのこと、あとで聞いてみないとだね。でも何があるっていうんだろ。わたしたちが見つけたあと、誰かが見つけられにくいようにした……? ってこと? やだあ。犯人がこの館のどこかにいるってことじゃない」


「今【魔力感知】のスキルが発現したってことは、誰かが後から仕込んだってことだろうね。この館にいる、誰かが……誰だろう?」


「わたしをわざと怖がらせてますよね? 殿下」

 メリルと似たようなことしか言っていないのに、王子は完全にとばっちりだった。

 そんな扱いを受けても、王子は平常運転である。

「そんなことはないよ……もっと、近くにおいで……」

「……うっ」

 隙あらば接触しようとしてくるこの王子はなんとかならないんだろうか。

 だけどメリルは仕方なく身体を横にして、王子に近付いた。王子も横向きなので、真正面からくっついている形だ。 

 ぞわぞわするけれど、非常事態なので仕方ない。



 それを見てソルがため息をつく。本当なら、メリルお嬢様を王子と接触させたくない。最近は王子と彼女が少しでも近いと、心がざわざわして不快になる。

 だが、今ここで自分の予測を話すのもためらわれた。

 怖がりの彼女にこれ以上ストレスを与えたくはない。


  薬を無理矢理飲まされ、朦朧とする意識の感触が脳裏によみがえる。

 ──あの男だ。

 奴は、この地下にいる。


 確信を飲み込んで、地下の底に向け灯りを掲げた。

「では行きますよ」

 

 カツン……カツン……足音がやけに響く。


 一歩下りるたびに、やけに乾いた足音が空間に何度も反響して、まるでわたしたち以外にも誰かいるような音の重なりが、いやがうえにも緊張を高めてくる……湿った風がゆるやかにまとわりついて離れない。

 先頭を行くソルの姿はぼんやりと見えるけれど、なかなか暗闇に慣れない。


 さっきからずっとコワイので、カニのように横歩きしながら、ずりりと階段を下りている。


 ……何かが触れてきた気がした──風……? 錯覚だろうか。

 一瞬、足が止まりかけたその時。


「いやん、押さないで」


「押しているのは、メリルだ」

 そのあと小さく「積極的過ぎるだろう……」と聞こえてきた。

 ……あっ……確かに。王子の胸を、壁代わりに積極的に押しまくってた気がする。

「……ほんと、押すのは壁だけにして欲しいかな……」


 王子の声が、暗闇の中でも困ってるように聞こえて、不謹慎だけれど、王子がどんな表情なのか想像してしまい、ついメリルは笑ってしまった。

「あれ? ホント? ……押し心地がよすぎて無意識だったかも」

「メリル……君は時々、天然で破壊兵器としか思えない」

「? 意味が」

「いや、何でもない……」

 

(……本当にこの婚約者は僕の心を掻き乱す天才だ……)

 でも、守るから。王子は黙ったまま思った。



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