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出迎え

 私達二人は、神剣が示す方向に従って歩き、カンザスの町の門をくぐり抜け、町の中へと入って行きました。


「……これは……いや、まあそういう事って意味だよな……」


 シーレンが剣の示す方向を見て、困惑気味にそう言ったのは、神剣がはっきりと、街の中心にある領主の館の方向を指していたからでございます。


 この神剣を振るうことのできる、新たな勇者……その人物は、今、恐らくは領主の館に居るだろうというのです。


 領主か、それともその家族か。または、領主の館で働いている者の一人か、それとも館に訪問している人物なのか……それはまだ分かりませんでしたが、確かに新しい勇者は、館の中に居る。それは、領主の館をぐるりと一回りして、はっきりと確認致しました。神剣は、私達二人が館の周りを回っている間も、館を常に指し続けていたのでございます。


「うむ……おい、大罪人。これはいよいよ間違いない。新しい勇者様とやらは、この館の中だ」


 シーレンは、少し緊張したような声でそう言うと、独り言をつぶやくように、自分に言い聞かせているかの様な面持ちで、こう続けました。


「……まあ、もともとこういう時には、まず領主に挨拶するのが習わしだから、好都合といえばその通りだが……。だが、やはり……いきなり訪問して、『ここに新しい勇者がいます』などと言うのは、緊張するよな……」


 と自分で言っている間に、彼も多少落ち着いた表情となり、やがて決心がついたのか、領主の屋敷の正門へと力強い足取りで歩き始め、私はそんな彼に後ろからとぼとぼと歩いてついて行きました。


 門の入り口で、シーレンが館の者に事情を話している間、私はシーレンの後ろで黙って待ちながら、いったい新しい勇者とは誰なのか、それともう一つ、セレスティアは今はいったいどうしているだろうか等と、我ながら未練がましい事を考えておりました。


 と、その時、一人の男が館から出てくるのを私は見ました。その男は、血相を変えて急ぎ足で、私の方を見ながらこちらにやって来ました。


 私は、その男に以前会ったことがございました。


 その男は、セレスティアに仕える執事の一人でした。確か、名はクリフと言う名前であったはずでございます。


 私が呪われた時、彼の年はもう四十位だった筈で、それから11年経った今、彼は五十を過ぎている事になります。


 痩せ気味で、背が私よりいくぶん高いスラリとした彼は、頭に白いものが以前より多少増えている様子でございました。そんな彼が、私を睨みつけながらこっちにやって来るのです。


 彼は、私の近くまでやって来ると、私に向かって低い声で静かに、怒りを抑えるように言いました。


「……何しに来た……。この悪魔……」


 近くで話していたシーレンがそんな彼の様子に気付き、クリフに声をかけました。


「うむ、こいつと知り合いだった方ですかね? その様子だとずいぶんとこの男を嫌っておられるようですが、今日のところは……」


 シーレンの言葉は、クリフの怒鳴り声でそれ以上は聞こえませんでした。


「この呪われた忌々しい罪人が! 顔を見るのも吐き気がする! その汚らわしい目でこっちを見るな!」


「す、すいません……」


 私は、クリフからそう怒鳴られ、謝罪しながら目線を下に落とし、うなだれました。そんな私に、彼は余計に苛立った様子で、私に向かって怒鳴り続けました。


「お前のせいで、セレスティア様がどれ程辛い目に合われたか、苦しまれたか、忘れたとは言わせんぞ! 儂はお前のセレスティア様への冷たい仕打ち、決して忘れてはおらん! お前には以前に一度仕返しはしているが――」


 そう言うと、突然クリフは私に近づくと、私の胸に、手にしていたナイフをいきなり突き立てました。


「もう一度だ! 死ね!」


 その言葉を最後に、私の意識は遠のいていったのでございます。

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