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再会の可能性

 森を出て、しばらく神剣の示す方向に向かって野原を歩いていると、私達は街道を見つけました。その道はどうやら、私達が向かっている方向と同じ目的地に向かうようでございました。


「この道が……?」


 私がそう言いますと、シーレンも「……だろうな」と答え、それからは私達二人は、その道に沿って歩いて行きました。神剣も、私達の進む方向と同じ方角を示し続けていました。


 時刻は、朝を少し過ぎ、太陽が登り始めてきた頃で、少しずつ暑くなってくる……そんな中を歩いておりますと、シーレンが何かに気付きました。


「分かってきた……分かってきたぞ……今歩いているこの街道、見覚えがある……おい、大罪人、多分俺たちが向かっているのは、スプラウト地方の町、カンザスだ」


 スプラウト地方は、セレン、あなたもご存知のとおり、王都から北にしばらく行った所にある地方でございます。そして、カンザス……そこは、その地方の領主の住む町でございました。


 カンザスは、その名を知ってはおりましたが、かつて私が行ったことのない町でした。しかし、そこにあの人がいる……それは私も知っていたのです。


 私は、かつて城壁の詰所にいたとき……兵士達と魔物の探索に行き、逃げ帰ってきたあと、そこで衛兵たちの会話を聞いておりました。それは、このような内容だったのでございます。


「はあ……こいつと結婚した姫様も気の毒だよなあ。輝く将来を期待してたのに、全くのハズレくじだったぜ。見ろよ、今のこいつを。酷いもんだ」


「だよなぁ。子供が出来なかったからって大事にされなくてなぁ。呪いをこいつが受けたら、今度は離婚。で、他の領主の所に嫁に行くことになってなぁ……」


「スプラウト地方の方だったよな、確か。そこの領主様も、大した器量だぜ。子供もできない、でもってかつての呪われたこの勇者の妻を、王家の姫とはいえよお、妻に迎えようってえんだからな」


「それからもう11年になるんだよな? 今はどうしてんのかな、その姫様。その後の話って、知ってるか?」


「特になんにも聞かねえな……。と言う事は、多分平穏無事に暮らしてるんじゃねえか? とにかく、こいつの妻だった時よりはマシになってはいるんじゃねえかとは思うぜ」


 衛兵たちの会話の中に出てくる姫……それは、かつての私の妻、セレスティアの事でございました。


 そうです。私は、私と離縁したあと、他の領主の妻となったセレスティアのいるはずの、その町に向かっていたのでございます。


 不忘(わすれず)の呪いを受けております私は、衛兵たちの会話も確かに覚えておりました。


 その衛兵たちの会話と、今シーレンから告げられたその町の名が、その時、私の頭の中でつながったのです。


 そのことを理解した時、私は、何故か少し懐かしく感じておりました。


 私は勇者であった時、セレスティアの事を王家に繋がる手段としてしか見ておらず、はっきり言ってしまえば愛してはおりませんでした。


 ただ、私の言う事は何でも素直によく聞く女であったので、可愛くは思う……その程度の感情だけは、セレスティアに対して持っておりました。


 私が呪いを受けて以来、彼女と会った事はありませんでしたが、きっと、彼女は私の事を良くは思っていないでしょう。恐らく、恨まれている事に違いありません。


 領主だって、きっと私を憎んでいることであろう事は想像に難くはありませんでした。


 しかしながら……私は、その事よりも、またセレスティアに会えるかもしれないということを思い、懐かしく思ってしまったのでございます。


 その町で、どんな出会いがあるのか……それをまだ分かっていなかった私は、不安と、多少の懐かしさ、そして僅かな希望を胸に……その町へと進んで行きました。


 そして、陽が高くなった頃……私達二人は、カンザスの町に着いたのでございます。

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