光の神
城の内部をうろうろしたがなかなか光の神が見つからない。1つ1つ部屋の扉を開けた。一番奥のいかにもここにいますという雰囲気の大きな扉があったが、あえて無視していた。
ーーRPGなら他の部屋には宝箱が置いてあるのだけれど無かった。ショック。
私以外の人はドキドキしながら最後の大きな扉を開けた。
「待っていたぞ」
数段ある段差の上の玉座に腰掛ける長い金髪に金の瞳の青年がナルシストの様に赤ワインが入ったグラスを揺らしていた。綺麗な顔立ちだから様になっていた。
ーーうん。大体予想通り。悪の親玉がいたわ。
アーダルベルトが「お前が光の神か!?」と叫ぶ。
「いかにもそうだが……うじゃうじゃと引き連れてきて鬱陶しいな」
只今のメンバーをご紹介しよう。まず私こと、悪役令嬢のシャーロット。次にヒロインことエミリー。俺様の赤い男ことアーダルベルト。クール眼鏡の青い男ことニクセ。眠そうな垂れ目の緑の男ことオットー。シャイボーイの茶色の少年ことファビアン。堕天使兼執事兼通訳者ことダーク。モグラ型の精霊ことノーム。人型の青い肌の精霊ことウンディーネ。計9名。
ーー……すまん。これ私が断罪イベントでなったパターンじゃないか。それよりも多いな。多勢に無勢って正義じゃないな。
「ごめん。戦闘メンバー減らそうか?」
良心が痛む私は思わず光の神に提案してしまった。ダークが「お優しいんですね」と私に好感を抱いた。肝心の光の神は「馬鹿にするな。哀れみはいらぬ」と怒った。
ーー無理しなくていいのに。
「何悠長なことを言ってるのですか!? あちらが勝ったら世界もろともこちらは滅ぶのですよ!? 手加減してる場合じゃありません!」
ニクセが正論を述べる。
ーー私は純粋な正義じゃないからなぁ。悪にちょっと同情しちゃう。人型だから尚更ね。
「うーーん。そうねー。恨まないでね」
「……ドラゴンとなり失敗作を守ったり、私を哀れんだりとつくづく変わった魔女だな」
「素敵でしょ? 光の神よ。残念ながらあなたを倒すしか道は開けない。大人しく倒されて下さい」
ーーダークが私の事素敵だってさ。ふふふ。にやけちゃった。
「道連れになるが良いのかダーク? 生き延びたいと思わぬか? 哀れな闇の神の教育をせねばならぬ。今度こそ失敗してはならぬ。闇の魔女と仲が良いお主ならもしかして果たせるのでは?」
「子供とはどうなるか分からないのが当然です。厳しく躾けても心を縛り付けることは出来ない。私は前の闇の神様は素敵だと思います。貴方もそう思ってましたよね」
「未だに信じられないよ。私を魔物で殺そうとした。もうあれは敵だった。過去に優しかったとしても敵なんだよ。私は自分の身の為にお前達を殺す。私はお前達の敵だ。武器をとれ面倒事はさっさとケリをつけよう」
光の神はワインを飲み干し立ち上がる。
「ああ。それと聖女はこちら側だ」
光の神は呪文を唱えた。エミリーの身体が強張る。
「うそ!? 身体が動かない!?」
「聖女よ。こやつらを殺せ」
エミリーの意思に関係なしに身体が動く。タロットカードをポーチから取り出すと私に飛ばしてきた。私は反応が遅れて避けることができなかった。
「くっ!?」
腕と足をスパッと切られて片膝をついた。ニクセが駆け寄り「水の癒し!」と治癒魔法をかけてもらうと傷が塞がった。
「ありがとう」
「どういたしまして。気をつけて下さい。聖女様は操られてます」
エミリーは「何で!? どうして!?」と混乱しながらタロットカードを飛ばす。アーダルベルトはそれを剣で斬り裂き、オットーは軽やかに避けた。光の神は指をパチンと鳴らすと筋肉マッチョな男の天使を2体出現させた。
「ヤバイもぐ〜。形成逆転されたもぐ〜」
「魔女よ。この状況を見てもまだ哀れに思うか?」
にやりと歪に笑われた。
ーーだー!? 哀れんだ私が馬鹿だったわ!
「戦闘画面が出てこないし!?」
実のところさっきからそれを待ってた。
「ああ。それなら私が消しといたからこない」
ーー神様だからゲームの設定いじれるのか? 何様だよ。……神様か。




