4話 「怒りの咆哮」
森の中央部にあった道もないのに何故か開けた広場。ここがくだんのダークエルフの隠れ家と見て間違いないだろう。
「誰だぁ?俺の住処に土足で入り込む奴らは~!」
やはり気づかれたか・・・。普通に考えたら追われている事ぐらいは感ずいているのだから何かしらの策を設けていて当然だな。感ずかれにくいように道なき道を選んだアキを責めるわけではないが・・・。
「そなたのような裏切り者にそのようなことを言われるいわれはない! エルフの名に泥を塗ったこと後悔するといい!」
強気にそういいきったアキは一見問題なく見えるが、俺はその手が震えていることを見逃しはしなかった。
やはり、彼女は闘いなど慣れてはいないのだろう。おそらく初めてではないのかと俺は見ている。それでもなお、気丈に立ち向かうのは使命感なのだろうか?
彼女は戦力とするなら頼りないと言わざるを得ないのかもしれない。だが、俺はむしろ安心した。アキは本来は心優しい年相応の少女のはず。戦いに慣れていていいはずがない! 戦いになれるのなんて俺のようなものたちだけで十分なんだから・・・。
「お、おまえは!?・・・いや、それよりもこっちの小僧の方が大事だなぁ。貴様のことは竜神様から聞いてるぜぇ。見つけ次第始末しろとなぁ!」
やはりそんな手配が回っていたんだな。意外と言うほどでもないが。
「リュウト、そなたは狙われる理由があったのか?」
「ああ、たぶんそうじゃないかとは思っていた」
アキのすがるような目を感じる。俺が自分のためだけについてきたのなら信頼できるか怪しいからな。・・・もっともそれを否定する材料もないのだが。
「さて、じゃあやるかぁ!」
おっと! そんなことを考えている場合じゃない! ダークエルフの放った炎がアキに迫る!
「えっ!? ・・・きゃあ!」
やはり動けないか・・・。俺は炎を剣で払うが何の特殊な能力もない普通の剣では炎は完全には払えず、俺も僅かに火傷を負ってしまう。
「りゅ、リュウト・・・そなた」
気にすることはない。そう言おうとした俺を遮ったのは
「ぎゃはっは! お前は何しに来たんだぁ? 威勢のいいのは口だけで、戦う覚悟もなし! 小僧の足手まといになっただけだなぁ!」
ダークエルフの言葉の一つ一つにピクリと反応して拳を握り締めるアキ。その姿が俺の心に重くのしかかる。
「ふざけるな!俺もアキのことは詳しくは知らない!だがな、こんな心優しい子が戦いの場に来る。それ自体がどれだけ勇気の要ることか!貴様程度にアキを馬鹿にする権利などありはしない!!!」