3話 「アキの心」
俺とアキはダークエルフ討伐のために道なき道を行く・・・。
「なぁ、こんなところを通らなくても普通の道を通ればいいんじゃないか?」
と声をかける俺にアキは呆れたような表情をし
「何を言うのだ、リュウトは。普通の道を使ったら感づかれるだろう? 危険は僅かであろうとも少ない方がいい」
・・・訂正する。呆れたようにではなく呆れていたらしい。
確かにアキの言うことはもっともなのだが、どうもアキは必要以上に恐れているような気が今までの会話から感じられる。まぁ、歳から考えて怖くないはずがないとは思うのだが・・・。
「しかし、考えてみれば人間であるそなたには此度のことは無関係だったな。つい部下たちと同じように命じてしまったが・・・すまなかった」
そうこれだ。アキはたしかに言葉遣いは偉そうなんだが、よくよく聞くと結構優しいことがわかる。まるで本来の自分を隠しているような・・・そんな気がするな。
私の名前はアキ=シルフォード=エルファリア。エルファリアとはエルフ族の王の証。この名前を言えば私の身分をリュウトはきっとわかったと思う。でもなぜか言う気が起きなかったの。
今回の討伐の相手は大恩ある竜神様を裏切ったもの。エルフ族の威信にかけ女王である私自らが戦いに打って出る姿勢を見せる必要があったの。
初めての戦い、森を進むに連れて私の心は恐怖で一杯になっていった。その状態で他の人たちとはぐれて・・・ほとんどパニック状態になったときに出会ったのがリュウトだった。本当なら声をかけるべきじゃなかったと思う。でも、不安と恐怖に押しつぶされそうだった私はつい声をかけて・・・協力するように命じてしまった。
だからかな? リュウトの傍にいるとなんか凄く安心するの。
「いや、気にするな。正しいことをしようとしてるものを助ける為の労力は惜しまないさ。それにそんな奴をほっといたらこの辺に住んでいる人たちも危険だろ?俺たち人間も無関係じゃないさ」
理不尽な命令に普通なら怒ってもおかしくないのだと思う。でも、リュウトはこうして笑いかけてくれる。リュウトの笑顔を見てると、顔が熱くなってくるのはなんでなんだろう?
「意外だな。人間と言うのは自分のことしか考えないものだと聞いていたが?」
そう、私が聞いていた人間とはそういう存在だった。でも
「そういう連中もいるのは事実だけどな。そんな奴らばかりじゃないってことさ」
私が聞いていた人間の話が間違いだったのか、リュウトが特別なのか・・・その答えは私には出せない。でも、私はこのリュウトという人物を気に入った。それだけは間違いのない事実だと思うの。
「言うではないか。ではそなたたちの為にも遠慮なく使ってやろうぞ」
私も本当はこんな言葉遣いはしたくない。でも私の立場はあくまでもエルフの女王。万が一にでも私の身分がリュウトにばれたときのことを考えたら本当の言葉遣いをするわけにはいかない。エルフの女王が歳相応な小娘だなんて噂になったら困るもん。もっともエルフの仲間にも威厳付けのためにこんな 言葉遣いをしなくちゃいけないんだけどね。
「ああ! 遠慮なく頼ってくれ!!」
躊躇いなく、屈託もなく笑いかけてくれるリュウト。ああ、きっとリュウトの笑顔を見ると・・・リュウトの傍にいると変な気分になるのはこんな風に自然に話してくれる人が久しぶりだからなのかも。
もうすぐ、ダークエルフが潜んでいると思われる場所へつく。でも・・・今の私にはさっきまでのような恐怖心はない。・・・まったくってわけじゃないけどね。




