2話 「エルフの少女」
ここは迷いの森・・・のひとつ前の森。規模も小さく道もしっかりある森だから、ここで迷うことはない。
「そこの者! ちょっとこっちへ来るのじゃ!」
?・・・何だ今の声は?
「そなたじゃ! そなた!!」
・・・あたりをキョロキョロと見渡すと、道を外れたところにある茂みの中に一人の少女がいた。緑色の髪を腰ぐらいまで伸ばした可愛い少女だが、耳のとんがりを見る限りエルフだな。エルフの歳はわかりにくいが人間で言うなら14、5歳といったところだろう。
「どうした? エルフがこんな森で迷子とは思えないが?」
俺の言葉に髪と同様に緑の目を大きく見開き、ふるふると震えていた少女は
「誰が道に迷ったと言ったのじゃ!!」
と叫んだのだった。・・・震えていたのは怒りを耐えていたんだな。
「実はこの森にエルフの罪人が隠れていてな、私は共と共に討伐に来たのだがはぐれてしまったのだ。そこで、そなたに手伝ってもらおうと思ってな」
なるほど、そういうことか。言葉遣いが偉そうなのは・・・まぁ、エルフだしな。この歳で罪人の討伐をやってるとなると実際に偉いのかもしれないが。
「どうした?ここは『指名いただきありがたき幸せ』と快諾するところではないか、人間よ」
「・・・その前にその罪人について教えてもらいたいな。エルフ族はどうだか知らないが、俺は何をやったかもわからない相手の討伐には参加したくない。・・・後、俺の名前は人間じゃないぞ。俺はリュウト=アルブレス、リュウトと呼んでくれ、エルフさん?」
「ムッ! ・・・たしかにまだ名乗っていなかったな。私はアキ=シルフォード=・・・いや、アキと呼んでくれればいい」
途中で何を言いよどんだかはわからないが、まぁいいか。
「でアキ、その罪人ってのは何をやったんだ?」
「ふむ、本来はエルフ族の恥を他種族には言いたくないのだが、そなたの言うことももっともじゃ。実はな、この先にいるダークエルフは大恩ある竜神様を裏切って邪竜神についた恥ずべき裏切り者なのじゃ!」
なるほど。となると俺も無関係とは言えないな。背後から襲われても厄介だし、それでなくても周辺住民に害を及ぼしかねない。
「わかった。そういうことならば手伝うとしよう!」
こうして俺はアキと共にダークエルフ討伐をおこなうことになったのだった。