屋上のジンクス・・・書きかけ
「あ、あはは・・・楓ちゃんから電話着てるよ・・・」
「え、あー・・・うん。」
俊介はサンキュ。と言って私から携帯を取り上げポケットに突っ込んだ。
私たちは教室を出た。キュッキュと廊下に響き渡る私たちの足音。
「電話・・・いいの?」
「うん。もう関係ないから。」
俊介はそういって笑ったけど、楓ちゃんは・・まだ俊介のことが好きなんだ。
「うーん・・」
「・・・何?」
「いやぁ・・ちょっと考え事を・・」
「何のこと?」
「いや、何でもないよ。こっちの話!」
あははと笑って、誤魔化そうとしたら教科書やら筆箱を落としてしまった。
「あーあー、馬鹿だなー」
「う、うっさい!」
クスクスと笑う俊介をよそに、私は拾おうとしてしゃがんだ。
すると俊介もしゃがんで、笑いながらも手伝ってくれた。
こういうところがたまらなく好きなんだよ。
思わず言ってしまいそうになる。好きだって。
「パンツ見えてっぞー。」
「きゃっ!!」
急に声をかけられたことと、俊介の変態発言により、現実に引き戻された。
「し、信じらんない!馬鹿、あほっ、ハゲっ!!!//」
顔を真っ赤にして、スカートを押さえ、とっさに訳のわからないことを言いまくった。
「あははは、俺、ハゲてねーし」
「いっそのことハゲ・・ろ・・・え・・」
ついつい、大声で叫んでしまった私に対して、俊介の人差し指が唇に触れた。
「シーっ」
相変わらずクスクス笑う俊介は自分の口元にも人差し指をあて、
「授業中」
と言って立ち上がった。
すっかり忘れてたが、すでに授業が始まっているみたいだ。
私はあたりを見回し、即座に荷物を抱えて階段へダッシュした。
「危なかったぁ・・・」
「もう手遅れだろ」
階段に座る私に近寄って、隣に腰を下ろした俊介は嫌味っぽく言ってきた。
悪戯っ子のような、幼い子どものような顔を見せた彼に私はまた見とれそうになる。
「そ、それより今から授業・・・行く?」
「もう、サボろーぜ!」
「ほんとっ!?じゃ、じゃあ屋上!!屋上行こっ!!」
サボリと言ったら屋上か保健室だと思った私は空が見たかったので屋上を提案した。
すると、私の意図に気づいたのか俊介は「いいよ」と短く答え、笑った。
4階まであるうちの学校は屋上にたどり着くのに一苦労する。
階段長ッッ!!
内心そんなこと思いながら体力のない私はふらふらとよろけながらもなんとかたどり着いた。
俊介はさすが運動部って感じで、こんなの余裕といった清々しい顔をしていた。
屋上へとぬけるドアは少しサビていて、雰囲気を出す。
そのドアをあけ、外に出ると一気に風が吹き抜けた。
「っ・・・・わぁ!!!!」
私は空を見上げ、驚いた。
雲一つない快晴。澄み切った空気。
冬の空は少し霞んだ青の空。
私はすぐさまフェンスの側まで駆け寄った。
「すごい・・」
屋上から見る景色は私の住んでる地域がほぼ見える。
空も一面見渡せる。私はテンションあがりまくりだった。
「見て!俊介!」
ゆっくりとこっちに向かって歩いてくる俊介は
「見てるよ。」
といって私の隣に立った。
「すげーな」
「うん、綺麗」
あまりの空の大きさに、私はしばらく見とれた。風が気持ちいい。
いつからかはわからないけど、横からの視線に振り向いた。
「・・・何?」
「え・・・い、いやぁっ、なんでもねっ」
「・・?」
「あー、えと、写真撮る?」
「えっ!いいの!?」
「おう!ちょっと待ってな。」
そう言うと携帯をいじり始めた。
そして、「ん、おっけー」と言うとぐいっと私に近づいた。
「はっ!?こ、これ・・・」
「じゃねーと、撮れねぇだろ?」
「そ、そそそうですね//」
「・・ブハっ。何焦ってんだよ」
「いやいや・・気にしないでいただきたい・・」
「クククっ・・・じゃあ、撮るよ、ピース」
携帯を構えた瞬間、俊介の手が私の肩におかれさらに距離が縮まった。
俊介の「ハイ、チーズ」という合図とともにシャッターが切られた。
私は近すぎる俊介の距離による緊張で多分顔がこわばっていたに違いない。
ぎこちない笑顔をしてみたものの、顔の筋肉が疲れた。
「おしっ。後で送るな」
そんなこと、気にもしないという顔で携帯をいじってる。
コノヤロー・・何も知らないで・・・
こういうことを普通にやっちゃうんだもんな~、俊介は。
まぁでも、俊介との2ショットが撮れただけ満足。
また宝物が増えちゃったな。
多分私の顔がニヤけていたであろうところを、俊介に見られ少し引かれた。
ぎゃーぎゃー騒ぎ、俊介と一緒にいられたこの1時間は幸せの時間だった。