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パーティをクビになった荷運び、実はアイテムボックス容量が無限だった ~王国軍の補給を一人で支えています~  作者: 水原伊織


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第一話 追放された荷運び、実は無限収納でした

この作品は、追放された荷運びが“無限収納”を武器に、王国軍の補給を一人で支えていく物語です。


戦わない。

派手な魔法もない。

あるのは、地味な仕事と、壊れたアイテムボックスだけ。


けれど――

補給が途切れれば軍は動けない。

補給が届けば戦局は変わる。


追放された雑用係が、気づけば国家の命運を握っていた。


そんな“兵站無双”の成り上がりを楽しんでもらえたら嬉しいです。

「――お前、もうパーティ抜けろ」


その一言で、三年間続いた冒険者生活が終わった。


夕暮れの酒場。

勇者パーティ《蒼銀の剣》の席だけが、不自然なほど静かだった。


リーダーの剣士ガルドが、面倒くさそうに腕を組む。


「前から思ってたんだよ。お前、戦闘で何もしてねぇだろ」


「荷物運搬と補給は俺が――」


「それだよ、それ」


ガルドが鼻で笑う。


「荷物持ちなんて誰でもできる」


隣の女魔術師リシェルまでため息をつく。


「最近は浅層ばかりですし……正直、あなた必要です?」


胸が少し痛んだ。


ポーション管理。

食料補給。

予備武器。

素材回収。

野営道具。


全部、俺がやってきた。


だが“戦わない”というだけで、価値はゼロらしい。


「まあ、金はやるよ」


投げられた銀貨袋は、軽かった。


「今月の取り分、これだけか?」


「荷物持ちの分際で文句か?」


酒場がざわつく。


怒鳴り返したかった。

だが――できなかった。


《蒼銀の剣》はAランク目前。

揉めれば、俺が悪者にされる。


「分かったよ」


立ち上がると、ガルドが笑った。


「おい、共有倉庫の荷物は置いてけよ?」


……は?


「俺が管理してた素材も――」


「パーティの共有財産だろ?」


リシェルが当然のように頷く。


「容量不足のあなたじゃ、持ってても無駄でしょう?」


その瞬間、俺の中で何かが切れた。


「……そうか」


腰の革袋に触れる。


――《アイテムボックス》起動。


【収納数:987,244 / ∞】


誰にも見えない、俺だけの表示。


そう。

俺のアイテムボックスは“壊れている”。


容量制限が、存在しない。


ただ黙っていただけだ。

知られれば、国に利用されると思ったから。


「じゃあ、俺の私物だけ持っていく」


「ボロ装備くらい好きにしろ」


ガルドたちが笑う中、俺は酒場を出た。


◆ 夜。王都の外れ

収納を確認する。


食料。

水。

回復薬。

予備武器。

解毒薬。

結界石。

寝具。

魔物素材。


――そして。


《蒼銀の剣》が保有していた遠征物資の、八割。


「…………」


全部、俺が買って、補充して、管理していた。


立て替えた金額は、もう数えたくない。


「……まあ、いいか」


空を見上げる。


俺はもう自由だ。


◆ 翌朝

勇者パーティ《蒼銀の剣》は、

第二十七階層への遠征中――


ポーション不足で崩壊した。


◆ そしてその頃


王国軍補給本部。


「おい! 誰だ、この補給記録を作ったのは!」


怒号が響く。


兵士が震えながら答える。


「し、知らない新人が……昨日、突然来て……」


補給隊長は記録を見て目を見開いた。


「……この在庫管理、完璧すぎるだろ……?」


その名簿の端には、こう書かれていた。


『補給係:レクト』


追放された荷運びの俺は、

この日から――


王国軍の補給を一人で支える存在になっていく。

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