普通じゃなくてもいいじゃないか!
和馬は困惑していた。といっても、友達の家に行ったら初恋の人がいたのだから、そうなっても無理はない。
「か、和馬君!?なんであの後居なくなったのさ!?」
「そ、それは...あの後引っ越すことになっちゃって...病院に行けなくて...」
「タイミングゥ!」
「え、えっと...理恵さんがなんで友樹の家に...?」
「あ、そっか、知らないのか。私は友樹の従姉なんだ。」
「え...えぇ!?」
「だ、だから言っただろ...聞いたことある気がするって...」
「んなもんわかるか!」
「ま、まぁ二人とも...入って来いよ...」
「お、おう...」「う、うん...」
その後、慌てた様子の静葉が仲直りが出来て嬉しい気持ちが勝っているのか、ニヤニヤしている一稀を連れて帰宅した。
「その...まぁ...君の事とかもよくわかったよ...うん...」
「俺もです...無事で本当によかったです。」
「あ...うん。あ、ありがと...」
「えっと...あれ、今理恵姉彼氏いたっけ?」
友樹がすかさず話題を変更しようと持ち掛けたが、少し無理矢理になってしまう。一稀がニヤニヤしながら、
「和馬のために作ってないんですよねー。」
「一稀ちゃん!」
「えー、まだちゃん付けですか...?僕はれっきとした男ですよー、プンプン。」
「可愛い...いやそうじゃなくて!」
「お、俺のため...?」
「あーもう!一稀ちゃんのせいでなんか和馬君固まっちゃってるじゃん!」
「そういう和馬も諦めてないもんねー?」
「一稀!」
「両想いなのに水臭いなぁもう、さっさとどっちかが告白しなよー。」
「一稀ちゃんもう口を閉じて!」
「嫌でーす。男らしく和馬から行こー。」
一稀に誘導されて、まるで一稀に操られる駒のように和馬が口を開く。
「えっと...理恵さん。俺、まだ理恵さんの事が好きです。理恵さんが本当に俺の事が好きなら、俺と付き合ってください。」
「も、勿論だよ!...でも、私みたいな変人でも本当にいいの?」
「いいに決まってるじゃないですか!俺はそういった所も好きになった理由の一つで...」
「一稀、ちょい。」
「んー?友樹も僕に告白?」
「...違う。ちょっと来てくれ。」
和馬と理恵が互いに告白したのを確認して、友樹が一稀に外に出るように指示をする。
「一稀...お前もしかして和馬の言ってた理恵さんが理恵姉って事も、二人がまだ両想いだってことも知ってたのか?」
「うん、まーね。」
「一稀...わかってると思うけど理恵姉は...」
和馬が理恵と付き合うようになってから少し経った。理恵はこっちに引っ越すことになり、友樹の家の空き部屋をしばらく借りる事になった。理恵からは「いつでも遊びに来てね!」と言われているが、和馬からすればいつこの事が美穂に伝わるか不安すぎて行きにくくなっていた。
「お、今私の事考えてた?このスケベ!」
「あぁ...まぁな...」
和馬はどこからともなくやって来た美穂のスケベという発言以外を肯定する。美穂は「のってくれないねぇ。」と言いながら、
「大丈夫!年の差だったら私もそうだからさ!」
「...はあぁ...で?誰から聞いたんだよ?」
和馬はある意味予想通りだったのか、大きく溜息をついたあとは特に何もなく質問する。
「さて問題!教えたのは誰でしょーか!
①お兄ちゃん
②静葉ちゃん
③友樹
④理恵さん
さて、どーれだ?」
「全員。」
「おぉ!よくわかったねぇ、まぁ、これが私の人望って言いますか?...あー、今のなし。なんかナルシストっぽかったし。」
美穂は俯いて少し悲しい顔をしてそう呟くと、上を向いて作り笑いを見せる。
「なんかあったのか?」
「えっとー...和馬は...年の差がある恋人って...おかしいと思う?」
「そりゃ、普通ではないだろ。」
「...そっか。」
「何があったか話すまで帰さないぞ。」
「うっ...私さ、大吾の事は遊びとか、弟みたいとかそんなんじゃなくて、本気で好きなの。それなのに...世間から見たら高校生と小学生が付き合うのがおかしいっていうのが、少しだけ...っていうかだいぶ気に食わないの。別に誰と恋をしても私の勝手じゃん。私の恋は普通じゃないっていうけど、普通の恋って何なの?」
「...まぁ...しょうがねぇだろ。俺達はその世間がおかしいと思っている事をしているんだ。普通は小学生相手に恋はしないし、普通はそこまで年上の人に恋をしてもすぐにその気持ちはなんとなくだったと思うもんだ。多分、普通じゃねぇんだ、俺達は。」
「何それ、気に食わない。そんな世間なら私が変えてやる。絶対変えてやるもん。」
「はは...お前ならマジで変えそうだな。」
「...ま、私は年の差恋愛に関してはお前より先輩だから何か聞きたいことあったら聞けよ後輩!よーし、パンでも買ってこい!」
「はいはい、先輩先輩。」
...この時の和馬は、本当に美穂の助言に頼りまくるだなんて考えてもいなかった。