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不意打ちのやさしさ2

「休みだけど偶然きみと会えて、もっと一緒にいたいって思ったからだよ」


 本音を伝えたら、なぜか隼人は、そっぽを向いた。


 足を組み、ひざの上でひじをつきながら「バッカじゃないの」とぼやく。「朝、おまえが遅刻しそうなときはいつも送ってるし、学校でも別クラスだけど休み時間に話したり、昼食も梨花が誘ってグループで食べることがある。帰り際もオレが話しかけたりするでしょ」


「でも、休みの日にきみと出かけることなんてないだろ」


 最後に出かけたのは多分小学校の六年生のとき。


 中学に上がるとぼくは声優のプロダクションや事務所のオーディションを受けたり、演劇部の活動に熱を上げていた。


 隼人は勉強ばっかしで塾に通って模試ばかり受けていた状態だ。


 ささいなことで喧嘩になり、口をきかなかったことも多かった。


 付き合う人間も、趣味も、夢も、何もかも違う。


 それで疎遠にならなかったほうが奇跡だろう。


 ぼくの一方的なこの思いがなくなってしまえば、もう二度と会うこともないかもしれない。


 ――人生百年時代。


 十八歳の大人になったばかりであるぼくと隼人。長生きをすれば、八十年以上の人生が残っている。


 べつの大学に行って、違う企業に勤めて、誰かと恋をしたり、結婚をするかもしれない。


 そうしたら、赤ちゃんのときから一緒であるぼくは、透明人間のように最初からなかった存在となる。


 彼がこれから出会う大勢の人たちの記憶の中に埋もれていくんだ。土の中奥深くに埋まった遺物や、砂漠の中の遺跡みたいに掘り起こす人がいなければ永遠に忘れ去られてしまう。


 それくらいの関係だ。


「……そうだっけ」


「そうだよ」


 きっとマスター候補として名乗りを上げて、出会ってから日も浅い健太くんのほうが、ずっと前から大好きな隼人よりも縁がある。


 身体は手をのばせば届く距離にいる。こんなに近くにいるのに、まるで遠くの星にいる人と通信しているみたいだ。


 それくらい隼人は遠くの世界の人なんだと思い知らされる。


「いつも怒らせてばっかりだし、ぼくも怒ってばっかりだけど、本当は違う。きみと普通の友だちみたいに仲よくしたい。一日、他愛もない話をして、笑って過ごせたらいいなって思ってる。グループで出かけて隼人が楽しそうにしてたり、ほんの少し話せたら、それで充分なのに……うまくいかないや」


 また罵られたり、あきれられちゃうな。


 どんよりとした雲みたいな気分でいれば、「だったら出かける?」と信じられない言葉を耳にする。


「えっ?」


「おまえが言う『普通の友だち』がどんなものかは知らない。でも、」


 こちらを向いた隼人は、動物と触れ合ったり、動物の写真を見ているときのように、やわらかな笑みを浮かべていた。


「『他愛もない話をして、笑って過ごせたらいいな』っていうのは、いいね。わかるよ。オレも渉と、ずっとそうしたいって思ってたから」

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