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「あー、もう! リアスのやつ腹立つなぁ。嫌味しつこいわ」
「ハハハッ! 諦めろ! あいつは誰が言っても、誰と喧嘩になってもあの態度は変えんからなぁ!」
今俺はハゼさんの元へやってきていた。
リアスの愚痴を…ではなく依頼を受けるに当たって必要な物が何か聞きたかったし、お金も返さないといけなかったからな。
「絵本用意してくれるとかいい奴だな、なんて思ってもすぐ嫌味を言ってくるしよ…」
「絵本? あいつがねぇ…。まあ悪い奴じゃねぇし、慣れりゃあ可愛いもんさ」
「慣れたくないんだけど…」
「ハハッ! おっ。そうだ。ちゃんと売れたか?」
「あ。ああ、売れた売れた。結構高値だったよ。はいこれ、貸してくれてありがとう」
「うん? 少し多いぞ。ほれ」
「利子…というか貸してくれた礼みたいなもんだから受け取っておいてくれ」
「おいおい。んなこと期待して貸したわけじゃねぇぞ? それに礼っつーなら酒奢ってくれた方が嬉しいぞ? いや、酒の方がこれより高くつくな! ハハハハハッ!」
確かに気持ち上乗せした金よりも酒の方が高くつきそうだな。
「わかってるよ。酒も奢らせて貰うさ。色々教えてもらったし、ハゼさんが保証してくれたお陰でリアスが上のランクの依頼を受けさせてくれたしな」
「へぇ…? ランクより上の依頼か」
「ああ。それで依頼に必要な物とか聞きたかったんだ。あ、それと魔導椅子も返すよ。ありがとう」
「おう。構わねぇぞ。魔導椅子な。確かに返却してもらった。にしてもお前さん…魔導椅子必要あったのか?浮遊魔法が使えるとは思わなかったぞ。たまげたぞ」
「やっぱり珍しいのか?」
「ああ。かなりな。まあ使える奴がいても、わざわざ普段の移動の為に使うことなんて無いから目にすることがないってのもあるがな」
ああ…確かに足で歩けるならわざわざ使わないか。
「魔導椅子使うより楽だから便利だぞ」
「便利だからって皆が使えるわけじゃねぇからな。それで、依頼だっけか? 何の依頼なんだ?」
「コールドシザーの納品だな。高級食材なんだろう?」
「コールドシザーか! ああ! めちゃくちゃ旨いぞ! 身も美味いが茹でた後の内臓がな! 酒のつまみに最高なんだ! あのツマミがあるだけで安酒すら美味く感じるほどだぞ」
カニの内臓…かにみそのことか。確かに美味しいよなぁ。
「じゃあかにみそ…じゃなかった。コールドシザーがたくさん取れたらお裾分けするよ」
「本当か!? ならそんときは俺の行きつけの飯屋で調理してもらおうぜ! 酒に合う料理を作らせると超一流なんだ!」
「へぇ。ならそこで酒も奢らせてくれ」
「いやいやいや! コールドシザーをくれるっていうのに酒まで奢らせるわけにはいかねぇよ! 酒は俺に奢らせてくれ」
「いや、これからも色々教えてもらいたいしさ」
下心はあるが、良くしてもらっているのだ。金がないならまだしも、手持ちはそれなりにあるのだからお礼のつもりで酒代を出すくらい構わない。
「別に奢って貰わなくても教えてやるが…じゃあ今回だけはお前さんの好意に甘えるとするかね。だから教えるたびに奢ったりしなくていいからな?」
「ああ。わかった」
その後コールドシザーを手に入れる為に北の海に行くのに必要な物などを教えてもらった。
素材用と持って行く物用の大きなバックパックか拡張鞄を二つ以上。二週間分の食料に飲料、防寒具、寝袋、着替え、ナイフと武器を複数。
他には結界生成の魔導具、暗視の魔導具、ライトの魔導具などなど。普通のバックパックには入らないだろうという量を指定された。
というのも、普通はこれら全て持っていくやつはいないらしい。大抵何かしらはスキルか能力で応用できるからだ。魔法で水が出せたり、種族特性で暗視ができる者などは結構いるからな。
色々持っていくやつは小容量の拡張鞄をいくつか持っていったりするらしい。容量が小さい物で中古ならそれなりの稼ぎがあれば問題なく買えるみたいだし。
そして俺の場合だが、ハゼさんが必須と言った物の中で持っていく必要があるのは、食料と着替え、ナイフと武器だ。と言ってもそれらもわざわざ買う必要がない。神が持たせてくれたからな。
ちなみに寝袋だの防寒具だの、冒険者が買うような物は何処の店にいっても防水の魔法が付与されている物ばかりらしい。街中で使う物は防水じゃない物あるらしいが。
「ありがとう。とりあえず今日は店を見て回って明日にでも依頼に向かうよ」
「おう! 気をつけろよな。コールドシザーは食べたいが、お前が大怪我して戻ってきたら意味ねぇぞ?」
「わかった。ありがとう。ラピスもいるし無理はしないさ」
「ならいい。…よし! 今日は初依頼の祝いだ!飲み行こうぜ! 今日は俺が奢るからよ!」
…ここで俺が奢るって言うのは失礼だよな?
「じゃあ…お言葉に甘えるよ」
「おう! 気にすんな気にすんな! じゃあ光が落ちる頃にここに来れるか?」
「大丈夫。じゃあまた後で。俺は明日の準備してくるよ」
「おう。また後でな!」
「じゃあ…いくか」
「きゅい!」
ハゼさんと別れ、ラピスと共に浮遊魔法で街に繰り出す。相変わらず人々の驚きと好奇の視線を感じるけどな。
美味しそうなものがあったら買っておこう。




