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【⑲ 撃鉄よ、喝采を唄え】

 




 腐敗せる太陽(コープス・ラフレシア)



 ダキア(おとん)の授業で、その名前を知った。

 闇属性魔法の最高峰。高い技術と深い知識。

 それらを編み。組み。

 魔力分子の暴力を撒き散らす。個人が所有する火力として、上澄みも上澄み。

 単純に、火力が高い魔法ではあるのだけれども、それとは別に、その魔力を浴びた者の細胞を自死させるという暗黒魔術めいた効果がある。


 ……細胞が死ぬって何?


 まあ、あれよ。


 ダキア(おとん)が云うには、人間の『手』があるじゃん。その『手』は、最初からその形で生まれてくるわけじゃねえんだと。

 細胞自死。

 その部分の細胞が、自ら死んで。

 そうして、最初はまるっこいだけの細胞の集合体は、『人の形』になっていく。生えた様にも見えるだろうね。

 腕やら脚が。で、その腕やら脚も、最初はまるっこい。

 そこでまた、細胞は死んでくれる。最終的に、人間の『指』という万能の機能を残す為に。

 生命ってのは、『死』を取り入れる事で、生かされる。だって、手がなきゃ、赤ん坊は親の指を握れないからね。

 話が逸れた気がする。


 細胞自死の話だ。


 健康な魔力細胞に働きかける魔法なんだ。腐敗せる太陽(コープス・ラフレシア)は。損壊して死ぬ細胞の死と、健康な細胞に死をプログラムする魔法の二段構え。

 だから、最初の魔力の暴威を耐え抜いても。細胞を自死させる魔法には耐えられない……事がある。

 魔法そのものは、新人類由来の魔力細胞が抵抗するけど。簡単な話、その抵抗力が強ければ強いほど、細胞自死の効果は強く表れる。

 表れて、しまう。逆に抵抗力が低くても、魔力の爆発で死ぬ可能性があるだけなんだけれどね。

 つまり。腐敗せる太陽(コープス・ラフレシア)ってのはさ。


 即死魔法。

 ってやつ。


 確率で死ぬ。例えば、運悪く脳細胞が自死したり。

 それが、心臓であったりしたら。そりゃあ、死ぬよね。

 ダキア(おとん)は、アイ族だから、自分は平気だけど、と。付け加えた。

 そう。要点は、そこ。

 アイ族には、通用しない。勿論、魔力の爆発によるダメージは、あるのだろうけれど。

 アイ族に、即死魔法が通用しないっつー事はさ。


 そりゃあ。

 つまり。






▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲





 銃身が戦慄(わなな)き熱を帯びる。

 殺意を込めた咆哮がオークション会場に響き。



「……なっんで……」



 ゴロゴロと。

 喘鳴(ぜんめい)が聴こえていた。粘度の高い血液が、喉に詰まっているのだろう。

 僕のアサルトライフル【メガロシャーク】は、オークだろうがフルオートを食らえば3秒も立ってはいられない。破れた横っ腹から溢れた臓腑。

 そう、長くは持つまい。メイフェム族は、身体に特化した種族ではない。

 どちらかと云えば、魔力関連に秀でた種族じゃんすか。じゃから。

 ……だから。

 特別、脆くはなくても。

 特別、頑丈ではない。


 魔王レオラグナなんかとは違ってね。

 攻撃は、ちゃんと通る。



「ご、ぽ……」



 ステージに撒かれた塗料の上に乗った臓腑の切れ端が、仄かに湯気をあげていた。

 濃厚な鉄の香り。ダンジョンで嗅いだ事がある。

 見るも無惨か姿に成り果てた冒険者。その、最期の姿を思い返す。



「き、さま……」



 ガルガリエルが、心底、憎らしげに。それでいて、軽蔑を込められた様な顔で、こちらを見ていた。

 腹に致命傷を受けている以上、何も感じちゃいない筈はねえのですが、痛みや苦しみ以上に、憎悪と侮蔑が強いのか。そんなに?

 そんなにか? そんなになのか?



()()()、そのような…………アイ族の武器を使うなどと……」



 初見必殺。

 或いは。

 初見確殺。

 成った、ね。


 膝から崩れ落ち。

 俯せに倒れたガルガリエルは、それでも怨めしそうに僕をねめつけていた。



「よくも、こんな、騙し討ちを」



 思わず笑っちゃったよ。



「騙し討ちだって? 何を云ってるんだい?

 ちゃんと名乗ったぞ、僕は」



 僕が笑い出した事も。そして、僕の言葉の意味も呑み込めず。

 ガルガリエルは、瀕死だというのに、なんとも、まあ。呆けた表情だこと。



()()()()()()だと名乗ったんだ」



 僕は、同じようにステージに横たわるアブディエルの頭を撃ち抜く。一番近くに居たから。

 ガルガリエルと同じく、一つの射線上に近い位置で。そうでなければ、フラググレネードを投げ。

 一網打尽…………それが、望ましくはあったのだけど。アルマロスとラファエルとミカエルによって、そちらは防がれた。

 ま。何にせよ、だよ。



()()()が、旧文明の武器を使うのは、当たり前だろう? 新人類の魔法は、旧文明にはなかったものだ。

 じゃあ、旧人類が、旧文明の技術を使うのも、道理だろ」



 なあ、そうだろ?



()()()



 アイ族を除く、()()()()、得意気になって使うよな。旧人類にはない、新人類の技術。

 魔法を。じゃあ僕も旧文明の武器を使うね。

 旧人類らしくさ。



「お疲れ様」



 そう云って。

 ガルガリエルの頭もステージを彩る塗料にしてやろうと、僕は、【メガロシャーク】の引き金を引く。



「────……咄嗟に精霊魔術で、腐敗せる太陽(コープス・ラフレシア)をやり過ごしたか」



 アサルトライフルの銃口が、杖の先で天井を向く。



「かッ」



 なんだ。と、喚くよりも早く。

 僕は、杖で殴打されてステージを転がる。分かったのは、ガルガリエルを仕留め損ねたという事。

 そして、それは、魔王バールベリトのせい。



「そして、なるほど。貴様には、即死魔法が通用しなかったのか」



 テストの答え合わせをする教師の様な口調と足音で。



腐敗せる太陽(コープス・ラフレシア)は、余が考案し、研究を重ね、完成させた魔法である」



 採点でもするかの如く。



「人間の……新人類の身体を切り開いてな」



 人体実験。

 その一言を呑み込む。


 魔王バールベリトの言葉に、抑揚はない。



「……くくっ。今更、教鞭を持つわけでもあるまいに。

 柄にもなく、講釈を」



 そして、自嘲するかの様に、喉を鳴らす。


 魔王バールベリト。

 グリモア魔法学園創設者。 

 その名は、教本に幾度となく登場している。魔法学の第一人者。

 1000を越える魔法の数々が、彼によって開発されたのだ。誰よりも早く、魔法の根元を解き明かし。

 魔力分子、魔力物質……そして、魔力細胞の存在を発見し、余に知らしめた張本人。



「結論を語れば、貴様には、無いのだったな、魔力細胞が。故に、魔力細胞に死を組み込む魔法が不発に終わった」



 そこで、ルフェの精霊魔術の暴風によって、会場の端まで弾かれていた僕の仲間達が、復帰してくる。



「痛みを伴いましてよ」


「ごめんて」



 リナリエル嬢の咎める様な視線と台詞に、身を縮め込ませ。僕は、とりあえずの謝罪を口にするのでした。

 しかし。まあ。

 長丁場になってきましたね。



「ふん……貴様自身は、即死の副次魔法を無効化する。故に、仲間だけは、安全圏まで逃がしたか。

 咄嗟の事で、身の安全までは気遣えなかったようだが」



 ダメージの最安値。無傷(ノーダメ)とはいかなくとも。

 ベストでなくたって。一番、ダメージが安くて済むのなら。

 ルフェで仲間達を逃がし。腐敗せる太陽(コープス・ラフレシア)をヴァロの精霊魔術で相殺。

 ま。なんとも。

 切った手札のコストは重い。重い、が。

 それが、一番、安く済むっていうね。



「バールベリトォオッッ…………ッ!!!!」


「覚悟ッ」




 と。そんな事を考えてると、飛び出す影が1つ、2つ。

 遅れてもう1つ。

 魔王バールベリトを殺す動機。

 因縁が、誰よりも強く。それに脳を焼かれた女。

 グリゼルダと、そして、ルーシャ。



「こんばんわあ。殺しにきたよ」



 その次に強いであろう、ヨルシカ。


 憎悪を引き金に。

 殺意は撃鉄。

 復讐は火花。


 軽装の3人は、それぞれが動きを邪魔をしない距離感で飛び出す。



「貴様等が来よったか。……まあよい。

 意思を以て、余に挑め。覚悟を以て、余に臨め。

 相手をしてやる」



 3対1。


 僕は、そこに加われない。

 3対1の構図を成立させる為に。まだ、健在である回復役のミカエルを仕留めにかかる。



「ぐ、く…………」



 僕から逃れようと、這いずるガルガリエル。あと少しで、ミカエルの回復魔法が届くのだろう。



「────させるかよ」



 【カーテシー】の刃が、スポットライトを反射して。紙装甲の低体力でありながら、超ハイスピードで駆け回る狩人。

 デューベンが、ガルガリエルを刈り取った。椿……という技、らしい。

 ボンッ……ボン、と。板張りステージの上を、刎ねられた首が跳ねる。

 肉体の一部を欠損させる事を目的とした技術なのだとか。今回は、這いずるガルガリエルの首を。

 でも、立っていれば手首を落とす事もあれば、屈む相手の足首を落とす時もある。そんな彼女を射貫かんと。

 《万貫》のアルマロスが、弦を引き絞る。スムーズな動作だ。

 標的を殺す為だけに、洗練されたアクション。それを、僕の【メガロシャーク】が阻む。


 たたたん、たたっ。

 たたんったったた。


 小気味のよい音が鳴る。


 《魔宴》のラファエルが、魔法を駆使して、迫る銃弾の幕を防ぐ。魔法は、現象ではあるからね。

 熱にしろ、風にしろ。出鱈目にしろ、乱発してりゃ、そりゃ弾道だって逸れちまうわけで。

 まあ、いい。いいさ。


 僕は、暴力を振り上げる。



「…………は」



 ごっ。


 皮が裂けて、肉が破れ。

 骨が割れる音が、心地よい。


 何より、呆気に取られたラファエルのあの表情(かお)。たまんないね。

 僕が、接近戦……白兵戦を、仕掛けるなんて。そんなもの、微塵も考えていなかった。

 そんな表情。


 僕は、銃撃しながら距離を詰め。ラファエルとの間合いが、3メートル程になったところで、一気に加速して拳を振り抜いたのだ────ラファエルが、自身の魔法でダメージを負わない為に設定したのであろう3メートル先での起動。

 銃の弾を撃ち尽くしていたからね。僕は、フィジカルで魔法を突っ切る。

 ラファエルも、銃というものが、無限に撃てるものではない程度の知識はあったのだろうが。

 アイ族の、旧文明の武器とはいえ。

 ただ、銃は弾切れになっても、拳が弾切れになるわけじゃない。



「か、は」



 先に振り抜いたのは、右手。じゃあ、次は、左手だね。

 捻り、唸り、うねり。


 フルスイング!!


 1打が、ラファエルの内部を突き抜ける。



「が」



 肋骨が、落雁の様に、折れて割れて擂り潰されていく。ちらりと、後ろを見れば、ティルダが冷めた目で見ていた。


 デバフ魔法、か。


 ティルダのバフ魔法は、僕に作用しない。あれもまた、魔力細胞に働き掛けるものだから。

 ただし、デバフ魔法の恩恵は得られるわけで。僕の肉体強度は強くならなくても。

 相手の肉体強度は落とせる。真っ向から、新人類を殴り倒せるくらいに。

 《魔宴》のラファエルが両膝を着き。僕はラファエルの肩に足を乗せると、そのまま後ろへ押す。



「ラファ────」



 《万貫》のアルマロスが、矢を番え。その頭を手斧がかち割る。



「うむ。ヘッショワンパンじゃな」



 投げたのは、アデラインだ。いつの間に、そんなのを覚えたんだか。

 僕は、仰向けに倒れたラファエルの胸を踏む。



「…………」



 目が合ったが、今さら言葉は必要ないかな。


 僕は無言で、メガロシャークの銃床板で、ラファエルの顔面を叩き潰した。



「さて」



 残る1人。

 僕が銃床に付着したあれこれを、ラファエルの貴族服で拭っていると、《泉》のミカエルを、グレンケア生徒会長殿とマーズが仕留めていた。たった1人の回復役なんて、ただの消化試合もいいところだからね。


 これで、取り巻きは始末した。後は、本丸である魔王だけ。

 そう思い、魔王バールベリトの方を見ると。



「────……おいおいおい。マジかよ」



 グリゼルダ。

 ルーシャ。

 ヨルシカ。


 3人が、倒されていた。



「マジか」



 信じられない。



「ほぅ……余の子らを」



 魔王バールベリトが、余裕に満ちた表情で、こちらを振り返る。



「やるな」



 それは、まるで。

 生徒達が一斉に頭を抱える難問を、生暖かい顔で見守っていた時に、意外な生徒が解くのを教師が見た時の様な。そんな表情だった。



「よろしい」



 ガンッ。


 魔王バールベリトの杖が、ステージを鳴らす。



「実に……誠に……」



 ガンッ。

 ガンッ。



「大変よろしい」



 杖が、ステージを叩く。おそらくは。

 教師として、教卓についていた頃の手癖なのだろう。注目を集め。

 それでいて。傾聴せねばと。

 身が引き締まる。そんな仕種だ。



「また1つ」



 ガンッ。



「貴様らに」



 ガンッ。



「課題をくれてやる」



 ガンガンッ。


 契約の魔王バールベリト。


 こいつ。

 こいつは。こいつこそ。



「滅びから逃れたいのならば、やってみせよ」



 魔王。魔王だ。

 まさに。誰よりも。

 他の。どの魔王より。

 魔王そのもの。


 解ってきたし。

 見えてきた。


 だから。

 なるほど。エルフ氏族の国を滅ぼし。

 その後、教師にもなったのだろう。課題を与える者。

 それが、契約の魔王バールベリトのキャラクター性に思えてきた。



「【天仰ぎ 空高く 天空より】」 



 ガンッ。

 4つの闇。闇の精霊が、四方へ飛ぶ。



「【かねてより巡り廻る恵みよ】」



 ガンッ────……まずい。



「【膨れ腫れて張れて熟れて垂れて】」



 視線を左右に走らせ。────ガンッ。



「【今こそ降り墜つ鉄槌の如く】」



 ガンッ。

 僕は、メガロシャークのアタッチメントパーツを着け替える。

 ガンッ。



「【落とせ墜とせ 振り上げたものを】」



 ガンガンッガンッ。

 ────……いけるのか!?



「【掌閉じて そこに隠したものを】」


「ルフェ! ヴァロ!

 ────ミツハ」



 今までは、最大で2体までしか同時に精霊魔術を放った事しかねえ。それをこの土壇場で3体同時だ。

 ヒリつくじゃんすか。



「【その果実 天災となりて降り注ぐ】」



 くそっクソッ……くそ!

 間に合うか!?

 ガンッガンッガンッガン。




「【堕ちろ 堕天の果実デス・フロム・アヴァヴ】」



 魔王バールベリトの持つ杖。

 8つの宝玉が、強い輝きを放つ。その1つ1つが、高密度の魔力物質だ。

 魔王バールベリトの精霊魔術に呼応している様に見えるね。何にせよ。

 闇の精霊魔術は放たれた。四方に散った闇の精霊が、高純度高密度で押し固め練り固めた魔力物質。

 それが、一斉に降ってきた。



超広域殲滅魔法(ユピテル・レイジング)!?」



 信じられない。

 そんな上擦った声をあげたのは、グリゼルダ。よかった。

 息があったか。いや。

 全然よくねえ。全然まだまだピンチじゃねえか。



「おおォッッ!!!!」



 グレネードランチャー。

 それ1つで、メインウェポンを張れる火力。

 アサルトライフルにそれを着けるの、頭がロマン過ぎる。更に。

 僕の横に、グリゼルダが立つ。ティルダも、マーズも、ヨルシカも、グレンケア生徒会長殿も、ルーシャも、リナリエル嬢も、デューベンも、アデラインも、グリゼルダも、あ、グリゼルダはもういたわ。

 とにかく。

 皆が集まってくれていた。察しの良さが、とても助かる。



「アレを壊すの?」


「そう! 4つのうち、3つはうちの精霊達にやってもらう!

 残り1つは僕1人じゃ無理だ」



 ティルダの言葉に、僕は矢継ぎ早に答えた。



「分かった。よう分かった。

 だから、助けてってことやろ?」



 ヨルシカが、魔法を練る。あれがそのままここに落ちて割れると……いよいよヤバい。

 元々、超広域殲滅魔法で、この雪まつり会場周辺は、魔力濃度が急上昇していた。オークション会場で、皆が平然と動けていたのは、精霊達が、周囲────およそ、半径4メートル内の魔力を常時取り込んでいたから。

 だから、魔力中毒にかからずに済んでいた。けど、そこで魔王バールベリトの野郎は、とんでもねえ事をやりやがったのです。

 拡散、堆積、その上に滞留しつつある魔力分子を、再び集約しやがった。あの野郎。

 つまり、今よりもっともっと高濃度の魔力濃度空間を作ろうとしたのです。

 ほんとマジ。

 マジほんと。

 あまりにも魔力濃度が高過ぎると、さすがに精霊だけじゃ食い切れない。

 食い切れなきゃ、魔力中毒を引き起こす。魔王バールベリトが、自らそれをやろうとしたっつー事は、だ。

 魔力中毒に対して、耐性が高いのか。はたまた、4体の手持ち精霊なら追い付くという算段でもあったのか。

 とにかく。

 僕は、僕達は。

 一斉に、降ってくる魔力物質に、火力を放つ。ここに留まるのがまずいのであって。

 ならば、離れた場所に吹き飛ばしちまうと。有効なのは火。

 魔力分子同士の結合、結び付きは、高温の環境下では、魔力分子の運動が活発になり、結果、結合がほどけ易い。


 しかし。

 くそ。


 火力が追い付かねえ。

 ヴァロとルフェとミツハは、魔力物質をそれぞれ破壊してくれた。人類の魔法より、精霊魔術の方が魔法としての格が高くて、魔力物質を燃焼させ易い。

 一旦、魔法として燃焼させちまえば魔力分子の濃度だって一時的でも下げられる。その筈なんだが。

 間に合うねえか!?





 …………────






「……間に合ったかな」



 それは、流れ星の如く。白毛の右腕が、亀裂の入った魔力物質を打ち砕く。

 そこに、既に撃ち込まれていた魔法の数々が作用して。魔力分子の集合体が、消費されながら魔力(エネルギー)を発散。

 魔法という形で集められた魔力物質が散った。


 それを成したのは、人狼の右腕を持つクラスメイト。


 テーゼ=オルタナティヴ・ハート。



「お待たせ。遅くなってごめん」



 なんだ、てめえ。主人公か。

 なんだその、完璧な登場演出は。



「伏兵、か────がッ」


 

 テーゼの登場に、魔王バールベリトは、すぐに認識を加速させた。僕の学園での交遊関係。

 そして、テーゼの交遊関係────まあ、気付くのが遅かったみたいっすね。

 魔王バールベリトの胸から、ロングソードの切っ先が生える。



「き、貴様……ッ」



 口から血を撒き散らし。魔王バールベリトは、背後の襲撃者を視界の端に映す。



「ケルヴィム……グリッペン…………ベルクッ」


「光栄だ。こんな犬っころの俺の名前までご存知だとはな」



 テーゼの相棒。ススキノの名探偵コンビ、武力担当。

 元傭兵であり、元少年兵だったライカン族の、ケルヴィム=グリッペンベルクが、背後から魔王バールベリトを貫いていた。



「くくっ……よもやこの様な雑兵に……」



 魔王バールベリトが、膝から崩れ落ちる。




 

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