1.プロローグ
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レッドフォード公爵邸の玄関先。
王立高等学園の入学式を終えた姉フランチェスカが真っ青な顔をして、出迎えたヴィヴィアンの両肩をがっしり掴んで叫んだ。
「ヴィヴィ、よく聞きなさい!わたくし達は悪役姉妹だったのよ!」
「……お姉様?どうしたの?」
「わたくしは将来国外追放になるの!その移送中にならず者に襲われて命を落とすのよ!イヤーー!」
「ちょ、ちょっとお姉様」
「心が病んでしまったあなたは幽閉先の山奥で崖から身を投げるのよ!キャー!」
「病んでないわよ、失礼ね」
「そういう未来が待ってるってことなの!」
フランチェスカの話はこうだ。
高等学園の門をくぐったフランチェスカはその風景を目の当たりにしたことで前世の記憶なるものが蘇り、ここが前世で読んでいたファンタジー小説『私、聖女になります!』の世界の中だと気づいたらしい。
主人公は母親と市井で暮らす心優しい女の子。
ある日額に聖印が現れて聖女候補となり、実は男爵家の庶子だったこともあって、貴族が通う高等学園に編入することになった。そこで聖女になるために邁進するが物語は恋愛がメインで、モテモテになったヒロインは常にちやほやされまくり、最終的には王太子と結ばれるというもの。いわゆる逆ハーレム無双状態が人気を博したそうだ。
そこに登場するのがフランチェスカとヴィヴィアンの悪役姉妹。嫉妬に狂った二人はあの手この手でヒロインを虐め抜き、最終的にそれぞれ国外追放と幽閉という罰が下され悲惨な死を迎えるらしい。
「クリストファー殿下の婚約者のお姉様はともかく、なんで私まで」
「クリスの側近達のせいよ!幼馴染のあの子達もヒロインにメロメロになるの!それでヴィヴィはブチ切れるのよ!」
「…………」
「とにかく思い出したことをメモに残さなくちゃ!それでクリスとの婚約を白紙にしてもらうわ!」
いや無理でしょ、と言う間もなく姉は嵐のようにその場を去っていった。
その後フランチェスカは、この先に起こるはずの未来を記したという“預言書”なるものを書き上げた。中身は『私、聖女になります!』をできるだけ忠実に再現したものらしいが、それを引っ提げて婚約を白紙にするよう父と国王に直談判した。
けれどやはり婚約は白紙にならなかった。話があまりに荒唐無稽すぎるのもあるが、肝心のクリストファーが姉にべた惚れなのだから受け入れるはずがない。
それならとフランチェスカは学園に通うことを拒否し、一人でさっさと隣国に留学してしまった。残されたクリストファーはおいおいと泣いた。フランチェスカとの学園生活を楽しみにしていたからだ。
側近達とともにそれを慰めながら、ヴィヴィアンは思った。私はどうなるの?と。
手にはフランチェスカが「しっかり読みなさい」と押し付けていった預言書がある。読むと気分が落ちるので早々に本棚に仕舞われた。
それからあっという間に1年の月日が流れ、預言書のとおりに聖女候補が現れてしまった。
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