誰かの日記 -キリア目線-
今回は、日記の内容から始まります!久々とも言えるほんわかタイム。数話なかったので…下の子可愛い。
少しの間状況を整理していると、心配そうにユキが顔を覗き込んでくる。
「ど、どうしたの?何か重要な事でも書いてあった?」
「あ、いや、ちょっとビックリしちゃって。えぇと……」
ユキにそういわれて慌ててメモ用紙に視線を戻す。日本語が書いてあることに驚いてまだ中身を確認していないんだよね。
書かれていたのは、小さなかわいらしい丸文字。メモ用紙にびっしりと書かれた日記のようなものに書かれていた内容に思わず食い入るように二度見をしてしまう。
『フェルナス。やっぱりここは前世でやったゲームの中だ…私の出生も名前も、ヒロインと同じ。死ぬ前に願った事を神様に叶えてもらえた。日ごろの行いがよかったからかな?
そうと決まれば早速情報収集しなくちゃ。シナリオ通りに進めば私は必ず幸せになれる。何年もかけてようやく見つけた道だから。絶対に間違えたりなんかしない。
この国の名前と、貴族の名前はやっぱり作中の物と同じだった。始まるのは7月15日。オープニングとチュートリアルから気は抜かないようにしなくちゃ。重要なのは、選択肢と言葉を一つも間違えないこと。間違えたら即ゲームオーバー……
攻略対象は全員見つけた。今の情報網じゃあの人まで見つけられてはいないけど、それでもいい。面識を取るまでに時間はまだまだある。
最近、町の皆が神子の噂で持ち切りだ。結末は分かっているから気にはしていないけど、少しソワソワする。そろそろ始まるからかな…
オープニングまであと1か月を切った。あいつの様子を見に少し私から出向いてみようと思う。ゲームでは立ち絵がなかったからどんな姿をしているのか気になるんだよね』
そこで、文章は切れていた。
……フェルナスがゲームの世界?ってどういうこと!?言葉遣いと、ヒロインって書いてあるから女性…?死ぬ前ってことは、誰かがこの世界に転生してきた後に書いたってことだよね。
紅莉さんと歌奏さんが書くような内容じゃないし、そんな事一言も言っていなかった。何か隠し事をしているのならいざ知らず、ゲームの世界だなんてルアナとミアからも聞かされてはいない。
「ねぇ、ユキ。このメモ用紙が入っていた本ってどういう本なの?」
「え!?え、っと……」
何の本に入っていたか分かれば何かヒントが得られるかもしれない。そう思い、ユキに問いかけると、気まずそうに煮え切らないような返事を返される。言いにくいのか、目線を明後日の方向に逸らして頬を掻く。
どうしてそんな風にしているのだろうと小首をかしげると、少し顔を赤らめながらあははとユキが渇いた笑みを零す。
「ご、ごめん…どんな本だったか忘れちゃった…」
「そう?じゃあ、どこで借りてきたのかは?」
何とか絞り出したかのような返答を返され、少し胸の中でモヤッとした何かが沸き起こる。すぐにその気持ちは引いていったが、何だったのだろう。
気にせずに、答えられそうな質問を出す。流石に借りてきた場所位は覚えているよね?
「王城内の図書館だよ。結構大量に本を借りてきたから、何を借りてきたかまでは覚えていないんだ…」
申し訳なさそうにこちらを見つめるユキに「いいよ」と言いながら再びメモ用紙に視線を落とす。これを書いたのは、王城の図書館の入ることができて、尚且つ日本からの転生者。
ううむ。紅莉さんと歌奏さんしか思い浮かばない。一度二人にあって詳し話を聞かなきゃいけないな。
もしフェルナスが本当にこの日記の通り、何かのゲームの世界だったとして、日記に書いてある『7月15日』は確か学園の入学式だったはず。
学園物のゲーム?でヒロインが出てくるってことは何かのRPGのゲームなのか?いや、ゲームの内容としてはどうでもいいんだけど、途中に出てきた神子の話や、道って何の事なのだろう。
「で、何か分かった?」
「あ、ごめん…つい熱中しちゃって。内容は誰かの日記だったよ。多分、書いたまま挟んで忘れちゃったじゃないかな?」
「そうなんだ。って、誰か分からない日記読んじゃって大丈夫なのかな…」
軽く内容を伏せながら、ユキに話す。この内容とユキは関係ないと思うし、多分話しても何言ってんだこいつ状態にしかならないと思うからだ。
日記と聞いて、また心配そうな顔になるユキに少し苦笑する。日記なんて普通本に挟まないと思うんだけど、本当に信じるんだ…純粋と言うか何というか……少し心配になってくるな。
怪しい壺とか買っちゃいそう。
「別にいいと思うよ。何か変なことが書いてあったわけでもないし」
嘘です。ユキからしても変な事しか書いてなかった。日記と言うにはとても遠いものだったし、何なら世界規模のお話だった。
普通この世界がゲームの世界なんて言われても信じられないとは思う。が、前世からしたらこの世界自体がゲーム感覚なので気にしない。魔法とか超次元的な力がある時点でゲームだから。そもそも私自身存在は人間じゃないから。
あと、ルアナならやりかねないと今悟ったからね。あの駄女神ならやりかねん。
「そっか。ありがとう」
「あ、そうだ。ユキは学園に入ったら何かしたい事とかあるの?」
「え、俺?」
「ん」
何とか話題を逸らそうと、表情を変えずに学園の質問をする。ユキも貴族の一員として学園に入ることにはなっているらしいが、貴族としての務めじゃなくて普通に青春を謳歌すればいいと思う。余計なしがらみは学園に行けば多少は少なくなるかなと思っての事だ。
いくら学園が貴族社会の縮小図になっているとはいえ、一度しかない学園生活。エンジョイしなきゃもったいないだろう。
「んー。取り敢えずは学園を卒業するのが目標だけど、他にやりたい事かぁ……」
「あ、ちなみに私は婚約者探しと後継者決めもあるけど、まずは友達作りっ!」
「……………………あー、神子の仕事か。大変そうだねぇ」
「で、ユキのやりたいことは?」
私のやることは決まっているけど、キリルにも言った通り自分でやりたいことはやらせてもらうつもりだ。婚約者探しとかは二の次。
ガッツポーズを取りながらユキに笑いかけると、ユキもつられて笑顔になる。
「俺はやりたい事とか考えたことがなかったなぁ」
「そうなの?」
「うん。いつも指示されたことしかやってこなかったから。特に学園でやることもないし、これと言ってないかな」
むぅぅ…指示されたことだけだと息が詰まりそう。やっぱり何か目標があった方がいいよね。でも、私から言ったらそれこそ指示されたことになっちゃうか。
顎に手を当て、考えているとパッと頭の中にいい案が思い浮かぶ。
「それなら、学園での目標は、『ユキのやりたいことを見つける』っていうのはどう?」
「やりたいことを、見つける…?」
「そう!今は考えるだけでもいいから将来何をしたいかって決めるの!家から出ることでもいいし、これから自分がどうなりたいのか思案してもいいの」
ハードルは低く、自由に。
自分の意思で決めた事ならきっと頑張れるからね!
笑顔でユキにそういうと、何かが吹っ切れたような表情に変わる。お、いい反応。
「じゃあ、学園にいる間は考えてみるよ。キリアから言い出したんだから、一緒に考えてくれるよね?」
「………!勿論!」
ニヤッと悪い笑みを浮かべてユキがそう言ってくる。私としてもユキの隣にいるのは楽しいから、そう言ってくれて嬉しい。学園でも友人が傍にいてくれるのは心強いから。
どちらからともなく二人で笑いあっていると、遠くから17の鐘が鳴るのが聞こえる。もうこんな時間なのか。
「そろそろ、戻らなくちゃ。キリア、明日何か予定ある?」
「え?えっと、午後二時から剣術を教えてもらう約束があるけど」
「午前中は?」
「何も予定は入っていないよ。やるとしても王城内の部屋のリメイクだけ…………何かあるの?」
やたらと予定を聞いてくる。別に剣術以外は予定は入れていないし、あったとしても突撃訪問されるだけかな。それ以外でやることとしたら…王城の別荘化計画を進めることかな?エルさんから部屋のリメイク許可は取ってあるし、試しにトラップ部屋とちょっとした仕掛け部屋も作って…………
想像だけが膨らんでいく中、ユキの方をちらりと見ると考え込むように口元に手を当てている。
「いや、キリアがよかったらそのリメイク見せてもらえないかなぁって。ちょっと興味があるんだよね」
「そうなの?いいよ。それじゃ明日の朝にまた来てよ。準備してるから」
リメイクが見たいをは物好きな…まあユキが見たいって言っているからいいけど。唯々物を設置して確認するだけの作業だよ?特にトラップ部屋は誤って作動させちゃったら危険もあるし。
不思議に思いながらも了承を返すと、ぱぁぁっと花がほころぶような笑顔を見せてくれる。そんなにかなぁ…
「分かった!また明日来るよ!」
「あ、うん」
そう言ってユキは足早に部屋を出て行った。そんなに喜ぶことかなぁ?ぽつんと部屋の中に残されて気が付けば空に影が差していた。さっき確かに17の鐘が鳴ったのは聞こえていたけど、時間がたつのは早い…
フッと明かりを消すと、部屋の中が途端に薄暗くなり先ほどまでは胸の中で沈んでいた眠気を誘う。寝る前にちゃんと着替えたりしなくちゃ……
「……ふわぁぁ………んん……………………」
誰も見ていないことを良いことに、あくびをする。子供は疲れるとこんなにも早い時間に眠たくなるのか…今にも目を閉じたら眠ってしまいそうになる。
眠気を払うためにぶんぶんと頭を振っても、またすぐに眠気が襲ってくる。早いうちにお風呂入って寝よう。気を抜いたら絶対に風邪ひく場所で寝ちゃう。
目をこすりながら私は眠らないように風呂場へと向かうのであった。
「……………………………………ん」
何か体にかかる重みに目を覚ます。何だろうか。胸がとても苦しい。心とかそういう意味じゃなくて、物理的に肺が押しつぶされそうなんですが…
重みにハイスピードで意識が覚醒する。目を開けると、胸の上にいたのはなんとマナハとナイザ。子供二人が上に乗っていたらそりゃ重いわ。いくら二人とも痩せているからって流石に睡眠時に乗られてもいいような体はしていない。
「ちょ…二人とも……起きた、起きたから…!上から退いて…!!」
「「————!!」」
必死に訴えると、起きたことに気が付いたのかニコッと笑いながら私の上から何とか退いてくれる。
ソファーから身を起こし、はぁはぁと肩で息をしながら足りなかった酸素を補給する。危なかった…私じゃなかったらとっくに死んでる…!!
上に乗っかっていた当の本人たちは私が起きたことが何故か嬉しかったのか、キャッキャと笑い合っている。可愛いけど…可愛いけどっ!
「お、おはよう。マナハ、ナイザ」
「「――――!!」」
呼吸を整えてから、改めて朝の挨拶をする。2人は名前を呼ばれたことに反応して、パァァッと表情を明るくさせ、返事の変わりとでも言うように手をピシッと挙げた。2人揃っていたので尚更微笑ましい。
というか、まだ1日しか経っていないのにすごく懐かれた気がする。名前ももう覚えたみたいだし、マナハも全く警戒しなくなっている。どういうことだ。
「ええと、今はまだ6時くらいかな…」
窓から差し込む朝日を見て、時間帯を確認する。まだ日が昇り始めたばかりなのだろう。外から吹き込んでくる空気は少し冷たい。外からは使用人さんたちがもう働き始めてくれているのか、足音や何かを洗う水音が聞こえてくる。
スキアはもう起きたのかなぁと思っていると、コンコンと丁度扉をノックする音が聞こえてくる。エルさんかな。
「———?」
「ちょっと待っててね」
ノック音に不思議そうに反応するマナハの頭を撫で、扉の方に向かう。ドアノブに手をかけた時に、自分がまだ寝間着だということに気が付き、魔法で手早く普段着に着替える。
寝ぐせは…ついていたら後で直せばいいか。見えないところは諦めて扉を開くと、そこにいたのはエルさんではなくスキアだった。ピシッと使用人の服を着こなして扉の前に立っている。
「あれ、もう起きていらしたのですか」
「あ、今さっき起きたばっかりだけどね。おはようスキア」
「おはようございますキリア様」
サラッと何もないように挨拶をしてスキアが部屋の中に入ってくる。昨日エルさんに連れて行かれたけど、そのまま寝たのかな。顔色がとても良くなっている。
マナハたちもスキアの顔を見て警戒していないところを見ると、私が留守にしている間に打ち解けていたらしい。くそう、見たかった…!!
ナイザがスキアの手にぐりぐりと手を擦り付けて撫でろ撫でろと主張している。それに困り顔をしながら頭を撫でるスキア。あれ、私より懐いてない?少し複雑な気分…
「手懐けるの早くない?私、最初めちゃくちゃ警戒されてたのに」
「そうですか?この二人はすぐに私に飛びついてきましたが」
「何それ羨ましい…」
しょぼんとしながらも、天使たちの可愛いじゃれあいを見つめていると心が安らぐ。嬉しそうに撫でられているナイザと、少し入りたそうにしているが、恥ずかしいのか入ることができないマナハ。そして、ナイザを撫でながらマナハに手招きしてあげているスキア。
可愛いの三段構えだ…!!
心のどこかで私の方には来てくれないのね…と思いながらも、ふわふわした光景に思わず頬を緩ませる。下の子たちが可愛すぎて辛いです。
「そうそう、忘れてました」
「?どうしたの」
「今日一日二人を借りてもいいですか?」
「いいけど…」
スキアがきりっとした顔で、そう言う。しかし、耳が赤くなっているのを私は見逃していない。なんだかんだで可愛がっているのか、可愛い奴め。
それにしても、スキアがこの子たちに用事って何だろう。昨日今日の出来事だからスキアもこの子たちと余り面識はないだろうし、第一スキアにも使用人としての仕事もあるだろうに。
「エルさんが私に仕事を教えてくださるついでに、二人の髪を切ってくれるそうなので。長くて目に入りそうで危なっかしいとのことです」
「そうだったんだ。ついでにスキアも切って貰えば?」
「私…ですか?」
エルさん…髪を切ることも出来たんだ。二人の髪を切ってくれるなら有り難いことに越したことはない。顔にかかっているので前も見にくそうだし、マナハの髪も結ってあげて欲しい。きっと喜ぶだろう。
スキアも長かった髪を後ろで一つに縛っているが、このままだと前髪も目に入りそうだし長さも整っていないのでこの期にエルさんにやってもらえばいい。
「そのままだと仕事も大変でしょ。これから暑くもなってくるし、バッサリ切ってもいいと思うけど」
「そう、ですか?…キリア様がそうおっしゃるのなら、切ってもらうように頼んでみます」
スキアが結っている自分の黒髪の毛先を弄っているのを見てほんわかする。いじいじと恥ずかしそうにやっている辺り天然か。相変らず表情は余り変わっていないけれど、それでもも気持ちは伝わってくる。
ホントもう勘弁してください。このまま死ねる。もう悔いはない。と思う。
「これからお仕事?」
「はい。今日は一日エルさんに髪型の事についてとか教えてもらうんです」
「へぇーそっかぁ…………んん?」
え、髪型?エルさんに教えてもらうついでとか何とか言っていたのは覚えているけど、使用人見習いに最初に髪型の事なんて教えます?なんか私情と仕事が入り混じっているような気がしてならないんだけど!?
至極真面目そうにそういうスキアを見て、わなわなと手が震える。ヤダ、この子純粋過ぎっ!
「どうかしましたか?」
「い、いや…何でもない………」
ピシッと音を立てて固まった私を見て、スキアが少し首をかしげる。このことには何故か踏み込んではいけない気がするので、あえて深く突っ込まないようにしよう。本能が知らない方がいいこともあると叫んでいる。
エルさん、本当に何をするのだろう。
「それでは、私はこれで。午後からの剣術の指導は忘れずに行ってくださいね」
「うん。お仕事頑張ってね。マナハとナイザも、エルさんに綺麗にしてもらうんだよ」
「「——————————!!」」
ニコニコとしている二人の髪を優しく撫でると、更に笑顔が深まる。二人で同じような顔をしているのでそっくりの人形みたいだ。
その後、スキアと手を握りながら三人は部屋を出て行った。最初から最後まで可愛い尽くしだった…きっと天井裏にでもフリスアがいて悶絶しているだろうということは想像に難くない。
「ふぅ、私はユキがリメイク見たいって言っていたから準備しなくちゃいけないな」
どうせなのでとっておきの仕掛けでも作ろう。よくある○○しないと出られない部屋でも作ってみようかな…魔法が使えるこの世界なら、多少無茶なことをしても魔法だと言い張れば済まされる。いたずら心からのものなので怒られる心配もない。怪我もしないように配慮はするからね。
あ、勿論ちゃんとした部屋も作るよ?少しばかり細工とかはさせてもらうけど。普通の部屋なんて作っても楽しくない。
「えぇっと………必要なものは、剣と作動させるための糸と…三段構えにもしてみたいしなぁ…」
次々と妄想が膨らんでいく。《無限収納》からリメイクに使う材料の確認で部屋に広げ、どうするか構想を練っていく。空いている部屋だから私の部屋みたいに広くはないだろうし、一部屋一部屋に詰め込めるだけ詰め込まないと。
早くも完成形に思いを馳せながら、喜々として材料の整理に取り組むのであった。
「キリア、入ってもいい?」
材料の整理作業が一段落した頃合いに、コンコンと部屋の扉が叩かれる。ユキの声も一緒に聞こえてきたので、来てくれたのだろう。どうせ後で運ぶし片付けるのもめんどくさいので、そのままにして扉の向こうにいるユキに声をかける。
「いいよー!」
「入るよ…って、こんなに散らかしてどうしたの?」
「ち、散らかしてないよ。材料の整理してただけだから!」
「そうなの?俺には散らかっているようにしか…」
むぅ。確かに大量にあるからそう見えても仕方はないのかもしれないけど、言わなくたっていいのに…
部屋の中に入って来て一番にそう言ったユキにぷぅっと頬を膨らませる。私だって片付けはそれなりに得意な方なのだ。フリスアを拾うまでフェルアと一緒に毎日暮らしていた実力を舐めないでほしい。
頬を膨らましている私を見て、何か可笑しかったのか小さく笑みを零しこちらに近づいてくる。むすっとした態度を続けていると、急にユキの手が顔に近づいて膨らんでいた頬をつついてきた。
口からプッと空気の漏れる音がする。ビックリしてユキの方を見つめると、顔を背けて肩をプルプルと震わせていた。何故か無性に顔が熱くなる。
「ちょ~~~~~~~~っっ!?」
「ごめんごめん。その顔見てたら、ついつい…ふふっ」
堪えきれなくなったのか、言葉の途中でユキが笑い出してしまう。口元を押さえてはいるが、顔が緩み切っているのは見るまでもない事だろう。
何故か湧き上がる羞恥心と、心の中でちょっと楽しかったという気持ちが混ざり合って複雑な気持ちになる。
「そ、そんなに笑うことはないでしょ…!」
「あっはははっ、ふー…ふー、…久しぶりに、こんなに笑った気がする…!っははっ」
「もー、また笑って」
お腹を抱えて楽しそうに笑うユキを見て、何だか毒気を抜かれる。さっきまであった怒りたい気持ちはとうに失せ、ユキに釣られて私の顔まで緩む。
「そんなに笑っていたら、あっという間に時間なんて過ぎちゃうよ?置いていくからね?」
「まっ、待って、俺が悪かったから!」
わざとらしく腕を組み、プイッと不貞腐れたようにそっぽを向くと、焦ったようにユキが目の前で手をひらひらと振ってくる。流石に約束しておいて置いていくことはないけど、ユキには十分効いたらしい。
その様子をチラッと横目で見て、思わずプッと笑ってしまう。
「あっ!キリアこそ笑ってる!」
「ちょっと悪戯しようと思っただけなのに…ユキが真に受けてるから…ふふっ」
「え、ええぇ!?」
心底分からなかったとでもいうように、ユキが大げさに驚く。それを見ていたら余計にツボにはまってしまう。私も大概ユキの事言えないな…
ユキから顔を背けて何とか笑いを堪えようとしても、口から洩れてしまう。あぁ、駄目だ。
「はー、はー、…そろそろ始めないと時間もないし、行こうか?」
「……………うん!」
さっきの不服そうな表情もどこかに、明るい笑顔になって私を見てくる。ちょろい………。と思ったのは内緒にして、部屋に置いた材料を再び《無限収納》の中に入れて部屋を出る。
チュンチュンと小鳥のさえずる声の聞こえる廊下をユキと二人で談笑しながら目的の部屋に向かっていると、廊下の曲がり角に人影が写ったのが一瞬分かった。誰かいるのか…?ここはまだ王族の棟だから普通の人は入れないと思うし…いったい誰だろう。
足を止め廊下の先を見据えていると、ユキがそのことに気が付き一緒に足を止め、私の顔を不思議そうに覗いてくる。
「何か見つけたの?」
「あの廊下の奥。誰かいる」
「?人がいるの?こんな時間に」
今はまだここにいる王族たちは寝ていてもおかしくない時間帯だ。メイドさんや使用人の人たちは何かと準備をして忙しくしている時間帯の為、スキアのように何か用がない限りはここには来ないだろう。
それに、隠れるということは何かやましい事でもあるのだろうか。何か魔法でも試しに撃ってみる?もしかしたら驚いて出てくるかもしれないし…
「まぁ、こっち見ているだけならいいんじゃない?何かしてくるわけでもなさそうだし」
「…そうだね。早く行こうか」
魔法を打つために上げかけた手を下ろして、再び目的の部屋に向かって歩き出す。ユキの言う通り、普通の人だったらびっくりさせちゃうだけだし、あちらからは何か仕掛けてくる気配もない。放っておいても問題はないだろう。
今のところは部屋のリメイクだけに集中するとしようか。ユキもいることだし、張り切ってイイ物作ってあげなきゃ。
読んでくださりありがとうございます!
フリスア「………………………」
フェルア・キリル「「ただの屍のようだ」」
フリスア「誰が屍じゃコラ」
フェルア・キリル「「どうせスキア達が可愛すぎて悶絶してたんだろ」でしょ」
フェルア「…なんで分かった……!?」
裏はお察しの通り。
次話は、空き部屋のリメイク(改造)をします!一体どんな素敵な(トラップ・仕掛け)部屋が出来上がるのか…!




