悪夢 ーキリア目線ー
今回は、キリアちゃん目線に戻って夜のお話!「いい加減ちゃんと寝かせて〜っ!byキリア」
※虐待的、グロい表現があるので、苦手な方は避けて読んでくださいm(_ _)m
皆が寝静まった夜、自室のベッドで寝ているとコンコンと何かを叩く音で目が覚める。重たい体を何とか起こして真っ暗な部屋の中を見渡すと、そこは部屋の入り口の扉から聞こえてくるものだった。
隣で寝ているキリル達を起こさないようにそっとベッドを抜け出して扉の前まで行き、そっと扉を開けるとそこにいたのはアレクだった。
「……………………何の用ですかアレク兄さま。こんな真夜中に女の子の部屋に来るとは、夜這いか何かですか」
「ち、違う!!」
「しー。声が大きいです。みんなが寝ているので声を押さえてください」
じとーっとアレクを睨みつけて怪しむと、大きな声で否定しようとする。こんな夜中に人を集めるつもりなの…?近所迷惑になりそうなので声を押さえるように言ってから部屋の中に招く。まぁ、寝間着のままだけどいいよね。来ることなんて知らされてないから急に準備なんてできないし。
女子力ないなんて言ってはいけない。仕方がない事なのだ。
「みんな…?」
「私の兄たちです。ほら、そこのベッドで寝ているでしょ」
小さな寝息を立ててベッドで眠るフェルア達を指さすと、アレクが一瞬固まってからぶんぶんと頭を振る。頭でも痛いのだろうか。
気にせずに部屋の照明を一つ点けてソファーに座る。
「お前、こんな年になっても一緒に寝ているのか…」
「?うん。寝るときはいつも一緒に寝てるよ」
だって、もふもふに包まれながら寝るのは至福の一時だからね。私は人の姿のフェルア達と一緒に寝ているとは一言も言っていない。いや、今は人型になっているけどさ。
何ら不思議ではないことを言うと、アレクの表情がなんとも言えない顔になる。
「………意外だな」
「何が」
「お前、歳に似合わない言動してるからもっと独り立ちしているものだと」
「10歳に独り立ちなんて求めて何になるの。私だってまだ子供だよ?」
そんな風に思われていたのか。別に大人になるまでの間くらいは独り立ちなんてしなくてもいいと思うんだけどなぁ。それに、歳に似合わない言動って貴族の筆頭である王族が言えることじゃないよね。私からしたらアレクたちの方が大人びている気がする。
少し肌寒いので、空間から取り出したショールを肩にかけて温まる。アレクの分は…まぁいいか。
「で、今日は何しに来たの。こんな真夜中に妹起こしといてくだらない内容だったら即締め出す」
安眠を妨害したのだ。これ位は許されるだろう。あくびを噛み殺しながら話そうとするのも見逃してもらわないと困る。
アレクを反対側のソファーに座らせて話を聞こうとする。とにかく話を聞かなくては眠れない。一応フェルア達を起こさないようにベッドの周りに防音結界は張っておこう。キリルが起きていたら意味ないけど。
「実は…眠れないんだ」
「…………は?」
あ、ついつい出てしまった。いや、眠れないからって妹の部屋に押しかけてくるか?それに、そんな事こんな夜中じゃなくて昼間とかでもいいでしょ!
「………締め出すって言ったよね?」
「いや、ちゃんと最後まで聞けって!」
「………」
ソファーから立ち上がろうとすると、アレクに止められる。これ以上の続きがあるのか…?と思いながらも渋々座り直す。ホッとアレクが息をついていたのは見ないことにしよう。
足を組みながら近くに置いてあるクッションを手に取って抱きしめる。今できる精一杯のストレス発散法だ。
「で、聞くだけ聞いてあげるけど」
「お前な…まぁいい。それで、本題なんだが…俺は元々あまり眠れない体質なんだ。この血と相まってか、朝起きている分にはいいのだが夜になると、どうしても目が冴えてきてしまってな」
「それで、私ならどうにかできるんじゃないかと思ってここに来たと?」
「そう言う事だ」
至極真剣なまなざしでアレクがこちらを見つめてくる。一言だけ心の中で言ってもいいかな…
ばっっっかじゃないの。いや、吸血鬼は夜行性だからその血を受け継いでいるアレクが夜に目が覚めてしまうのは分かるよ。けどさ、こんな真夜中に寝ている私を起こしてまで重要な事なの!?別に朝でもいいよね!寝られないからって寝ていた私を起こしてもいいと思っているの!?私真夜中のお悩み相談なんてしていない!
それに、私にそんな期待されても困るんですけど!?私吸血鬼じゃないから対処法なんて知らないからね?普通にベッドの中に入って目を閉じれば寝られるよ!
決してそろそろ眠たくなってきてめんどくさくなってきたとは思っていない。断じて。
ん…吸血鬼?
「…普段はベッドで寝ているの?」
「あ、あぁ、勿論。というか、それ以外でどこで寝ろと…」
「もしかしたら、寝られるかもしれない」
「!?そ、それは本当か?!やってくれ!」
「……………………何も言わないでね」
『キリアは、眠たくて判断力が著しく低下している!』
目をこすりながらソファーを立ち、部屋の上空に手をかざす。魔法を使って木を生み出し大人くらいの大きさまで成長させてから、形を変える。アレクは不思議そうに見ているが、何ができるのかが分からないのだろう。
箱型に変えて出来上がったのは、白い棺。そう、よく吸血鬼が寝床にしているアレだ。吸血鬼はどちらかと言うとアンデット系の魔物に分類されるので、もしかしたらと思って作ってみた。
めんどくさくてこれでいいよねと思って作ったとは口が裂けても言えない。
「…あー、一応聞くがこれは一体なんだ?」
「棺」
「なんで作ったんだ?」
「これがアレク兄さまの寝床になるから」
「………………お前、俺に永眠しろと言いたいのか?」
何とも言えないような表情でアレクがこちらを見てくる。そんなことは一言も言っていないが、これを見たならそう思われても仕方がないだろう。
『キリアは、眠たすぎて考えることをやめた!』
あーでも、これを一から説明するのもめんどくさいし、早く寝たい………それならば強行突破をさせてもらおう。
拒否権は、ない。
「………」
「お、おい、何か言わないと分かr…って、こっちに寄ってくるな!」
「………」
無言でジリジリと距離を詰めていき、アレクの後ろに回ってから首を手刀で叩く。少し呻いてはいたがちゃんと力が抜けているようだ。
気絶して床にぶつかる前に抱き上げ、棺の前に立って投げ入れふたを閉めてからそっと鍵をする。
「……………………ちゃんと寝てよ」
『キリアは、迫りくる睡魔のせいで自分でも何をしているのか分からない!』
もう視界のほとんどが落ちてくる目蓋のせいでほとんど見えていないのだ。残った気力を振り絞って照明を消すと、部屋に再び暗闇が訪れる。
月明かりだけが照らす部屋で、何とかフェルア達が寝ているベッドの前までフラフラとしながらもたどり着くと、自然と目蓋が閉じる。
もうこれ以上睡魔には逆らえない。
「………寝よう」
倒れこむようにしてベッドに体重を預けると、そのまま泥のように意識は沈み込んでいった。
微睡むような意識の中、急にフワッと浮上するような感覚に襲われる。…もう朝なのか。と思い目を開けると何も見えない。
目の前が黒い闇に覆われ、何も見えないのだ。その場に立っているような感覚はあるので動こうとすると、何故か足裏がその場に固定されたかのように動かない。
魔法を使って何とかしてみようとするも、魔法も使えないようだ。一体ここはどこなのだろうか。
「——————————」
声を出してみようとするも、口が動くだけで音が出せない。手を叩いて音を出すと、反響が返ってこなかった。となると、ここは何かの空間で、周りに何もないという事かな?
確か私はアレクを寝かせた後眠っていたはずだけど、どうしてこんなところにいるのだろうか。もちろん自分でこんなところに来るはずがないし、周りにフェルア達もいたから連れ去られたということもないだろう。
(………このままじゃ動けないし、待つにしても来るかどうかわからない)
出口を探そうと辺りをキョロキョロ見回すも、それらしいものは見当たらない。光が一切ないため、自分がどうなっているのかも分からないのだ。
『——————いだ』
急に誰かの声が後ろからして振り返ると、そこには白く淡い光を放つ球体がいた。
そんな事よりも、さっきの声………もしかして、前世の幼馴染…?いやでも、こっちの世界にいるはずがないしなにより…
『——全部全部、お前のせいだ』
(!?…やっぱりそうだ)
低く責めるような声を出しているのは紛れもない幼馴染の声。それでも、冷めた口調の声に思わず肩がビクッと震える。指先が震えているのが分かり、立っているのも精一杯だった。
『—お前がいるだけで、俺は不幸になるんだっ』
(な、ん…で。私、なにも悪い事、して、ないよ)
心の声さえも震えているのが分かり、声を出そうとしてものどが酷く渇いたように感じて、言葉を出そうとすることを拒否する。
白い球体は淡い光をゆらゆらとさせながら形を変えていく。段々と強くなる光は、どこか暗い雰囲気を纏っていて、私には影のようにも見えた。
『—はぁ、君には幻滅したよ。最初から期待はしていなかったがここまで使えないモノだとは思ってもいなかった。君はもういらない人間なんだ』
『—アンタのせいで、アンタが全部奪っていったんだっ!ねぇっ、返してよ!!』
(やめて…)
心の悲鳴も虚しく、幼馴染の声を引き金に増えていく影は私を責め立てるように次々と暴言を投げかけてくる。
私は恐怖心でいっぱいになり手で耳を覆うも、その声はどうも私の頭に直接怒鳴りつけてくるようで全く意味を為さなかった。
『—××、人に不幸を撒き散らすのは楽しいかしら!こんなにもたくさんの人を不幸に貶めてっ!逃げちゃダメですよ?これは貴女の罪に対する罰なんだから!!』
『—あーあ、上手くいってたのになぁ。死んで責任とれよ』
『—ほら、皆の前で謝りなさい?あなた一人が謝れば終わることなの』
「—クスクス。ほら~、誰か助けてあげなよ~』
(やめてっ、やめてよっ!)
軽くパニックになり、呼吸が上手くできなくなる。頭の中では投げかけられた言葉がぐるぐると渦を巻いて記憶の奥底に刻まれていく。
しゃがみこんで、頭を隠して。それでも暴言は消えることはなかった。私の周りを台風のように回って、心を抉る。
『—お前はこの家の恥だ。なぜこの家に生まれてきたんだっ。兄たちと違って出来損ないのお前に生きている資格などない』
『—もうこれ以上私を惨めにさせないでっ!視界から消えて!アンタなんか産まなければよかったっ!!』
やめてやめてやめてやめてやめて。これ以上もう聞きたくない。
お父さんお母さん。先生に皆も。そんなひどいこと言わないでよ。
痛い。耳が、喉が、心が。焼けるような痛みが私のすべてを襲う。脳裏を焼き尽くすような痛みは、私の涙となってぽたぽたと零れ落ちる。
『—アンタなんか
—お前なんか
—君なんか』
(もう、やめて)
『『『—いない方がよかったんだ』』』
全ての影が口をそろえて言い放った言葉に、私の中の何かがピシッと音を立てて亀裂が入るような感覚がする。
あぁ嫌だ。この感覚はいつも、何かを失う時の感覚だ。幸せが崩れていく音は、もう聞きたくはない。
(あ、あぁあ…聞きたくない聞きたくないっ!もう、もう何も失いたくない!)
無我夢中でその場から離れようとするも金縛りにあったように足が動かない。その間にも影たちの数は段々と増えていき、私の周りを取り囲んでいく。逃げ出したい。一刻も早く、皆の元に。
何とかして足を動かそうと無理やり引っ張ると、激痛が走る。肉が引き裂かれ骨が溶けていくような、そんな感覚。
でも、今の私にそんなことは関係なかった。逃げたいという恐怖心だけが私の中を埋め尽くしており、他の事なんて今はどうでもよかった。
『—そうやっていつも逃げてばかりで』
『—あの時だってそう。私たちを見捨てた』
『—お前は自分の事しか考えていない卑怯な奴だよ』
影たちの言葉が私の心の奥底まで刺さる。さらに追い打ちを立てるような声に、思わず声を払うように振った手が空を切る。
影たちはケタケタと不気味に笑いながら、私に近づいてくると、影が発している光が徐々に合わさって一つの大きな人影に変貌した。
《壊してしまえ》
(………え)
急に頭の中に降ってきたその言葉に思わず反応してしまう。この声は、さっきの影たちとは違う酷く威厳を含んだ声だった。
声の主の顔は相変らず靄がかかったようにして見えない。聞いたこともない声。それなのに懐かしいと思ってしまうのは何故だろう。この声なら聞いてもいいんじゃないかと思ってしまうのも。
《憎いのだろう。恨めしいのだろう。それならば、本能の赴くままに壊せ。お前にはその力があるはずだ》
壊、す…力。
この力ではない。魔法も、知識も、全ては守るための力だ。壊すために、傷つけるために存在している力じゃない。
(…神力)
ふと頭の中に浮かんだ答えはそれだった。魔法が使えないなら、それ以上の力をぶつければいい。そう、影が囁いてくるように思えた。
もがこうとする手を止めて影の方を見ると、ニヤッと笑ったような気がする。
《そうだ。その力はお前がただ一言、壊せと命令すればすべてを壊してここから解放してくれる》
(ここから………出られる?)
《あぁそうだ。さぁ、命令してみろ。さすればその力はお前の望みに全力をもってして応えよう》
道を示してくれるような口振りに、突然頭の中に警鐘が鳴り響く。
…この人はきっと、信用してはいけない。そう、私の本能が言っている。この言葉を信じたら、もっと大切な何かを失うかもしれない。
『———リア!キリアっ!』
(…フェルア?何でフェルアの声が)
戸惑っていると、頭上からフェルアの私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。その声は必死そうでいつもの飄々とした雰囲気ではなく、焦っているようにも聞こえた。
『——いい加減目ェ覚ませ!』
(………目を、覚ます?私起きてるよ…?)
《ふむ、どうやら虫が入り込んできたようだな。ここは引き上げるとするか》
大きな影が考え込むようにして顎に手を当てると、一瞬にして姿を消してしまう。
光を失い、再び私の視界は暗闇に包まれる。
『——夢に飲まれてんじゃねぇよ!』
力強いその声に、私の意識が引き上げられるような感覚がする。あぁ、この声は信頼できる。
パチッと目を開くと、そこは私のベッドの上だった。やっぱり、私寝てたんだ。
部屋の中はとうに明るくなっており、日も昇っていた。ゆっくりと体を起こしてから状況を確認すると、目元が濡れているのが分かる。私、泣いていたの?
「……んん…っ、最悪…目痛い…」
チリチリと刺すような痛みに、目をこすらないように抑えて耐える。痛みが引いてきたかと思ったら急にお腹の辺りに強い衝撃が来る。
「っぐぅ…な、何?」
「……………………」
目を開けて何があるのかを確認するお、そこには人の姿のフェルアが飛びついて来ていた。
ぎゅうぅと言うような表現では済まない程、体が締め付けられている。痛いっすフェルアさん。あんたどれだけ力あると思ってんだ。骨折れる。
フェルアに声をかけようとした時に、ふと顔をあげると部屋が荒れていることに気が付く。所々に焼け焦げた跡や、何かがぶつかってできたへこみ。
これは………私が暴れた後?逃げ出そうともがいたときにこっちで部屋の中荒らしてたのか…リメイク早々私何やってたんだろう。
「…ごめんね、ありがとうフェルア」
「………」
フェルアは心配してこうしてくれているのだと分かり、抱き着いて顔をあげないままのフェルアの頭をそっとなでる。
見えていた尻尾もしょげていたが、頭をなでていると次第にパタパタと横に小さく振り始める。顔はまだ上げて貰えないけど、良かった。許してもらえるみたい。
「ね、何があったのか教えて」
「………知りたいのか」
「うん。このままは嫌。フェルアは知っているんでしょ?」
「知ってる………けど、今は言えねぇ」
フェルアが顔をあげないまま言えない。そう言ってくる。フェルアが、いや、が神獣達何かから私を守ろうとするときに使う言葉だ。『今は言えない』と。
知らない方がいい。そう言う事なのだろうが、知りたいと思ってしまう。
この瞬間だけ仲間外れみたいで寂しいと思ってしまうのだ。
「そっか。ねぇ、キリルたちは?」
「………ルアナ様の所に行った。夢関連なら、司ってるワイトの所が一番早いからな」
「ワイト…夢を司るルアナの眷属。か」
ルアナの司っているものは3つ。この世界を創造するための【創造】と言う力、この世界で最も大きい物の【月】、そして最後に【幻】だ。
最後の幻は二種類あり、直接見せる【幻覚】と深層意識の中で見せる【夢】の二つがある。その中の夢はルアナの眷属であるワイトが司っている。ちなみに幻覚はライナ。これが二人で一つと言う意味だ。
「アレク兄さまは?」
「あいつならまだ眠ってる。ほら、あそこ」
そう言えば昨日ここで寝かせた気がするような気がしないような。フェルアに居場所を尋ねると白い棺を指さす。
………あー。うん。何でこんなところに棺があるんだっけ。昨日私何してた?確かアレクが部屋に来て眠れないという相談をされたことは覚えているんだけど…それ以上は記憶にない。
『キリアは、眠かったせいで昨日の事をほとんど覚えていない!』
吸血鬼と言えば棺って言うのは分かるよ。でも、何でアレクが寝ているんでしょうかね。私全く身に覚えがないんだけど………
『もう一度言おう!キリアは、昨日の事をほとんど覚えていない!』
「………何で棺」
「キリアがその中にぶち込んだから」
「うっそ、私そんな事覚えてないんだけど」
「いや、俺見てたから。がっつり気絶させて棺の中に放り込んでたとこ」
えぇ………起きてたのか。というか、昨日の私何していたんだ…
棺の中からは確かに人の気配がする。他に人が来てた記憶はないから、フェルアが言ってたことは本当なのか。
「ねぇ、今何時?」
「10時」
「うわぁ、きっと護衛さん達探してるよ………」
「もうすぐ来るぞ。」
「え」
頭を抱えていると、本当に廊下からバタバタと走ってくるような音が聞こえる。わぁ、大人数☆これ10人以上いるんですけど?
廊下のバタバタ音が私の部屋の前で止まると、ドンドンと力強く扉が叩かれる。せめてノックくらいにしてほしいものだな。今度から扉に衝撃反射の付与つけておこう。このままだと確実にいつか扉が壊される。
「おいっ、開けろっ!!」
「あれ、開いてないの?」
「さっきフリスアがカギかけてった」
「あぁ………」
怒声が廊下から聞こえる。相当必死なのだろう。といっても、人の部屋の扉を叩きまくるのは些か失礼だと思うんだけど?もし着替え中とかだったらどうするんだ…
仕方なくベッドから降りて棺の元へ向かい、まだすやすやと寝息をたてながら中に入っているアレクをおんぶする。流石に寝起きにこんな事態を解決させようとするのは無理があるからね。
扉をよく見ると、鍵らしきものはついていないが魔力でコーティングされている。魔導書と同じような魔力反応型か。
扉に触れてスゥッと魔力を流すと、カチャっという音が聞こえて扉の鍵が開く。ふぅ、これでアレクを渡せば大人しく帰ってくれるだろう。朝から騒がしい。
扉を開けようとドアノブに手をかけると、何故か廊下から「うぉおおおおっっ!!」という掛け声が聞こえて来る。
「えっ」
ヤバい。と思った瞬間、扉から剣が突き出てきて私の体ごと勢いよく切り裂かれる。肩から腰のあたりにかけて、それはもうザックリと。
アレクを前に抱えてなくて本当に良かった。けど…
「!?…ゴホッゴホッ…っはぁ、はぁ…いったぁ……」
切り裂かれた所から勢いよく血が噴き出し、床にビシャァッと血がつく。喉の奥からも血が逆流して吐き出すと、口の中が血の味でいっぱいになる。
「おえっ…気持ち悪い…」
「アレク殿下っ!!ご無事ですか!?」
「いだっ!?…」
嗚咽を漏らしていると、切り裂かれた扉が勢いよく蹴破られ扉の破片が降り注いでくる。踏んだり蹴ったりすぎない?
木片が傷口に刺さり、痛みが激しくなって膝から崩れ落ちる。あ、早く木片取らないと再生しちゃう…
「!?……あ、あ、」
「っいたたたた…何個刺さってるんだよもう…」
「う、うわぁぁぁあああっつ!!!」
痛みに耐えながら傷口に刺さった木片を出来るだけ魔法で取り除く。徐々に痛みは薄れてきているので大丈夫だとは思うけど、もう少しズレたら顔まで行く所だった…危ない危ない。
私を扉ごと切って蹴破ったであろう騎士が、私の方を見ると悲鳴を上げてパニックになったのか、その手に持っている剣を振り下ろして来る。
「おい、人の妹に何してくれてんだ」
「ひぃぃっっ!??」
剣が私を切り裂こうとする直前、背後にいたフェルアが剣を素手で受け止めて握り潰す。あらぬ方向に曲がってしまって、もう使い物にならないだろうなぁ…
見ていなくても、フェルアの眼が騎士を完璧に捉えているのがわかる。これ怒ってるよね。
殺気が物凄い勢いで騎士の心臓に向かうと、騎士は泡を吹いて倒れてしまった。うん。気絶だけで済んだだけまだマシだね。
「ったく…キリアも油断してんじゃねーよ」
「寝起きにそんな無茶言わないで…」
「…ん…」
大体木片は取り除き終わったくらいで、アレクが目を覚ます。今までの騒ぎがあって起きられないほどぐっすり寝ていたのか…棺凄っ。
「……!?血の…匂、い?」
「あ、今手塞がってるのでアレク兄さま起きたなら自分で退いてください」
「あ、あぁ。…?」
何故か疑問形で答えながらアレクが退いてくれる。全ての木片を取り終えて、魔法で治癒しておく。そのままでも十分早いけど、アレクに見られないうちにやってしまった方がいいだろう。
トラウマとかになったらめんどくさいことになる。
「一体何が…というか、俺なんでここに…」
「お前ら2人揃って覚えてないのかよ……」
「ふぅ、治った治った。……扉も直さないといけないなぁ」
壊された扉をジト目で見ながら、ポツリと呟く。騎士はまだ気絶しているし、他に来たであろう人たちはとうに逃げ出していった。
上手く請求できるかなぁ…怪我は跡形もなく消えたけど、現場だけ残しておけばいいか?いやでも、そうしたら部屋が汚れて跡がつく。それだけは嫌だ。
「なぁ、何があったんだ」
「お迎えに来た騎士が扉ごと私を切った」
「…はぁっ!??もしかしてあいつっ!」
どうやら心当たりがあるらしい。アレクが気絶している騎士を見てピシッと固まった跡、ササッとこちらに向いて綺麗に土下座をする。
あ、この国に土下座なんて文化あったんだ…じゃなくて!
「え、ちょっ」
「…俺の護衛が無礼を働いた…申し訳ない」
読んでくださいありがとうございます!
キリア「もう…夜くらい休ませてぇ…」
アレク「す、すまんって…」
スキア「すみませんでした…」
キリア「え、スキアは謝らなくてもいいよ!」
アレク「なんでだよ!!」
キリア(天使だから)
睡眠不足になりそうです
次話は、また視点変わって神界のお話です!久々のルアナ登場!?一体何話ぶり…




