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転生して、【自然神】(一応人間)になってまったり暮らしてただけなのに‥  作者: 瑞浪弥樹
第一章〜神になって出会う人〜
23/113

謁見までに -キリア目線-

今回は、王都の検問官に引き止められたキリアちゃん達、ここをどう切り抜けるのか?意を決したキリアちゃんの行動とは!?

 〈誰あれ。キリア知ってる?〉

 〈知ってるわけないでしょ…なんで私が王都の人を知ってると思ったのさ〉


 検問で大人しく待っていると、若い検問官らしき人がやってくる。何か怒鳴っているのはめんどくさいことが起こる前触れなのだろうか…

 男の人が馬車の元までやってくると、じろりとこちらを見上げてくる。この人、見たところまだ若くて仕事に就いたばかりのように見える。


「なぜ貴族の馬車の御者席にお前のような子供が乗っているのだ」

「…だって私が御者ですから」

「ふん!嘘をつくならもっとマシな嘘をつくんだな!この家紋、レイアート辺境伯の馬車だな。お前が道中で馬車を奪ってきたのだろう!」

「だそうですよー、ザングさん?」


 勝手に妄想が爆発している検問官を躱しながら、ザングさんに話を振る。どちらかというと馬車を奪うなら今回はこの人の方が適任だったろうに。無視されたとは可哀想…というか、馬車使わなくてもいいなら使ってないわ!!

 ザングさんが苦笑しながら、御者席から降りて馬車の扉に向かう。アルスナさんを呼ぶのかな?


「第一、王都に来る時のレイアート辺境伯の御者は一人だけしかいないのだ!お前が来ていた時点でお前の野望は潰えているのだよ!はっはっはぁ!」

「うわぁ、アホっぽい」

「な!?お前、俺様に向かってア、アホだとぉ!?」

「あ、ごめんなさい。アホじゃなくてバカでしたね!」


 ついついイラっときてしまって本音がどんどん溢れてく…まぁ、調子に乗って中に誰が乗っているかも確認しないようなお調子者は、これ位煽っていた方がいいだろう。これ位イライラしていたら、その後のスカッと感がもっとスッキリっするのだ。


「こ…このガキが…!」

「そこまでよ検問官?」


 検問官が怒って私に手を上げようとした瞬間、馬車の中からアルスナさんが出てくる。その所作は清楚な神官そのもので、周りの空気が一瞬にして静まり返る。周りで順番を待っていた人の視線が一斉にアルスナさんに集まる。

 あれ、何だかアルスナさんの周りがキラキラしている?なんかこう…雰囲気じゃなくて、物理的に?


 〈ねぇ、なんかアルスナさんの周りが、無性にキラキラしてる気がするんだけど…〉

 〈気のせいじゃないよ。あれは光魔法使って、それっぽい雰囲気作っているだけ〉

 〈何してんだよあの人…〉


 自分で雰囲気作りに魔法を使うって…何やってるのアルスナさん…希少な光魔法を雰囲気づくりにって…大胆というか、無駄遣いというか…戻ってきたザングさんも、苦笑いを浮かべている。


「ア、アルスナ様っ!なぜここに…」

「あら、聞いていなかったのかしら。私は選定の為にレイアート辺境伯領に出向いていたのだけれど…」

「いえっ、お聞きしております!お体がご無事なようで何よりです!」

「ええ、ありがとう」


 アルスナさんが天使のような極上の笑みを浮かべて、検問官を見る。うわっ、今一瞬肌がぞわってした…背筋が凍るような寒気が、本当の顔を知っている人にだけ襲う。

 検問官は微笑みかけられたことに感激しているのか、今にも泣き出しそうな顔をしている。尊敬とかなら今すぐやめといた方がいいと思うけどなぁ…

 だって、清廉の【せ】の字もない人だよ?検問官さんと他の男の人がいちゃいちゃしてたら、よだれたらしながら見えないところから見守るような事をするかもしれない人だよ!?


「ザングさんがアルスナさんに、毎回言いかかっている意味が何となく分かった気がします…」

「…分かってくれるか?あいつとは家が近くていつも兄代わりとして、一緒にいたんだが…はは、いつからああなってしまったんだろうなぁ…」


 ザングさんが遠い昔を見るような目で見てくる。自分がいつも一緒にいたはずの妹のような存在が、知らぬ間に衆道を好むようになったなんて、信じられないだろう。しかも、下手をすれば自分も対象にされかねない立場にいるのだ。ザングさん、ご愁傷さまです。

 ふとアルスナさんが笑みを消すと、いつもの口調で検問官さんくらいにしか聞こえない声で、ボソリと呟く。


「貴方が言ってたあの子、私が選んだ子なの。私は、あの子こそが()()神子だと思っているわ。この意味、いくら頭の悪い人でも分かるわよね?」

「ヒィッ…」

「分かってくれたようで嬉しいわぁ!あなたの首が消し飛ぶ前に、止められて良かった」


 検問官の顔が瞬く間に青くなっていく。これのどこが清廉潔白なのだろうか。オブラートには包んでいるが、要は私に手を出したら、王家と宗教の反逆者とみなし物理的に首が飛んでいたかもしれない。そういう事だ。おぉ、怖い怖い。でもスッキリ。


「さ、急いでいるの。通してくれるわよね?」

「……は、は…い…」


 アルスナさんがほぼ強制的に了承させると、ザッと並んでいた人たちが横に避けて道ができる。

 これって簡単な洗脳じゃない?と思いながらアルスナさんが馬車の中に乗り込むのを確認してから、ノルファ達を走らせる。


「ザングさん、苦労しますね」

「全くだ…嬢ちゃん、このまままっすぐ行けば王城に続く門がある。そこの奴は話が聞けるから安心しろ」

「ありがとうございます。にしても、人がいないですね…何かあったんですか?」


 王都の中に入り、辺りを見回すと道に歩く人は全くいない。この辺りは食事処が多いので今の時間はまだ人が出入りしていてもいいと思うのだけれど…それに、これが王都の姿なのならまだ領の方が断然マシだ。家からは人の気配一つせず、その代わり不自然な視線がいくつもこちらを見据えている。


「何かあると言ったらこれからだな。これは選定だって言ったろ?」

「まさか、都民全員が敵になるとか言わないよね?そんなことになったら王都破壊して逃げるけど」

「誰もそんなことまでしねぇよ…!発想が物騒だなぁ嬢ちゃんは」

「いや、やるのは私じゃなくてきっとフェルア達かな…きっと暴れて家とか気にせずに壊しまわると思うから」


 これが実際にやりかねないので怖いのである。

 誰もいない舗道を馬車のガタガタという音だけが響かせる。本当に、どうして人っ子一人いないのだろう。宿屋、露店、ギルド。どれももぬけの殻と化している。


「……どこかに集まってるんですかねぇ」

「はは、内緒だな」

「内緒、ねぇ」


 〈ま、いいんじゃない?とりあえず王城に行ってみればわかるでしょ〉

 〈そうかなぁ〉


 目を細めながら王城の方をじっと見ていると、不意に殺気が一瞬だけ私に向かって刺さる。ホント何なの…!

 念のため攻撃が来てもいいように馬車の周りに結界だけ張っておく。馬車を傷つけられたらたまったものじゃない。


「10人?ですか。ザングさん、これは一体どういうことでしょうか」

「さーな、他の候補者の刺客かなんかじゃねぇの?」

「軽いなぁ…私手紙届けに来たはずなんだけど。刺客にわざわざ命狙われるために王都に来たんじゃないんだけど」

「ンなこと言っても仕方ねぇだろ?…ま、ここは俺らが何とかしてやるから先に行ってろよ」


 何故ラスボス前みたいな雰囲気出す…今から行くの王城だよ?何なら旅の始まりの方だからね?魔王城とかじゃないから!

 そして、綺麗に今から逝ってくる!みたいな死亡フラグ立てるのもやめてくださいよ…


「クォーツ、仕事だ」

「分かっていますよ。団長」


 ザングさんが馬車の方に声をかけるとクォーツさん他二人が飛び降りてくる。降りるなら一言言ってくれれば止めたのに…

 ザングさんが手を振って笑っているのを尻目に、再び王城の方に視線を戻す。はー、こうなったらもう潔く門の人に手紙手渡すだけにしようかなぁ。


「キリア、手紙の解読終わったよ」

「おわっ!何だフリスアか…驚かさないで…」

「ごめんごめん」


 ボーっとしていると、急にフリスアの手が頭上から伸びてきて私の頭をポンポンと撫でる。急にやるのは心臓に悪いからやめてほしいんだけど…!

 って、手紙の解読?!え、もしかしてフリスア手紙勝手に読んだの!?上を見上げると、フリスアが貰った封の開いた手紙をひらひらとさせる。マジでやりやがったこいつ…!


「で、内容なんだけど暗号化されててね、解くのにちょっと時間かかっちゃった」

「あ、解けたんだね」

「内容はこう。【この手紙を渡したものこそが真の神子である。いずれこの国を守り支える人物になるであろう】だって。凄いねキリア」


 私にはこの国を守る義務もなければ支える義務もないんだけどなぁ。要するに、知らない人たちにために身を粉にして働けと。まだまだ私10歳なんですけど?

 とぉっても気持ちいくらい他人任せな発想だなぁと思いながら、ノルファ達を走らせていると、王城の門の前に辿り着く。


「そこの者!止まれ!」

「あ、はい」


 王城の前に来た時点で、門の近くにいた人に止められる。この人は大丈夫って言ってたから、特に警戒はしない。

 門番さんが、こちらに来て馬車の家紋を確認してから声をかけてくる。


「レイアート家の物ですね?」

「はい。正しくは借り物ですけど」

「中に乗っているのは?」

「アルスナさんです。アルスナ・ティーセレン」


 門番さんがコクンと頷くと、突然王城の門が開かれる。合ってたのかな。


「どうぞ。馬車は入り口前にある左の通路を行けば厩がありますので、そこに待機させておいてください」

「分かりました。ありがとうございます」


 丁寧に対応してくれた門番さんに一礼してから、馬車を進ませる。

 王城は、高い立地に高くそびえ立つ白く美しい外壁の城だった。凄いなぁと思いながら、先に馬車を止めるために厩の方に向かう。


「えーと、確か左だったよね」


 左に曲がり進んで行くと段々と華やかさがなくなってくる。従業員入り口なのかな。

 厩に着くと、そこでは数々の美しい馬たちが皆こちらを向いて待っていた。え、何があるの…


「「「『よく来てくださいましたノルファ様!リーフォ様!』」」」

「『何か、ノルファとリーフォ凄い扱いだね…』」

「『いつの間にかこうなっていたのです…』」


 あはは…と苦笑をしながら空いているところに馬車を止め、ノルファとリーフォを厩の方に連れて行く。その間も他の馬たちは、ノルファたちをずっと視線で追っていた。

 ノルファとリーフォがこんな所で地位を確約してたなんて知らなかった…


「『ちょっとだけ離れるけど、待っていてね』」

「『分かりました』」


 一通り二頭の体を撫で、厩の中に入れてから馬車に戻り中にいるアルスナさんに声をかける。


「アルスナさーん。着きましたよ」

「そーお?分かったわ!」


 馬車の中でそれはもうゆったりと寛いでいたアルスナさんを引き出し、入り口に向かう。さっきとの違いが凄すぎてちょっとだけアルスナさん苦手になっちゃったんだよなぁ……


「ふぅ!やっぱりここの空気は汚いわね!」

「あ、汚かったんですか?」

「そうよぉ~。いろんな奴らの思念と疑心がぐるぐる渦巻いてて気持ち悪いわっ!」


 大声でそういうアルスナさんの表情からは清々しさしか見られない。この声が他の人に聞こえていないといいんだけど…何もここにいる人全員がそうなっている訳じゃないだろうに…

 城の入り口に来ると、待機していたメイドさんが扉を開けてくれる。


「「お帰りなさいませ、アルスナ様。ようこそいらっしゃいました、キリア様」」

「ただいまー!皆は謁見の間にいるのかしら?」

「はい。皆、あなた様の事をお待ちしております」

「分かったわ。それじゃあ、行きましょうか!」

「え、あはい」


 メイドさんがお帰りなさいって言ってたから、アルスナさんはここに住んでたのかな?見たところ慣れてそうだったし、王城の中にいるときはアルスナさんと一緒にいれば迷う心配はないかな。

 アルスナさんに手を引っ張られながら、王城に中に足を踏み入れる。そこには、メイドさんや使用人らしき人がずらりと列を作ってアルスナさんに礼をしていた。まっすぐ空いた道の先には、初老の執事さんと気のよさそうなメイド長らしき人が立っていた。


「「アルスナ様、お帰りなさいませ」」

「あら、エリーにセバス。出迎えありがとう」

「いえ、これが執事たるものの仕事ですから」


 セバスと呼ばれた執事がダンディーな声をしながら一礼をする。その所作は流石王城に勤める執事。完璧に30度の敬礼をこなしていた。


「一応教えておくわね。ここで働いている執事長のセバスと、メイド長のエリーよ。二人とも優しいから、何か困ったことがあったら二人に相談しなさい」

「キリア・アルフレアです。よろしくお願いします」

「あら、挨拶の仕方が上手ね!私はエリーと申します。何かあればいつでも聞きますので、気軽に声をかけてくださいな」


 ぺこりとお辞儀をすると、エリーさんが褒めてくれる。しゃがんで目線を合わせてくれる辺り、優しい人なのは間違いないだろう。それに続いて、セバスさんが挨拶をしてくれる。


「私はセバスチャンと申します。なにかあれば、いつでもお菓子を用意して待っていますのでいらしてくださいね」

「ありがとうございます!」


 お菓子!王都のお菓子一回食べてみたかったんだ!どんな味なんだろ…

 妄想を膨らませていると、アルスナさんが手をたたいて場を仕切り直す。


「エリー、()()()はいるかしら。キリアちゃんの事を頼みたいのだけど」

「ええ、おりますよ。先に案内しておきますね」

「よろしくね。キリアちゃん、私は先に謁見の間で待っているから後でちゃんと来てちょうだいよ?」

「?…はい」


 謁見の間っていう事は確実に王族と会うってことだよね…それに、あの物言いだと他に人がいるってことか…

 めんどくさいなぁ…手紙渡すだけで何故謁見しなきゃいけないのだ。普通なら、他の人に渡すとかでよかったはずなんだけどな…


「さ、キリア様。お支度をしましょうね!」

「はーい」


 エリーさんがガッツポーズをとりながら、ニッコリと微笑みかけてくる。あ、これは絶対逃げられないやつだ……言う通りにしておいた方が賢明だろう。軽い返事をしながらエリーさんの後をついていく。階段を上って二階の通路を通っていく。


「キリア様はどこに住んでいらしたのですか?」

「私ですか?兄と一緒に森にある家で暮らしてました」

「あら、じゃあ自然がいっぱいの場所で育ったんですね!いい事ですわ!」


 うん。エリーさんはきっと生い立ちとか気にしない人だろう。普通なら森の中で暮らしてたなんて言われたら汚い人みたいな印象になるかと思ったのに。

 歩いている途中から見える窓の外には美しい庭園があり、領邸同様美しい花たちが咲き誇っていた。


「ここって具体的に何があるんですか?城の中ってあんまりイメージが湧かなくて」

「ここはですね、今私たちがいる本南棟と、西に使用人の棟、東に来客用の棟となっています。中庭を挟んで北棟は王族方。北西棟は政治をするための知恵の棟、北東棟は騎士や魔法使いたちが集まる力の棟となっております。それ以外に、別棟には舞踏会場や訓練場もあります」

「色々集めた感じですね……」

「ええ、最初はなかなか慣れずに迷子になってしまうものも多いのですよ。私はよく知恵の棟と武力の棟を間違えてしまっていました」


 確かに、王城の中はどこも同じような風景が続いていて、気を抜いたらいつの間にか変なところに行きそうだ。外の風景を見て歩けば迷いはしなさそうだけど、ここは早いうちに転移魔法を使えるようになっておいた方がいいか。


「着きました。ここがキリア様の部屋です」


 廊下の一番奥。一番偉い人が使うであろう部屋に通される。え、私すぐに帰るつもりなのに何故かどんどんと外堀を埋められて行ってる気がするんだけど。

 とりあえず部屋の中に入ると、そこはとても広く豪華な家具がたくさん置いてあった。シルクのカーテンに、最高級のソファー。照明はシャンデリアまで使われていた。


「豪華ですね……」

「それは勿論。さ、少し待っていてください。メイドを呼んで参ります」

「あ…行っちゃった」


 エリーさんが扉をパタンと閉じて行ってしまう。……暇になってしまった。フェルア達呼ぶか。

 空中に向かって声をかけると、それぞれが人の姿で出てくる。


「もう出てきてもいいよ」

「っと、あー、なんだこれめっちゃ眩しいんだけど」

「ふわぁ~ぁ、んんぅ……おはよう」

「大変なことになってるねキリア……」


 全員マイペースだね……キリルに至っては絶対寝てたでしょ。フリスアしか心配してくれなくて私悲しい。

 ソファーに腰掛けながら側にあったクッションを抱きしめる。とてもふわふわしているところは流石というべきか。


「キリアどうするの?このままだと、神子っていう事に必ずされると思うけど」

「そうなんだよなぁ…でも神子なんてめんどくさそうなことは御免だし、なったら学園なんていけないし。どうしようかなぁって」

「はは。とりあえず、手紙はもとに戻しておいたからこれ渡してね」


 フリスアから何もなかったかのように戻っている手紙を受け取る。どうせなら燃やしたいけど、そんなことしたら依頼が達成できなくなるから無理なんだよなぁ……

 いや、転移魔法で逃げることもできるけどそうしたら、町に出づらくなるし何よりまた神子探しとかいうめんどくさいことも起こりかねない。これ以上ギルマスに迷惑かけることもできないし…


「はぁ…これだから貴族は嫌なんだよ……」

「いざとなったら僕らの関係言ってもいいからね?」

「うーん……ありがたいんだけど、今回は利用価値をできるだけ知らせたくないんだよなぁ……」


 そんな事無理だろうけど。王城に来た時点でもう利用価値を見出されているってことだから、こうなったらとことん利用してやるしかないか…

 とりあえず、学園の入学の援助とこれから何かあったときの後ろ盾確保。貴族内の情報収集くらいはやっておこう。


「フリスア。この城の中の把握ってどれくらいで行ける?」

「大体30分もあれば。人間関係とか、何をしているかまでの把握だったら1時間くらいあれば終わるよ」

「分かった。1時間で全部把握してきて。隠し部屋、トラップ、脆いところ、抜け道は重点的に」

「オーケー」


 それだけ言ってフリスアが消える。キリルが横に座ってもたれかかりながら質問をしてくる。

 いや、重いんだけど。


「急にどうしたの?」

「いや、逃げられないならこっちを快適にしようと思ってね。第二の家みたいな?」

「じゃあ、別荘だ」


 笑いながらキリルの頭を撫でていると、フェルアが寄ってくる。ソファーの背に手をかけ、私の頭に顔を乗せてくる。いやだから、なんで私の上に来るの…重いって…


「なんかあったら俺らに言えよ?」

「うん。じゃあ、フェルアとキリルにはちょっと大将様を折ってもらおうかな。出来るでしょ?」

「勿論。最近はなかなか骨のあるやつがいなかったから、丁度いい。それに、ユキの為になるかもしれないしね」

()はどうするんだ?俺らが行ったら無理だぞ?」


 上の人を押さえておくというのは重要な事である。これからいろいろ動いていくためにも、騎士団長と魔法師団長は押さえておきたい。

 裏の方は…フリスアに頼もうかな…確か、人心掌握とかもできたはずだし。


「フリスアに頼むよ。で、私は直接王族と貴族に接触する。動けるだけ動いて、できるだけ権利をもぎ取る」

「おーおー、俺らの妹は怖いなぁ。ま、それでこそキリアだ」

「終わったら、皆でまったり過ごそうね」


 私なんかよりフリスアの方がえげつないことしそうだけどね。一週間くらいで国を乗っ取りそう。

 もしそうなったときはどうなるかなぁと思いながら、部屋の窓から覗く城下を見る。相変らず人気がなく、どことなく寂しい。


「あ、誰か来るから僕たちは戻ってるねー!」

「うん。これ以上寝ちゃダメだよ?よる寝られなくなるから」

「分かってるって。じゃ、またあとで」


 そういってキリルたちも姿を消した。誰か来るってことはさっきエリーさんが呼びに行ってたメイドさんかな…一体誰が来るんだろう…

 少しワクワクしながら部屋の扉を見つめていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえる。


「キリア様、メイドを連れてきました」

「どうぞ」


 ガチャっと扉が音を立てて開くと、そこにいたのは後ろでまとめた深い翠色の髪と翡翠色の目をした女性だった。そのきれいな顔立ちに思わず見入ってしまう。これは、ルアナやミアとは違ったタイプの美人さんだ。

 こちらに歩いてくると、一礼をしてからニッコリと微笑む。


「キリア様の()()メイドとなりました。エルと申します。以後お見知り置きを」

「キリア・アルフレアです。よろしくお願いします」


 専属っていうことは、もうこの城に留めておきたいってことは間違いないか。先に手を回しておいて正解だった。

 エルさんがどこからかメイク道具を手に取ると、有無を言わせぬ声で、ゆっくりという。


「早速ですが、キリア様。お支度しますよ!」

「………はい」


 全身に鳥肌が立つ。エルさんの私を見る目は、とってもキラキラしていた。この様子じゃ、気の済むまでやられるだろう…

 ……何か、コスプレ衣装持ってきたときのルアナみたいだなぁ………

読んでくださり、ありがとうございます!


キリア「どうせなら、改築でもしようかな……」

エル「……!?」


王城別荘化計画


次話は、遂に王様との謁見!キリアちゃんはどんな行動を起こすのか!?

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