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転生して、【自然神】(一応人間)になってまったり暮らしてただけなのに‥  作者: 瑞浪弥樹
第一章〜神になって出会う人〜
22/113

白蛇の首飾り ーキリア目線ー

今回は、お昼休憩を終えたキリアちゃんに、ある変化が起こります!


シリアスとか、諸々あります。

「オッサン、何驚いてんだ?」

「い、今神獣様って言ったのか?!」

「そーよー?キリアちゃんのお兄様は、全員神獣様なのよ?」


 …ザングさんが神獣と聞いて驚くのも無理はない、けどなんでアルスナさんがそれを誇らしげに語っているんですかねぇ…貴方の兄ではないでしょーに。

 ザングさんの隣にいるクォーツさんを見ると、もう黙々と食事を進めておられる…適応早いな……尤も、他二人は唖然としているけど。


「じょ、嬢ちゃん…アンタ何者だよ…」

「?普通の人間ですけど何か?」


 正しくは、体が王女様で、魂は私、存在が自然神なんだけどね。絶対に信じられなさそうだし、めんどくさいだけなので伏せておこう。今普通にめんどくさいことが起きているのは知りません。


「いや、普通の人間が神獣様たちを兄にするなんて、考えられねぇだろ!?それに、こんなにちっせえのに、大人相手にして勝てるなんて…」


 ん?今ちっさいって言ったか?私の事ちっさいって?チビだって?(そんなこと言ってない)

 私が普段から気にしてることを!堂々と言ったよこの人!いくら荒くれ者が集まるような傭兵団の団長でも、言っていいことと悪いことがあると思うんだけど!!デリカシーなさすぎなんじゃない!?


「ちょっとザング!女の子に向かってそんなこと言うなんて信じらんないわ!そーいう事を気にしちゃうお年頃だって分かってるんでしょうね!」


 アルスナさんが、私をかばうようにギュッと抱きしめると、「ちょっと男子~」とでも言いそうなノリでザングさんを責め立てる。…あれ、今初めてアルスナさんに守られた気がする…?


「ザングさん?何のつもりかは知りませんが、身長の低い事を気にしてる人はたくさんいるんですよ…?」

「お、おう、それはすまんかったな…」


 あれ、珍しくフリスアが身長の話題で怒らない…いっつもこの話題が出るだけで物凄く嫌そうな顔をするのに。いったいフリスアにどんな心境の変化が…あれ、ちょっと待って、フリスアがいつもつけてる私があげた翼をイメージした髪飾り…虹色のはずだったのに、なんかどす黒い色になってない……?

 もしかして、初対面の人だから営業スマイルでごまかしているだけで、ホントはめっちゃ怒ってる?わかりずらいなおいっ!


「話の路線がずれているので戻しますが…キリアさん、あなた本当に人間ですか?」

「クォーツ、お前も十分ひでぇぞ…?」


 人間ですかと言われても、人間としか答えられないんだよなぁ…正真正銘、この体はこの国の王女様の物なんだし、この瞳の色は王族にしか受け継がれない色だって聞いたことがある。王女様がいくらハイスペックだったとしても、お前人間?って聞くのはおかしい。


「じゃあ、もしも人間じゃなかったとして、クォーツさんやザングさんは何と答えれば納得するんですか?私はあいにく人間という答えしかもっていないので、それ以外は分からないんです」

「それは…」


 皮肉交じりにそう言うと、クォーツさんが言葉を失ってしまう。クォーツさんやザングさんがここまで言うのは、この国の文化が関係しているのだろう。

 この国は昔、種族間での差別が激しく、人間以外は皆奴隷として扱われていたのだ。力の強い獣人は力仕事を、魔力の多いエルフたちは魔力実験の媒体として、鍛冶の得意なドワーフたちは死ぬまで武器を作り続けさせられる。そんな犠牲の上でこの国はなりってきたのだ。

 今は、この体である王女様のお父さんである現王が、差別を少しづつなくしているようだけれど、ザングさん達のような大人にはまだそういう習慣が残っていることが多いのだ。


「ホントバカだよね。神獣を崇め奉っていておきながら、同じ姿をとることのできる獣人たちは差別するなんて。中身は変わらない魂だろ?」

「そーそ。エルフの時も酷かったよなぁ。俺らより力のない奴はいじめてもいいのかって思ったぜ」

「まぁまぁ、ザングさん達にそんなこと言っても、何か変わるわけじゃないんだからそんなこと言わないの」


 キリルたちが皮肉交じりにそう言うと、ザングさん達は何も言い返せない様子だった。いくらこの世が弱肉強食だって言っても、私たちが干渉することは出来ないし、それを変えようと思う人も極わずかなのだろう。


「あーもう、折角楽しいご飯だったのに、何だかシリアスな雰囲気になっちゃってるわよぉ!皆が食べないなら私が全部貰ってっちゃうわよ?」


 そんな雰囲気をぶち壊したアルスナさんが勢いよく席を立ち、すっかり空になってしまった皿を持って余っている料理のところへ行く。あれ、何だか一瞬アルスナさんがかっこよく見えた…幻影かな…


「あ!お前抜け駆けは許さんぞ!俺だってさっきからちゃんとおかわり待ってたんだからな!」

「あ、僕も欲しい!」


 全部食べられるということに反応したのか、フェルアが焦って席を立つ。あれ、さっきからって、そんなに待ってたの?気が付かなかった…

 キリルもそれに便乗してアルスナさんにお皿を差し出す。ちゃっかりしてるんだから…


「これがいつもなので、人間でも人間じゃなくてもこうやってワイワイできる。ただそれだけでいいじゃないですか」

「そう…だな…っし、俺ももう一杯くれ!」

「わっ、ザングあんたよそいすぎよっ!」


 うーん……これはこれで果たしていいのかとは思うけどね…

 フリスアがまとめてくれたことは、私たち全員の総意でもある。楽しければそれでいいのだ。


「っと、私はごちそうさま。ちょっとノルファとリーフォの様子見てくるね」

「うん。いってらっしゃい」


 フリスアに声をかけて食器を片付けてから、茂みの方にいるノルファたちの方へ行く。

 さっき色々戦ってたから、怯えてないといいんだけど…


「『ノルファ、リーフォ、いる?』」

「『はい、何かありましたでしょうか』」


 木の陰からリーフォが現れる。よかった、怯えてはいないみたい。

 リーフォの体を撫でていると、どこからか一匹の白蛇がスルスルと体に上ってくる。?この白蛇何処から来たんだろう。平原にアルビノの蛇がいるなんて珍しい。


「『君、どこから来たの?』」

「『キリア様にお届けものです』」


 そう言って私の首に巻き付くと、急に白蛇の体が光りだす。視界が光に覆われ、思わず目をつむる。

 お届け物…?私この白蛇知らないし、受け取るようなものはなかったはずなんだけど…いったい誰から?

 光が収まる気配を感じ、目をゆっくりと開くともう白蛇の姿はどこにもなかった。急に何だったんだろう。何が起こったかは分からないけど、とりあえず体に変化が起きていないかだけ確かめる。

 うん、特に体に変化は起きてないし、光を浴びただけ?でも、お届け物って…

 突然のことに頭を悩ませていると、遠くからノルファが駆けてくる。散歩にでも行ってたのかな?


「『あれ、キリア様その首飾りどうしたんですか?綺麗ですね』」

「え、首飾り?」


 ノルファの視線が首元に向いていることに気づき、試しに首に手を当ててみると、何かつるつるとした金属のなものに触れる。?なにこれ、まさかさっきの白蛇の言ってたお届け物ってこれの事!?

 何とかして外そうとするも、ホックなどが見当たらない。一周につなぎ目が全くないのだ。


「なにこれ!ちょ、全然外れない!」

「『だ、大丈夫ですか?』」

「『ちょっとフリスア達のとこ行ってくる!』」


 そう言ってノルファたちのもとから駆け出し、馬車の方へ向かう。色々知ってるフリスアなら、これの事と外し方とか知ってるかもしれない!鏡とかないから自分の姿が分からなくてどうなってるのかも見えないんだよ!


「あ、キリアさんおかえりな…って、どうしたんですか?」

「クォーツさん!今フリスアどこにいるか分かる!?」


 馬車の裏側で座って休憩していたクォーツさんに詰め寄る。突然のことにパニックになり、足元の注意がそれて石に足を引っかけてしまう。ぐらりと体が傾き、前のめりになるようにして転びそうになる。


「っとぉ、危ないですよ」


 ギリギリの所でクォーツさんに体を支えられ、地面に衝突するのは回避できた。あぁ、ビックリしたぁ…

 クォーツさんの顔を見てお礼を言う。


「ありがとうございます…」

「気を付けてくださ…キリアさん、その」

「あ、こんなことしてる場合じゃなかった!クォーツさん、フリスア何処にいるか知りませんか!?」


 何故か私の瞳を見た瞬間、固まるクォーツさんの腕から抜けフリスアの居場所を聞く。早くこの首飾り取ってほしいんだけど…!いつも首飾りなんてしないので、違和感が凄いのだ。しかも、ご丁寧に隙間から破壊されないように首にピッタリのサイズで隙間がないようにしてある。何の嫌がらせなのだろうか。


「あ、食器の片づけをされていたと思います…」

「ありがとうございます!」


 手短にお礼だけ言って、フリスアの場所まで向かう。多分、さっきまでご飯を食べていたところにいるだろう。その場所にたどり着くと、丁度フリスアが調理器具をかたずけている最中だった。


「フリスア!!」

「あ、キリアおかえ…グゥッ…痛いよ…」


 私の声に反応して振り向こうとしたフリスアの背中に勢いよく抱き着く。何か変な声出ていたけど、そんな事気にする余裕は今の私にはない。


「どうしたのキリア…って、何そのチョーカー。拾ってきたの?」

「フリスアぁ…!何か急に白蛇が来て光ってこの首飾り付いてて外れないの!」


 いっぱいいっぱいになり、視界が潤んでくる。グラグラと揺れる視界の中で、フリスアが心配そうに顔をのぞき込んでくるのが分かる。そして、何かに気づいたようにハッとすると、チョーカーに触れる。


「…!まさかこのチョーカーっ!《神水》!」

「うぅ…?」


 溢れてくる涙を手で拭いていると、急にフリスアがチョーカーに《神力》で作った水をかける。すると、バチィッという音と共に電気が発生し、水をはじいてしまう。ホント何なのこのチョーカー!訳わかんない!


「やっぱりはじかれた…それにこの瞳の色…間違いない…」

「何なのこれ…?」

「消された筈の王女の存在を示してる…!っ、これは《忘瑛(ぼうえい)の白蛇(はくだ)》だよ…!!」


 忘、瑛?何それ……それに、瞳の色?瞳の色まで変わっているの?

 一体何が起きているのか分からない。何も自分では見られないのだ。


「キリル!いるでしょ!」

「なーに?…って、何で白蛇がこんなところにいるのさ」

「キリル、何か知ってるの?」


 転移で現れたキリルが、眠そうにあくびをしながらチョーカーを一瞥する。キリルもフリスアも、この蛇のこと知ってた…どうして?


「それはね、世界から消された存在を他に示すことのできる物だよ。これがついてる間は、キリアが王族の娘だって分かっちゃうって事」

「……!?」


 え、ヤバいじゃん。私これから王都に行くんだけど…絶対これ付けて行ったらバレるよね?王城に強制連行される未来しか見えないんだけど…!?……あれ、これってもしかしてそれまでは認識されてなかったっていう事?ずっと知ってて皆黙ってくれてたんだと思った。

 急に見えてきた現実に、涙が全て引っ込んでしまう。

 もしバレたら、王城にまず閉じ込められるのは間違いないし、その後にどんな扱いをされるか分からない。政治に利用されることは明確だし、人生をまったりすると言う私の目標も潰えてしまう!!そんなの嫌だ!!


「ど、どうすればいいの!?」

「落ち着いて。取り敢えず、隠蔽魔法かけておくから安心して。あと、その白蛇は魔力を流したりしない限り普通の人には見えないから」

「って言っても、外せないんだけどね…その辺は我慢して」

「うぅ…分かった」

「それじゃ、ちょっと動かないでね」


 見えないならいいけど、普通の人って…普通じゃない人には見えるってことじゃん。そして外せないと来た。どうするの…私チョーカーしたままお風呂入ったり寝るの嫌だよ…というか、ここまで来たら首輪だよね…


「ねぇ…君ちょっとの間くらい離れてくれないの?流石に寝てるときとかくらい離れてほしいんだけど…」

「『それくらいならいいですよ』」

「いいの?!」


 え、喋った!?ダメもとで言ってみただけなのに答えてくれたよ!てか、この声さっきの白蛇…お届け物って自分の事言う言葉じゃないからね?首に巻き付いたのはチョーカーになるためだったんだね……

 でも、離れていてくれるならよかった。王様に会うときは離れていてくれれば…


「『あ、でもご家族の前では絶対に離れないようにと仰せつかっておりますので。そのあたりはご了承くださいね』」


 あ、終わった。それって、選定の時に会ったらアウトじゃん!絶対にバレるよねぇ!

 白蛇のチョーカーに心の中で八つ当たりをしていると、ザング達が騒ぎを聞きつけてやってくる。


「嬢ちゃんたち何やってんだ」

「?ザングさん?」

「あちょっと待ってキリア!まだ魔法かけ終わって……」


 キリルの静止が聞こえる前に、ザングさんの方を向いてしまう。あ、そういえばまだ王族の目…

 ばっちり、ザングさん達と目が合ってしまう。これは完璧にバレたな…サヨナラ私のゆっくりできる時間。


「な、何で嬢ちゃんが王族の目を……?」

「あー、えーと…」

「キリア……まったく…」


 ザングさんの信じられないような物を見る目と、キリルの呆れたような視線が痛い……ほんとごめんて。

 キリルがサッと手で目を覆い隠して魔法をかけ直してくれる。視界が開けると急に目の前にザングさんのアップの顔があり、つい肩をビクッと震わしてしまう。

 ザングさんといい、アルスナさんといい、ホラゲー的な登場しかできないの!?


「団長」

「あ、あぁ、すまねぇ。その瞳の色、間違いねぇ。嬢ちゃん、王族の人間だったのか?」

「あはは……話すとちょっと長いんですけどね…」


 ザングさんが驚いたように私の瞳をまじまじと見つめてくる。

 すると、馬車の方から馬の嘶きが聞こえてくる。この声は、ノルファとリーフォ?どうしてこっちに…


「おーいフリスア、こいつら連れてきたけど…何やってんだ?」

「あフェルア。何か急に白蛇寄越してきたんだよ」

「あの爺が?」


 爺って誰の事…そんなこと言ってるフェルアが、この中じゃ一番年上なくせに。そんなフェルアが爺って呼ぶ人…何人もいるせいで思いつかない…!


「ふーん、とりあえず移動しようぜ。こいつらさっきから動き足りなそうにしてたんだよ」

「あ、うん。分かった。ザングさん達はどうする?」

「俺らか?…仕事はもう終わったし、やることねぇから一緒に行かせてくれねぇか?」


 んー…男4人増えるとなると結構魔力の残りが厳しいかも…重力魔法使わないと移動が遅くなるし、日も跨いで行くことになっちゃう…キリルが手伝ってくれたらギリギリいけるかなぁ。


「キリル、手伝ってくれる?」

「……………後で一緒に寝てよ?」

「分かったから。じゃ、早いところ出発しちゃいましょうか。…アルスナさんいます?」


 そういえば、さっきからアルスナさんの姿を見ていない。どこかに行っているのだろうか。


「ここにいるわよぉ!もう、さっきからずぅっと見てたのに、気づいてくれないなんてひどいわっ!」

「うわ、馬車の中にいたんですか…」


 馬車の窓をバンバンと叩きながら、アルスナさんが自分の居場所を知らせる。何でみんな外にいたのにアルスナさんだけ馬車の中で待ってるんだ…?それと、窓叩くのはやめて…それ一応ルト君から借りたばしゃだから!荷馬車じゃなくて貴族様が乗るような馬車だから!


「アルスナさんと一緒にクォーツさんたち乗ってください。ザングさんは私と一緒に御者席に」

「お、おう。嬢ちゃんも御者席ってことは、嬢ちゃんが御者をするのか?」

「他に誰がいるんですか。さ、行きますよ」


 ノルファとリーフォを何度か撫でてから、御者席に飛び乗る。流石に体格の大きいザングさんが隣に来るとちょっと狭いな…


「キリル、準備いい?」

「いーよ。いつでもどうぞ」

「じゃあ、《重力魔法・軽減》」「《重力魔法・軽減》《付与魔法・重複》」


 キリルが私の声に合わせて魔法を重ね掛けしてくれる。さっきよりも馬車が浮き、軽くなっているだろう。ザングさん、これが私たちだからなれた方がいいよ。


「『じゃあ、ノルファ、リーフォ。よろしくね』」

「「『はいっ!』」」

「嬢ちゃん、ホント規格外だな…」


 段々ユキみたいになってるのは気のせい?いや、あの反応が普通なのか?

 ノルファとリーフォを走らせると、何故か最初から全力疾走で駆け出す。…元気が有り余ってたのか。ま、ここは人もそんなに通らない平原だからいいとは思うけど、こんなに走ってノルファ達が疲れないか心配だなぁ…


「!?嬢ちゃん、これホントに大丈夫なのか!?」

「大丈夫ですよ。で、さっきの話の続きですね。結論から言うと、この体はザングさんの言う通り、この国の第一王女となるはずだったものです」

「っだったもの?」


 ま、実際は存在消されていたんだから過去形でも間違いないよね。

 風を切りながら、ザングさんが冷静に話を聞いてくれる。意外だな…もっと騒ぐかと思ってザングさんだけこっちに乗せたのに。余計なお世話だったかな?


「詳しいことは言えませんが、私の体は王家の人に魔の森に捨てられていました。そこをルアナが拾ってくれたんです」

「ルアナ様が…」

「それから、元の体の持ち主である王女という存在は消されました。ルアナの娘として生きるために。なので、中身は違いますが、私の体は王族の血を引いています。それも直系の」

「ルアナ様の…神の娘…」


 字面だけで見たら、あながち私が神子ということも間違いではない。神に育てられた子供、という意味では。

 ザングさんは、いきなりの暴露についてしばらく呆然としていたが、次第に何かを考えるようにして黙り込んでいた。


「ちなみに、フェルア達は魔の森で拾いました。そこを育てて今になったという訳です。分かりましたか?」

「…………あぁ、にわかには信じ難いが、嬢ちゃんの強さと周りの態度は嘘をついているようには見えねぇからな。信じてやるよ」

「ありがとうございます。これからザングさん達はどうするんですか?」

「俺らは…とりあえずアジトに戻るかな。今回の件で報告書とか作んなきゃいけねぇし。嬢ちゃんは王城に行くんだろ?」


 信じてくれるならありがたい。こう言うことには慣れているのか、流石団長さんと言うべきか、冷静である。普通なら信じられなくて気持ち悪がる位はしてもいいと思うんだけど。

 王城かぁ。サッサと仕事終わらせて帰りたいんだけど、そうも行きそうになくなっちゃったんだよなぁ。


「早く帰ってゆっくりしたいんですけどね。めんどう事になりそうなので、サッサと報酬貰って帰りたいです」

「そういうわけにもいかねぇだろうな!なんせ、今回の選定はかなり気合が入ってやがる。そうそう逃してはくれんだろうよ」

「そういえば、選定って何をするんですか?まさか、神子探しとかじゃないですよね?」


 微かな希望を持って声をかけてみるも、ザングさんは何も言わずにフイッと目を逸らす。あぁ…やっぱりか。


「別にいいですよ。私はすぐに脱落して帰りますので」

「そういえば、王家が直々に顔を観にくるとか言ってた気がするなぁ。なんか一つ願い事でも叶えて貰えばいいんじゃね?」


 いい知らせと悪い知らせが両方きたよ…知ってたけど、王家来るんだね…何か一つ願い事でもだったら学園の入学権を認めてもらおう。

 フリスアの願いは日頃苦労をかけているので、出来るだけ叶えてあげたい。


「学園の入学権…とかならがめつくはないですかね?」

「嬢ちゃん、学園に行きたいのか?」

「正しくはフリスアが。学園の禁書を読みたいんだそうです。あと、私は普通に勉強をしに」

「やめたほうがいいぜ?あんなとこはプライドが無駄に高いお貴族様が揃った所だ。嬢ちゃんみたいに無意識で目立ってると、どんなことに巻き込まれるかわかんねぇぞ」


 ザングさんが、忠告をしてくれる。政治に利用されるのは嫌だけど、ああいうお高い人達を扱うのは慣(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。

 前世でそう言ったクラスメイトが多くいたのだ。


「あと、王家に貸しを作るとか楽しそうでいいじゃないですか!」

「急に生き生きしだしたな、嬢ちゃん。あんた凄いこと言ってるの分かる?」

「勿論!何かあった時の後ろ盾はいくらあっても足りませんから!」


 微妙に成り立っていない会話をしていると、ようやく平原から抜け、再び山道に入る。あとこの森を抜けるだけかな。そうすれば、王都の周りをグルリと囲む巨大な壁が見えてくるだろう。


「それに、学園に入るのは友達と約束したことなんです」

「友達?」

「はい。ユキって言うんです。この前魔の森で迷っていた所を見つけて、友達になったんです」

「それはよかったな!嬢ちゃん、魔の森で暮らしてるって言ってたけど、どこで暮らしてるんだ?あんなとこ暮らせるような場所じゃねぇだろ」


 あー…入り口は不気味な魔物が多い上に、だんだん中央に入っていくたびに魔力濃度が濃くなって行って、高ランク魔物も増えるからなぁ…

 でも、危害を加えなければ比較的優しい子たちばかりだし、可愛い子も多いんだけどなぁ…


 〈キリアのは自然神としての補正付いてるからな〉

 〈植物系から絶対に襲われないどころか、気付いたらガールズトークしてるからね……〉

 〈え、あれってガールなの……?僕ずっと両生類かと思ってた〉

 〈〈両生類!?〉〉


「森の中央に世界樹って言う私が創った木があるんですよ。そこで住んでます。意外と住みやすいですよ?」

「え…魔力の発生源の中央危険地帯に…?」


 あー、それは多分、【流麗の儀式】とかやったり私達が魔法を日々使ってるからだろうなぁ…

 そのせいできっとあの周辺は、魔力が多い。私が住んでいるって言うのもあるかも。


「何つーか、嬢ちゃんは神子っていうより神様って言ったほうがしっくりくんなぁ…」

「………」


 え、気付いた?というか、神子らしいも、神様らしいもないと思うんだけど?だって、実際の違いは人間か実体を持たないか位だからね。あれ、そしたら私は神子の部類に入るのか?


「選定だけは絶対に目をつけられませんように」

「それはねぇな」

「ええ…フラグ立てないでくださいよ……」


 それを回収するのは私の役目ってか。やだよ。そんなフラグは絶対に回収したくない。

 内心諦めながらも前を向くと、段々と木々が少なくなっていき、視界が晴れてくる。


「王都って、結構大きいんですねぇ」

「当たり前だろ。ほら、怪しまれるからスピードとか緩めろ」

「はぁーい。『ノルファ、リーフォ、魔法切るから普通のスピードにして』」

「「『分かりました』」」


 スピードが緩まり、魔法を解除して外装も元通りに戻す頃には、王都の巨大な石でできた外壁が見えてくる。その大きさはどれくらいだろうか。

 少なさとも、周りの木々よりは悠々と高いと思うけど。確か魔物が入ってこないようにする為なんだっけ。あんなにデカい魔物何てそうそういないわ。

 石壁の周りは堀が作られており、水も張ってあったので各所の橋からしか出入りできない仕組みになっているのだろう。


「うへぇ…こんなに並ぶの…?」

「そーだ。ま、気長に待てよ」


 王都の中に続く橋には、大量の馬車や旅人が今か今かと長蛇の列を作って待っていた。検問が厳しいのか働いていないのか。どちらにしろ、長く待ちそうだなぁ…


「おいっ、そこの馬車!何をしている!」

「へ、これって私達が乗ってる馬車の事ですかね…」

「だなぁ」


 検問所の方から出てくる男の人が、何故かこちらにズンズンと大股で進んでくる。わぁ、なんだかめんどくさい予感!


「お前、何故貴族の馬車にお前のような子供が乗っているのだ!怪しい奴め!今すぐ捕えろ!!」


 はぁい!予感的中めんどくさい!

読んでくださりありがとうございます!


体質2人組「「俺らの扱いってひでぇよな」」

アルスナ「さぁっ!今回はどんなハプニングを見せてくれるのかしら!?」

巻き込み「嫌ですよ」

巻き込まれ「俺らだって本意じゃないんですよ?」

アルスナ「もうっ!どうしてハプニングから進展しないのよぉ〜!!」

体質2人組「「するわけないでしょう!!」」

アルスナ「(´・ω・`)」

クォーツ「……………カオス」


馬車の中でのやり取り


次話は、検問所の人に何故だか言いがかりをつけられて?王城へ行くまでもなかなか大変みたいです…

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