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転生して、【自然神】(一応人間)になってまったり暮らしてただけなのに‥  作者: 瑞浪弥樹
第一章〜神になって出会う人〜
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依頼の謎 -キリア目線-

今回は、王都から来た傭兵団の団長、ザングとキリアちゃんのお話です!アルスナさんのまさかの一面も…


※今回は、ちょっとグロとBL要素があるので苦手な方は避けて読んでください!

「で、嬢ちゃんは何のために王都に行くんだ?」


 いや、ファミリーネームがセルヴィって、女の人の名前みたいだね…

 王都から来た傭兵団の団長さんも、なんでこんな辺境まで来てるのか知らないけど。


「依頼で手紙を渡しに行くだけだよ。ザングさんは?」

「俺らも依頼でな、お偉いさんからある人を連れてこいって言われてんだよ」

「こんな辺境までくるなんて大変だね。どんな人なの?」


 お偉いさんが欲しがるような人なんて知らないけど、もしかしたら知っているかもしれないので外見くらいは聞いておこう。あ、でも傭兵団に頼むってことはアブナイ人なのかな…


「何でかは知らんが、異国から来た神聖な人で、ルアナ様と同じ紫色の瞳と髪色をしているらしいんだ」

「へぇ~。でも、紫色の瞳と髪色を持つ人って結構いるから大変なんじゃない?」

「そうなんだよなぁ…ったく、人探しなんて俺らの仕事じゃないっての」


 頭をガシガシと掻きながら、めんどくさそうに溜息をつくザングさん。この人も色々苦労してるなぁ。

 この国ではルアナへの信仰がすごい人が、たまに自分の瞳の色と髪の色を変えてしまうらしい。勿論、髪は染めればいいだけのことだが、瞳の色は簡単にはいかないので怪しい魔法を使ったり、同じような瞳の人を攫って目を抉り出して自分の目と交換するような事をしている人がいる。

 怪しい魔法を使った人は魔法の暴走により自爆、目を抉り出して交換した人はその後目から腐敗が広がり朽ち果てたのだと。そもそも、自分の生まれ持った色を外からの力で変えてしまおうなんて、遺伝子をぶち壊すことと同義なので無理なのである。

 それでもやろうとする人はいるんだけどね。


「あ…神聖な人ならアルスナさんが知ってるかなぁ…?」

「……嬢ちゃん、今アルスナって言ったか?」

「え、うん。何なら今私たちと一緒にいるけど?」


 もしかしたら神官つながりで知っているかと思って言ってみたけど、何か違う所に反応した…

 王都から来たって言ってたから、アルスナさんの事知ってるのかな…


「なにぃ!?嬢ちゃん、今すぐそこに連れて行ってくれ!」


 急にザングさんが大声を出し、ズイッと顔を寄せてくる。わぁ、近くで見るともっといかつい顔してる…

 後ろにいたザングさんの部下らしき人が、ザングさんの肩を苦笑しながらつかんで引き離してくれる。この人も苦労人なんだろうなぁ。手慣れている。


「団長が怖がらせてしまい申し訳ありません、私は副団長のクォーツといいます」


 まさかの副団長さんもいた。白髪赤目のアルビノのようなクォーツさんは、名前の通り水晶のように綺麗な髪をしていた。服は出来るだけ肌を隠すような作りになっており、大きな帽子を被って日光を遮っている。


「団長はその神官様の知り合いで、何かと昔から張り合っているんですよ…」

「あぁ…なにやったのアルスナさん…」

「すみません…こうなったら団長がめんど…手が付けられなくなるのでその場所に連れて行ってもらってもいいですか?」


 …今完璧に面倒って言おうとしたよね。オブラートに包みなおしたけど、ちゃんと聞こえているからね?

 ザングさんが暴れているのを必死に抑え込んでいるクォーツさんもかわいそうなので、案内してあげるか…


「分かりました。ついてきてください。その代わり、暴れたりしないでくださいよ?」

「感謝します。ほら、団長いきますよ!」


 フリスア達のいる方まで歩き出すと、後ろからクォーツさんが団長さんの服の襟をつかみながら、引きずって歩いてくる。それでいいのかクォーツさん…

 んー…アルスナさんには色々言われそうだけど、別にいいよね。何かしたら返りうちくらいにはできるし。


「……………キリアさん、覚悟っ!」


 あれ、もう襲ってきた?早くない?

 後ろを振り返ると、先ほどザングさん達の後ろにいた人が、剣を抜いて振りかぶってきてくる。一人?クォーツさんの所にはザングさんしかいないし、あと一人は…

 すると、後ろから羽交い絞めにされ、身長の低い私は宙ぶらりんになって身動きが取れなくなる。おーおー、味方ごと巻き添えにして切るっていうやつ?


「…後ろから拘束するくらいならさぁ、足も動けなくした方がいいんじゃないっ!」

「ぐっ!」


 丁度ぶら下がっている私の足の届くところは、男の腹だった。防具として、アーマーが付けられていたけど()()()()()()()破壊してしまう。アーマーを貫通して、男の腹に後ろ蹴りが入ると一瞬だけ拘束が緩まる。

 そのすきに逃げ出すと、振りかぶってきた男がそのまま勢いを止められずに突っ込む。あーあー、痛そう。何とか剣を味方に当てるのは回避したみたいだけど、大の大人が降ってくるのは痛いだろうなぁ。

 丁度いたところが砂埃が立って見えなくなり、目に砂が入ってしまう。うぅ…痛い。


「傭兵さんは後ろから羽交い絞めにするよりかは、一緒に切りかかってきた方がいいって知らないの?確かに動きを封じるのは大事なことだけどさぁ」


 目に入った砂をこすらないように取り、パンパンと服についた砂埃を払っていると、視界が晴れてくる。この時、見なければよかったなぁと、本当に思った。

 視界の晴れた先では、思わぬアクシデント。つまり、傭兵さん同士で何故かキスしているという、誰得だと言わんばかりの事態が起こっていた。


「「うげえぇぇっっ……」」

「うわぁ……なんかごめんなさい……」


 二人とも気付いた瞬間、素早く離れて地面に向かって気持ち悪さを吐き出した。あれ、もしかして私が避けててなかったら私がああなってたの?何だこの少女漫画とも薄い本とも言えないような内容は。


「部下が急にごめんなさい」

「あ、クォーツさん。大丈夫ですよー。いつでもかかってきていいですからねぇ」

「はは…遠慮しておきます…」


 苦笑いを浮かべながらこちらに来るクォーツさん。別にいつでもいいのに。


「理由とか聞かないんですか?」

「いいえ、そんな無粋な真似はしませんよ。お互いの()()()ですから」

「そうしていただけるとありがたい…」


 傭兵団は基本どこに行ってもルールが厳しいので、むやみやたらに人を襲うような真似はしない。どうせ、依頼か何かだろう。それならば余計な詮索は不要だ。


「あいつらは腕はいいんですけど、ちょっと変な体質があるんですよ…」

「体質って?」

「あら、キリアちゃんの隣にいるのってクォじゃない。どうしてこんなところにいるの?」


 クォーツさんが話を続けようとした時、フェルア達のいる方からアルスナさんがやってくる。呼びに来てくれたのかな…


「アルスナさん、ご無沙汰しております」

「?」


 クォーツさんが、挨拶をしながらまだ倒れている傭兵さんたちを指さす。?何があるのだろう。

 すると、アルスナさんが傭兵さんを見た瞬間に黄色い歓声を上げる。


「きゃあぁぁっ!!え、なになに!もしかして事後なの!?うっそ、見たかったぁ!!」

「え……まさかアルスナさんって、そういう…」

「そういう人です。ちなみに、先ほどキリアさんに切りかかった者の体質は、何が何でも()()()()()を引き起こしてしまい、羽交い絞めにしていたものは何をしても()()に巻き込まれてしまう。という体質を持っています」


 世界一需要のない体質だね…どうしたらそんな体質が身についてしまうんだ……というか、それなら一緒にしなければいいじゃん。どうして一緒に連れてきた。


「あいつらは、離しても離しても必ずどこかで事態を引き起こすのでどうにもなりませんでした……毎回見させられるこちらの身にもなってほしいものです…」

「……クォーツさん、大丈夫ですか?」

「物凄く胃が痛いです…依頼に行くたびに毎回毎回これで…しかも、私は彼らの直属の上司なもので、離れている訳にもいかないんですよ…」


 だれか、クォーツさんを助けてあげて…可哀そうになってきた…

 というか、アルスナさんって腐ってたんだね…さらに清廉潔白からイメージが遠のいたよ。


「はぁ…いつ見ても最高だわぁ」

「あんな人が神官で、うちの領は大丈夫なのでしょうか…」

「おいアルスナ!」


 将来、孤児の子たちまで腐ってしまわないか心配になるよ…

 ザングさんが、傭兵さんたちを見てうっとりしているアルスナさんに声をかける。アルスナさんが我に返ったようにハッとすると、ジロッとザングさんを睨みつける。いったいこの数秒の中で何が起こった…


「なによザング。今幸せな時間を堪能しているんだから、邪魔しないでくれる?」

「知るか!そんなことより、こいつらを気持ち悪い顔で毎回見るのはやめろよなっ!」

「なんでよ。別にアンタには迷惑かけてないんだからいいじゃない」


 これは、ザングさんが正統派だな…ただ、部下を守るためにこうやって怒鳴っていたのか。

 怒鳴るザングさんをさっきと打って変わって、吹雪が起こりそうなほどの冷ややかな目で見つめると、グッとザングさんがひるむ。


「あれ、そういえば何でアルスナがここに……まさか、今回は()()()なのか…?」

「そうよぉ~今回はキリアちゃんが選ばれたのよ」


 言い合いをしていたザングさんが、急に何かに気づいたように神妙な口調になると、アルスナさんが軽い感じでそれに答える。

 ?何のことだろうか。もしかして、依頼の事?この依頼って何回かあったものなのかなぁ。手紙のやりとりだし、可能性的にはあるんだろうけど、それだけだったらこんな雰囲気にはならないし、選ばれたって、ギルマスからの推薦じゃなかったの?


「ザングさん、アルスナさん、何か知ってるんですね?」

「あ、キ、キリアちゃん…?」

「お、おい待て…ちょっと落ちつけ!」


 ニッコリと(黒い)フリスアから教えてもらった笑顔を顔に張り付け、ザングさん達に近寄る。

 左手に閉じたままの《衰退ノ風(すいたいのかぜ)》を顕現させ、パシパシと手でたたきながら距離を近づけていると、二人が怯える。笑顔で近寄っているだけなのになぁ。


「さぁ、大人しく白状してくださいね?じゃないとちょーっとビリビリしますから」

「言う!言うからそれしまって!!」

「あれ、根性無いですね…久しぶりに尋問できると思ったのに」

「「怖いわっ!!」」


 思っていたよりもすぐに白状するらしい。フリスアに貰った毒の効果確かめてみたかったのに…

 とにかく、《衰退ノ風》をしまって話を聞くことにする。


「で、何隠してるんですか?」

「キリアちゃん、これがただの配達の依頼じゃないことは知っているわよね?」

「うん。怪しすぎるし」

「これは、ある者の選定なのよ。毎年この時期に、各領から強い女性が集められて王城に行くの」


 となると、この手紙の受取人は王様ってことかな?毎年やってたなんて知らなかったけど、めんどくさい事この上ない。


「そして、俺らはその道を邪魔しろって言われてたんだよ。何が目的かは知らんが、真に強い奴であったらちゃんと来れるだろうから、ってな。俺らに山賊の真似なんてさせやがって…」

「報酬が高いので毎年やりますけどね」

「何がしたいんだか…で、アルスナさんとザングさん達はその選定の試験官っていう所ですか?」

「そうねぇ。ホント、毎回呼び出されるこっちの身にもなって欲しいわ…」


 アルスナさんも、色々苦労しているみたいだ。でも、私の住んでいるところは正確に言えばどこの国にも属していないので、行かなくてもいいといえば、行かなくていいのだ。


 〈キリア?…何だか遅いと思ったら何やってるの〉

 〈あ、フリスア。ごめんね、変なことに巻き込まれちゃったみたい〉


 帰ってくるのが遅いことにしびれを切らしたのか、フリスアが姿を消してやってくる。もう準備できたのか。相変らず仕事が早くて助かるよ…ありがとうオカン。


 〈まったく…とりあえず昼食にするから、早く来て。フェルアが限界だから〉

 〈はーい。待っててね〉


 きっとフェルアが今にも、料理に飛びつきそうになってるんだろうなぁと思いながら、ザングさん達に声をかける。

 ご飯まだだったら、どうせ余るし一緒に食べたほうがいいだろう。


「ザングさん、良ければお昼一緒に食べませんか?まだまだ聞きたいことがいっぱいあるので」

「お、いいのか嬢ちゃん。それじゃ、お言葉に甘えて行くとするか。おいっ、お前らいつまで気持ち悪がってんだ!治らねぇもんは仕方ねぇんだからさっさと慣れろ!」

「「ひどいっ!!」」


 ザングさん、さすがにそれは酷い…いくらどうにもならないからって…この人たち不本意なのに……アルスナさんが残念そうにしているのは見なかった事にしよう。うん、これに関しては関わらない方がいい。


「じゃあ、こっちです」

「ありがとうございます。ホントに団長は無茶がひどいんだから……」


 苦笑いを浮かべながら、隣をクォーツさんが歩く。少し歩いていくと、荷馬車に見せかけた借り物の馬車が見え、お腹を空かせるお肉のいい匂いが漂ってくる。さすがオカン…あの短時間で作り上げた…


「フリスア、ただいまー」

「遅かったじゃ…その人たちもつれてきたの?」

「うん。まだザングさん達も食べてなかったらしいから、話を聞くついでに。いい?」


 フリスアが呆れ顔をしながら、新しい皿を出してくれる。流石フリスア、頼りになる…

 フリスアが盛ってくれた料理を、出してあった机の上に並べていく。んー…こんなに大人数になると思ってなかったからちょっと机小ちゃいなぁ……よし、作るか。


「《二重結界》」


 机の隣に、可視化できるようにした結界を張り、そこに料理を置いていく。

 それを見ていたザングさんが、声を出さずに驚いていたのは見ないようにしよう。いちいちそんな事言ってたらご飯が遅くなって、フェルアが暴れだすかもしれない。


「キリア、これ持っていって」

「はーい」


 フリスアから皿を受け取り、結界で作った机に並べていくとクォーツさんが手伝ってくれる。

 副団長さんは優しい人なのかな?それか、フリスアと同じような性格。


「手伝いますよ。流石に何もしないのは申し訳ありませんから」

「ありがとうございます。ですが、先にそこで目を見開いてるザングさんと、BL体質の2人の目を覚ましてあげて下さい」

「……B…L?……分かりました…?」


 うん。気にしないでいて欲しい。それよりも早く、ザングさんと2人が気を失いそうになっているから、そっちの方を助けて欲しいなぁ……


「キリア、もう座ってていいよー」

「分かった」

「あれっ、その人達誰?」

「あ、キリルおはよう」


 馬車の上に乗って昼寝をしていたキリルが、目を擦りながら起きてきてザングさん達のことを聞いてくる。目擦ったら赤くなっちゃうから擦っちゃダメだよ?


「傭兵団の人達。団長、副団長、BL体質の2人」

「わぁ、分かりやすい説明どうもありがとう。お腹すいた」

「今からご飯だから、降りてきて」

「んー」


 心底どうでもいいと言わんばかりに、返事をすると馬車の上から降りてくる。どうでもいいならステータス覗くだけにしようね?


「キリアさん、この人は?」

「私の兄のキリルです。そこで料理してるのがフリスア、その下で滝のようなよだれを流して待っているのがフェルアです」

「……なんだか凄い人達ですね…」


 まぁ、神獣でもあるからね。個性?が強いのは大目に見てください…

 ほぼ無心状態のフェルアを机まで引きずり、椅子に座らせる。フェルア、お腹空きすぎて捕食者の目してるからね?怖いよ?


「それじゃ、もう待てないみたいだし食べようか」

「フェルア様凄いことになってますねぇ…」

「いただきます」


 アルスナさんがフェルアを見ているのを横目に、全員席につき、いただきますをする。

 フェルア、お腹すいたのは分かってるからがっつくのはやめてね?周りに飛び散ってるからやめてね?


「フェルア、汚い」

「っぐ……いってぇなぁ…」

「一応僕たちだけじゃないんだから、普通に食べなさい」

「へーへー」


 オカンの力は偉大である。いつもはめんどくさがるフェルアがちゃんとフォークを使って、食事をしている。食べ方は豪快だけど。

 キングブラッドボアの角煮を口の中に運ぶと、とろけるような舌触りと絶妙な味付けがさらに食欲を掻き立てる。これもまた《嶺の血》が入っていることは、ザングさん達のために内緒にしておこう。


「ん…美味しい」

「ありがとう。今回は結構大きいのだったから、まだまだおかわりあるよ」

「フリスア、おかわり」


 相変わらず早い…食べ始めてから1分も経ってないよ。美味しく食べてくれるからフリスアは満足しているんだろうけど、早すぎるともはや噛んでいるかすらわからないので心配にはなる。

 さっきから喋らないザングさん達の方をちらっと見ると、何故か泣きそうになりながら料理を食べていた。え、なんで泣いてるの?!


「ど、どうしたんですか、もしかして、口に合いませんでしたか!?」

「……………い」


 フリスアが慌てて心配すると、クォーツさんがポツリと小さな声で呟く。どうしたのだろうか。フリスアの料理は美味しいから口に合わないなんてこと、そうそうないと思うんだけどなぁ…


「え?」

「美味しい…」


 顔を上げたクォーツさんが、ポロポロと涙を流しながら料理を口に運ぶ。あ、何だ良かったぁ。

 ザングさんも、BL体質の二人も、泣きながら無我夢中で料理を頬張る。それを見たアルスナさんが、あらあらと言いながら笑っていた。


「アルスナさん、ザングさん達どうしたんでしょうか…」

「フリスア、おかわり」

「これはね~、フリスア様の料理がおいしくて、きっと故郷の家族のことを思い出してるのよぉ」


 まさかのホームシックを引き起こすほどの美味しさ…さすがフリスア。オカンの力は大の大人を泣かせるまでになっていたのか…恐るべし…

 でも、そんな味を毎日食べていられるだけ私は幸せだなぁ…


「すごいねぇ、流石フリスアの料理。これからもうフリスアの料理以外、食べられなくなっちゃうんじゃないの?」

「なあ、フリスア。おかわり」

「あれっ、僕何もしてないのに罪悪感がすごいんだけど……」

「あはは……」


 和やかな雰囲気になりながらも、どこか複雑そうなフリスアが胸を押さえながら再び席に着くと、ザングさんが何かを思いついたように口を開く。


「なぁ坊主、良ければうちの傭兵団で働かねぇか…?」

「ちょっと、団長何言ってるんですか!」

「クォーツ。お前も毎日この料理食いたいだろ」

「それはそう…ですが…」


 ?今なんて言った?フリスアを雇う?王都の傭兵団で?

 そんなことしたら毎日フリスアの料理を食べられなくなるじゃん!何言ってくれるのザングさん!


「おいオッサン。キリアと俺らからフリスアを奪うつもりか?」

「!!?」

「フェルア、今は食事中だから落ち着きなよ。分からせるのは後でもできるでしょ?」


 既にフリスアの料理に、がっしりと胃袋をつかまれているフェルアから大量の殺気がザングさんに向かう。それを止めに入ったかと思ったキリルからも、少しだけど便乗して殺気を出しているのはわかるからね?

 さっきまで和やかな雰囲気だったのに、一気に物騒な空気になったなぁ…もうちょっと落ち着いて食事がしたい。


「こら、二人とも何言ってるの」

「痛っ」「ぐえっ」


 見かねたフリスアが、二人の頭をそれぞれ明らかに違う力で叩くと、ザングさんに答えを伝える。

 今のキリルとフェルアの扱いの差が出てる…絶対フェルアだけバシッていう音がするくらいの勢いで叩いてたよね?キリルはパシッっていう音だったのに?


「すみませんが、こいつらの世話はキリア一人じゃ心配なのでお断りさせていただきます。また会った時に作るくらいはしますので」

「でも…」


 それでも食い下がってくるザングさん。余程美味しかったのだろう。が、フリスアは渡せない。何故ならフリスアがいなくなったら私以外でこの二人のストッパーがいなくなってしまうからだ。こんな大きい子供二人を私一人なんて絶っ対無理だから。


「ザング?命が惜しいならそこで踏みとどまっておくことが賢明だと思うわよ?」

「?どうしてだアルスナ」

「なぁ…おかわりくれよフリスア…」


 命が惜しいって…そこまではしないと思うんだけどなぁ…フェルアならやりかねないけども。


「よくよく考えてみなさい。()()に選ばれて、私のお墨付きのキリアちゃんのお兄様がただものの訳がないじゃない。この方たちは神獣様よ」


 あ、アルスナさんがばらした。まぁ、傭兵団の人なら情報には安心できそうだからいいけども。

 フリスアに目線をチラッと向けると、苦笑しながら返してくれる。これは、言ってしまったものは仕方がないという顔だろう。


「……………はぁ?」


 ザングさんが少しの沈黙の後、素っ頓狂な声を出して驚く。ま、普通そんな事言われちゃそういう反応になるか。いきなり目の前にいる人が、信仰の対象だとは思わない。ユキは見抜いて直ぐに慣れてたけどね。

 あれっ、もしかしてユキってちょっとすごい子だったの?今更だけど。

読んでくださりありがとうございます!


フェルア「なぁ!おかわりくれよ!!」


見事な連携スルー

今回のBL要素は、全てアルスナさんと作者得の事故ですw


次話は、休憩を終えて王都に再出発します!

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