8F 新たな展開
おまたせしました
1週間が経ちヒロトたちが異世界へやって来て15日目となった。
あれから魔幼蟲の繭ノ蟲への進化ラッシュが始まり、ヒロトは嬉しい悲鳴をあげていた。
億を優に超える魔幼蟲から1週間の間に1000匹ほどの繭ノ蟲が生まれ、"合成"の素材にする魔物を用意するDPが足りず遊ばせている繭ノ蟲が大量に出ていた。とりあえずヒロトは繭ノ蟲だけの部屋を用意しそこで共喰いさせておくことにした。
また、DPに無理の無い範囲で"合成"も行った。
繭ノ蟲に一角装甲獣機を"合成"した破城一角甲蟲。
闇切断道化師を"合成"した首刈リ両断鎌蟲。
荒ぶる隻眼大鷹を"合成"した猛突辻斬リ蜻蛉蟲。
積年の怨みを"合成"した瘴怨群蟲。
呪縛結晶体を"合成"した縛視琥珀蟲。
この5種類の魔物が誕生した。
ステータスは以下の通りである。
破城一角甲蟲 【魔蟲Lv10】
スキル
【耐久上昇Lv3】【力上昇Lv4】【瘴気耐性Lv4】【生存闘争Lv6】
【毒耐性Lv3】【再生Lv2】【HP上昇Lv2】【麻痺耐性Lv1】
【精神攻撃耐性Lv1】【一点突破Lv4】
【魔蟲】の上位種。
巨大なカブトムシ型の魔物。特別な能力は無いが飛翔して加速してからの体当たりは強力の一言に尽きる。
首刈リ両断鎌蟲 【魔蟲Lv10】
スキル
【耐久上昇Lv2】【力上昇Lv3】【瘴気耐性Lv4】【生存闘争Lv6】
【毒耐性Lv3】【再生Lv2】【HP上昇Lv2】【麻痺耐性Lv2】
【精神攻撃耐性Lv1】【魔刃Lv1】【見切りLv1】
【魔蟲】の上位種。
巨大で黒い体表を持つカマキリ型の魔物。ただでさえ斬れ味が凄まじい鎌は魔力を通すとさらに斬れ味が増す。体に赤いラインが走っている時は魔力を通している合図。
猛突辻斬リ蜻蛉蟲 【魔蟲Lv.10】
スキル
【耐久上昇Lv2】【力上昇Lv2】【瘴気耐性Lv4】【生存闘争Lv6】
【毒耐性Lv3】【再生Lv2】【HP上昇Lv2】【麻痺耐性Lv2】
【精神攻撃耐性Lv1】【俊敏上昇Lv5】【鷹の眼Lv2】
【魔蟲】の上位種。
大型のトンボ型の魔物。翅が刃状になっており、高速で飛んで翅で斬りつけては離脱するヒットアンドアウェイを繰り返す。
瘴怨群蟲 【魔蟲Lv10】【霊体Lv5】
スキル
【耐久上昇Lv2】【力上昇Lv2】【生存闘争Lv6】【毒耐性Lv3】
【再生Lv2】【HP上昇Lv2】【麻痺耐性Lv1】【精神攻撃耐性Lv2】
【瘴気操作Lv5】
【魔蟲】の上位種。【霊体】種にも属する。
本体は小さく攻撃能力は無いが【瘴気操作】で濃縮した【瘴気】を操り攻撃する。常に【瘴気】を纏っており、瘴怨群蟲の周囲は他より【瘴気】のレベルが高くなっているため対策を突破される可能性がある。
縛視琥珀蟲 【魔蟲Lv10】【霊体Lv5】
スキル
【耐久上昇Lv3】【力上昇Lv2】【生存闘争Lv6】【毒耐性Lv3】
【再生Lv2】【HP上昇Lv2】【麻痺耐性Lv2】【精神攻撃耐性Lv1】
【静止の魔眼Lv4】
【魔蟲】の上位種。【霊体】種にも属する。
琥珀のような結晶の中に蟲が埋まった姿をしている魔物。【静止の魔眼】で対象を動けなくし、琥珀の中に引きずり込み溶解して吸収する。
これまた個性的な魔物が生まれヒロトは満足げである。
しかし現状上位種を生み出す方法が合成しかなく、DPが足りず数を揃えることができないでいる。共喰いでレベル上げをさせている繭ノ蟲が一体何レベルで進化しだすのかもわからずヒロトは焦りも感じていた。
外とは隔離された環境で他のダンジョンマスターの情報が入らず、自分のダンジョン運営方法が実はマズイやつなのではと不安に思っているのだ。
しかし準備期間もあと半分になり、もう修正はできないとヒロトは腹をくくった。
15日目の昼、ヒロトが日課と化した【毒魔法】の鍛錬をしていた時それは突然起こった。
『ハイハ〜イ!!みんな大好き遊戯の神だよ!今日でキミたちがこっちへ来て15日目だね。ダンジョン対抗バトルの準備は順調に進んでるかな?』
「この声はあのカミサマか……。準備はしてるけどDPがカツカツだっつうの」
初めて声を聞いた時と変わらない無駄なまでにハイテンションな遊戯の神にウンザリしながらDPの獲得手段が限られている現状に不満を漏らすヒロト。
『ん〜、ちゃんと準備してない子はダメダメだよ〜?そんなんじゃすぐに死んじゃうよ?この世界の命はとても軽いからね。しっかりダンジョンを育てて身を守らないとダンジョン対抗バトルの前に現地の冒険者に狩られちゃうかも!』
クスクスと笑う遊戯の神。それは笑いながら虫を潰す子供の残酷な無邪気さを孕んだような笑いだった。
その様子にヒロトはこの殺し合いが遊戯の神にとっては本当にただのゲームなのだと再確認させられ、少し寒気を覚えた。なんだかんだと言ってもヒロトも命の奪い合いをする覚悟はまだできていなかったのであった。
『でもでもでも、頑張っている子も多いから今日は優しーいボクからプレゼントがありま〜す!ななな〜んと!明日から希望する人だけダンジョンの解放を先にさせてあげるよ!うまくやれている人たちでもほとんどの人がDPの不足には悩んでいたからね、外に出てDPを獲得できるようにしてあげるよ!』
「なにっ!?ついに本格的異世界デビューの時が来たか!」
さっきまで遊戯の神を恐ろしいと思っていたのにダンジョンの外に出られると聞き、ヒロトは一転して外に出られることを喜んだ。
やはりアホなのであった。
『【ダンジョンマスター】が活動できるのは自分の領域と隣接する領域だけ。だけどダンジョンの中にいないと宣戦布告されても気づけないからなるべくダンジョンの中にいることをオススメするよ。知らない間にダンジョン対抗バトルが始まって気づいたら負けてましたじゃイヤだもんね。まあそういうわけだから外出はほどほどでうまく活用してね!バ〜イバ〜イ!」
そう言い残して遊戯の神の声は聞こえなくなった。
「さっそく明日ダンジョンの解放をしよう。DPも足りないし良い機会だ、存分に稼がせてもらおうじゃないか、うん」
それっぽい言い訳を誰かへとするが外の世界への期待を隠せずにヒロトはブルリと体を震わせる。
どんな風景が広がり、どんな人々が暮らし、どんな物があるのか。
まだ見ぬ異世界に想いを馳せるのだった。
・補足
瘴怨群蟲と縛視琥珀蟲の【瘴気耐性】スキルが無くなっているのは【霊体】の種族特性に【瘴気完全耐性】が含まれているためです。
※以下はリストから召喚された時点での強さです。
またヒロトのダンジョンの場合召喚した瞬間に自滅しないようにボーナスで始めから【瘴気耐性】を所持しています。
一角装甲獣機 【魔獣Lv20】
スキル
【一点突破Lv6】【瘴気耐性Lv4】
【魔獣】の上位種。
鋼よりも硬い皮膚に覆われたサイの魔物。走り出したら止まらず、一角装甲獣機が通ったあとは破壊され尽くしたものしか残らない。
闇切断道化師 【悪魔Lv20】
スキル
【剣術Lv5】【見切りLv3】【魔刃Lv3】
【悪魔】の上位種。
シミターを狂ったように、しかし見事な剣捌きで振り回す。相手の体を少しずつ切り落とし痛みで絶叫するのを聴くのが大好きな悪魔。
荒ぶる隻眼大鷹 【鳥獣Lv20】
スキル
【俊敏上昇Lv5】【鷹の眼Lv5】
【鳥獣】の上位種。
巨大な鷹の魔物。頭上から急降下して鋭利な鉤爪で切り裂いてくる。
また鋭い嘴で体当たりするように刺突攻撃も行い、下手な鎧では貫通してくる。
積年の怨み 【霊体Lv20】
スキル
【瘴気操作Lv6】【物理無効】
【霊体】の上位種。
怨念が集まり生まれた非実体の魔物。濃縮された【瘴気】を操りそれを槍状にして飛ばしてくる。【瘴気】が濃縮されているので【瘴気】のレベルが上がるうえに瘴気の槍をくらうと体内に【瘴気】が入り内側から蝕まれることになる。
呪縛結晶体 【霊体Lv20】
スキル
【重力魔法Lv5】
【霊体】の上位種。
体を構成する結晶には【重力魔法】が込められており、それを行使して対象にかかる重力を大きくし圧死させる。
【麻痺耐性Lv2】
【麻痺】状態の耐性をつける。
Lvが高くなるにつれて症状の度合いと自然解除までの時間が短くなる。
【一点突破Lv4】
STRに補正をかける。
さらに相手のVITが高いほどSTRに補正がかかる。
【魔刃Lv2】
刃に魔力を流すことで斬れ味を上昇させることができる。
Lvが上がると消費する魔力が減り、斬れ味の上昇率が上がる。
【見切りLv3】
攻撃を見切り回避することに補正がかかる。
【俊敏上昇Lv5】
ステータスのAGIに補正をかける。
【鷹の眼Lv5】
遠くの物がはっきりと見えるようになる。
攻撃の命中率に補正をかける。
【瘴気操作Lv5】
【瘴気】を操り攻撃に用いることができるようになる。
Lvが上がると操れる【瘴気】の量と射程が増す。
【静止の魔眼Lv4】
見た対象を【麻痺】状態にすることができる。
Lvが高くなると威力と効果時間、射程が増す。
【剣術Lv5】
剣を扱うことに補正がかかる。
【重力魔法Lv5】
重力を操る魔法を放てる。
Lvが上がると威力と射程が増す。