9F ダンジョン開放
おまたせしました
遊戯の神のダンジョン早期開放の告知を聞いた翌日の朝。
「さあさあさあ、異世界デビュー決めようじゃないか!ダンジョン開放のやり方っと」
メインコアルームにテンションの高いヒロトの姿があった。
ダンジョンコアを操作し、ダンジョン開放をするという項目を押すとダンジョンコアの声が響いてきた。
『ダンジョンの開放をするにはダンジョンの名称を設定する必要があります。設定をしますか?』
「なに?ダンジョンの開放をするにはダンジョンに名前をつけなきゃならないのか。どうしようかな……?かっこよくて俺のダンジョンに合った名前を考えなきゃな」
どうやらダンジョンを開放するにはダンジョンの名前を決める必要があるようだ。
腕を組み、かっこいい名前を必死に考えること数分。
ヒロトはダンジョンの名前を決めた。
「かっこよくて俺のダンジョンにぴったりの名前といったらこれだろう。このダンジョンは【蠱毒のダンジョン】だ!」
『名称を【蠱毒のダンジョン】に設定しました』
まだちゃんとした蠱毒はしていないのに蠱毒の名前を使ってしまった。
ニワカ知識が悪く働いてしまった結果である。
『これよりダンジョンの開放を行います』
ダンジョンコアによって開放のアナウンスがされてすぐにメインコアルームの地面が少し揺れた。どうやらこれで入り口が開いたようだ。
そして、
『プレイヤーネーム"龍ヶ崎浩人"、あなたの健闘を祈ります』
普段の無機質な声とは違う、感情のこもった温かい声だった。
そのことに驚き、目を見開いた。
そしてヒロトは不敵な笑みを浮かべて言った。
「任せろ」
ダンジョンコアに向けて親指を立てながらヒロトはメインコアルームを後にするのだった。
「水よし、食料よし、救急セットよーし。さあ異世界デビューだ!」
ヒロトは役に立ちそうなアウトドアグッズを入れたリュックサックを背負ってダンジョンの入り口まで来ていた。
後ろには護衛として闇討チノ百足蟲4体と猛突辻斬リ蜻蛉蟲、首刈リ両断鎌蟲を1体ずつ連れている。
「あの入り口の先に待ち望んでいた異世界が広がっているのか……。2週間穴ぐら生活でぶっちゃけ異世界に来た実感なかったけどやっと異世界の景色をこの目で見れるんだな」
地球じゃ考えられない大きさの蟲たちがいたにもかかわらず、異世界らしさが足りないと常々ヒロトは思っていた。
外の世界へと繋がっている入り口を見て、期待に胸を膨らませたヒロトは走ってダンジョンの入り口から飛び出した。
「うおおおお!森だぁぁぁぁ!!」
ダンジョンの入り口が開いたのは森の中だった。やっとダンジョンの外に出られた嬉しさでヒロトはただの森にも叫んでいる。
日本の街の汚れた空気とはケタ違いの澄んだ空気、草花の匂い、そして遠くから聞こえてくる何かの鳴き声はヒロトが聞いたことのないもので、ヒロトはここが地球とは違う異世界なのだと強く感じた。
しかしヒロトのダンジョンがあるのは森の中であり、周囲に人がいそうな気配は皆無だった。
「現地の人にも会ってみたいけどこれじゃあ近くに人はいそうにないな。というかどっちに行けば森を抜けられるかもわからないし、前途多難だ」
ダンジョン保守の観点から言えば人に見つかりにくいのは良いことなのだがヒロトは人に飢えていたのだった。
とりあえず森の外を見に行くためにヒロトは連れて来た猛突辻斬リ蜻蛉蟲に偵察してくるように命令した。
猛突辻斬リ蜻蛉蟲は空高く飛び上がり少しの間上空をぐるぐると旋回した後、ひとつの方向にゆっくりと移動を始めた。
「そっちに行けば森を抜けられるのかな?じゃあ俺たちは猛突辻斬リ蜻蛉蟲について行くぞー」
そう言って1匹の闇討チノ百足蟲の背に飛び乗り、ヒロトたちも移動を開始した。
1時間ほど闇討チノ百足蟲に乗って進むと森の端にたどり着いた。視界が開け、そこには草原が広がっていた。
ヒロトは闇討チノ百足蟲の背から降り、リュックサックから双眼鏡を取り出してあたりを見回した。
「やっと森を抜けたな。森を抜けると草原が広がってるのか。おっ、あそこにあるのは畑かな?それに家っぽいのもいくつも見えるな。てことはあそこにあるのは村か」
ヒロトが見つけた村は木造らしく家が数十件あり、木の柵で囲まれているようだった。村の周りには畑が広がっているから農村のようだ。また村のある方からヒロトが出てきた森へと続く道も少し離れたところにあり、村人が森に出入りしていることが伺えた。
「ダンジョンからここに来るまで魔物と遭遇しなかったのを不思議に思っていたが村人の出入りがあるならこの辺の魔物は駆逐されてたのかもな。しかし人の出入りがそれなりにあるならダンジョンが早期に見つかる可能性がでてきたな。人に見つかるまで魔物狩りでDPを稼いでおきたかったんだが少し計画の見直しが必要かな」
蟲を連れていたので村まで行くわけにはいかず、今日の偵察はここまでにしヒロトはダンジョンへ引き返すことにした。
自分のダンジョンの具体的な立地がわかっただけでも恩の字とし、人に見つかった場合どうするかを考えながら帰路につくのだった。
そしてダンジョンの入り口に着くとヒロトは連れて来ていた魔物に村とは反対の方へ行って狩りをしてくるよう命令した。
一時的にダンジョンの戦力が落ちることになるが人の生活圏が近くにあるためそれほど強力な魔物は近くにはいないだろうと予想し、狩りに行かせることにしたのだ。
人に見つかった場合でも村人程度なら残っている戦力で対処可能だろうと判断したのだった。
そして命令を受けた魔物たちは返事をするように鳴いたあと、森の中へ消えていった。
「これでDPも少しずつ増えていくことだろう。思っていた以上に人の生活圏が近くにあってたから、DPを貯めて発見されるまでに早急に戦力を整えなければな」
狩りに出て行った魔物を見送ったあと、メインコアルームへ帰還し今回の偵察で得た情報を整理してダンジョンの強化の計画を立てながら一日が過ぎていくのであった。




