おまけ3-2
「ん……」
目が覚めたとき、ユーリは自分がふかふかとした温かいものに包まれている感覚を覚えた。ゆっくりと目を開けると、知らない天井。視線だけで周囲を見渡すと、どこかの部屋の中だということは分かった。と、そのとき、おもむろに開いた扉。
「目が覚めたか」
扉の向こうから現れたのは、黒髪の男だった。意識を失う前にユーリに話しかけてきた男。自分は、なぜベッドに寝かされているのか、どうしてここへ連れてこられたのか。
聞きたいことはたくさんあったけれど、それよりも男が手にしているものの方が気になった。湯気が立っている皿。おいしそうな匂い。
「……食うか?」
ユーリがじっと見つめていることに気づいたのか、近づいてきた男はベッドに腰かけ、手にしていたお盆をユーリに差し出した。お盆の上には、湯気が立つスープ。男の顔色をうかがいながらもユーリがこくんと頷くと、「ほら」とお盆を手渡される。
お腹が減っていたユーリは、差し出されたスープを最初はフーフーと冷ましながら、慣れてくるとガツガツと食べる。男はその間も、じっとユーリのことを見守るように見つめるだけだった。
「……ごちそう、さまでした」
食べ終わった後、手を合わせてそう言うと、ユーリはそろりと男を見た。鋭い切れ長の瞳に怖さを感じる。ユーリは布団をギュッと握りしめたあと、「あの」と口を開いた。
「それで、僕は何をすればいいんですか……っ」
絞り出すような声。こんなにしてもらって、自分はこのあと何を要求されるのだろうと思っての言葉だった。何かを与えられたら、その対価を支払わなければならない。貧民街では、それが常識だ。
「……名前は?」
男の言葉に顔を上げ、「ユーリです……」と返す。切れ長の瞳は、やっぱり怖かったけれど、男の声はどこか優しい響きがした。
「俺は、ダリウスだ」
低く響いた声に、そろりと目の前の男を見上げる。すると、ダリウスはユーリの頭をポンと撫でこう言った。
「ユーリ、お前が嫌じゃなければここで俺たちと一緒に暮らすか?」と──。




