おまけ3-1 過保護な大人たち
ユーリがダリウスに拾われたときの話。ユーリに過保護な大人たち。
◇◇◇
「お前、親はいないのか」
貧民街にある暗い路地の一角、ユーリ・エドワーズが膝を抱えてうずくまっていると、声をかけてくる男の声がした。顔をあげると、そこにいたのは黒髪に、切れ長の瞳の男。後ろには、肩までほどの金髪の男も立っていた。
ユーリは「はい」と小さな声でそう返すと、また膝に顔をうずめる。
自分みたいな子どもが道端に一人でいると、声をかけてくる大人はこれまでも大勢いた。パンを分け与えてくれる者、金を置いていく者、暗がりに連れ込もうとする者など、その反応はさまざまだ。危険を感じれば、すぐに逃げるくらいの防衛力は普段から持ち合わせていたが、今日のユーリはそれができないくらい体がひどく疲れていた。
早くどこかへ行ってくれ。
そんな思いで手をぎゅっと握りしめて、時間が過ぎるのをただ待った。だが、目の前の男が「おい」と話を続けるので、ユーリは顔を上げざるをえなかった。従わなければ、ひどい扱いを受けるかもしれない。そんな防衛本能が働いたからだ。
「顔が赤いな……。熱があるのか」
男はそう呟くと、ユーリの額におもむろに手を伸ばしてきた。ひんやりと冷たい手。体のだるさも相まって、ユーリは抵抗することなく、その手の冷たさを受け入れた。
「どうしますか、ダリウス様」
もう一人の男が困ったような声色で、そんなことを話していたが、ユーリの意識は次第に薄れていってしまう。体はもう限界。この後、自分がどうなるのかなどわからなかったが、どうせ身寄りのない自分だ。このままのたれ死んだとしても誰が悲しむわけでもないのだから、もうどうなってもいい。そんな気持ちで、意識をスッと手放した。




