おまけ2-1 ノエ・ベルノルトの憂うつ
非番のノエが被害を被る話(ノエとクロードとダリウス中心)
◇◇◇
「あ〜……休みって最高〜……」
窓の外に青い空が広がる天気の良いある日、非番のノエ・ベルノルトはベッドの上でゴロゴロとしていた。ちょうど窓から差し込む陽光が気持ちよく、ノエは枕を抱きしめながら幸せを噛み締める。
剣術の稽古に一心に集中する時間も好きなのだが、こうやって日がな一日だらけて過ごす時間もノエにとっては至福だった。だが、そんなとき──。
「ノエ、助けてくれ……」
穏やかな休日をぶっ壊す来訪者がやってきた。突然、勢いよくドアが開いたかと思うと、現れたのは目の下に隈を作ったクロードの姿。休みを満喫している最中に訪れた上官に、ノエはあからさまに嫌そうな顔をしてみてせた。
「ちょっと、クロードさん。俺、今日非番なんですけど……」
「ついでに言うと、ドアはノックしてから入ってください」と続けたノエだったが、当の本人は耳に入っていないのか、どかどかと部屋に入室してきて、ベッドに寝転がっていたノエの上に乗り、バンッと顔の両側に手をついた。まさかの展開に、「えっ……」と言葉をなくすノエ。
なぜに押し倒されている……?
顔を上げるといつも美麗な笑みを携えているクロードの疲れ切って死にそうな顔が間近にあり、ギョッと目を見開いた。
「な、なんですか」
すると、「悪い……」と、これまた死にそうな悲壮な声がする。
「ちょっとでいいから……代わってくれ……」
その言葉とともに、自分の上にどさりと落ちてきたクロードにノエは慌てて「クロードさんっ⁈」と、呼びかけた。返事はない。かと思えば、しばらくして聞こえてきたのは、スースーという安らかな寝息だった。
「寝てんのかよ……」
はぁとため息をつきながらも、それだけでよかったと安心してしまうのは、特務騎士団時代に身に染みてしまった身近な死のせいか。ノエはひとまず自分の上に乗っかった男をどけると、自分のベッドに寝かせてやることにした。
「よいしょっと」
結構雑に扱ったのだが、起きる気配は全くない。いつもはキリッとした印象のある上官だが、今の姿は何だかいつもより少し幼く見えた。
目の下のクマを見つめながら、ノエは
「……仕方のない人だなぁ」
と呟いた。
真面目な上官は、なんでも一人でやろうとして無理しすぎるきらいがある。部下の非番の日はいつもきちんと把握しているクロードが、こうやって自分のところまで来たということは、相当疲れが溜まっているのだろう。
「……とりあえずクロードさんの執務室に行ってみるか」
身なりを整えたノエはベッドで爆睡しているクロードをそのままにして、ひとまず彼の執務室へ向かってみることにした。




