表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/90

おまけ1 酔っぱらった二人

本編エピローグ話での一幕


◇◇◇


領地で行われる豊穣祭では、辺り一体がお祭りモードでいつもより随分と賑わっていた。広場では、この日のために用意された酒や料理もたくさん振る舞われ、大人たちはあちこちで酒盛りをしている様子。


そんな中、広場の中央にあるテーブルでは、クロードとルーナが向かい合って座り互いに睨み合っている。


「なんなんですか、クロード様。それ、私に喧嘩売ってるんですか」

「そっちこそ。今日は無礼講とはいえ、その発言はいただけないな」


ぐぬぬぬぬ、とバチバチに歪み合う二人を、周囲は「おもしろそうだ」と煽るものだから、二人のやりとりもどんどんヒートアップ。テーブルの上には、空いた酒瓶がいくつも倒れ、二人ともかなり酔っ払っている様子だった。そのテーブルをルーナがダンッと大きく叩く。


「リリス様は私が体調を崩したら、寝ずに側にいて看病してくださったんですよ!しかも、あまりご飯が食べられなかった私に甘いゼリーまで用意してくださって『あーん』して食べさせてくださったんですからっ!」

「それを言うなら、俺も体調を崩したとき、ダリウス様がわざわざ山奥に行って薬草を取ってきてくださったんだぞ!天候も悪い中、わざわざ俺のためにっ!」

「リリス様はいっつもお茶会で余ったお菓子をこっそり私や侍女たちに持ち帰ってきてくれて、お裾分けしてくださるような方です!!」

「ダリウス様も、飲みの場では自分じゃなく、俺たち部下にばかり高い酒を飲ませてくれるようなお方だ!!」


互いに互いの言い分を言い切ったところで、またもや、ぐぬぬぬと睨み合う二人。バトルのテーマは、「どちらの主がいかに優しいか」について。酔ったルーナがリリスに花飾りをプレゼントしてもらったと嬉しそうに話し、「リリス様は世界で一番のご主人様です」と語っていたの見た(かなり酔ってる)クロードが、つっかかっていったのがきっかけだった。


クロードの側では、呆れた様子で二人を眺めながらチビチビ酒を飲むノエと、顔を赤らめて「いいぞ、もっとやれ!」と二人を煽るアベルに、「ルーナ、負けるんじゃないよ!」と酒瓶を掲げるマチルダの姿。普段は上下関係がある城の者たちも、今日ばかりは無礼講だとにぎやかに騒いでいる。


側から見ればしょうもない対決なのだが、酔った二人には分かるはずもなく。そのあとも、あーだこーだと互いの主人を褒めちぎりまくっていた。


「……でも、ダリウス様がリリス様と一緒になって、幸せそうで本当によかった」


そんな中、カップに注がれた酒を見つめながら、クロードがぽつりとそう呟いた。


長く苦しんでいた上官のことを、ずっと気にかけていたクロード。平和になったこの世界で悪夢に苛まれていたダリウスが、ようやく掴んだ幸せ。そのことを喜んでいるのは、きっとクロードだけではないだろう。


その証拠に、先ほどまで睨み合っていたルーナも、ノエも、アベル、マチルダの顔にもやさしげな笑みが浮かんでいた。


「最初はいろいろありましたけどね」

「まあ、それも今となっては良い思い出というか」

「人生なんて、いい日もあれば悪い日もあるんだから」

「終わりよければ全てよしってな!」


ガハハと豪快に笑うアベルに、ほかの四人も「ですね」「そうだな」と顔を見合わせる。


「あ、ダリウス様とリリス様だ」


と、そんなとき、ノエが二人の方を指差した。クロードとルーナが、その言葉にバッとノエの視線の先を見ると、リリスの手を取ったダリウスが彼女の手の甲にキスして微笑み合う姿。そんな二人を目撃したクロードとルーナの瞳から、涙がポロリと流れた。


ぎょっとするのノエをよそに、二人は一緒になって主人のもとへと駆けていく。


「ヒューヒュー!いいね、お二人とも!」

「見せつけてくれるねぇ!」


そんな周りの声にすら、涙が溢れてしまう。大好きな人の、幸せそうな姿。それが、こんなにも自分のことのように嬉しいとは。


「よかったですね、リリス様!」

「ダリウス様、どうかお幸せに!」


号泣しながらそう祝いの言葉を伝える二人に、主人たちは驚きつつも仕方ないなと言わんばかりの、やさしい笑みを向けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ