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「では、自分はこれで失礼します」
あれからノエにダリウスの帰宅時間や何の用ででかけているのかを聞いてみるも、「分からない」とのことだった。
結局なにの情報も得られないまま、ノエは部屋を出ていくことになり、いまは部屋にリリスとルーナのみ。「無愛想な方ですね」というルーナに苦笑しつつも、リリスははぁと息をついてソファに座った。
「……私たちは、彼らに歓迎されていないということよ」
諦めたように呟いたリリスの言葉に、ルーナは眉を下げた。
「歓迎されてないって……」
「王族の人間だというだけで、敵意を向けてくる人はいるものよ。王城という守られた環境の中では、そんな声が城の者にまで届くことはないけれど。ここは王都からずいぶん離れた場所だもの」
リリスは、つい先日王城で行われた結婚式のことを思い出した。夫となったダリススの冷めた瞳。まるで感情がなかった、あの目はリリスのことなど一切映していなかった。
「とにかく、今はここでの生活に慣れることだけを考えましょう。ルーナも疲れたでしょうから少し休んで。それから、城内を案内してもらいましょう」
「わかりました」
部屋を出ていくルーナに手を振り見送ると、リリスはひとりきりになった部屋で大きなため息をついた。
「……疲れたわ」
王都から随分離れた場所にあり、その道のりも楽なものではなかった。途中、この辺りの様子も眺めようかと思っていたものの、疲れてそれどころではなく、結局馬車の中で休んでいたのだが。
ソファのひじ置きに腕をついてもたれかかり、目をつむるリリス。夫のダリウスが自分に対して、いい印象を持っていないことは結婚式の日に嫌というほど感じたことだ。それでも──。
「ここまで歓迎されていないとは思わなかったわ……」
はぁと大きなため息を再びついたリリスは、さてどうしたものかと思案した。




