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私と黄金竜の国  作者: violet
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鏡のゆがみー4

結局ギルバートは、マリコが謝る前に泣きついた。

「心配した、心配した」

王国から全速力で飛んで来たとのは分かっている。マリコも本当は感謝しているけど、言葉にするのが恥ずかしい。


マリコの手を握り、ギルバートは歩いている。

その先には、アレクセイ、シンシアと関脇がピーちゃんを抱いて歩いている。

関脇がピーちゃんを抱く様子が、ポチ様を抱くのとは違い、緊張しているように、ギルバートには見えていた。


ピーちゃんが、異世界から落ちてきた場所に向かっているのだ。

ずいぶん離れてしまっているが、赤い花の咲いている木があった、という記憶を頼りに向かっている。


「赤い花咲く木なんて、あったかな?

今はもう咲いてないのかもしれない。」

ここに来るまで空から見た景色の中にはなかった、と関脇が言う。


どれ程歩いたらろうか、ピーちゃんが不意に顔をあげる。

「こっち」


羽を羽ばたかせてピーちゃんが先導するかのように歩くと、木々は少なくなり、とうとうジャングルから出てしまった。

人の町にはまだ距離があるのだろうが、ポツリポツリと岩場に木が生えている。

「こんなところに落とされたの?」

シンシアが尋ねるのを、頷いて肯定するピーちゃん。


関脇がアレクセイの袖を引いている、何かシンシアに聞かれたくない話があるらしい。

「兄上」

言葉は、魔法でアレクセイに直接届くようにしている。

腕の中のピーちゃんには、絶対に聞こえないようにするためだ。


「母上が信用しているようなのですが、僕は心配です。

あの姿は、擬態かもしれません」

ピーちゃんの妖精のような可愛い姿が心配だと関脇は思うのだ。


「何もわからない異世界からの生き物を信用して大丈夫なのでしょうか?」

アレクセイも同意見である。

用心するに越したことはない、黄金竜であっても油断は大敵である。




それは突然の事だった。

岩場の低木に突然、蕾ができ、さらに花が咲き始めたのだ。それは血のように赤い花。

「あの木!」

ピーちゃんが関脇の腕から飛び出し、木に向かう。

そのピーちゃんを関脇が追いかけ、掴むと背中に羽を出し、飛び上がった。


アレクセイはシンシアを、ギルバートはマリコを引き寄せると後ずさり、岩場から離れる。

「あれは木ではない。蟻地獄の触手だ。

幻覚を見せて獲物を引き寄せるのだ。そして触手で捕獲して地面の下に引きずり込む」

ジャングルが広がらないわけである。そこは蟻地獄の巣なのだから。


関脇に抱かれたまま、ジャングルの入り口に戻ってきたピーちゃんは、アレクセイから説明を受ける。

「幻覚で好みの異性を見せ、あそこに誘うのだろう」

幻覚で見たイケメンから逃げ出さなければ、ピーちゃんは蟻地獄の餌になっていたのだろう。


ギルバートを振り切って、マリコがピーちゃんを関脇から取り上げる。

「可哀そうに!

蟻地獄の幻覚に騙されて、餌にされかかったなんて」

マリコの腕の中から、ピーちゃんが逃げようと藻掻(もが)いている。

「ちょっと、暴力女。離しなさいよ、苦しい!」

どんなに足掻(あが)いても、マリコの腕の力は緩まない。


「放さないと血吸うわよ!」

ピーちゃんが叫んだ言葉に反応したのはギルバートである。


「マリコの血を吸うと言ったのか?」

ギルバートから、周りの気温を下げるような冷気が漂う。

ピーちゃんも震えあがって口を押えている。


「ギルバート!

ちゃんと果物のご飯あげて、お腹空かせないようにするから、ピーちゃん飼いたい」

血を狙われているマリコが、ピーちゃんを助けに入る。



「また、変わった生き物がやって来たのう」

そこに現れたのは、ジョシュアに連れられたポチ様である。

「どうやら、鏡がその生き物に反応したんじゃろうな」

マリコは寂しい生き物を引寄せるから。


「すごいイケメン」

ピーちゃんがジョシュアに見惚れて、ポツリと漏らす。


「あー、大体はポチ様の鏡で状況が分かっている。

血を吸っちゃだめだよ」

ジョシュアがピーちゃんに諭すように言うと、元気な返事が返ってくる。

「はい、もちろんです。

血を吸ったら身体を大きくできるけど、そんなことしません!」

ピーちゃんの身体が白く光った。


「その言葉を違わぬように、誓文をかけておいた」

ポチが安心しろ、とばかりにギルバートに言う。


「兄上は僕のだから」

関脇がジョシュアに引っ付いて、ピーちゃんに威嚇するように言っている。マリコが笑いながらピーちゃんを取り上げると頭をなでた。

「ここでずっと一人で寂しかったね。

これからは一緒だよ」


「結局、こうなるのね」

シンシアも笑いながらピーちゃんをなでる。

竜の男達からかけられた嫌疑を晴らすのは時間がかかるだろうが、マリコの側に居場所が出来、時間はたっぷりある。


「ありがとうございます」

ギルバートがポチに礼を言うと、当然じゃ、とポチがジョシュアの腕の中でふんぞり返る。


「さぁ、帰りましょう。鏡が待っているわ」

マリコが皆を急かして、黄金竜になったギルバートに乗る。



夕焼けに燃える空を、黄金竜と黒銀竜の一群が飛んでいく。


黄金竜一家に、ちょっと危険な家族が増えた。

鏡とピーちゃんが意気投合するのは、すぐの事である。

追加編、これで終了となります。

最後までお読みくださりありがとうございました。

violet

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― 新着の感想 ―
大好きなお話ばかりですが、胸が苦しくなるのが多く覚悟して読んだら大爆笑。クスクスや突然の爆笑で楽しかったです。
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