エピローグ
『隼人ー生まれてきてくれてありがとー。大好きよー』
『隼人、僕と美香の元に生まれてきてくれてありがとう。どんな時もお母さんとお父さんが見守ってるからね』
ブチッ──
「ひゃー!!まだ続きがあるのにー!!」
「終わったじゃん。早く帰ってよ」
「終わってないし帰らないわよー!!」
「どういうつもり?いきなり来てよくわからないDVD見せられて意味がわからないんだけど」
「私と琉依さんの馴れ初めなの!!どうだった?感動した?」
「どこにどう感動するの」
「酷い酷い!!隼人の意地悪!!」
隼人が生まれて26年が経った。私と琉依さんが出会ってから隼人が生まれるよりも何倍もの時間を隼人の母として過ごしてきた。辛いことも悲しいこともあったけど嬉しいことも楽しいことも幸せなこともたくさんあった日々だった。隼人にとっても辛くて苦しい思いをたくさんしてきたけれど、だからこそ今幸せな隼人を見ていると本当に嬉しいの。相変わらず意地悪なことばかり言われるけど。
「隼人さん、お義母さんに意地悪しちゃ駄目だよ。お義母さん、私すごく感動しました」
「わー!!椿ちゃん本当にー!?やったわねー琉依さん!!」
「やったね美香。頑張って作った甲斐があったね」
「そうねー!!」
隼人は椿ちゃんという可愛くて素敵な子と出会って変わった。とてもたくさんのことがあったけどこうして2人が結婚して一緒にいるところを見られてとても嬉しい。
「いったいどういうことなんだよ。なんで両親の馴れ初めをアニメにして見せられなきゃなんないんだ……」
「だって私と琉依さんの馴れ初め聞きたいって言ってくれたから頑張ったのよー」
「僕の知り合いに頼んでアニメを作って僕たちで本人の声をあててね。大変だったよー」
「馴れ初め聞きたいだなんて言ってないよ」
「椿ちゃんが言ってくれたのー!!」
「そうなの?椿が?」
「うん、お義母さんに聞きたいですって言ってたよ」
「それなら良いや。でも休日にいきなり押し掛けてきて見せられる意味がわからない」
「だって椿ちゃんが午前中はおうちにいるって言うから新幹線に乗ってわざわざ来たのよー」
「わざわざ来なくて良いんだってば。せっかく椿と楽しい買い物に行く予定だったのになんで面倒な親の相手しなきゃなんないんだよ」
「ぷんぷん!!お母さんとお父さんにそんなこと言っちゃいけないんだから!!」
「いい年のくせにぷんぷんとか言うなよ。四十過ぎのくせに。年考えろって」
「むー!!意地悪ー!!」
「隼人さん、意地悪しちゃ駄目だってば」
「美香は何歳になっても可愛いよ」
「えへへー!!琉依さんも何歳になってもかっこいいわ!!」
「ほらまた始まったオープンイチャイチャ……。椿言ってくれれば午前中に出かけたのに」
「私もお義母さんたちが来るとは思わなかったよ。今日は午後にお出かけしますって言ったらじゃあ午前中楽しみにしててねって言われてその前に美味しいお菓子のお店ができたって話をしてたから送ってくれるのかなーとは思ってたけど」
「これなのよー。甘くて美味しいポップコーン!!映画鑑賞みたいでしょー」
おうちの近くのショッピングセンターの中にできた専門店で買ってきたポップコーンを食べながら言うと隼人はため息をついちゃう。
「もうどうでも良いや」
「隼人は甘いもの食べれないからお煎餅だよ。美味しいでしょ?美味しいよね」
「はいはい、うまいうまい」
「ねーどうだったー?DVD!!」
「どうもこうも暇人だね」
「むー……。隼人と椿ちゃんにわかりやすく馴れ初めを教えてあげようと思ったのにー」
「しかもちょいちょい昴の声とか若菜の声だったし」
「都合がつかない人もいてね」
「しかも聞いてた話と微妙に違ってたし」
「何十年も前のことだし木村くんとかが酒のつまみにって話してごちゃごちゃにしていくから何が本当だったのかわからなくなっててね。でもこれを作るにあたって改めて思い出してみたり横山くんや堤くんたちに僕らがなんて話してたのか思い出してもらったりしたんだよ」
「ああ、思い出した。昴が横山さんって人も堤さんって人も頼りになるって言ってた」
昴はすごいの。小さい頃から琉依さんにたくさんプログラミングを教えてもらって今は琉依さんと一緒に働いてて昇さんたちが昴が会社に入ってくれて良かったって言ってる。
「そうだねー。横山くんも堤くんも昔から真面目だから僕が話した美香との話をよく覚えてくれてたよ。耳にタコができるくらい聞いたって言ってね」
「えー横山さんと堤さん耳にタコがいるのー?」
「馬鹿……」
「同じ話を何度も聞いたから可愛い美香の話をたくさん覚えてるんだってー」
「そっかー!!」
「ムカつく……」
「は、隼人さん……」
「あのねーでもねーこのあとが重要だったのよ」
私は隼人が止めてしまったDVDの続きを再生する。琉依さんが好きで隼人もよく聴いてるクラシックの音楽と一緒に隼人がハイハイするところとか若菜が生まれてきたところとか彩華さんたちが引っ越してくるところとかが写真風に流れてきた。それだけじゃなくて桜ちゃんの結婚式や翠さんの娘の萌香ちゃんが生まれた時のことも。
「げ……これは佳代子さんと竜二さんの……」
「そう、佳代子さんと竜二さんが結婚した時もすごく嬉しかったわー」
佳代子さんは竜二さんと結婚した。佳代子さんが竜二さんを追ってきて大企業になった貿易会社の社長夫人になって翔太くんと洋子ちゃんっていう2児のお母さんになった。
隼人はいろいろあって竜二さんと佳代子さんがオーナーをしてるマンションに住んでる。竜二さんと佳代子さんのおうちからすぐそばにあるマンションで社会人になる時に一人立ちした隼人が心配で堪らなかったけど2人が近くにいてくれるから少しだけ安心した。いくら朝早くに出れば新幹線で午前中に着くくらいの距離だとしても隼人は忙しいから構ってられないとか来ても勝手に遊んでてとか言って意地悪するから私もお母さんに会いたくなっても会いに行ってあげないんだからねってぷんぷんって意地を張っちゃってたの。椿ちゃんと結婚してからは椿ちゃんが優しいからこうやって遊びに来てるけど。
DVDでは次々思い出が流れてる。村岡さんがお店を出した記念にみんなで食べに行ったこと、関さんのスーツのお店が成功して高級住宅街に建てた関さんと翠さんのおうちに遊びに行った時のこと、昇さんと桜ちゃんの息子の太一くんが所属してたサッカークラブが優勝して桜ちゃんが昇さんに抱きついて夫婦になって何年も経ってるのに昇さんが赤くなっちゃってた時のこと、小林さんと加代子さんの息子の健太くんは2人とはまた違った理系の子でなんとかって大会で最年少優勝した時のこと。
太一くんは昇さんの跡を継ごうと会社に入って昴がお仕事のことを教えてるんだって。健太くんも学校を卒業したらお父さんの会社に入りたいって言ってるみたい。琉依さんたちの会社は50人以上働いていて日本で有名なIT企業になった。憧れの会社って言われててすごいなって思う。そして、木村さんだけど今も独身のまま。でも隼人に構うのもみんなの子供たちと遊ぶのも楽しそう。
「あ、これは翠さんに怒られてる村岡くんだよ。沙織ちゃんがお店に働きにきたから」
沙織ちゃんは専門学校を卒業してウエイトレスさんになりたいって言ってお父さんにお願いして村岡さんがオーナーをしてるお店で働かせてもらった。村岡さんのお店は今ではお星さまがつく高級イタリアンだけど当時からすごく人気があって、お父さんが無理かもしれないけどって頼んだら村岡さんはちょうど1人辞めたばかりだからって私たちのお友達だって知らないでオッケーしたの。
それから沙織ちゃんは中学生の時に村岡さんを見てかっこいいって思ったんだって教えてくれた。もしかしてそれでお店に?って積極的だって思ったんだけど人気のお店でウエイトレスになりたいって思っただけで村岡さんとどうにかなりたいと思ったわけじゃないって言ってた。11才も年上だから憧れだと思うって。だけど村岡さんのお店で働くだけでもあり得ないって翠さんたちが怒って村岡さんがそんなこと知らないんですけどって、じゃあ辞めさせますかって言うからそれは沙織ちゃんが可哀想だってことでそのままになった。
村岡さんは隼人が大好きだから隼人に会わなくなってからも隼人のことばかり考えてくれてた。いつか隼人とまた仲良く話したいって言いながら琉依さんや私が話す隼人のことを沙織ちゃんと仕事始めや終わったあとに話しているうちにお互い惹かれ合って沙織ちゃんが27才の時に付き合い始めた。隼人のことを気にかけてくれていて隼人とまた仲良くお話しできるようになってから2人は結婚した。その間翠さんたちはモヤモヤイライラってしてたんだけど沙織ちゃんは隼人のことが大好きな村岡さんが好きだから昇さんの時みたいに脅したりしないでって言った。沙織ちゃんはほんわかして可愛いけど立派に沙織ちゃんらしい生徒会長を務めてたくらいしっかり自分を持ってる子だから翠さんたちも沙織ちゃんがそれで良いならって言ってた。
「沙織ちゃんには驚かされたよ。翠さんたちを出し抜いてくれれば良いのにって思ってたけどまさか村岡くんとって。学生時代元々の元気な子だったし人や動物を慈しむ姿は聖母のようだとか言われてたらしいけど翠さんみたいに凛としてて加代子さんみたいに博識でかこさんみたいには怪力じゃないけど逞しいというか争い事に突っ込んで仲裁したり桜ちゃんみたいに生徒たちと距離の近いある意味最強の生徒会長になっただけあって翠さんたちを発狂させてたよ」
「そのアグレッシブさがみおに似なきゃ良いけど……」
「美織ちゃんは沙織ちゃんにそっくりよねー」
沙織ちゃんと村岡さんの間には美織ちゃんっていう可愛い女の子が生まれた。まだ幼いけど活発で元気で沙織ちゃんの小さい時にそっくり。隼人は生まれた時から可愛がってて帰省するたびに遊びにいってる。
「ねー隼人はどこが感動した?あそこー?それともあそこー?」
「感動したなんて一言も言ってないよ」
「むー……。じゃあ気になったとこはー?」
「優菜さんと翠さんはいつバチバチしなくなったの?」
「隼人は優菜が好きねー」
「違うよ」
「私の結婚式の時のことなんだけどね、私が知らない時に私のお友達が優菜に結婚相手が意外だって言ったの。あ、でもね、その子は悪気があったわけじゃないのよ。お義父さんの付き合いでも琉依さんの付き添いでもパーティーに来なくなってたから寂しいなーみたいな。みんなお嬢様言葉だったり話すことで誤解されちゃってみんなが言うバチバチってしちゃうらしいんだけど本当はみんな良い子なの。それでその子はね、優菜はお金持ちの御曹司とか芸能人とかそういう華やかな人と結婚して奥さんとしてまたパーティーに来るようになると思ってたって言ったのを優菜が嫌みだと思っちゃって。でも優菜が喋る前に翠さんが言ってくれたんだって。優菜は好きな人と添い遂げることを決めたんだからみんながいろいろ言っちゃ駄目よって」
「ちなみに美香用にやんわり補正されてるけど、いつもみたいに偉そうに言ってたってかこさんが言ってたよ」
「ふーん……」
「それでねそれでね、地方公務員は立派なお仕事だし浩一さんはとても優しくて誠実で真面目な人だからそんな素敵な人を相手に選んだ優菜は幸せなのよって言ったんだって。優菜もみんなとはもう会うことはないけど大好きな人の奥さんとしてやっていくから元気でねって。それからなのよ、優菜が翠さんと仲良くできるようになったの。優菜は小さい頃からパーティーで知り合いだった子たちとは会わなくなっちゃったけど翠さんと加代子さんとかこさんとはそれまで通りよく連絡を取ってるの。それから桜ちゃんと沙織ちゃんともね。優菜って私よりもずっと前から昇さんのことや村岡さんのを知ってるから2人の話をしてあげてたりしてね」
「へーそれは昇さんも村岡さんも厄介だったろうね」
「桜ちゃんも沙織ちゃんも喜んで聞いてたから何も言わなかったよ。僕たちの中では文句言ってたけど」
「ねー他にはー?」
「あれは嘘でしょ、おばあちゃんの予言とか」
「嘘じゃないのよー!!ちゃんと全部事実なんだから」
「これを作る時に聞いたんだけどね、母さんアメリカにいた時父さんについていく前に占い師に見てもらったそうだよ。それで日本の暮らしは自分次第だし子供も子供でなるようになるから心配ないって言われたんだって。酷いよね。それで心配なのは孫で、それは育てる親、僕と美香も含めてだからちゃんと前向きにポジティブに楽しく見守ってなさいみたいなことを言われたそうだよ」
「うん、やっぱり意味不明だね。おばあちゃんもその占い師も」
「でも予言は当たってたよ。小さな世界から羽ばたいてこの自由で広大な空を自由に飛び回るって。僕たち9人家族の小さな世界で育って椿ちゃんを好きになっていろんなことに興味を持てるようになって隼人の世界は広がったんだから。飛び回りすぎてまさか物理的にこんなに遠い場所で離ればなれになっちゃうとは思わなかったけど」
「しかたないじゃん椿を追いかけにきたんだから」
「あ、あの、私もう少し近場に引っ越せば良かったですね」
「椿、そういう問題じゃないよ」
「そ、そうだよね」
「でも隼人と椿ちゃんに会えるし観光もできるし一石二鳥よねー。あ、佳代子さんと竜二さんにも会えるから一石三鳥?」
「美味しい食べ物もたくさんあるし良いよね」
「そうねー。このあとみんなで美味しいもの食べに行きましょうねー」
「は?だから帰れって言ってるじゃん」
「帰らないわよー。今日はお泊まりー」
「そんな話聞いてないよ」
「だって今言ったんだものー」
「無理!!」
「泊まるのー」
「無理無理!!」
「泊まるの泊まるのー」
「まあまあ、2人とも落ち着いて。このあと出かけたら隼人疲れて追い返す気力もなくなってるよ」
「そっかーそうよねー。いつも疲れちゃってぐったりしちゃって大人しくなるわよね」
「なんて悪い親なんだ……」
「じゃあ見終わったしポップコーンも食べたしお出かけしよっかなー」
「あ、ちょっと待ってよ」
立ち上がろうとすると隼人に引き止められる。
「なになにー?もっと感想お喋りしてくれるのー?」
「……病院」
「ほえー?」
「病院。あの時も親父優菜さんのこと思い出した?」
私は琉依さんと顔を見合わせる。
「怖かったけどそれは隼人を失うのが怖かったからだよ。隼人がお腹にいるってわかった時にも思ったけど病院が、お医者さんが隼人を助けてくれるって思ってたからそういう怖さじゃないよ」
隼人は大学生の時小さな女の子を助けようとしてトラックにはねられた。3日間目を覚まさなくて隼人を失うんじゃないかって怖くて怖くて堪らなかった。あの時のことを思い出して涙が溢れると隼人がティッシュボックスをテーブルの上を滑らせて渡してくれる。
「あのね、あのね、すごく怖かったけど目を覚ましてくれてね、嬉じがっだー!!」
「泣かないでってば」
「よしよししてー!!」
「自分で言うなよっていうか自分で乗せるなよ……」
隼人の手を私の頭に乗せると乱暴に頭を撫でてくれる。
「えへへー嬉しいー。隼人生きててくれて嬉しいー。元気になってくれて嬉しいー」
「心配したよ。でもそれも隼人が赤ちゃんの時からずっとだから。親だからたくさん心配なんだよ。隼人ももうすぐわかるよ」
椿ちゃんのお腹には隼人の子がいるの。隼人ももうすぐ父親になる。
「今もうすでに心配だよ。こうやって母さんと父さんが急に押し掛けてきて胎教に悪いおかしなDVD見せられて。聞いてる赤ちゃんに変な母さん菌とかうつっちゃったらどうするの」
「むー!!なにそれー!!胎教に悪くなんてないわよ!!」
「そうだよ、失礼しちゃうね美香」
「本当よ!!ぷんぷん!!」
「また言ってるよ、母さんは馬鹿すぎて精神年齢幼稚園で止まってるのに実年齢は40代のおばさんだからイタいよね椿」
「もー……そんな風に言っちゃ駄目だって言ってるのに」
「美香はいつまでも少女の心を持ってて可愛いよ」
「えへへ、ありがと。琉依さんもずっとずっとかっこいいわ」
「また始まってしまった……。油断も隙もない馬鹿夫婦だな。話戻すよ。優菜さんが苛められてたこと自体知らなかった。昔からやたら肌出してたから傷のことは知ってたけど」
「んー昔のことだからね」
「そうね。隼人もだし若菜も苛められてたわけじゃないし今では珍しくないものね」
「高校には俺と若菜だけだったけど別の学校にも家の近くにもいたんじゃない?若菜は自分で嫌われにいってるからぼっちなんだよ」
「隼人さん、嫌われにいってなんかないよ」
「いってるよ。生意気でムカつく」
「ムカつかないよ」
椿ちゃんは若菜の高校時代からの親友。私と優菜みたいでずっと仲良しなの。
「けどクォーターで面倒な目に遇うだけだよ。やっぱり父さんたちの時代とは違うのかな」
「そうだね。ねえ隼人、僕は不幸だったと思う?可哀想だった?」
このDVDを作るために私と琉依さんは26年以上前のことをたくさん話した。この時はこう思ってたって。それまでは本当に秘密にしていた保育士になるのをやめた理由も話して琉依さんは考えてくれた。琉依さんは可哀想で不幸な子だったのかなって。琉依さんは自分が不幸だったのかわからないけど今もし過去に戻ったとしても同じことをしたと思うって言ってた。
隼人は少し考えてから言う。
「父さんが不幸だったのか可哀想だったのかはわからないけど俺は不幸でも可哀想でもないよ。だっていつも騒がしくて鬱陶しい家族がいたから」
それを聞いて私はまた涙が止まらなくなった。
「わ、また泣き出した……。いや待てよ……不幸か、騒がしい家族に迷惑してたんだから」
「えーん!!隼人大好きー!!」
「違うよ、迷惑してたの。って親父も泣いてた……。変な親だな」
「変じゃないよー!!」
「琉依さん、良かったわねー。隼人幸せだったって!!」
「違うよ、今は椿がいるから幸せだけど母さんたちはうざいから俺可哀想だった」
「さっきは不幸でも可哀想でもないって言ったわよー!!みんなに教えよーっと!!」
鼻を啜って優菜たちや翠さんたちやとにかくみんなにメッセージを送った。
「大袈裟な……。もう良いや、あ、そうだ、あのお守りもかなり重要なものだったじゃん。俺が20才の時母さんと親父が同棲してたとこの駄菓子屋のおじいちゃんに渡されたやつ」
「え、お守り見つかったんですか?」
「うん、あのね、ずっと琉依さんにもらった大きな鞄に入りっぱなしだったみたいなの。同棲してたところでお買い物してて家計簿をつけるようにって持ち歩いてたメモ帳を探そうと鞄をごそごそってしてた時かなにかで落としちゃったみたい。駄菓子屋さんのおじいちゃんが拾ってずっと持っててくれたんだって」
「へー!!そうなんですね!!良かったー!!」
「でも全然嬉しそうじゃなかったよ。懐かしいわねって言ってただけで」
「嬉しかったわよー。見つかると思ってなかったからびっくりしちゃったけど」
「そうだよ。嬉しかったから宝物ボックスに大切に入れてるよ」
「他のことでは無駄にはしゃぐのにわかりにくいな……」
「いや、本当にまさか見つかるなんて思ってなかったから懐かしいなって思ったんだよ」
私が琉依さんに渡そうとして渡せなくてどこかにいってしまったと思ってたお守りは長い時間を越えて琉依さんに渡すことができた。それはとても不思議な感覚でびっくりしたけど嬉しかった。
「じゃあそろそろお買い物に行きましょー」
「はあ……やっぱりついてくんのか」
「当たり前だよ」
私はDVDをデッキから取り出して前編と後編にわけた2つのDVDを隼人と椿ちゃんに渡す。
「はい、あげるわねー」
「え、いらないんだけど。持って帰ってよ」
「良くできたからみんなにも渡してるのよ。もちろんうちにもあるんだから」
「またゆっくり見てよ」
「見ないよ」
「隼人さん……。見ますね、お義母さんお義父さんありがとうございます」
「で、このタイトルなに?本物の彼女になりたいって。このDVD作ってる時にさすがに2年間仮の彼女だったわけじゃないってわかったでしょ」
「うん、そうなのー。私の誕生日を初めてお祝いしてくれた時だなんて思わなかったわー。30年越しの新発見ねー」
「じゃあなんなのこれ」
「私は琉依さんに会ってからいつも投げ出してた勉強もお料理も頑張ってた。もしその時本物の彼女になれたって思ってたら頑張ってたかどうかわからないし琉依さんに好きになってもらいたくて楽しいこと嬉しいことだけじゃなくて辛いことも悲しいこともたくさん乗り越えてこれたの。それがあったから今の私がいるの。昇さんと木村さんが言ってくれたようにあの2年間勘違いしていたんだとしても私にとっては本物の彼女になりたいと思って頑張ってたのが事実だから。それにあの2年間で経験したいろんなことがあって成長できてたからやっぱり私は未熟な仮の彼女だったって思うの。だから本物の彼女になりたい、そのために頑張った私と琉依さんの馴れ初め物語なの」
「変なの」
「なんでー!?椿ちゃん、ねえなんで変なのー?」
「変じゃないです。素敵ですよ」
「そうよねー。もう!!隼人の意地悪!!」
私と琉依さんが出会って恋をして結婚して隼人が生まれて、そして隼人が椿ちゃんと結婚してその子供がもうすぐ生まれる。あの日琉依さんに出会った時からずっと続いてる。隼人が生まれてからも楽しいだけじゃなくて辛いこともたくさんあった日々だったけどさっきの隼人の言葉でみんなで見守ろうって決めて自分たちのできることを考えて明るくて楽しく賑やかに過ごしてきたことは間違ってなかったんだって思った。隼人を元気にさせられてたんだ。
「嬉しいわねー琉依さん」
「嬉しいね美香」
「幸せねー琉依さん」
「幸せだね美香。子育ても落ち着いたし温泉旅行でも行こうか」
「良いわねー行きましょ!!」
私が結婚した時にお母さんとお父さんが言ってたことを言うほどあれから長い時間が経ったんだなって思う。でもこれから先ももっとたくさんの時間を琉依さんと過ごしていく。いつまでもずっと。
「美香」
「琉依さん」
「「愛してる」」




