運命と予言(琉依視点)
美香の誕生日が終わってからも結婚式の準備に仕事にと大忙しの日々を送ってる。そんな中でも美香といるだけで穏やかで楽しくて幸せな気持ちになれて、大忙しでもとても充実した素晴らしい生活をしている。そんな時に不意討ちで送られてきた手紙にはヒヤリとした。お義母さんが美香に届いたって言って小さな段ボールいっぱいに送ってくれた手紙は美香のことが大好きな人たちからのお祝いメッセージだ。お店のお客さんに美香が結婚すると伝えたからなのと木村くんが言いふらしたのとで大量の手紙を直接受け取ったり送られてきたそうでうちに送ってくれた。本当に美香は愛されてるんだなって思いながら嬉しそうに手紙を読んでいく美香を見ていたら川原さんからの手紙だと言い出して思わず美香の手からその手紙を取った。そしたら美香が私のだから取らないでって言って泣く一歩手前になって慌てて返した。テレビで活躍してる姿は自分らしく頑張ってるんだなって素直に応援して見てるけど美香に接触してくるなんてどういうつもりなんだとか美香が辛い気持ちになるんじゃないかとか思ったけど美香は泣きそうになってたのが嘘のように嬉しそうに手紙を読んで僕にメールで返事をしてほしいって言ってきた。別れた元カノは川原さんに限らず全員すぐ連絡先を消してたからそれをそのまま伝えると残念だって落ち込んじゃうから嫌じゃないのって聞いた。そしたらなんでもないようであの日美香を探す手伝いをしてくれたことは話してあったからそのお礼ができてなかったから言いたいと言った。元カノからの手紙なんて嫌だろうとまた辛い気持ちになるんじゃないかと思ったのに美香は手紙をくれた他の人たちと同じようにただ喜んでるようでなんとも言えない気持ちになった。気にしてるのは僕だけなんだと思って、でもそういうところが美香らしいと思った。そもそも川原さんが美香に直接なにかをしたわけじゃなく木村くんが悪いんだったと思って、美香に琉依さん怖い顔してるって言われた顔を元に戻した。手紙と押し花を送ったら川原さんがテレビでその話をしていて過去付き合ってた川原さんがテレビで活躍してる人気アナウンサーの川原明莉だというのが不思議な感じがした。
そしてまた月日が経ちお正月にみんなで集まった数日後に父さんから電話がかかってきた。
『美香ちゃんは?』
「美香に用事?お風呂に入ってるけど?」
『いや、それなら良い。美香ちゃんには言わずに意見を聞かせてほしい』
「はあ?どうしたの?」
『優菜がついにあのまま20才になってしまっただろう』
「破天荒なお転婆娘のままってこと?」
『そろそろ本当の本当に落ち着いてほしい』
「切なる願いだね。また家に押し掛けられたんだ」
相変わらず無茶苦茶な別れ方をして家に押し掛けられているそうだ。あの20才以上年上の人とは向こうからだったそうで押し掛けにはきてないけど。父さんはその20才以上年上の自分と年の近い人を連れてこられたのが相当堪えてしかも懲りずにまだ付き合って別れてを短期間で繰り返されて、しかも僕と美香はもうすぐ結婚だから優菜も本気で落ち着いてほしいといったところだろう。
『良さそうな人を見つけた』
「そうなの?」
『仕事の付き合いで会ったんだがなかなかの好青年だ』
「ふーん……いくつ?」
『28』
「それでも僕より上かー……まあ優菜にはそれくらいが良いのかもね。で、どんな人なの?」
『剣道ができる』
「まさかそれだけ?父さんと気が合うってだけ?」
『そんなはずないだろう。あまり自己主張のしない気の小さい男だが芯は強くまっすぐな太刀筋で』
「いやいや、剣道の話じゃなくて」
『性格も同じだ。前に出ることはないが下がりすぎることもない。それに話を真面目に聞いてくれるんだ。アンナはよく話すが口を挟みすぎると怒るだろう。優菜も同じだから父さんに似た人が優菜に良いはずだ』
「んー……ちなみにルックスは?」
『よく鬼のようだと女性や子供に怖がられるそうだ』
「それ駄目だよ。優菜父さんみたいに厳つい顔は嫌だって言ってたし」
あ、父さんが無言で落ち込んじゃったのがわかる。
「ごめんごめん、でも本当なんだから仕方ないよ」
『だが良いやつなんだ。娘が男に見境がなくて困ってると話したら姉も付き合うたびにこきつかって相手が可哀想だと言って真剣に話を聞いてくれるんだ』
「ちょっと、優菜のこと話しちゃってるならそこでアウトだよ。そんな子嫁にもらおうなんて思わないでしょ」
『わからないだろう。とにかくそんな男がいるんだ。どう思う?』
「どう思うって優菜も無理だし相手も無理だと思うよ」
『うむ……そうか』
そんな話をして電話を切った。父さんは縁談をさせて早く落ち着いてほしいと思ってるらしいけど相手も駄目だしその行為自体が優菜の反感を買うだろう。私の人生なんだから余計なことするなとか言いそうだ。まあ父さんもそれがわかってて美香に言うと優菜に伝わると思って美香がいない時に話そうと思ったんだろう。本気で参ってる父さんが諦めることはなさそうだけどどうなるんだろう。
そしてそれからまた数日後、今日は成人式だ。
成人式には真奈美さんからもらったオレンジ色の振袖を着た美香。初めてその姿を見た時もその次に着てくれた時もそのまた次もだけど本当に毎回可愛い。そして最後である今日は一段と大人っぽいお化粧と髪型にしてまばたきを忘れるくらい綺麗で感動した。でもへにゃって笑ってくるくる回って見せてくれるところは相変わらず可愛いらしかった。
成人式の会場で一度別行動で昇に電話して美香が可愛いよ昇も桜さんのについてけば良かったのにって言ったらそんなことするのは馬鹿だけだって言われてそんなことないよって言って、みんなにも電話で美香がとびきり可愛くて綺麗だって話して成人式が終わった美香を迎えにいった。そして電車に乗って美香が通っていた高校の最寄り駅に行く。優菜と遊ぶんだって楽しそうな美香は成人式をしたばかりなのに高校生に戻ったみたいだ。
「優菜ー!!」
電車を降りると駅の前に優菜と母さんがいた。美香は大きく手を振りながら優菜を呼ぶ。
「優菜綺麗ー!!可愛いー!!」
「ふん、当たり前でしょ」
「そうねー!!」
「美香もとっても可愛いわ!!私の娘たちは可愛いわね!!」
「わー!!お義母さんぎゅー!!」
「痛い痛い!!ママ!!」
母さんが美香と優菜を一緒に抱きしめる。
「琉依も一緒にぎゅー」
「僕は美香だけだよ」
賑やかに騒ぐ3人を見ていたら母さんが僕の腕を引っ張ろうとするからやんわり払って言う。
「まあ。お母さんにも優しくしないといけないのよ!!ぎゅー!!」
「わ!!……もう……」
母さんに無理やり抱きつかれる。なんで25にもなって母親に抱きしめられるんだって思うけど母さんだから仕方ない。
「えへへー楽しいわねー成人式ー」
「成人式はつまんなかったけどね」
「えーじゃあ今楽しいことしましょー」
そう言って優菜の手を握って大きく振りながら歩く美香の後ろを歩いて公園に行く。たくさん遊ぶからって持ってきてたスニーカーに履き替える美香と優菜。
「よーし優菜!!まずはブランコに乗ってみよー」
「やっぱ着替えてから来れば良かったのに……」
「えーこの方が楽しいわよーほら早くー」
そう言ってまた優菜の手を握ってブランコに向かって走る美香。
「ねー楽しいでしょー」
「んーまあ馬鹿っぽいけど」
「えーそんなことないわよー琉依さーん写真撮ってー」
「うん、撮るよー」
ブランコに乗る美香と優菜を持ってきてたカメラで撮る。可愛い。
そのあと名前がわからないけどグラグラ揺れる板に乗る2人も撮る。
「揺れ揺れー優菜楽しいでしょー!!ほらー!!」
「ちょっとー!!肩掴まないでー!!ぎゃー!!」
「はい次ー」
「だー!!急に降りないでよー!!」
「ジャングルジムー!!優菜ー早くー」
無邪気にはしゃぐ美香と怒りながらも楽しそうな優菜を見てると本当に高校生に戻ったみたいだと思う。あの頃思っていたように卒業して20才になっても変わらず仲の良い美香と優菜を見て微笑ましくて嬉しくなる。
回転するジャングルジムに乗って回してって言われるからカメラを母さんに渡して回す。きゃっきゃってはしゃいで可愛い。
そのあともいろいろ遊んでいく美香と優菜を撮っていて、ふとベンチに座っていた母さんに目を向けると楽しそうにこっちを見ていて目が合って手を振られたからそばに行って隣に座る。
「2人とも可愛いわねー」
「美香は可愛いよ」
「優菜と手を繋いでるからって焼きもち焼いちゃってー」
そう言って頬をつついてくる母さん。
「やめてよ、良いでしょ」
「ふふふ、琉依も可愛いわね」
「そんなことないよ」
「ねえ琉依」
「なに?」
「幸せ?」
急に言われて母さんをじっと見る。いつも通りにこにこ笑ってる母さんに幸せだよって答える。
「私も幸せ!!康介に出会って恋をして日本に来て琉依が生まれて優菜が生まれて大好きな家族に囲まれて幸せ。アメリカにいたらこんな幸せなことはなかった。女優じゃなくて康介についていく道を選んで良かったわ」
40才を超えてるのに18才に見える笑顔で言う母さん。母さんはお喋りなのにアメリカでの自分のことはほとんど話さなかった。ただ、今では知られていないけど当時は有名な女優だったらしい。それだけ美しく演技の上手い女優だったというのは最近ネットで見て知った。母さんが嫌がらせをされてもいつも馬鹿みたいに笑って明るくしていたのは苦しみを隠して演技していたのかもしれない。美香が僕のためにいつも泣かずに笑顔でいてくれたことにも気付けなかった僕だからそれにも気付かなかったのかも。前も思ったけど母さんは全てを知って馬鹿な振りをして明るく振るまってる気もしてくる。
「あ、私が女優をしていたこと琉依は知らなかったんだったわ!!」
「知ってるよ」
「えー!?そうなのー!?すごいわね琉依!!それとも引退して20年以上経つのに綺麗だからお母さんは女優やモデルだったのかもって思ってくれたの!?」
「……馬鹿」
やっぱり全部はわかってないし全部が演技なわけないか。すっとぼけたことを言う母さんにため息をつく。
「ため息をついていたらせっかくの幸せが逃げちゃうわよ。人生は明るく楽しく、一度きりの人生だから楽しむの。ため息ついてたらもったいないわよ」
「はいはい、そうだね」
母さんは立ち上がって僕に背を向けた状態で腕をあげて伸びをする。
「あー早く孫の顔が見てみたいわー」
「また言ってる……。そんなに簡単にはいかないよ」
「でも早く会いたいのよー。全ての神様に愛されたような才ある男の子」
「は?」
何を言ってるんだついに頭がおかしくなった。
「多くの人に愛され多くの才能に恵まれた奇跡のような男の子は小さな世界から羽ばたいてこの自由で広大な空を自由に飛び回るの」
両手を上げて上を向いてくるりと回ってから僕を見る母さん。
「なにそれ……?」
「勘よ勘、琉依と同じ。琉依よりも才能に恵まれたその子に待ってるのは苦しい茨の道かもしれない。だけどその子は必ず幸せになるから、世界一幸せになるから、だから琉依が苦しまなくて良いのよ。そう言っても責任感が強い琉依は自分を責めてしまうかもしれないけれどあなたには話を聞いてくれる人がたくさんいる。1人で悩まないで相談するのよ」
「なに?母さんは女優じゃなくて予言者なの?」
「だからただの勘よー。琉依も自分の勘を信じなさい。彼は大丈夫だから」
なにを言ってるんだろう、そう思ったけど僕の勘がこう言う。母さんの言葉を忘れちゃいけないって。
そのあとすぐに美香と優菜が高校に行くって言うから今度は美香と手を繋いでいって、高校の校舎を歩いて回った。
それから数日後にまた父さんから電話がきた。
「父さんなに?」
『家に呼んでみたんだ』
「は?何の話?」
『だから浩一くんに家に来てもらえるように頼んだ』
「誰浩一くんって」
『この前話しただろう』
「え?あ、ああ、あれね」
前に優菜に良さそうと思った人のことか。で、それがなんだって?
『成人式の美香ちゃんと遊んでる写真を見せた』
「僕が焼き増ししてあげたやつ?」
『ああ。今までとは違ってはっきり言った。破天荒で困ってるからもらってくれって。写真を見せてどうだ、性格は問題だが美人だろうと』
「父さん……」
そんなに優菜を嫁がせたいんだ。まあ、気持ちはわかるけど。
『そしたら断られてしまった』
「そりゃいくら美人でも男に見境ないとかマイナス情報ばかり聞いてたらそうでしょ」
『違う。年が離れすぎているしもっと似合う人がいると断られたんだ』
「はっきりそんな男遊びしてる女は御免だなんて言わないよ」
『直接会ってから考えてくれと言った。子供っぽいのが駄目なら一応人がいるとそれなりに品よく振る舞えるからと』
「んーまあ父さんの同僚つれてきた時は猫被ってるしね」
『だが来てくれると言ったからあとはなるようになるだろう。明日だ。琉依帰ってこないか?』
「そういうことか……。嫌だよ、僕がいたってその浩一さんに優菜に好印象もってもらうなんてできないから」
『やってみないとわからない』
「無理無理。だいたいそれなら美香もつれてくよ?美香に事情を説明しなくてもしてもうまくいくとは思えないよ。そもそも美香に話して優菜に伝わらせたくないんでしょ」
『うむ……仕方ない』
そう言って電話を切った。それからまた3日後に父さんからまたまた電話がかかってきた。どうやら浩一さんに改めて断られてしまったそうだ。いくら猫を被ったところでイメージは最悪なんだから仕方ないだろう。父さんもさすがに諦めたみたいだ。
その次の日美香と夜ご飯を食べてのんびりテレビを観ていると美香の携帯に電話がきた。優菜だって言って電話に出る美香。
「優菜ーどうしたのー?」
『運命の人に会った!!』
「えー!!そうなんだー!!どんな人ー?」
『パパみたいな厳つい顔のでかい人!!』
声が大きくて漏れて聞こえてきた言葉に思わず咳き込む。それはまさかあの!?
「へー!!お義父さんみたいな人なのねー!!」
『琉依兄みたいにビビビッてきたの!!』
「すごーい!!」
『ねえ琉依兄は!?』
「琉依さんー?いるわよー」
美香が携帯をスピーカーにしてテーブルに置く。僕は落ち着けって思いながら話す。
「声大きいから聞こえてたけどなに?」
『琉依兄聞いてよ!!パパに似てる!!これは琉依兄の勘とも合ってるよね!!これこそ運命の人に違いない!!』
「確かに父さんみたいな人が良いんじゃないとは言ったけど顔のことじゃ」
『とにかくこれが正真正銘本物の運命の人に違いない!!だって一昨日の夜にね、パパが家につれてきた他の爽やか風な3人よりその人にビビビッときたんだ。野獣みたい怖い顔してるのに私がおしとやかにお酒をついであげたらね、すみませんって困った顔しちゃってさ、きゅんってしちゃって!!昨日も今日もぼーっとその人のこと考えてて全然仕事どころじゃなくてこれは間違いないって!!』
なんてことだ。まさに父さんから聞いてる浩一さんという人が運命の人だと言う優菜。あれほど父さんみたいな厳つい顔は嫌だと言ってたのに。
「うん!!間違いないわよー!!それで何してる人なのー?」
『公務員で市役所勤めだって。28才で小西浩一さんって名前でね、パパみたいに剣道が得意なんだって』
「すごーい!!優菜たくさん聞いたのね!!」
『もちろん!!あ、もちろんおしとやかによ。相手は28才落ち着いた大人の男なんだから。琉依兄は25才のくせに落ち着きないけど』
「悪かったね落ち着きなくて」
『私プロポーズする!!』
「ほえー?」
「は?」
興奮してるらしいけどきっちり僕を貶すのも忘れない優菜に困った妹だと思いながら言うけど次の言葉に思考が止まる。
『プロポーズ!!』
「そ、そうなのねー!!そうだわ、優菜も浩一さんにご飯を作ってあげたら良いんじゃないかしらー」
『そうね、胃袋を掴まなきゃね。じゃあね!!』
美香は優菜が一方的に切った電話を見てから僕を見る。
「ところでプロポーズって結婚してくださいよね?一昨日会ったばかりなのにお付き合いしないで結婚?あ、お義母さんみたいな?」
「母さんは付き合ってなくても何度も会って出かけてたよ」
「そっか。あ、そうだ、優菜が自分から告白するの初めてねー。告白じゃなくてプロポーズだけど」
「うん……そうだね」
「琉依さん?どうしたの?」
まさか優菜が惚れるなんて思わなかったけど浩一さんはすでに断ってる。プロポーズを受けようとするなんてありえない。美香に言うのを口止めされてなくてもそんなこと言えない。どうしよう。
「なんでもないよ」
「成功すると良いなープロポーズ!!」
「初めて言うのにフラれるなんて荒れなきゃ良いけど……いや、荒れるか……」
とにかくプロポーズしてフラれる優菜の八つ当たりが僕にくるだろうから気が重い。
「むー!!フラれないわよ!!大丈夫なの!!」
「そ、そうだね」
言えなくてごめんって思って次の日仕事帰りに白いバラを買って美香に渡した。
それからまた数日後の夜。22時を過ぎてそろそろ寝ようと美香と支度をしているとチャイムが鳴った。こんな時間に非常識な。誰だろうと思いながら玄関に行ってドアスコープから見る。
「え、優菜?」
「わー優菜なのー?開けよー」
優菜がいて驚いてると美香がすぐにチェーンを外してドアを開ける。するとすぐに優菜が美香に抱きついた。
「優菜どうしたのー?」
「プロポーズ!!プロポーズしたの!!」
父さんが優菜に頼まれたから浩一さんに頼み込んでもう一度家に呼ぶと言ってたな。今日だったのか。
「わー!!どうだったのー!?」
「はいって!!結婚してくださいって言ったらはいって!!よろしくお願いしますって!!」
はあ!?なんで!?なんでなの!?僕の頭の中はパニックだ。
「わー!!成功!!やったわね優菜!!」
「緊張したー……」
優菜がそう言って美香に体重をかけるから美香が後ろに倒れそうになって慌てて支える。とにかくなにか間違ってるか騙してるかも……そうだ、惚れ薬でも盛ったのかも。優菜だし。
「なんでだろう、優菜惚れ薬でも盛ったの?」
「そんなことするわけないでしょ!!」
「惚れ薬ってなに?」
「本人はその気がないのに優菜に無理やりはいって言わされたんじゃないかと」
「そんなことないわよー。だって優菜こんなに美人さんだもの!!浩一さんも一目惚れしたのよー!!良かったわねー優菜ー」
「緊張して疲れた……今日はここに泊まるわ。明日土曜だけど仕事休みだし……げ、思わず来てしまったけどやっぱりポスター貼りまくりでキモい……よくこんな部屋で過ごせるわね……」
「ちょっと待ってよ、帰ってよ。そんなに文句があるなら泊まらなきゃ良いでしょ」
何を言ってるんだ。そもそもプロポーズして興奮してすぐに電車に乗って来たみたいだけど何してるんだ。本当に間違いでもなく本人の意思でプロポーズを受けたとしてその人を放ってここまで来るとはどういうことなんだ。今すぐ戻ってくれ。
「優菜お泊まりしてくれるのねー嬉しいー!!おいでおいでー!!私のクッションもあるのよー!!」
だけど美香は優菜が泊まるのが嬉しいようで優菜を部屋の中へと呼んでクッションを見せたりする。
どうやら回避できないらしい。ごく普通にお風呂に入って布団に寝る優菜。
「どんなだったの、優菜教えてー」
「ふふふ、きっと私の親子丼で胃袋を掴まれたのねー。今日は1人で来てくれてね、私が愛を込めて作った親子丼を食べて美味しいですねって言ってくれたんだー」
本当に胃袋を掴まれたのか?いや、だからってマイナスイメージを覆すだけの親子丼をまったく料理をしたことのない優菜が作れるはずがない。
「わー!!やったわねー!!」
「だから結婚してくださいって言ったの」
「は?そこで?」
その場には父さんも母さんもいたはずだ。シチュエーションがおかしすぎないか?もっと街灯の下で2人きりの時とかでするものじゃ……。
「煩い。琉依兄に言われたくない」
「どういう意味?」
「それでさー美香、さっきも言ったけど、はい、よろしくお願いしますって言ってくれたの。親子丼毎日特訓した甲斐があったわ。相当美味しかったのね」
「うん、そうねー!!」
「この手で作ったのよ、胃袋を掴むのと運命の人との結婚をこの手で掴みとったの」
そう言って寝たまま両腕を上にあげる優菜の指にはいくつも絆創膏が貼ってあった。なるほど、胃袋を掴まれたというか努力を評価してくれたらしい。だからってプロポーズを受けるなんて……浩一さんというのはどれだけ寛容でおかしな人なんだ。
「優菜頑張ったねー偉い偉い!!」
「ふん、もっと褒めなさい」
「すごいすごーい!!」
「あー疲れたー寝るー」
「うん、おやすみー」
優菜はそう言うとすぐに眠りについてしまったようだ。
「琉依さん、優菜良かったわね」
「うん、まあ頑張ったんだろうね」
とにかく浩一さんの真意はわからないけど優菜は落ち着いてくれるらしい。それは良い。願ったり叶ったりだ。
「ふふ、本当ねー」
「告白は男からって言ってたのに」
「ね。自分を好きになってくれる人に告白されて付き合うっていうのが優菜だったのに」
「本当に運命の相手には自分からいくんだね。偉そうなこと言って……来た時すごい動揺してたのに」
「すごく緊張したのねー」
「とりあえずこれで優菜も落ち着いてくれるし安心だね」
「そうね。早く浩一さんに会ってみたいなー」
「そうだね」
次の日放っておかれた浩一さんから改めて会いたいと言ってたと母さん伝えで連絡がきた優菜はドキドキするって言いながら出かけにいった。そしてその場で衝撃のすぐに一緒に住みたい発言をしたらしい。それにびっくりなことに浩一さんも快諾したそうだ。父さんが、あれほど断っていたのにプロポーズを受けるというのは納得がいかないと言っていたけど良いと思っていた人が結婚相手になってくれることには喜んでいた。




