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答え(美香視点)


 翠さんと関さんの結婚式が終わってから数日経って、翠さんにちょっと落ち着いたから集まりましょって言われて、翠さんの別荘に加代子さんと佳代子さんと桜ちゃんと集まった。


「見て見てー!!じゃん!!」

「かこ、お茶やお菓子があるのにいきなり広げないで」

「はいすみません翠さん!!でも桜がどかしてるから大丈夫です」

「はい、お菓子は無事ですわ」


 佳代子さんが取り出したのは地方紙。それを見ると笑顔の桜ちゃんが写っていた。


「すごーい。桜ちゃん載ってるー」

「西園寺桜嬢婚約だって!!芸能人か!!」

「ちょっとかこ、腕危ない」

「加代姉さんごめんなさい!!でも読んでください!!」

「まったく……西園寺家の長女桜さまのご婚約が決定した。お相手はIT企業の社長。レヴィールのサイトを手掛けたとかいろいろ会社のことが書かれてるわね」


 加代子さんが読み上げる地方紙には桜ちゃんのことや昇さんのことが書かれていた。


「ここここ!!女神とも称された社交界の華の一大ニュースに多くの男性が肩を落とすだろうだって!!」

「昇さん曲がりなりにも社長で良かったわね。どこの馬の骨ともわからない男が相手では桜のファンに刺されていたかも」

「ファンより翠さんに刺されるところでしたけどね」

「嫌だわ、冗談なのに本気にしてたんですもの、昇さん」

「もう、翠さん、昇さんに意地悪しないでください。そのことを聞いて昇さんそれで私のことをって思ってしまいましたわ。関係ないっておっしゃっていただきましたけど。ふふ、嬉しかったです」

「けど付き合うならすぐに桜の両親に挨拶に行きなさいと昇さんに命令して良かったですね!!これで桜に言い寄る男たちを追い払えました!!」

「まあスッキリしたし良かったわね」

「ですよね加代姉さん。翠さんが、付き合うことと結婚は同じと自分でおっしゃっていたのだからご挨拶して婚約者として認めてもらいなさいって言った時の昇さん面白かったー。電話だったのが残念。ご挨拶どんなだったの?緊張してた?」

「はい、とっても。たくさん噛んでて何を言ってるのかわからなかったんですけどすごくかっこよかったです」

「なぜ?それのどこにかっこいい要素があるのか私にはさっぱりわからないわ」

「私もです。いまだに昇さんの何にそこまで惹かれるのかわかりません」

「かっこいいですよー。そうだわ、昇さんが私がいるならパーティーにも行って良いって言ってくださったんです。その代わり俺のそばから離れるなって。可愛いですねー」

「かっこわる……」

「そこ美香ちゃんならかっこいいって思ってしまいそうね」

「ほえー?かっこよくないですか?」

「昇さんはパーティーが嫌すぎて疲れるから桜に全部任せようって思ってるの。なんて男らしくないのかしらねー」

「でも可愛いです、おどおどしてる昇さん」

「桜っておかしな趣味ね」

「加代子も修平さんの目立たないところが面白いって言ってるじゃない」

「それはそうですけど」


 佳代子さんが地方紙をしまってまたお茶を飲んでお菓子を食べながらお話しする。


「ああ、なのでですね、次にある昇さんの会社とご縁のある会社のパーティーからご一緒いたします」

「あら本当?そしたら柊さんのところと槙原さんのところが重なってしまっていたの。琉依さんがいくら慣れて平気だと言っても別の問題があるから私たちが1人もいないパーティーに参加させるのはって渋ってどちらか辞退しようとしていたのだけど」

「それでは私が柊さまのパーティーに行って参りますね」

「ありがとう。美香ちゃん、琉依さんに私たちは槙原さんの方だと伝えてもらえる?」

「うん、わかったー」


 お茶会には翠さんがいなくてもみんな友達になった人だけだから安心だけどパーティーには知らない人もいるし、お茶会と違って男の人がいるから怖いんだって琉依さん言ってた。なにが怖いのって聞いたら女の子に取られるのは百歩譲って許せるけど男の人は駄目なんだって。とにかく女の人と仲良しになるのは良いけど男の人は駄目だって。男の人ほど翠さんたちの圧力っていうのが効いてる気がするのがわかったから翠さんたちがいないといけないんだって。だからそういうものなのかって思ってたけど桜ちゃんが加代子さんと柊さんの会社とはどのくらい付き合いがあるのかとか手土産は何が良いかとか話してる。いつも琉依さんが用意して渡してるのだって思う。加代子さんたちはいつも加代子さんが選んでるのかな。そう思って翠さんと佳代子さんに聞く。


「そうね、でも琉依さんだって明らかにおかしなものは用意しないし任せてれば大丈夫よ」

「でも慣れてきたら美香ちゃんも選んでみたら良いんじゃない?やりたいんでしょ?」

「佳代子さん……うん」


 最初の頃は琉依さんにこの人はなんて人だって紹介しなきゃって思ってたのにいつの間にか私がお喋りに夢中になってるだけになっててこれじゃ役に立ってない。佳代子さんがよしよしって頭を撫でてくれる。


「桜は小さい時からお父さんとお母さんとパーティーに行って慣れてるからね」

「桜が昇さんの相手になってだいぶ想定していたものと違ったけれど、これはこれで良かったわね。今みたいに加代子だけでは難しい時もあるし。……泣かなくて良いのよ、どうしましょう、私のせいかしら」

「……ううん、違うの」

「ちょっとかこ、どうして美香ちゃんを泣かせるの」

「え、なんで私なんですか!?むしろフォローした方……」

「美香ちゃんどうしたの?泣かないで」


 桜ちゃんは昇さんとお付き合いを始めたばかりなのに私と違って頼りにされて役に立てててすごいって思ったら涙が目に溜まって翠さん、加代子さん、桜ちゃんも頭を撫でてくれたり背中を擦ってくれて涙が溢れる。


「桜ちゃんがすごいなって……私はなにもできないのに……」

「……ごめんね美香ちゃん私……」


 桜ちゃんが謝ってくれるけど桜ちゃんは悪くないのにって頭を横に振る。


「美香ちゃん、前にもお話ししたこと覚えてる?」


 翠さんも佳代子さんも桜ちゃんも私が泣いちゃうからどうしようってなってて泣き止まなきゃって思うけどできなくてどうしようって思ってたら加代子さんがハンカチを貸してくれて言ってくれる。


「美香ちゃんは好きなことをしたら良いって言ったの覚えてる?」

「う、うん……」

「私たちも好きなことをしてるだけなのよ。だから美香ちゃんが自分ばかり好きなことをしていて良いのかなって思うことはないの。私たちもパーティーに持っていく手土産を考えたりパーティーで話したりお茶会で話すのが好き。一応修平を立てたりとかは意識するけど修平なんてただでさえ目立たないのに無理でしょう。関さんは逆で翠さんが引かなくても目立ちすぎるけど。極端な話がそれくらいなのよ。私たちだって相手の役に立とうだなんてそうそう意識してないの。美香ちゃんは保育士にならない方がいいのか迷っているから桜のことで余計にどうしようって混乱してしまったのかもしれないわね」

「美香ちゃん、適材適所なのよ。適材適所というのはその人の得意なことできることを生かせるところで頑張るということ」


 なんでか翠さんも泣きそうになっていたけど翠さんが話してくれる。


「私たちは小さな時、今の沙織ちゃんと同じ年くらいの時からパーティーに行っていたの。だから美香ちゃんより上手く立ち回れるというのは当然のことなのよ。それと同じように美香ちゃんには私たちにはできない美香ちゃんの得意なことがあるわ」

「翠さん……私お花と料理しか出来ないわよ?」

「得意じゃなくても美香ちゃんが普通にできてることが私たちには難しいことよ。電車に乗るのも値切りをするのも私たちには中々慣れなくて戸惑うことばかりなの」

「えーそうなの?」

「ええ、そうなのよ。どちらが良いとか悪いとかという話ではないわ。育った環境が違うのだから当然なことなの。宗一郎さんが大学生の頃私にはお金持ちではない生活はできないから私と一緒にならない方が良いと思っていたそうなの。それを知ったのは最近のことなのだけど、もし仮に私があの頃聞いて、美香ちゃんともあの頃からお友だちになっていたら、きっと私は宗一郎さんが望むのは美香ちゃんのような子だって美香ちゃんが羨ましくなったと思うわ」

「私?どうして?」

「安くお買い物をして家計簿までつけてしっかりお金の管理をして細かいところも隅々までお掃除をして、そういう家庭的でしっかりした子が良いと思うからよ」

「私商店街のみんながおまけしてくれたり安くしてくれるからこれも一緒にしてくれたら嬉しいなって言ってるだけだし家計簿も書くだけで計算するのもこうした方が良いかもねって考えるのも琉依さんがやってるしお掃除もやりたいって思いながら忙しくて中々手が届かないの」

「それでも私たちではそんなことを考えもしないのよ。美香ちゃんが倹約家でしっかりしたお母さんの元で育って教わったから。美香ちゃんができないことが私たちにはできるのも私たちにできないことが美香ちゃんにできるのも育った環境が違うのだから当たり前。だけど私もやりたいから頑張って電車にも乗れるようにしたし車も運転できるようにしたし桜も同じよ。私たちはやりたくて自分の好きで頑張ってるだけ。だから美香ちゃんもやりたいことを一生懸命頑張れば良いの。美香ちゃん、答えが出ないから焦ってるなら私たちが美香ちゃんはこうしたら良いんじゃないかしらって思ってることを話してもいい?保育士になるのかそうでないか。でも前から言っているように答えは美香ちゃん自身が決めるものなの。後悔しないように自分が納得できる答えを見つけないといけないから今までは言わなかったけど話を聞いてそれをそのまま答えにしないで最後は自分で決められると約束できる?」

「うん、できるわ」


 翠さんたちはどう思ってるんだろう……。


「私たちはね、保育士にならない方が良いと思うの」

「ならない……」

「そう。美香ちゃんはおうちで琉依さんのことを思って家事や育児に専念した方が良いと思うの。理由はさっきも言ったように美香ちゃんは家庭的だし愛情深いから琉依さんや生まれてくる赤ちゃんにたっぷり愛情を注いで過ごしているのが美香ちゃんに合っていると思う。もっと言うと美香ちゃんはパーティーにも出ないでおうちのことをしていても良いと思う。琉依さんは平社員なわけなのだし必ずしも絶対行かなきゃいけないわけではないものだもの。以前は琉依さんが美香ちゃんに会わせてくれないから早く会わせてほしくてパーティーには夫婦同伴が絶対だって言ったり家にいてばかりではつまらないでしょうと言っていたの。実際にこうして美香ちゃんと会えてたくさんお話しして、美香ちゃんはパーティーでもみんなの人気者になってお茶会にもたくさん誘われていて今は美香ちゃんは社交界にいてもらわないと困ってしまうくらいファンがたくさんいるからパーティーに来てほしいけれど、美香ちゃんは家庭に専念する方が向いてるとも思うわ。この前のレヴィールの時のように会社の全員が招待を受けて参加するとか会社の創立記念で主賓だったり、そういった時だけ参加するとか、いくらでもあるのだからそうして、あとはおうちのことを一番に考えたら良いんじゃないかしら」


 翠さんの話を聞いてる間に涙が止まっていて、話を聞いてからそんな生活を思い描いてみるとすごくしっくりきた。だって遥さんと話して想像していたのもパーティーのことを考えずに琉依さん、琉依さんの子、優菜、優菜の旦那さん、優菜と旦那さんの子とごく普通に過ごす日常ばかりだった。それに休みの日は6人でピクニックに行ったり遊園地に行ったりするの。でもパーティーでお友だちになったみんなと会えなくなるのは嫌だしパーティーやお茶会でみんなとお話しするのは好き。

 私がやりたいことは琉依さんを元気にすること。琉依さんと過ごしてきて琉依さんのことをたくさん知って、琉依さんには辛いこと、私には想像できないくらい苦しいことがたくさんあったことがわかった。私が琉依さんに会ったばかりの頃琉依さんが無理して笑っていておうちと昇さんたちのそばだけが琉依さんの安心できる場所なんだと思ったことは大間違いではなかった。実際には翠さんも加代子さんも佳代子さんも琉依さんを支えてくれていたけど。翠さんが前に話してくれたように琉依さんは可哀想だと思うけど琉依さんに可哀想って言うべきじゃない。琉依さんにとって辛いことがたくさんあったんだとしてもそうしてきたことを後悔してないと思うから。たくさん苦しい思いをしてきた琉依さんを元気にさせたい。琉依さんにとって安心できる場所になりたい。パーティーでお仕事の話をして真剣な顔をした琉依さんをかっこいいと思ったけどすごく疲れてぐったりして帰ってくる琉依さんにできることはやっぱり私が明るく元気でいることだと思った。それから病院に行けない琉依さんが病院に行かなきゃいけないほど体調を崩さないように栄養のあるご飯を作ることも大切。琉依さんが誰かを警戒して気を張っていないといけないことは琉依さんももうなさそうだと言っていたけどそれでも忙しくて大変な琉依さんがほっとできる家庭を作りたい。そう話すと佳代子さんが頭をぽんぽんってしてくれる。


「それならそうすれば良いのよ。みんな美香ちゃんが大好きなんだから美香ちゃんの都合の良い時にパーティーにもお茶会にも誘ってくれるわよ。もちろん私たちもね」

「そっか……じゃあ私……専業主婦になる」


 それで良いんだよね。後悔しないよねって自分に聞くけど後悔することなんてないと思った。

 桜ちゃんがぎゅっと抱き締めてくれた。


「桜ちゃん、ごめんねって言わせてごめんね」

「ううん、私美香ちゃんのファンクラブのみんなに美香ちゃんの近況報告たくさんして美香ちゃんにも伝えるわね。例えばそうだわ、七菜子さんが2人の男の人に告白されて迷ってるとか」

「え、そうなの!?」

「一昨日聞いたのー」

「えーそうなんだー!!」

「たくさんそういう話するわね」

「ありがとう桜ちゃん!!」

「美香ちゃん偉い偉い!!自分で答えを見つけられたわねー!!」

「家庭に専念するのも大変だと思うけど、息抜きしたい時はいつでも聞くからね」

「優菜と暮らして優菜の子供なんて絶対大人しくないわよ。絶対大変だわ」

「でも絶対可愛いわよー」

「でも絶対走り回ってテーブルの角で頭ぶつけたりしそうですよねー」

「えーそんなー!!私が痛いの痛いの飛んでけしてあげるー」


 そうして答えが出た私は男子会をして帰ってきた琉依さんに、保育士になるのやめるって話をした。どうしてって聞いてくれる琉依さんなにをどう説明すれば良いのかわからなかったけどそもそも琉依さんに可哀想な子供時代だったとか病院に行けないって話して優菜のことを思い出させたら大変だと思って内緒だと答えた。そういえば昇さんに譲ってもらった時に引き継いだのって言ったのはセーフだったのかなって今さら思うけど。応援してくれてたのにごめんねって、あと1年学校に行くから満足に琉依さんを支えてあげられなくてごめんねって話した。

 それからお母さんにも話してごめんなさいって言ったら入学前にも言ったけど気にしなくて良いのって言われた。卒業まできちんと勉強はして短大で学んだことを自分の子の子育てに生かしなさいって言われた。馬鹿な私が無知で子育てするよりは何倍も安心だわ、孫が心配だからって言われた。怒ったら良いのかなんなのかわからなかったけど専業主婦も大変だろうからしっかりしなさいって言われて頑張るって答えた。





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