表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/99

楽しみと不安な誕生日(美香視点)


 今日は私の誕生日。琉依さんと去年のクリスマスに行った景色の綺麗なあのレストランで景色を眺めながらランチをする。私のテーブルマナーが完璧かはわからないけどスムーズにできるようになったから。だから個室じゃないところで食べる久しぶりの日で緊張するけど楽しみ。

 琉依さんが車で迎えに来てくれるのをおうちの前で待ってると楽しみなのと同時に不安もある。今日の朝まで頑張ってたんだけどどうしてもお守りが作れなかったから。ぎりぎりまで頑張れば出来るかもって琉依さんには言ってなくて、用意できなくてどうしようって思ってる。

 匂袋を作るみたいに布を縫って琉依さん頑張ってって書いた紙と押し花を一緒に入れようっていうのは決めたのに布が全然上手く縫えないは押し花にするお花は決まらないはで全然できなかった。困ってどうにか決めたお花で押し花だけは昨日出来上がってたんだけど……。

 琉依さんへのお守りじゃなくてお店で売ってる匂袋ならその間もどんどん作れてたのに琉依さんにって思うと集中できなくて上手くいかなくなっちゃった。それもこれも私がまだモヤモヤの気持ちをどうすれば良いのかわからないから。昇さんには琉依さんが浮気をしてないというのは聞いて安心したけど、どうして私としてくれないのかもどうしておうちに呼んでくれないのかもわからないままだし浮気じゃないなら何を考えて女の子と会ってるのかとか昇さんに頭をポンポンしてもらってそういえば琉依さんには頭ポンポンも手を握ってもらったこともないって思ったりした。仮の彼女になった日に私を引き止めるために手を握ってくれたけどそれきり。仮だけどとは言わずに付き合ってるのにキス以前に手を握ってないってどう思うって真紀ちゃんと晶子ちゃんに聞いてみたらおかしいって言われてしまった。どういうことなの?仮の彼女だからということだけなのって他に何か私にいけないところがあるのかなって思って、よくわからなすぎて全然お守りが作れなかった。

 琉依さんを元気にしたかったのに琉依さんがっかりしちゃうかなってため息をついてると琉依さんが迎えに来てくれた。


「美香ちゃん、こんにちは」

「琉依さんこんにちはー」


 琉依さんの前では笑ってなくちゃって元気に挨拶して車の助手席に座った。でも謝るなら早くしなきゃって思って車を出してすぐに私は言う。


「琉依さん、ごめんなさい」

「え、何が?」

「お守り、作るの間に合わなかったです」

「え、あ、ああ、そうなの?」

「はい……ごめんなさい、楽しみにしててくれたのに」


 どうしよう、動揺するくらい楽しみにしててくれたんだなって落ち込む。


「大丈夫だよ、謝らないで」

「でも……」

「お店の匂袋作るので忙しいんでしょ。無理して作らなくて良いよ」

「え、えっと……」


 確かにお店で売る匂袋はたくさん作ってるけどそれのせいじゃない……。


「電話でも言ったけど美香ちゃんの匂袋流行ってるみたいだよ。すごいよ。だから僕のなんかよりそっちを優先してくれれば良いよ」


 琉依さんは初めてパーティーでのことを私に直接話してくれた。パーティーで会った女の人に私が作った匂袋の話を聞いたって。すごいねって言ってくれたけど私はそれよりパーティーでも琉依さんはたくさんの女の人たちとお喋りを楽しんでるんだろうなって思った。モヤモヤした。琉依さんの周りには綺麗な人も可愛い人もたくさんいて、体の浮気をしてないそうだけどそれって私のせいなのかなって。私と仮の彼女じゃなくなれば琉依さんそういうことが自由にできるんじゃないかなって思ってまたモヤモヤした。


「美香ちゃん?どうしたの?あれ?」


 私が何も答えられずにいると信号で止まって琉依さんが私の顔を覗きこんできた。いきなりどうしちゃったのって緊張しちゃう。でも琉依さんはなんだか眉間にシワを寄せてる。


「クマができてるよ。もしかして徹夜してた?」

「えっと、いえ、あ、んーっと、しようとしてたらいつの間にか寝ちゃってました」


 うとうとしながらやってたらいつの間にか寝てて起きたら針がそばに落ちててびっくりした。琉依さんが悲しそうな顔をするから私は慌てて言う。


「でも文化祭までには作れるように頑張るので安心してください!!」

「美香ちゃん……本当に無理しないで。無理して作ってもらっても美香ちゃんが体調崩したら僕嬉しくない」


 がーん……。頑張って琉依さんを元気にさせたいのに。頑張っちゃ駄目なの?涙が溢れてきそうになってグッと堪えた。笑わなきゃ。


「わかりました!!お店の優先で作れたら琉依さんのお守り作りますね!!」

「美香ちゃん……」

「あ、琉依さん信号青ですよー」


 信号が変わったからそう言うと琉依さんは前を向いて車を動かした。それからしばらく経って琉依さんが口を開く。


「美香ちゃんが頑張ってくれるのは嬉しいよ。頑張ってるのを止めちゃ駄目だって思ってる。お勉強もお料理もテーブルマナーも頑張る美香ちゃんの努力を無駄にしちゃ駄目だって思ってたから応援して美香ちゃんできるようになったでしょ。だからお守り作りも頑張ってる美香ちゃんを止めたくないけどそのせいで美香ちゃんが風邪を引いたり熱を出したりしたら嫌だから。わかる?」


 琉依さんはいつも通り私にもよくわかるように教えてくれた。だから琉依さんが言いたいことはよくわかった。お弁当も琉依さんに好きになってもらいたくて頑張ってたのに琉依さんがたくさん応援してくれてみんなに褒められるくらい上手になった。琉依さんはいつも優しく私のことを見ててくれる。嬉しい。私は幸せだなって思う。


「よくわかりました」

「良かった」

「琉依さん、お守り間に合わないって思っておうちを出る前に書いたお手紙はもらってくれますか?」

「手紙?美香ちゃんの誕生日なのに書いてくれたの?」

「はい」


 もうお守りが渡せないって思った私は急いでお守りの代わりになるかわからないけどって思いながら手紙を書いた。


「ありがとう。じゃああとでもらっていい?」

「えへへ、はい!!」


 お守りは文化祭当日までに作れたら渡そうって思いながら私はレストランにつくまで琉依さんに最近のお店のお客さんのお話をした。琉依さんに話を聞いてからお客さんに聞いてみたら高校生や大学生の間で口コミで広まってるそうだって。

 そうしているとレストランがあるホテルについた。この前来た時最後に見せてもらった景色の前にあるテーブルに案内してもらった私たち。


「わー!!やっぱりすごく綺麗ですねー!!」

「そうだね。このあと海のそばまで行こうか」

「今日は涼しいですもんねー!!」


 琉依さん夏が苦手だから今日なら海岸をのんびりお散歩できるって思って言うと琉依さんはそうだねって言ってメニューこれで良いって聞いてくれていつも通り、はいって答えた。そしてお料理を楽しみながら景色も楽しむとそれぞれ楽しむよりもずっと楽しかった。帰りにオーナーさんと料理長さんに挨拶しておうちで作ってって今日食べたメイン料理のレシピをもらって海に向かう。


「そういえば琉依さんいつもお酒飲まないですけどお酒強いんですよね」

「そうだね。でもそこまで強いってほどじゃないよ。竜二さんが一番強いのはまあ見た通りだけど」

「木村さんもそう言ってました」

「それ木村くん情報?」

「そうですよー」


 琉依さんが携帯を買ったのと同じ時期に全員が携帯を買って連絡先を教えてもらった私は時々電話をしてる。と言ってもお仕事が忙がしいみんなにいつ電話したら良いのかわからないからほとんどが最近どうって連絡してくれる関さんと、みんなに困らされてないかって心配してくれる竜二さんと、なんでもない話題をメールしてくれる木村さんくらいだけど。それで関さんは帰国子女だからアメリカに住んでた時の話を聞いたり、竜二さんは親に反発して昔無人島で1人でサバイバル生活をしてたりヒッチハイクで世界を回ってたって話を聞いたり木村さんとは……なんだかいろいろ。でも木村さんは話題が豊富で面白くてこの前はみんなで村岡さんのおうちで潰れるまで飲んだっていう話を聞いた。


「木村くんって調子乗らせると乗りすぎるからあんまり喜ばせない方が良いよ」

「えーそうですか?」

「うん、威勢良く一番に突っ込んでいって厄介事と一緒に戻ってくる感じ。トラブルを呼び寄せる男だって自分で言ってるよ」

「けど木村さん面白いですよ」

「それはそうなんだけど。うちの大学の文化祭の日気を付けなね。木村くんのそばにいてほしいけど確実になにかやらかす気がするから」

「勘ですか?」

「そう。金魚すくいに夢中になって1人金魚すくい大会し始めて見物客集まってきちゃうとか」

「なんですかそれー」

「夏祭りの時そうだったからさ。馬鹿だなって思ってた」


 ふふ、それ暑い暑いって言ってぐったりしながら眺めてたのかな。


「楽しそうですね。でもトラブルじゃないですよ」

「僕らからしたらトラブルだよ。観衆が多すぎて誰がどこにいるかわからなくてね、僕を支えてたはずの小林くんがいつの間にかいなくなって変な屈強な男に変わってたりするんだよ」

「びっくりしちゃいますね!!」

「恐怖だよ。勘弁してよってなる」


 そんな話していると海についた。


「近くで見ても綺麗ですねー」

「そうだね」

「んー秋の海も良いですね」


 海といえば夏だけど綺麗な海は秋でもいつでも素敵なんだなー。深呼吸して海岸を歩いてみる。


「そうだ、琉依さん琉依さん」

「どうしたの?」

「1年と1ヶ月過ぎちゃったので今さらなんですけど真紀ちゃんは1ヶ月ごとに記念日をお祝いするそうですよ」


 私と琉依さんのお付き合いってみんなと何が違うのって仮だけどって思いながら真紀ちゃんと晶子ちゃんに聞いてみたら1ヶ月記念をお祝いするって言われた。


「あーする人もいるね」

「私たちは!?」


 まずそこから違ってたの?仮の彼女だから普段は本物の彼女として見てくれてるけど1ヶ月はお祝いしなくて良いやって思われてたのかな?


「え、お祝いしたかった?」

「そ、それはー……」


 質問で返されちゃった。1年記念日すら仮の彼女なのに良いのかなって思ってそれ以前はそんなこと気にしてもなかったけど。でも真紀ちゃんに言われたらするものな気がしちゃって……って困ってると琉依さんは言う。


「今まで1ヶ月って期間短いからお祝い感が薄いんじゃないかって思いながらこれまでの彼女に言われて出かけたりしてたんだけどね、美香ちゃんが何も意識してなさそうだから1ヶ月は良いかなって思って、でも1年のお祝いはしたくて聞いたんだ」

「ああ……そうだったんですね」


 今までの彼女さんとはしてたのかー。……って落ち込んじゃ駄目だって。


「真紀ちゃんに言われてしたくなったんなら来月からしよっか?」

「んー……」

「じゃあこうするのは?あんまりパーってお祝いはしないけど時間が会えば会って1年2ヶ月だねって言ったり」


 私がお祝いしたいって言ったら琉依さんそうしてくれるだろうけど良いのかな?琉依さんは私を見てクスッ笑う。


「琉依さん?」

「美香ちゃんお祝い好きなのに困るの?」

「だって、良いんですか?」

「学校も仕事もあるし毎月会えるわけじゃないから電話で話すとかになっちゃうかもしれないけど楽しそうだなって思うよ」

「そうですか?」

「だって美香ちゃん記念日楽しみにしててくれるでしょ。鼻唄歌ったりスキップしたり、ご機嫌な美香ちゃんが毎月見られると思うと楽しみだよ」

「ほえー……なんだかからかってます?」

「そんなことないよ」


 むー……楽しそうに笑う琉依さんを見て不思議と私も嬉しくなってきた。


「じゃあ来月からお祝いです!!」

「うん、そうだね。来月は多分会えると思うけどどこか行きたいとこある?」

「んー……そしたらおうちが良いです」


 私がそう言うと琉依さんは気まずそうな顔をする。やっぱりおうちに行っちゃいけない理由があるのかな。なんでだろう。


「家は……ちょっと……」

「どうしてですか?お勉強じゃなくて遊びにいくだけです」

「んーいろいろ散らかってるし」

「大丈夫ですよ?」

「あ、じゃあ村岡くんの家にまた行こうか」

「……ボウリングで良いです」


 そんなに行っちゃいけないんだって思って諦めた。琉依さんはほっと息をはいた。そういえば今考えるといつも不自然だった。体の浮気はしてないっていうのにいったいどういうことなのかな。


「じゃあボウリングにしよう」

「琉依さん、琉依さん」

「ん?」

「門限19時は早いって真紀ちゃんと晶子ちゃん言ってました」


 真紀ちゃんと晶子ちゃんがあり得ないって、そのあと誰かに会ってるに違いないって言った。でも、放課後に残って1時間かけておうちに帰ると19時を過ぎちゃうから琉依さんと遊ぶ時だけだよって言ったら本当に体の浮気はしてないのか、昇さんが嘘ついてるんじゃないのって疑ってた。そんなはずないと思うけど確かに帰るのが早すぎるとは思う。


「え、そう?」

「お母さんももっと遊んでて良いって言ってます。琉依さんが一緒だから安心だって」


 お母さんもお父さんもお兄ちゃんも私が1人でふらふらしてると何をするかわからないから琉依さんに見張っててもらえると安心だって言ってる。私なにもしないよって言ったらいまだに水溜まりで遊んだり泥をつけて帰ってくるじゃないって言われるけど公園で知り合いの子供たちがお母さんと遊んでたから一緒に遊んで帰ってきてるだけなのにって思う。お父さんとお兄ちゃんなんて琉依さんと付き合ったばかりの時は騙されてるんじゃないのって疑ってたのに今じゃ娘の私より琉依さんのことを信用してる。お店のお手伝いしてないでおうちにいると煩くて邪魔だから琉依さんに遊んでてもらってほしいって言ってる。むむ……私も琉依さんが用事がないならいつでも遊んでほしいけど。


「安心……そっか、安心……」

「琉依さん?」


 なにか呟いてる琉依さんにもう一度声をかける。


「うん、門限19時は早すぎたね。僕はそれで安心だったけど」

「じゃあもっとたくさん一緒にいて良いんですか?」

「うん」


 なんだー聞いてみるものだなーって思って嬉しくなる。やっぱり用事があるわけじゃないみたい。


「今日も19時過ぎて良いんですよねー?」

「え、今日?」

「はい!!」

「お母さんにいつもより遅くなるって連絡して、良いって言ってもらえたら良いよ」


 そう言って琉依さんが携帯を貸してくれた。画面に私のおうちの電話番号が表示されている。


「そこのボタン押したら繋がるよ」

「わかりましたー」


 そして電話をかけてみるとお母さんが出て、19時過ぎるねって言ったら琉依さんにたくさん遊んでもらいなさいねって言われた。電話を切って琉依さんにそう言うと琉依さんはなぜだか慌てて電話をかけた。


「はい、はい……大丈夫です。21時前には帰りますから……いえ、そもそも22時過ぎたら駄目なので……はい、いつも通り送り届けますね……はい」


 それから電話を切った琉依さん。お母さんと話してたみたい。


「電話切らない方が良かったんですね、ごめんなさい」

「ううん、大丈夫だよ。じゃあこれからどうしようか」

「記念日だから写真撮りましょ」

「そうだね、じゃあ海をバックにして撮ろう」


 車に戻ってせっかくだからここでプレゼントをくれると大きな袋も一緒に持ってきてくれる琉依さん。海岸で私に手渡してくれる。


「はい、誕生日おめでとう」

「ありがとうございまーす。大きいですねー」

「開けてごらん」

「はい!!」


 袋を開けてみると鞄が入っていた。


「わー!!私鞄欲しいと思ってましたー!!」

「うん、言ってたからね」

「あーそうでしたー!!わー可愛いー!!」


 琉依さんがプレゼントしてくれた鞄はベージュで大人っぽくて可愛い鞄。


「お化粧ポーチも鏡もいろいろ入りますねー」

「気に入ってくれた?」

「はい!!ずっと大切にします!!」

「良かった。ね、美香ちゃんその鞄持って写真写って」

「え、あ、はい。そしたら鞄入れ替えちゃいます」


 今持ってるのは小さな鞄だからその場にしゃがんで中身を全部入れ替えた。


「はい、これでオッケーです」

「うん、じゃあそこに立って」


 琉依さんが写真を撮ってくれるから鞄を持っていろんなポーズをして写って、それからツーショットの写真を撮った。


「このあとどうしよっか?」

「たくさん時間ありますよー」

「そうだね。それじゃあ少しドライブして映画を観て夜ご飯食べて帰ろうか」

「はい!!」


 今年の誕生日はたくさん琉依さんといられてとっても楽しい誕生日になった。お手紙は今回も目の前で読まれちゃうと恥ずかしいからって言っておうちまで送ってくれてから渡した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ