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遊園地(美香視点)


「琉依さん琉依さん!!わー!!何から乗りますかー?」

「美香ちゃん前向かないと危ないよ!!」

「大丈夫です……きゃ!!」

「美香ちゃん!?」

「なーんて!!大丈夫です!!セーフです!!」


 今日は5月2日、琉依さんの誕生日。遊園地についた私は楽しくって入場口を通ってすぐにスキップして転びそうになっちゃったけどギリギリセーフでくるりと後ろにいる琉依さんを振り返る。そしたら急にしゃがみこんでしまった琉依さんにびっくりして駆け寄る。


「琉依さんどうしちゃったんですか!?」

「心臓止まるかと思った……」

「えー!?なんでですか!?大丈夫ですか!?」

「大丈夫。さ、行こう」


 本当に大丈夫かなって思ったけど琉依さんは立ち上がって笑った。


「平気ですかー?」

「平気だよ。何から乗ろうか。美香ちゃんが選んで良いよ」

「良いんですかー?じゃあゴーカート!!」

「うん、行こう」


 ふふんふふんって鼻唄を歌いながら歩いてると隣で琉依さんが楽しいって聞いてくれて楽しいですって答える。


「だって今日は記念日です!!」

「そうだね。美香ちゃんは記念日好きだもんね」

「お祝いです!!」

「じゃあ美香ちゃん、8月も記念日だね」

「8月?なにかありますか?」

「え?付き合い始めた日でしょ」

「……ああ!!」


 仮の彼女になった日だけどそれって記念日になるんだなあ。


「海は7月だし1年記念日はどこに行こっか」

「んー?どこですか?」

「美香ちゃん行きたいところある?」

「んーじゃあ琉依さんのおうち!!」

「そ、それはちょっと……」

「なんでですか?もうお勉強の間にお菓子食べなくて良いんですってばー」


 あいかわらずテストで全教科赤点を取って追試を受けて合格してる。この前の時は優菜が彼氏さんと会って私に構ってられないって先にテストのヤマを張って琉依さんに伝えておいてくれて琉依さんと2人で図書室で丸暗記した。これからそうしていくわって言われたけどいつもそれじゃつまんなくなっちゃうからお菓子食べなくて良いからゴロゴロしながらやりたいって、おうち来てくださいすぐそばなんですからって言ったら琉依さんに駄目って言われちゃった。不思議だな。琉依さんだって固い椅子よりふかふかのベッドの方が良いと思うのにそんなの無理って言われちゃった。


「お菓子以外にもたくさん誘惑があるんだよ」

「だって琉依さん図書室の椅子痛いですよね。それに琉依さん姿勢ピシッてしてるから立ち上がってよくマッサージしてますよね」

「よく見てるね。嬉しい」

「嬉しいですか?」

「うん」

「そうなんですね。それでなんでおうちで勉強駄目なんですか?」

「だ、だから誘惑がたくさんあるんだってば」

「ないですよー。もっとのんびりゆったりしたいですー」

「うーん……じゃあ考えとくね」

「わーい!!」


 今度から追試対策も長期休みの宿題ものほほんってなれるなー。だって、優菜がいないとお喋りがなかなかできないんだもの。琉依さんってすごく真面目だからお勉強の途中でお勉強以外のことを話してもお話ししてくれるけどすぐに勉強に戻されちゃう。早くしないと終わらないよって。教えてくれるのはわかりやすくなったけど遊ぶ時間がなくて疲れちゃう。きっと琉依さんも図書室だからシャキーッて気持ちになって真面目ーになってるんだと思うから一緒におうちでまったりしてれば無駄話に付き合ってくれると思うの。あ、無駄話って無駄なことを話してるんじゃないのよ。でも優菜はあんたの無駄話は長いっていつも言う。優菜だってお喋り好きなのに意地悪って思う。最近優菜は前よりもっと意地悪になっちゃった。1年一緒にいてわかった、美香といると1日が24時間じゃ足りないって。どういうことって聞いたら美香の話をぶったぎらないでだらだら聞いてると1日があっという間に終わっちゃうんだって。優菜はせっかちなのね。だから私はふふふんって教えてあげるの。優菜、時間は自分で作るものなのよって。あんたのたまにまともなこと言い出すの聞くとイライラするって言われるんだけど。


「美香ちゃん、ゴーカート乗れるよ。どっちが良い?」

「あー!!私運転しますよー」


 いつの間にかゴーカートの順番がきてた。私が運転席に座って琉依さんは隣。いつもと逆だなーって思いながら行きますよーって言う。


「わー!!きゃー!!またぶつかったー!!ひゃー!!」

「み、美香ちゃん……」

「もっと速くしますー」

「なんで!?」

「びゅーん!!」

「危険!!」


 あー楽しかった。ゴーカートから降りて楽しかったですねって言おうとしたらなんだか琉依さんの顔色が悪い。


「琉依さん?大丈夫ですか?運動苦手だから駄目でした?」

「ううん、そういう問題じゃないんだけど……」


 うう……って言ってお腹を押さえる琉依さん。


「大変!!あ、あそこ座りましょ」


 そう言って琉依さんにベンチに座ってもらう。


「なにか飲みますか?私買ってきます!!」

「え、1人で行っちゃ駄目だよ!!」

「でも琉依さん座ってないと!!大丈夫です!!すぐそこに自動販売機があります!!さすがの私でも迷いませんよ!!ちょっと待っててくださいねー!!」

「ちょっ!!美香ちゃん!?」


 早く琉依さんに元気になってもらわなきゃって急いで自動販売機に走った。

 乗り物ほどじゃないけど何人か並んでて急がないとって足踏みする。琉依さん最近は治ったみたいだけど前はよく心臓が痛いとか苦しいとか言ってたから今までおうちにいすぎたからすぐ疲れちゃうのかなって思ってた。大丈夫かなって思いながら琉依さんが座ってるベンチを見る。


「あれ……?」


 足踏みを止める。琉依さんは女の人とお喋りしていた。琉依さんと2人で過ごすことが多くなってよくわかったことがある。琉依さんは私が隣にいても逆ナンをよくされるの。優菜が女の子が男の子をナンパするのを逆ナンって言うんだって教えてくれた。モテる人は逆ナンされるんだって。琉依さんはかっこいいものねって思うけど琉依さんが優しくその女の子たちとお話しするから悲しくなっちゃう。悲しくて電話で真奈美さんにお話ししてお話しし終わっても悲しくてお母さんにも泣きついてる。最近は帰ったらすぐお母さんに泣きついてる。琉依さんがまた女の子に優しくしてたって。お母さんがお店にいる時はお部屋のベランダのお花に琉依さんは今日も優しかったの、でも琉依さん今日も他の女の子にも優しくしてたって話してる。お花は赤ちゃんの時からずっとそばにある。だからお話ししてるとほっとするし心がポカポカして琉依さんに好きになってもらえるようにもっと頑張らなくちゃって勇気が出てくる。だから真奈美さんやお母さんにお話ししてからもお花を見にいって元気になる。今は匂袋しかないけどスーって匂いを嗅いで元気になった私はお水を買って琉依さんのところに戻った。


「ほら、彼女だよ。可愛いでしょ。だから自分たちで遊んでね。じゃあ僕は行くね」


 来たのは良いけど女の子たちがいるのにどうしようとおろおろしてたら琉依さんがそう言って私を呼んで歩いていってしまう。


「る、琉依さん具合大丈夫ですか?お水……」

「大丈夫大丈夫、ありがと」


 歩きながらはいって言ってお金を渡してくれる琉依さんにお水を渡す。むむ……琉依さんはスマートだ。今年から同じクラスになった晶子ちゃんと真紀ちゃんと優菜とお話ししてて琉依さんみたいな人をスマートって言うんだって教えてもらった。


「美香ちゃん、心配してくれるのは嬉しいけどこれからは1人でどこか行っちゃ駄目だよ」

「んー?でも……」


 怒られてるって思ってしゅんってしてたら琉依さんの顔がぐっと近付いてきてびっくりしちゃう。


「美香ちゃんがナンパされたらって考えたら心臓が止まっちゃうから」

「えー!?それじゃ死んじゃいます!!」

「だから1人でふらふらしちゃ駄目だよ」

「はい!!」

「うん、美香ちゃんは良い子だね」


 今度は褒められたと思って嬉しくなるけど琉依さんは逆ナンされてた。なんでもないみたいだけど琉依さん逆ナンは好きなのかな?嫌いなのかな?女の子に囲まれるのは苦手だから逆ナンも嫌なのかな?


「ねえ美香ちゃん、次はメリーゴーランドにしたら?」


 そう言って近くにあったメリーゴーランドを指差す琉依さん。


「そうですね。琉依さんもメリーゴーランドならゆっくりだから平気ですよね」

「平気だけど僕は写真を撮るよ」

「ほえ?そうなんですか?メリーゴーランドの?」

「メリーゴーランドに乗ってる美香ちゃんだよ」

「そうなんですか?」


 記念日だから写真を撮って良い日だけど今日も私を撮るんだなー。たまにこっそり小林さんや木村さんが琉依さんの見切れてる写真をくれるからもらうけど琉依さん私が1人で写ってる写真撮って楽しいのかな。でも嬉しいみたいだから楽しいみたい。


「じゃあ僕そこにいるからね」

「はーい」


 メリーゴーランドのお馬さんに乗って琉依さんがいるところに目を向けると琉依さんが手を振ってくれたから振り返す。そしてメリーゴーランドを楽しんだあと琉依さんのところに行く。


「美香ちゃんはとっても可愛いね」

「えへへ」


 琉依さんは携帯を買って電話は携帯からしてくれるけど写真はこれまで通りカメラで撮ってる。


「次はどうしましょうか?」

「ジェットコースター乗る?」

「え!?琉依さん平気ですか?」

「もうすっごく回復したよ」

「そうなんですねー。じゃあまずはあれにしましょ!!」

「え、あれ?」

「行きましょー!!」

「あっ、待って美香ちゃん!!」


 あれ?さっき1人でふらふらしちゃ駄目って言われたんだった。そう思い出したけど行くところ同じだから良いかなって急降下するジェットコースターに向かって走った。それに乗って今度はくねくねのジェットコースターに乗って次はって思ってたら琉依さんがストップって言う。


「お昼にしよう、美香ちゃん」

「あ、そうですね!!……あー!!」

「どうしたの?」

「お弁当ぐちゃぐちゃになってるかも……」


 たくさん走ってたから鞄に入れてたお弁当がぐちゃぐちゃになってるかもしれない。どうしよう!!


「大丈夫だよ。ね、そこで食べよう」


 琉依さんに言われてそばにあったテーブル席に行って恐る恐るランチボックスを開けてみる。


「ほら、大丈夫だよ」

「うう……ちょっと偏ってます。ちゃんと綺麗に盛り付けもしたのに」

「でも美味しそうだよ。食べて良い?」


 今度こそ完璧なものができて嬉しかったのに……。そう思いながら琉依さんの言葉に頷く。


「うん!!美味しい!!美香ちゃんはお料理上手だね!!ほら、自分で食べてごらん?美味しいよ」


 琉依さんにサンドイッチを差し出されてパクって食べる。


「美味しいー」

「ね、美香ちゃんが一生懸命作ってくれたからとっても美味しいよ。また今度美香ちゃんが完璧って思えるお弁当を見せてくれたら嬉しいから」

「琉依さん……」


 琉依さんはとっても優しい。どうして好きになってもらうためのアピールをしてるのにこんなに待ってもらえてるのかなって思うけど……。でも嬉しい。琉依さんに、はいって言われてまた一口食べてから自分で持って食べて、琉依さんに他のも食べてくださいって言って、それからいつも通りお喋りしながらお昼ご飯を食べた。


「さ、次はどうしよっか」

「そうですねー……あれ?」


 あれあれ?少し離れたところに小さな女の子が1人でいて駆け寄る。


「どうしたのー?」


 しゃがんで泣いてるその子の頭をよしよしってしてあげる。


「お母さんとお父さんはー?」

「い、いなく……なっちゃったのー……」

「そっかあ。悲しいねー」


 よしよしって撫でてると琉依さんが来てくれる。


「迷子?」

「そうみたいですねー……私この子迷子センターにつれていくので琉依さん待っててください」

「え?」

「あ、大丈夫です。私小さい時よく迷子になってたので家族で遊びにきて迷子センターよく行ってました。確かあっちの方です」

「えっと……向こうだよ」

「え!?そうなんですか!?」

「うん」

「私今でも迷子になるんでした」

「ふふ、そうだね。だから一緒に行くよ」

「わー良かったー私も一緒に迷子になるところでしたー。じゃあね、お姉ちゃんとお兄ちゃんと一緒にお母さんとお父さん探してくれるとこ行こうね!!えっと、私は美香!!それでね、琉依さんよ。お名前は?」


 いつの間にか泣き止んでいたその子にもう一度目線を合わせて聞いてみる。


「あーちゃん……」

「あーちゃん!!じゃあ一緒に行こー!!」


 行こう行こうってあーちゃんの手を握って歩き出す。


「しりとりしよー!!」

「しりとりー?」

「そうだよー!!私からねー。じゃあーあーちゃん!!」


 あれれ?見上げてくるあーちゃんにあーちゃんの番だよって言うと琉依さんが笑い出した。


「琉依さん?」

「しりとりは、んで終わっちゃうよ」

「あれー?あ、本当だ!!」


 間違えちゃったーって笑ってるとあーちゃんも一緒に笑ってくれた。


「むー!!今度は間違えないよー!!じゃあみか!!かだよー!!」

「えっと、かえるー」


 あーちゃんの次は琉依さんなのに琉依さんがなかなか答えてくれない。どうしちゃったんだろう。


「琉依さん?るですよー」

「え?僕も?」

「そうですよ?」

「あ、そうだったんだ、えっと、る……ルーマニア」

「えー!!なんでるいじゃないんですか!?」

「えーあ、そっか。ごめんね、じゃあるい」

「いですねー。いるか!!あ、またかになっちゃった!!」

「美香お姉ちゃん意地悪ー」

「えへへーごめんねー」

「良いよー。じゃあね、カラス!!」


 しりとりしながら歩いてたら迷子センターについた。


「綾香!!」


テントの中に入ると女の人が私たちに気付いて駆け寄ってきた。


「ママー!!」


 お母さんに抱きつくあーちゃんの頭をお父さんが撫でてあげた。


「お母さんとお父さん見つかって良かったね」

「そうですね!!」


 あーちゃんのお母さんとお父さん見つかって良かったー。


「ありがとうございました」

「少し目を離している間にいなくなっていて……本当にありがとうございました」

「いえー!!あーちゃんお母さんとお父さんと会えて良かったねー」

「うん!!ありがとう美香お姉ちゃん、琉依お兄ちゃん!!」

「えへへ、どういたしましてー」

「もうお母さんとお父さんとはぐれないようにね」

「はーい!!」


 私と琉依さんは手を振ってテントから出た。


「ふー……じゃあ次どうしましょうか?」

「そうだねーどうしようか」

「あ、お化け屋敷はどうです?」

「え、お化け屋敷!?お化け屋敷は……ちょっと」

「あ、もしかして琉依さんお化け苦手ですか!?」

「っていうかお化けより危険なものがあって……」

「んー?」

「とにかく恐ろしいことになりそうだから別ので良い?あと1年くらい……もっとかな……したら大丈夫だから」

「えーお化け怖いなら大丈夫ですよ。私も大好きってほどじゃないですし友達と入りますから」


 琉依さんの苦手なものまた発見だ。意外だなー。


「じゃあ観覧車にします?」

「そうだね。穏やかそうだよ」

「え?やっぱり体調駄目でした?」

「ううん、すこぶる元気だよ。行こう行こう」

「はい」


 そして観覧車に乗ったら琉依さんへの誕生日プレゼントを渡した。この前琉依さんに一番好きなお花は何なのって聞かれて一番は選べないって言ったら私の好きなお花の1つでまた匂袋を作ってほしいって言ってくれたからミモザで匂袋を作った。琉依さんがお花を好きになってくれて嬉しいなって思った。それから景色を見てはしゃいだり写真を撮った。琉依さんの誕生日なのに私が楽しかったけど琉依さんは今までで一番楽しい誕生日になったって言ってくれた。





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