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未来予想(琉依視点)


 僕は3月から携帯で美香ちゃんに電話するようになった。もう優菜に邪魔されたり母さんに聞き耳を立てられりすることはない。

 それから父さんが年始に美香ちゃんに会って美香ちゃんをすっかり気に入ったらしい。美香ちゃんは魅力的だから気に入るのは当然だけどなんでって母さんに聞いたらこう言われた。


『優菜と琉依の良いところを教えてくれてすごく好きって伝わってきたのよ。それに琉依が自分に似てるって言ってもらえて嬉しかったの』


 そんなに嬉しかったのって聞いたら優菜もだけど私似だからねって言われた。みんなに似てないって言われて落ち込んでたからって。みんなって誰だろうと思って僕は気付いてしまった。親戚近所その他大勢僕と優菜が母さんにしか似てないと思ってたんじゃないかって。つまり父さんの子じゃないって思われてのかもしれない。母さんにも父さんにも聞けなかったけど本当だったら酷い言いがかりだ。母さんは18才の時に父さんと結婚して今でもずっと父さんにべったりなんだからそんなわけないのに。そういえば小さい時母さんが僕を散歩に連れていった時子供をつれて男のところに行くのかとか言われてどういう意味だろうと思った記憶があったようななかったような気がした。つまりなにが言いたいのかというと父さんの考えも含めて21、もうすぐ22になるまでそういうことに気付かなくて申し訳ない気持ちになった。嫌ってはいなかったけど父さんは役に立たないとか、なにもわかってなかったんだなって思った。思ったところで僕も優菜も父さんの子だよとか言ってみるのは違うと思うし父さんはすごいと持ち上げてみるのも違うと思うしで結局なにも変わらないんだけど。でも最近はよく美香ちゃんの話をするようになった。父さんとこれまで喋らなかったわけじゃないからまあ変わらないといえば変わらないんだけど。それに父さんは無口だからそうかとか、ああとかしか基本言わない。でも僕は美香ちゃんのことだけじゃなくこんなことも話した。


『父さん、僕大学卒業したら一人暮らししようと思うんだ』

『そうか』

『賛成してくれる?』

『ああ』

『やった。じゃあ母さん説得するの手伝ってね』

『……ああ』


 それで翌日の夜ご飯を食べている時。


『アンナ』

『えー!!康介から話しかけてくれるなんて2日ぶりー!!どうしたの?お醤油?お酒?』

『琉依が卒業したら一人暮らししたいそうだ』

『えー!?駄目よ!!だーめー!!』

『ここからだと会社が遠いらしい』

『駄目!!最近は会社で仕事してるけど今までみたいに家で仕事したら良いじゃない!!』

『家で仕事するのは学生までだと元々昇と決めてたそうだ』

『延長よー!!私から昇に言ってあげる』

『母さん、引きこもり卒業したから会社で仕事するんだよ。あ、引きこもってたわけじゃないけど』

『夏はどうするの?家から会社まで疲れてたどり着けないんじゃない?』

『平気だよ。美香ちゃんと海に行く約束してるから体力つけてるんだ。ちょっとだけど』

『琉依はこーんな小さい時言ったわ。お母さんはおっちょこちょいで心配だから僕がずっとそばにいてあげるねって。お母さんとの約束も守らなきゃ駄目よ』

『そんなこと言ってないよ。母さんはおっちょこちょいで心配だから僕が家を出ていくまでにおっちょこちょいじゃなくなってねって言ったんだよ』

『そうだったかしら?家を出ていくなんて言わないでーって思って大騒ぎした気はするけど』

『ほら、約束もしてないんだから良いでしょ。決まり』

『えー!!決まりじゃないわよー!!』


 そんなことがあって、いまだに母さんがグチグチ言ってくる。でも僕の中では決定事項だ。会社まで遠いのは本当だけど優菜も母さんも部屋に普通に入ってくるから美香ちゃんグッズをおおっぴらにできない。今ポスターが5枚に写真集が1冊にクッションが1つしかないけど掃除したり着替えを持って入ってくる母さんがまあ可愛いとかあら素敵とか言ってくるし優菜がまた増えたとかキモいとか言ってくるしでおちおち美香ちゃんに囲まれて幸せに浸れない。ちなみにクッションは四角いクッションに美香ちゃんの写真がプリントされているものだ。試しにできるか頼んでみたらやってもらえた。一人暮らししたら一面美香ちゃんでいっぱいにするんだ。なんて昇たちに言ったらそれやったとしても公言するなって言われた。もちろん美香ちゃんには秘密だよ。みんなにも言わないでねって言ってる。村岡くんに欲求不満ですねって言われたけどそういうことじゃないよ。確かに触れられないのは辛いけど大切にするって決めてるんだから。

 それから告白からのお願いのことだけど少しだけ落ち着いてきた。僕は大大大好きな彼女がいてとってもとっても大切にしてるんだよ、だから美香ちゃんに悪いことしちゃ駄目だよと必ず言うようにした。つまり美香ちゃんを苛めたら容赦しないからねって言ってる。それからお願いを学食を奢ることに限定しようとしたけどそれは失敗した。

 そして4月、美香ちゃんと優菜を呼んで大学でお花見をすることになった。


「見てくださーい!!じゃん!!」

「ようやくできたんだってさ」

「ようやくサンドイッチが作れました!!」


 桜の木の下で美香ちゃんが作ってくれたサンドイッチを見て感動する。待ちに待った手料理だ!!


「サンドイッチってパンに挟むだけなんじゃねえのか?」

「切りました!!」

「すごい、すごいよ美香ちゃん!!食べて良い?」

「はい!!どうぞー!!」


 美香ちゃんがランチボックスを両手で持って差し出してくれて僕はそれを1つ手に取って食べる。


「美味しい!!感動する!!」


 夢にまで見た手料理!!何年でも待つと言ったけど早く食べてみたかった手料理!!


「やったー!!ね、優菜、私お料理できたー!!」

「良かったわね……」

「優菜?どーしたの?」

「引いてんのよ、琉依兄に」

「引いてる?なにを?」

「なんでもないわよ」

「琉依さん生きてます?」

「生きてる!!嬉しくて天にも昇りそうだけど生きてる!!」

「とりあえず変なものは入ってないらしいな」

「念のため小林さんも食べてください」

「え、僕?」

「どうしたんですかー?みんな食べてくださいー」

「あれ?普通に美味しい」

「本当か?……あれ?本当だ」

「……まさかそんなはず……あれ?美味しいですね!!」

「本当ですか?みんな味覚変になったんじゃないですか?」

「ちげえよ。村岡も騙されたと思って食べてみろ」

「……美味しい……おかしいですね、本当に美香さんが作りました?」

「むー!!わかったー!!みんな意地悪してるんですねー!!ちゃんとお母さんに隣で見てもらって自分で作りましたよー!!」

「美香のお母さんお父さんと結婚するまで調理師だったんだって」

「女帝め!!それを先に言えよー!!」

「美味しいわけだね」

「ちなみに美香が作ったのサンドイッチだけであとは美香のお母さんが作ったって」

「うん、うめえ」


 昇たちが美香ちゃんに失礼なことを言って咎めたいけど口の中が幸せで一杯で喋るのがもったいないし食べるのに夢中で話せない。


「琉依さん、サンドイッチだけしか作れなくてごめんなさい。あと3時間くらいあればできたはずなんですけど……」


 心の中では昇の馬鹿ーとか思ってたら美香ちゃんに申し訳なさそうな顔をされてしまって慌ててサンドイッチを飲み込む。


「なんで?サンドイッチすごく美味しいよ?ありがとう」

「全部作って琉依さんに食べてほしかったんですけど」

「うう……可愛い。じゃあまた今度作って。何回も作ったらきっと早く作れるから次は他のも作れるよ」


 とびきり可愛い。なんて健気なんだろう。


「わー!!そうですよねー!!」

「うん」

「琉依さん、サンドイッチだけじゃ飽きちゃいませんか?他のも食べてください。お母さんはとってもお料理上手ですよ」

「ありがとう。うん、美味しいよ。お母さんにもわざわざ作ってくださってありがとうございましたって伝えてくれる?」

「はい!!」


 お母さんが調理師だった情報は知らなかったけど元調理師のお母さんに教えてもらう美香ちゃんもすごく美味しいご飯を作れるんだな。本当に美味しいサンドイッチだ。食べることに無頓着な僕でも美香ちゃんの手料理なら美味しすぎていくらでも食べれる。一人暮らししたらなにも食べなくなっちゃうから一人暮らし駄目って言ってくる母さんには美香ちゃんにお弁当をおねだりするから平気って言おう。もちろん無理には頼まない。一人暮らしを始めたら、たまに作ってくれないかな?駄目?って聞いてみよう。


「甘い……」

「優菜?甘いものは入ってないはずよ?」

「甘すぎてうざいな。僕も彼女ほしい」

「キムチ振られてばっかだしねー」

「うっせえ!!」

「木村さんは振られてばっかりなんですね」

「そうじゃないよ!!ナンパで振られてるだけ!!」

「同じです」

「だいたいなんでやる気のねえ村岡がいつも何人か上手くいってるんだよ!!」

「村岡くんは関さん使ってるからね」

「なんですかそれ!!」

「木村知らなかったの?」

「なんですか!?小林さんまで!!昇さん知ってました!?」

「んなもん知るか」

「昇は女の子に声なんかかけられないってただ座ってるとギャルから逆ナンされてあわあわしてるよね」

「村岡くんはね、関さんの写真を見せてこの人が遊ぶ女の子を集めてますって言ってるよ」

「なんで寝込んでる琉依さんが知ってるんですか!!」

「僕は村岡くん大好きだから村岡くんがどこでなにしててもわかるんだよ」

「気持ち悪いです」


 いつも通り蔑まれた。ちょっとぞくぞくする。


「っていうのは冗談だけど口の動きでなに言ってるのかわかるよ」

「だから気持ち悪いですってば」

「琉依さんすごいですねー!!私も村岡さん口の動きでわかるようになりますー!!」

「美香さん」


 村岡くんと美香ちゃんが見つめ合っても村岡くんだから良いかなって思う。だって村岡くんは良い子だもん。


「馬鹿!!むー!!馬鹿って言いましたねー!!」

「すごいですね。馬鹿なのにわかるなんて自分でも思ってるということです」

「むー!!村岡さんの意地悪!!」

「美香ちゃん、好きな子には意地悪したくなっちゃうんだよ。村岡くんは僕にも意地悪だから僕も美香ちゃんも好きなんだよ」


 僕の大好きな美香ちゃんと大好きな村岡くんがわちゃわちゃお喋りしてるとなんだか可愛い。


「わー!!嬉しい!!」

「どういうことですか。意味がわかりません。昇さんどうにかしてください」

「んあ?知るか。とりあえず飯は旨い」

「そうだね。でも量が多いね」

「男の子が5人もいるからたくさん作るのってお母さんに言いました!!」

「さすがにこれは多すぎだけどね」

「そんなことないでしょ。ほらキムチ」


 美香ちゃんのお母さんお手製のスパゲティーに優菜がキムチが乗せて木村くんに渡す。


「おいこれはなんだ!!大量のキムチが乗ってんだけど!!」

「こんなのあった?」

「ふふふ、ママにこれだけ作ってもらったの」

「辛!!激辛キムチだ!!」

「キムチがキムチ食べてるよ美香。共食いね」

「私も食べたーい!!からーい!!」


 みんなが辛いと言ってる中僕も食べてみる。


「辛……母さんやりすぎだね」


 キムチ鍋よ、家族団らんよってたまに出してくるから母さんのキムチは食べ慣れてるはずなのにこれはあり得ない辛さだ。


「みんな辛いの好きだよって言ってみたら思いきってみたの」

「適当なこと言って……」

「えへへ」

「そうそう!!関さん使ってずるしてんのはわかったけどお前がっつり好みの子ナンパしてるよな!!」

「……俺に言ってます?」

「お前以外に誰がいるんだよ!!」

「意味がわかりません」

「ナンパ勝負で声かけてるの年上の綺麗系だけだろ!!」

「そうですか?ただそこにいる人に言ってるだけです」

「いーや!!お前は彼女だって年上だろ!!年上の美人系が好みに違いない!!」

「だからなんなんですか?」

「だからなんだってことはないけど!!」


 木村くんと村岡くんはいつもこうやって喧嘩してる。木村くんが勢いよくガーッて言って村岡くんが全然動じなくて。面白いコンビなんだよねって笑う。


「村岡さんは年上の綺麗な女の人が好きなんですねー」

「違います」

「じゃあどんな子が好きなんですかー?」

「馬鹿じゃなくて派手じゃなくて騒がしくない人なら良いです」

「そうなんですねー」

「馬鹿美香。私たち貶されてるのよ」

「えーそうなのー?」

「悪かったわね派手で騒がしくて」

「優菜さんと美香さんと真逆な人なら誰でも良いです」

「むー!!琉依さんこれは意地悪ですか?」

「美香ちゃんが可愛くて好きだから意地悪してるんだよ」

「そうなんですねー」

「琉依それで良いのか……?」

「良いよ、村岡くんだもん。でもそういう意味では駄目だよ。もちろん昇と小林くんもね」

「あーはいはい」

「はいはい」


 僕は真面目に言ってるのに昇も小林くんも適当に返事してくる。


「けど美香ちゃん、僕は村岡くんには年下が良いと思うよ。村岡くん文句言いながらも優しいしなんだかんだで呼んだら来てくれるし」


 意外と面倒見も良いしね。隣でニコニコしててくれるような穏やかな年下の女の子が合うと思う。おおらかな子でゆっくりのんびり村岡くんに寄り添っていてくれるような子が良いな。


「2月も迎えに来てくれましたもんねー!!村岡さん、じゃあ年下の女の子を誰か探してあげますね」

「止めてください。俺のことは放っておいてください」

「ぶーぶー!!なんでですかー?」

「美香さんに任せたらおかしなことになるに決まってます。だいたい付き合ってるといえなくてもまだ彼女はいます」

「じゃー別れたらですねー」

「だから……馬鹿に言っても無駄ですね」

「ねえ優菜、私たちに似てない子学校で探してみよっか」

「うちの学校みんな私らみたいなのばっかだから無駄よ」

「そりゃー優菜さまとかみんな言ってるんだもんなー。女帝が統べる学校は怖い」

「女子校って女の子強くなるみたいだしね」

「加代子さんは元々強かったそうだけど」

「昇さんにはどんな人が良いですかねー」

「高校の時に付き合ってた子は小動物みたいな子だったね」

「わー昇さんへたれなのに彼女さんいたんですねー」

「……なんか美香ちゃんにいわれるとよりムカつく……」

「意外とぐいぐいくる系が合うと思うな。僕の勘よく当たるからきっと村岡くんも昇もそんな子とってなるよ」

「お前あやしい予言者みたいで嫌なんだよな」

「翠さんのは当たったといえるのかわかりませんけどね」

「でもだいたいいつもちょっとあれ?って感じで当たるしな。ね、琉依さん僕は?」

「木村くんは一生独身な気がするよ」

「えー!!それ以上言わなくて良いです!!なんか当たりそうなんで!!」

「まあ、ただの勘だからね。いくら琉依の勘が当たるって言っても自分が動かないとなにも起きないしね」

「30年後木村が独身だったら笑ってあげます」

「僕たちの中で唯一独身かもね」

「ま、面倒は見てやるよ。同じ会社だしな」

「なんですかそれ!!もう、琉依さんどうしてくれるんですかー!!」

「大丈夫だよ。木村くんは独身でも人生楽しんでるよ」

「だから予言者みたいに言わないでください!!怖い!!」

「……30年後も変わらないで馬鹿やってるに一票」


 優菜の呟きに僕もって思う。関さんも竜二さんも30年後も40年後も僕たちは変わらないだろうな。話してることもくだらないことから真剣な話からっていろいろで。そう、話には子供たちのことなんかもあるだろう。美香ちゃんと僕の子供の自慢をしたりね。僕たちの子供ってどんな子だろう。美香ちゃんにそっくりだと良いな。でも男の子だったら僕に似るかな。でも僕に似たら不幸な子になっちゃうかも。……僕って不幸だったのかな。確かに人を信用できない人間不信で家族を守りたくて良い人のフリをして最低で極悪非道ではあったけどそんな風に生きないといけなかった僕って不幸なのかな。どうなんだろう。わからないけど例え僕と美香ちゃんの子が僕に似ても不幸な子にはならないように僕が美香ちゃんと守ってあげるから。そうだ、僕に似たとしても美香ちゃんみたいにたくさんの人に愛される子になってほしいな。僕の勘はよく当たるからたくさんの人に愛されるとても良い子になるだろうな。

 関さんはいつも通り冷静に考えれば僕の勘は良く当たるけどいろいろ考えちゃうと当たらないって、竜二さんは焦ってる時こそ落ち着いて考えろって言ってくれた。送別会で言われてちょっと照れくさかった。ちなみに木村くんは木村くんがいると場が明るくなるからずっとそのままでいるんだよみたいなことを言われて泣いてた。半年位経ったら状況報告も兼ねて集まろうって言った翌日に木村くんも昇も小林くんも関さんと竜二さんに電話して僕に対する苦情を話したらしい。村岡くんもみんなが騒がしくてストッパーがいなくて困るとか電話したらしい。関さんも竜二さんも呆れてた。みんなにも困っちゃうよね。僕も美香ちゃんが可愛すぎて辛いって電話したけど。

 そうして考えてる間にもみんなで話してそういえば桜と一緒に写真を撮らなきゃって美香ちゃんが言ってその通り、美香ちゃんと桜を撮らなくちゃと思った。何枚も撮ってたらみんなに引かれた。昇が今年でここでの花見は最後かもなって言って、あれ?昇ってそんなに桜好きだったのって聞いたら殴られた。お前と違って風情を感じてるんだよって言われた。失礼な。僕だってわかるよ。美香ちゃんはさすがお花の妖精さんだなって。桜と美香ちゃんはとても相性ぴったりだ。そういえば美香ちゃんはお花が大好きだけど一番好きなお花はなんだろう。今度聞いてみよう。




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