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春風  作者: はるき
3章
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19/22

漂う

「……待たせてごめんね…………!!!!

もう少しで引き継ぎが終わるんだ……!

そうしたらこの身体はもう君のものだよ……!!!!!!」


「君は神に愛された素晴らしい人間なんだ!!!!!!!!」



ギラギラした視線が僕に突き刺さる。

蛇に睨まれたカエルように、視線を逸らすことが出来なかった。




ゆっくりと彼の言葉が、呪いが僕の心を蝕んでいく。


心は冷えきっていくのに、血が通っていくような感覚がある。


彼の言う完成が近付いているんだろう。



そして、思考の靄が薄れいくにつれ、

僕は恐ろしい事実に辿りつきつつあった。




持ち主である彼自身ですら、"(・)た(・)だ(・)の(・)才(・)能(・)の(・)器(・)"(・)に過ぎないのではないか……と。



才(・)能(・)が(・)彼(・)を(・)乗(・)っ(・)取(・)り(・)、(・)彼(・)を(・)操(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)だ(・)……。




ハリガネムシに乗っ取られたカマキリのように。



この才能に耐え得り、アイドルの夢へ導く器へ乗り移るため、春風の心を才能が一日中這い続け、希望に乗っ取られることがないよう暗闇に閉じ込めているのだ……。





きっとセナ自身も知らない……


才能に出会う前の春風はどんな人間だったんだろう?


どんな風に生きて、どんなことで笑って、どんなことで泣いて、どんなことに怒って、どんな人を愛して、どんな人を憎んで、どんな自分を許したんだろうか。


だけど、もう……春風はいない。



「"セナ"はね、完璧で、天才で、幸運で、スター性があって、みんなに愛される最強のアイドル……、

いや、春風によって生み出された、ただのプログラムなんだ。 春風の夢を叶えるためのね……」



「"セナ"という人間に失敗は許されないんだよ……」


「二度はないんだ……」




「失敗したらきっと……」




その後に続く言葉はなかったけれど、その先に続く言葉を僕は知っているような気がした。




「……セナ…」



「僕は所詮プログラムに過ぎないんだ……、僕自身が1番わかってるんだ、僕自身が彼の才能を身を持って知っているんだ、僕は彼には敵わない……」


「どんなにどんなに頑張っても、僕は偽物で、僕は春風の二番煎じにしか過ぎないんだよ……」








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