漂う
「……待たせてごめんね…………!!!!
もう少しで引き継ぎが終わるんだ……!
そうしたらこの身体はもう君のものだよ……!!!!!!」
「君は神に愛された素晴らしい人間なんだ!!!!!!!!」
ギラギラした視線が僕に突き刺さる。
蛇に睨まれたカエルように、視線を逸らすことが出来なかった。
ゆっくりと彼の言葉が、呪いが僕の心を蝕んでいく。
心は冷えきっていくのに、血が通っていくような感覚がある。
彼の言う完成が近付いているんだろう。
そして、思考の靄が薄れいくにつれ、
僕は恐ろしい事実に辿りつきつつあった。
持ち主である彼自身ですら、"ただの才能の器"に過ぎないのではないか……と。
才能が彼を乗っ取り、彼を操っているのだ……。
ハリガネムシに乗っ取られたカマキリのように。
この才能に耐え得り、アイドルの夢へ導く器へ乗り移るため、春風の心を才能が一日中這い続け、希望に乗っ取られることがないよう暗闇に閉じ込めているのだ……。
きっとセナ自身も知らない……
才能に出会う前の春風はどんな人間だったんだろう?
どんな風に生きて、どんなことで笑って、どんなことで泣いて、どんなことに怒って、どんな人を愛して、どんな人を憎んで、どんな自分を許したんだろうか。
だけど、もう……春風はいない。
「"セナ"はね、完璧で、天才で、幸運で、スター性があって、みんなに愛される最強のアイドル……、
いや、春風によって生み出された、ただのプログラムなんだ。 春風の夢を叶えるためのね……」
「"セナ"という人間に失敗は許されないんだよ……」
「二度はないんだ……」
「失敗したらきっと……」
その後に続く言葉はなかったけれど、その先に続く言葉を僕は知っているような気がした。
「……セナ…」
「僕は所詮プログラムに過ぎないんだ……、僕自身が1番わかってるんだ、僕自身が彼の才能を身を持って知っているんだ、僕は彼には敵わない……」
「どんなにどんなに頑張っても、僕は偽物で、僕は春風の二番煎じにしか過ぎないんだよ……」




