交錯
はっきり言って、今のこの状況が僕にもさっぱり理解出来ていなかった。
僕が引き起こした状況なのだが……。
僕はたった今、スーパースターであるセナの髪をドライヤーで乾かしている。
本当に僕は元アイドル練習生で、セナの隣にいたんだろうか。
「荷物は明日撮影の後家に取りにいくよ。申し訳ないんだけど、撮影が終わったらショウマも手伝ってくれる?」
「……あとさ、学校に通ってトレーナー目指すって言ってたけど、ショウマは今すぐにでもトレーナーになれる実力があるよ」
「これはお世辞じゃないよ。
僕の隣でアイドルしてたってそういうことなんだ」
「……ならせてくださいってお願いするんじゃなくて、ショウマがトレーナーを目指しているって事実だけを事務所に話しておくね……、それでオファーが来たらそういうことだから……」
全く元通りにならないかもしれない。
だけれど、ああ、セナだ……。
僕がよく知っているセナだ。
「僕の顔をそんなに見つめるショウマを見るのは久しぶりだね」
セナが僕の目にかかった前髪をかきあげる。
レッスン後ではないので前髪は汗でベトベトではなかったが、風呂キャンをしていたので、もっと推奨はしない。
セナの瞳に、アイドル志望だったとは信じられないくらい荒れ果てた僕の顔でいっぱいになる。セナに映る僕はどうカテゴライズされているのだろう。ビー玉みたいに透き通った瞳から反射した僕と目があったような気がして、酷く歪んで見えて、居た堪れない気持ちになる。
だけど、不思議と嬉しかった。
きっとあの時も本当はとても嬉しかったんだ。
「相変わらず綺麗だなと思って」
綺麗な絵画のような顔に、ゆっくりと女神のような微笑みが浮かぶ。
「セナについて知りたい?」
僕はゆっくりと頷く。
明日の撮影は早いと言っていた気がするけれど、
彼はセナという人間について少しずつ話し始めた。




