表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

この港町で、どんな出会いが待っているのか。

4/7掲載

挿絵(By みてみん)


プロローグ

俺は死んだ。

高橋悠斗、28歳。

ブラック企業で毎日残業を繰り返す、ただのサラリーマンだった。

休日もスマホでネット小説を読んで現実逃避。

彼女も友達もいない、味気ない毎日。

ある雨の夜、コンビニ帰りに信号無視のトラックに轢かれた。

痛みは一瞬。

その後、すべてが真っ暗になった。

◇◆◇◆◇

……次に目を開けた時、そこは真っ白な空間だった。

「ようこそ、悠斗さん。」

柔らかい女性の声が響く。

目の前に、光をまとった美しい女性が浮かんでいる。

女神だ、と直感した。

「あなたは事故で亡くなりました。でも、幸運にも異世界転生の機会が与えられます。」

異世界転生……?

俺は呆然とした。

ネット小説で何度も読んだシチュエーション。

まさか自分が主人公になるとは。

「新しい世界で、自由に生きてください。特別な能力もプレゼントしますね。」

女神はにこりと笑い、指をパチンと鳴らした。

瞬間、頭の中に青い画面が浮かぶ。

【ステータス】

名前:ユウト(転生名)

年齢:17歳

職業:冒険者見習い

スキル:鑑定LV1、魔法全属性適性、身体強化、アイテムボックス

チート級の能力がズラリと並ぶ。

「これで十分でしょ? それじゃ、行ってらっしゃい。」

女神の声が遠ざかる。

視界がぐるぐる回り、意識が飛んだ。

◇◆◇◆◇

――目が覚めると、俺は船の上にいた。

木のデッキが波でゆっくり揺れる。

潮風が頰を強く撫で、塩の匂いが鼻を突く。

「うわっ……本物かよ。」

慌てて体を起こす。

周囲を見回せば、髭面の船員たちがロープを引いたり帆を調整したりしている。

「船長! 港まであと少しだ!」

誰かの大声が飛ぶ。

俺はよろよろと船縁に寄った。

そして、息を飲んだ。

目の前に、息を呑むほどの光景が広がっていた。

青い海が夕焼けの空を映し、キラキラと輝いている。

前方に、木造の建物が密集した港町。

運河のような水路が町の中心を貫き、船や小舟がたくさん停まっている。

家々は二階建て、三階建ての木造で、窓から暖かいオレンジの灯りが漏れている。

街灯が道を優しく照らし、煙突からは細い煙が上がる。

町の奥、緑の丘の上に巨大な城がそびえ立っている。

尖塔がいくつも空を突き、霧に包まれて幻想的だ。

周囲を山々が囲み、城壁は石造りで重厚。

空はピンクと紫の雲に染まり、太陽がゆっくり沈みかけている。

水面にその光が反射して、まるで宝石を散らしたよう。

船が波を切るたび、白い航跡が尾を引く。

「ここが……俺の新しい世界……。」

俺は小さく呟いた。

自分の体を見下ろす。

17歳くらいの若々しい体。

筋肉が程よくつき、動きやすい。

着ているのは粗末な麻のシャツとズボン、腰に短剣が差してある。

記憶が少しずつ混ざってくる。

この身体の元の持ち主は、港町出身の孤児。

冒険者になりたくて、船に乗って旅に出ていた少年だったらしい。

女神が完璧に記憶を融合させてくれた。

ステータス画面をもう一度頭に呼び出す。

【レベル:1】

【所持金:5シルバー】

まだ弱いが、スキルがあればなんとかなりそう。

船がさらに進む。

水路が狭くなり、両側の建物がぐっと近づいてくる。

バルコニーから洗濯物が干され、住民の笑い声が聞こえる。

露店が並び、魚を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。

「新鮮な魚だぞー! 今朝獲れたばかり!」

「宿屋の部屋、空いてるぞ! 一泊三シルバーだ!」

子供たちが裸足で走り回り、犬が元気に吠える。

すべてが生き生きとしている。

俺は拳を握りしめた。

前の世界では、ただ消耗するだけだった人生。

ここでは違う。

魔法を使って、冒険して、強くなって、自由に生きる。

あの城の王族はどんな人だろう。

この港町で、どんな出会いが待っているのか。

ワクワクが止まらない。

船がゆっくり桟橋に近づく。

船員の一人が俺に声をかけた。

「おい、ユウト! ぼーっとしてんじゃねえ。荷物下ろしの手伝え!」

俺は慌てて笑顔を浮かべた。

「わ、わかった!」

新しい名前で呼ばれるのが、まだ少し不思議だ。

でも、もうここが俺の居場所。

船が完全に停まる。

板がかけられ、町の喧騒が一気に近くなる。

俺は深呼吸して、一歩を踏み出した。

潮風が背中を押す。

灯りの反射した水面が、まるで俺を迎えるように輝いている。

これが、異世界転生の始まり。

港町アルカディアで、俺の物語が動き出す。

(プロローグ 終わり)

感想コメントやリアクション、☆がつけば連載

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ