第24話 超高速ドリルと荒野の開拓
翌朝。
アルリックが目を覚ますと、首元がポカポカと温かかった。
ブランが首に巻き付いたまま、スヤスヤと眠っている。
天然の高級毛皮の暖かさは、どんな暖房器具にも勝る。
「……さて、今日は農業だ」
アルリックはブランを首に巻いたまま(ファッションのようだ)、荒野へと出た。
今日は「水田作り」の日だ。
固い荒野を耕し、水を引かなければならない。
「……おい、ブラン。起きて」
「キュ?」
首元のブランが目を覚ます。
アルリックは目の前の硬い地面を指差した。
「ここ、掘れる? モグラみたいに」
イタチ科の動物は、穴掘りが得意だ。
Sランクのカイザー・アーミンならば、その能力は桁外れのはず。
「キュイッ!」
ブランはアルリックの首から飛び降りると、自身の体をドリルのように回転させた。
ズガガガガガガッ!!
凄まじい音が響いた。
ブランが地面に突っ込んだ瞬間、土砂が噴水のように吹き上がった。
硬い岩盤もものともせず、猛スピードで地面を掘り進んでいく。
「は、速えぇ……! 生き物かよ、あれ!?」
レオナルドが驚愕する中、ブランは縦横無尽に走り回り、あっという間に1ヘクタールの土地を耕し終えてしまった。
しかも、土が細かく粉砕され、ふかふかの状態になっている。
「……優秀すぎる。最強の耕運機だ」
アルリックは感動した。
これなら、ゴーレムを作る手間さえ省ける。
「よし、次は水だ」
地下水を汲み上げ、ブランが掘った水路に流し込む。
そして、王都から持ってきた籾を植える。
仕上げに、アルリックの『植物成長促進』魔法だ。
「――育て。太陽の恵みを凝縮」
ザワワッ……。
水田が一気に緑色に染まる。
ブランはその様子を見て、楽しそうに稲の間を走り回っている(害虫駆除も完璧だ)。
「……来週には米が食えるぞ、レオナルド」
「お前ら……常識って言葉を知ってるか?」
呆れる騎士と、満足げな魔法使い、そして泥だらけになって遊ぶ白い魔獣。
エデンの開拓は、規格外のスピードで進んでいた。
だが、この急激な「緑化」と「マナの放出」は、遠くの山に住む先住民族――エルフたちの注意を引くことになった。
「……荒野に、森が生まれた?」
「あの白い獣は……まさか、聖獣様?」
美味しいご飯と快適な寝床を求めているだけなのに、なぜかアルリックの周りには、どんどん「崇拝者」が集まってくるのだった。




