湖緒 [3]
2時間遅れての更新です······!すみません……!
湖緒は一年生の間、美術部に所属していた。
活動することが少なくて楽な部活ということで、数人ほど怠けた部員もいた。その暇を持て余した部員の中には、噂好きな者がいたのだ。
その部員はどこから知ったのか、湖緒の境遇を勝手に広めた。
澄川くんって、両親と血が繋がってないんだって。
本当の家族は小学生のときに死んじゃって、実の両親の知り合いに引き取られたんだって。
顔とか手の火傷の跡は、そのときのものなんだって。
そんな噂は、一瞬で美術部内に広がり、いつの間にかクラス、学年とぽつぽつ広がっていった。
なぜ僕みたいな陰キャの過去を?とは思った。何が面白いのかも理解できず、妙にこそこそとされて居心地が悪かった。
湖緒にとってそんな噂は痛くも痒くもなかったが、まわりが勝手に気遣い出した。
湖緒と接するたび愛想笑いを浮かべ、徹底して家族の話を振って来ようとしない人は、少なくなかった。
ごく稀に「澄川ん家って、本当に火事に遭ったの?」と尋ねてくる者もいたが、肯定も否定もせず曖昧に笑った。
何が面白いのだろう、気まずいなら気にしなければ良いのに、と中学校生活へかけていた期待は霧散した。
顧問はその話を知ってか知らずか、よく湖緒に話し掛けた。絵のアドバイスだったり、ただの世間話だったり成績のことだったり、色々と雑談を投げかけてきた。
人の想像というのはすごいもので、それすら「可哀想な境遇だから顧問に気にかけてもらってる」と一部の部員が陰で話しているのを聞いてしまった。
実際それは湖緒へのやっかみで、湖緒に絵のセンスがあることは部員はみんな知っていた。天才とまでは行かないが、決して凡人の感性ではない。
市や県が主催の、規模の大きくないコンクールではあったが、顧問に勧められいくつかのコンクールに絵を応募した。
そのうちの二つで入賞して、全校集会で表彰されたときは(全校集会で表彰しなくても良いじゃん······)と冷めた気持ちになった。
なんかどうでも良くなっちゃったな、友達とか中学校生活とか。そのとき湖緒は、中学校三年間は勉強に振り切ることを決めた。
部活も辞めよう。人と関わるのも最低限で良い。
授業を真面目に受けて、勉強を頑張って、定期試験で高得点を目指そう。なんなら満点とか取ってみたいな、なんてぼんやりとではあるが目標を掲げる。
人付き合いは諦めよう。生きていればこんなこともあるだろう。切り替えなくては。
でも、切り替えなきゃ、と思っても。
(·······なんで僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。)
やはり憤るし、傷つく。
このことがあってから、湖緒は同級生と関わることを避けるようになった。




