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魔物(マンドラゴラ)ってバレたら討伐ですか?~花の魔女はひっそり平穏に暮らしたい~【WEB版】  作者: Mikura
五章

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67話



 ニコラウスから仕事の依頼を受け、レオハルトという友人ができて、人間社会の一部、歯車となりつつある現状に私はほくそ笑んでいた。うまく人間に溶け込めている気がするからだ。


(そうだ、子株に防衛手段を持たせようと思ってたんだよね。とりあえず、近くの子株を呼んで……)


 見張りの仕事をしておらず、一番家から近い位置にいる子株を呼びだした。しばらく家の前で日光浴しながら待っていると、とっとこ駆けてくる小さな影が見えてくる。そうして現れたのは、何やらフード付きのマントを被った水色の子株だった。


(ダオンさんにもらったみたいなんだよね、これ。子供たちとのかくれんぼで役に立ってるみたい)


 水色の布は周囲に溶け込める色がないため、かなり目立つ。子供たちと遊ぶときにも目立って、隠れるような遊びではすぐに見つかってしまうので、見かねてダオンがくれたのがこの地味なフードつきマントだったようだ。


(じゃあとりあえずお試しで、この水株に持たせておくかな。マントの下に隠しておいてもらえれば目立たないし……)


 種マシンガンのようなものを飛ばしてくる植物の魔物の、その攻撃に使われている実は、蜘蛛の巣のようにねばねばしたネットを内包しており、ぶつかるとはじけてそのネットが飛び出す仕組みになっている。

 本来はそれで捕らえた獲物に近づいて丸飲みにする用途なので、つまるところ捕獲能力は高いながら、当たった相手に怪我をさせるものではないという代物だ。危険性は非常に少なく、危ない武器を持っているとは思われないに違いない。

 これを筒に入れてポンっと打ち出せる、おもちゃの空気銃のようなものを作っておいた。それを水色株に渡す。


(普段は使っちゃだめだけど、誰かが危ない目にあっていたり、自分が危ない時……助けたり逃げたりする目的でなら使っていいよ。これから人が増えて、悪人がこないとも限らないみたいだからね)


 その空気銃をマントの内側に隠し、背中に紐で括り付けた水株はこくんと頷いた。こうして見ると少しスナイパーっぽい。……まあ所詮は火力などない植物の玉が出てくるだけの、おもちゃの空気銃だが。

 用事が済んで水色株は村の方へと走っていった。他の株にもあの銃を持たせるかどうかは、しばらく村人たちの様子を見てからだ。



「あれ、魔女さま。どうして外に?」


(あ、ノエル。収穫終わったんだね、お疲れさま。……やっぱり服が小さいなぁ)



 秋は実りの多い時期だ。周辺の実りを収穫してきたノエルが、籠いっぱいの食料と共に戻ってきた。栗やキノコなど、代表的な秋の味覚を拾ってきている。

 そんな彼の服の袖が短いのが気になった。季節はすっかり秋で、肌寒いはずだ。彼の耳や尻尾も少し膨らんでいて、寒いのではないかと思う。


(うーん……ああ、そうだ。温かいケープとかポンチョみたいなものを作ればいいのかも)


 水株が身に着けていたマントから着想を得た。そこまで丈は長くなくていいので、分類するならケープやポンチョの類、袖のないタイプの羽織ものなら急成長しても使えるはずだ。そう思って繊維を編んでいく。毛皮を使えればいいのだが、私が【多様化】で出せるのはあくまでも取り込んだ植物のみ。……羊を実らせるバロメッツの能力があるため、やろうと思えば動物のようなものは作れるのかもしれないが。さすがに人外じみているので人前ではやらないほうがいい。

 というわけで繊維で作った布の中に綿を入れ込んで、作ったそれをノエルに羽織らせた。



「わぁ……温かいです。ありがとうございます、魔女さま……!」


(うんうん。次の市で服を新調するまでそれで我慢してね)



 私よりも服飾のプロであるクエリの方が、動きやすさとデザイン性を両立した服を作れるだろう。次の市で彼女に服を見繕ってもらおうと考えていたら、ちょうど良くその午後にイライが訪れた。



「魔女さん! 本日も美しい笑顔で、ご機嫌麗しゅうございやすねぇ!」



 ご機嫌が麗しいのはそちらではないか、というくらいに笑顔溢れるイライは、摩擦で火でも起こすのかというくらいの揉み手をしている。

 四葉の可愛らしい馬車と、この怪しい商人が何ともミスマッチだ。なお、その横ではスケッチブックとペンを持ち、とてもいい笑顔でこちらをなめるように見ているクエリもいた。



「いつ見ても完璧、一寸違わずお変わりなくお美しいですねぇ。いや、髪の艶が以前より増したようで、美しさに磨きがかかったというべきでしょうか?」


(ひぃッ……!! これ作り物なのやっぱりバレてない!? 大丈夫……!?)



 私の体は作り物なので人間の様には変化しない。脂肪は存在しないので太ったり痩せたり、という現象は起きないのだ。栄養を摂ったら花の色つやが良くなるくらいである。クエリにはそれが見てとれているようで、内心震えた。やっぱりこの人の前に出るのは怖い。ノエルの後ろに隠れることにした。

 彼の肩に手を置き、クエリとの間に入ってもらう。少し背が高くなったノエルは、いい感じにクエリの視線を遮って隠してくれている気がする。



「こんにちは、クエリさん」


「おや、こんにちは。……これはこれは、大きくなられましたね! 背丈に合う服が必要でしょう、見繕っておきましょうか?」


「……はい。お願いします」



 ノエルの尻尾は少し元気がない様子で、もしかして彼もクエリが少し苦手なのだろうかと思い至った。……それなのに盾にしてしまって申し訳ない。子供を盾にしていることに、少し罪悪感が湧き上がる。でも正体を見破られそうで怖いので、できれば間に入っていてほしい。本当にごめん。



「ではそのように。そしてそちらの上着、少々拝見させていただけませんか? こちら、きっと魔女さまが魔法で作られたものですね……!? はあ、なるほど、綿を詰めて防寒着として作ってらっしゃるのですね…!? 獣の皮よりも軽く、それでいて温かい! ノエル君への魔女さまの思いやりを感じるような作品ですね……!」


「! ……はい!」



 クエリのマシンガントークを半分聞き流していたら、ノエルが明るい声で返事をしていた。何故か尻尾も元気になって揺れている。……どうやらそこまで苦手というわけではなかったようだ。


(じゃあ心置きなく盾になってもらおうっと。……この人、見るだけで色々分かりそうで怖いんだよなぁ)




偽草(ぎそう)工作が見抜かれたら大変だからね(ある程度分かってそうな気もする)



コミカライズ配信開始は4/2の予定です。あと来週の更新の翌日なので、もうすぐですね…!

また詳細などでましたらお知らせしますね!

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― 新着の感想 ―
かくれんぼ出来ない子株を見かねてマントを渡すイケオジの図。ダオンさん何やってるのw
ワザマエな服飾職人は、外見で骨格や筋肉の付き方を見抜くそうだからなぁ 完璧すぎるってのはたしかに感じるかもしれない
マンドラゴラにとって理想的な窒素リン酸カリの比率はなんぼなんでしょう。 それにしてもノエルは成長してしまうと、子供で無くなると魔女様の庇護から抜け出さないといけないと思い込んでますね。同担獣人ギャル…
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