【1】
北極の小さな島。
島を囲む海は分厚い氷。海面を行く船はなく、代わりに大型の犬が引いたソリが走る。一年中寒く雪が降る。特に冬場は、もう雪は見たくないと思わせる程だ。早朝から雪を掻き、昼食を終えてまた雪を掻く。それでも止まない日には、日没まで雪を掻く。気力も体力も全て奪われる雪掻きが、この島では日々行われている。
忙しさは雪掻きに留まらず。
季節柄の行事が、この島に住まう者にとって体の駆使に拍車をかける。
さらに困った事に、流行病の流行。どこから持ち込まれたのか、重い風邪の症状に見舞われる者が多数出始めた。
こうなってはもう明らかに人手が足りない。島の長を預かるその人物は、馴染みのツテを頼りにする決意を固める。
「——という訳で、お嬢には申し訳ないが、手伝って欲しい。勿論、旅費に滞在中の費用はこちらでもつ。報酬も支払う」
低く渋い声。
ルナ達の前には、真っ白な髭を蓄えた男が座っていた。鋭い目つきと左目に眼帯をする男は、紹介されたサンタクロースのイメージを何倍にも厳つくしていた。
「ゴンじいの頼みじゃ仕方ないか……でも、こっちも既に街の人からの依頼が立て込んでるんだわ」
一年を締めくくり、新たな年へと変わる季節。どの街も忙しく一年の中でも一番の稼ぎどき。ルナ達の元には、普段お世話になっている街の人々からの依頼が多く舞い込んでいる状況だった。特にお菓子屋さんでは、クリスマスケーキ作りにてんてこ舞いで、もう生クリームは見たくないとまで言わせてしまう程だ。
「流石、お嬢だ。繁盛しているようで何よりだ。ふむ——では、倍支払おう。子供達の笑顔には変えられん」
目の前で小切手の金額が書き換えられる。
「あら——そんなに、いいんですの?」
「構わん。こちらも切羽詰まっているのでな。各国からとめどなくサンタ依頼が集まっている。サンタの威厳にかけて、出来ませんは有り得ん」
「分かった。でも、ギリギリまで待って欲しいんだわ。こっちの仕事を急いで片付けた後、すぐに向かう。役に立つか分かんないけど、妖精二人追加で連れてく。これでどう?」
「人員増加か——分かった。それで、いつになりそうかね?」
「二十三日には」
「二日前か——ま、お嬢の腕ならなんとかなるだろう。よし、決まりだ。迎えを寄越す。知っての通り極寒の地だ。寒さ対策は十分に取るようにな」
ゴンじい——ゴンザレスはそう言い残し、ニット帽子を深く被ると、城を後にした。




