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出会いと歓迎


リンを迎えたその日から少しずつ回復していくのが微笑ましい。最初の頃よりは食欲も増したが、それでも赤子が一回に取る食事量の半分にも満たない。

生肉よりも完全に焼いた肉でないと駄目だし、野菜や特に果物が好きらしくそればかり好んで食べるようだ。


「ちゃんと肉も食え。元気が出ないぞ」


口の端についたソースを拭って舐めると恥ずかしそうに下を向く。

――クッ、可愛いな…もっとあれこれ世話を焼きたくなるだろ。


「た、食べたよ!お腹いっぱいだもん」


そうして小さな手が自身の膨らんだ腹を撫でる。

栄養失調のせいかと最初は思ったが、本当に限界らしく触った腹ははち切れそうだった。


「じゃあ食事は終わりだな。体調も戻ったし、今日はそろそろみんなに紹介するか」


手を合わせて「ごちそーさまでした」と礼儀正しく告げる様子に最初は驚いた。

こんな年端もいかぬ赤子が、口出す間も無くすべてをその小さな身体でこなしていく。俺の手助けなくして、自分自身で着替えも食事の補助も声をかけることすらさせずにやる姿は正直目を見張った。

リンをこうさせてしまった輩にふざけるな、と叫びたい。怒りに任せてでもいい、リンを捨てた輩を殺したくなるほどの思いだった。それほどまでにこの赤子の生きてきた環境が、どれほど悲惨なものだったのかその小さな背中が証明していたからだ。



「みんな?」


きょとんとした顔は何もわかっていなさそうだ。それもそうではある。

リンの身体は助けた時点ではかなり弱っており、さらに衰弱した身体は彼女を蝕んだ。

いっときは生死を彷徨うほどの高熱が出たし、熱が下がり落ち着いた頃には腹の足しにもならないような粥しか口にできなかった。

最近になってようやく固形のものが食べられるようにはなったが、あれほどの少食具合だ。太らせてやろうにも食べる量がこの程度では意味がない。しかし今は傷も癒えたし調子も随分と戻ってきたようだ。

ならば、今か今かとそわそわする連中にも顔合わせをするべきだろう。

リンほど幼い赤子は村には居らず、皆がその姿を心待ちをしているからだ。


村は一つの家族といってもいい。だからこそ俺たちにとって子はなににも変えられぬ宝だ。

出生率の低い狼一族なら尚更。




「そう。俺が纏めるこの村の民だ。前に弟のリシルに会ったろう。あいつ以外にも大勢いるからな。リンの調子が戻るまではと待たせておいたが、会いたくないなら俺としては会わなくてもまったく問題はない。しかし……、早く会わせろってうるせーからな」


 クアラの言葉にピクリと身体が反応した。

 クアラのようなもふもふがいっぱい…、しかも小さなもふもふもいるのだと聞いたわたしは落ち着かない。狼族のもふもふをこれでもかと堪能できる機会ということで間違いないでしょ!?


「あ、会いたい!わたし、みんなに会いたい!!」


 拳をぎゅっと握って、クアラにお願いする。

 しかし答えはクアラではなく別の方向から聞こえて…?


「その言葉を待ってたよ〜リンちゃん!!」


 思わず大きな声で言ってしまったわたしの声に反応したのはリシルさんだった。


「リシル!?お前どっから入ってきたあ!!?」

「あーもう固いこと言うなよ〜俺と兄貴の仲でしょ。さ、リンちゃん善は急げだよ。リシルにーちゃんがリンちゃんを抱っこ」

「させるかああ!!!」


わたしを抱き上げようとしたリシルさんを蹴飛ばして、さっとクアラが抱き上げてくれる。


「お前のようなクソ狼野郎にリンを抱き上げる権利なんざねえ!!」

「いってーな、クソ兄貴!!あ〜俺の可愛い妹ちゃんが、…チッ、仕方ない…ほら、行くぞ。もうみんな集まってんだからな。リンちゃん、みんな優しい奴だから緊張しないで大丈夫だよ」


少なからず緊張していたわたしに気づいてリシルさんは優しく声をかけ頭を撫でてくれた。うん、と頷いて眉間に皺を寄せているクアラに行こうと促す。

扉の先、少し歩いた広場のような場所には大小様々な狼族のみんなが待っていてくれた。

うわあ、もっふもふだ!!ああ、早く触りたいよ〜!ああ、でもその前に挨拶だよね。初対面、第一印象は大切だもんね。


靴がないから、とクアラは地面に下ろしてくれなかった。代わりにベンチみたいな木製の長椅子に下ろしてもらう。


「は、はじめまして!クアラにお世話になってる、リンといいます。よろしくおねがいします!!」


ぺこりと頭を下げて挨拶する。一同シーンとしてしまい、間違った挨拶をしちゃったのかと思って顔を上げるとビックリした様子でわたしを見ていた。


「かっ、かっわい〜!!リンちゃん可愛いすぎたよ〜もう!もう!!もうグバアアアア」


いの一番で駆け寄るリシルさんが両手を広げて抱きついてきた。のをすかさず横から拳が飛んでくる。わたしの後ろにいる、哀れみの目でリシルさんを眺めるクアラじゃないことは確かで……。


「この変態がっ!!」


ペッと唾吐きながらリシルさんを睨みつける逞しい上腕二頭筋。その持ち主さんは、鋭い切れ長眼差しとは裏腹にたわわなお胸が素敵なお姉様でした。




あまりの迫力に思わず“様”付けしちゃうぐらいには。


活動報告に今後出てくるであろうおちびさんたちの年齢参考メモあります。

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