怪奇!予言の書!
「さて、アメリカ合衆国はこうして滅んだわけだ。カナダはこちらに、スペインは我々の合図を待っている。政治的にはすべてが順調だな。欧州攻略の準備はどうか?」
どこぞのピュアハーツから目をそらすようにポジティブに流す我らが皇帝陛下。
対策あるわけでもないしな。
「宣撫工作後に大西洋強襲、英国、フランス、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ロシアの上陸を予定しています。初戦は海兵隊なのでシタッパー提督にお任せします」
「アフリカ方面は中東に進出、と言っても大半は抑えてあるのですが……アジア方面からトルコ・ロシア国境まで進出し停止。アジア方面はインド周辺で停止。防備が脆弱ならインドを打通します。これに関してはナポレーン元帥と指揮を交代したいのですが……強襲上陸後に交代するのはどうも隙を突かれそうなので……リザード軍集団におまかせして穴埋めに海兵隊を使います」
「我々騎士団は東南アジアからインド、中国を攻撃をします。台湾方面から朝鮮半島強襲も視野に入れていますが……できれば中国インドに傾注したい」
ほぼ勝確だな。ニチアサヒーローが国外に出張れでないのなら脅威はないことを証明してくれている。
まったく助かったわ!あやうく海兵隊で先陣掴まされてシタッパーがやられたようだな……やつは我らの中で最弱!幹部の面汚しよ!とかなるとこだった……さすがにそこまで薄情なやつはいないだろうが。
実際提督の俺が万全の力で戦えないのは事実だ、俺提督だぞ?しかも建国の関係上補給系のロジスティクス職は経由してない。この陸軍の将軍が空戦も海戦も強いなんてことそうそうあるわけ無いだろ。ゲームみたいに経験値余ったし割り振っておこうほら陸戦Cになったね、これで海戦後の離島上陸戦させて万能になれるよとかならなんわ。
元は皆は軍艦船員だからな、なおさらだ。
技術力と装備と種族差で上回っているに過ぎん。陸軍と演習したらアメリカ合衆国より早く負けるだろうさ。基本的な戦術しか頭に入ってないし数も限度がある。技術職の人間は船から下ろせないし、基本的に空いてる要因と敵艦切込み部隊だから数も多くないし……。
まぁ、アメリカ自体を使って演習するならアメリカ合衆国より持つだろうな、持つはずだ、持つんじゃないかな?
「会議中失礼いたします、皇帝陛下。及び軍部の皆様方」
こういう時にシーザがくると大体問題なんだよね……。
「シーザ、どうかしたのか?」
「インド政府が降伏の申込みをしてきました。フランスが秘密裏に降伏交渉、ドイツも同じく、ロシアもです」
そりゃまた大盤振る舞いだな。
見事に大国だ。この世界での実情はしらんけど。
「それで?どう申し込んできたのだ?どうやってと聞いたほうがいいか?」
「カナダ、スペイン大使館ですね」
「……筒抜けだな、まぁわかりやすくはしておいたがな」
「それで、政務を司るシーザ議長、首相として尋ねたほうが良いか?どうする?」
「インドはよろしいかと、ただ率先して降伏した国を友邦国として認めた後で同じ扱いをすることには反対です。そのうえヒマラヤ山脈を占領している後では滅んでいないだけマシでしょう」
そういや占領中だったな。
「帝国首相としては?」
「せいぜい知事程度の権限を与えて首都数州だけ任せた方が良いかと」
少しだけ考え込んだエリザベートは地図を見て、俺達を見た。
「首相の判断を認める、他の国は?」
「フランスに関してはカナダへの打診です。なおスペインがフランスの降伏だけは認めないで欲しい、この戦争の利益は不要であるから然るべき措置をお願いしたいとのこと。ドイツも同じく自国の降伏を認めてくれれば他国を纏める、ロシアも同じようなことです、認めてくれればEUを指導して纏めると」
「取らぬ狸のなんとやらというやつだな?」
「皮算用です。国家として友邦スペインの意見は大事ですね。流石に利益は与える必要はありますが……。ドイツは論外ですね、自国以外を売り払うことを計算しています。そもそもその必要はないのですから。カナダに交渉を持ってきてるのもマイナスですね、スペインに堂々と持ってくるほどなら使いようはありましたが。ロシアはスペインに持ってはきましたが……そもそもロシアはEUではないとのことです」
「舐められてとるなぁ……」
形振構わないだけじゃないかな?
アメリカ合衆国はこの世界でも大国だったんだな。再度計画を立て直しだな。シュタイン博士は遅れてるし結構やることが多くなるな。
「すまんな、遅れた。ピュアハーツに関してのことなんだが……これを見て欲しい」
「かまわんよ、シーザも見ていけ」
「はっ!」
そういって広げたのは……うわぁニチアサの戦隊モノのDVDだ……ライダーもあるな。
あれ?日曜系アニメもあるな……どうしてこれを?
魔法少女になりたいのか?確かに科学者的には研究材料だもんな。見た目的にはいけるんじゃないか?頑張って変身してくれ。
「これは日本で流れていたテレビ番組だ、我々で言う娯楽放送だな」
「タイツ?とヘルメット……一部はピュアハーツっぽいところはあるな?こちらは?」
「魔法少女らしい、変身して戦うアニメらしい」
「こっちのフリフリしてるほうが動きがピュアハーツっぽいな……で、このマスクの方は?」
「これは毎年放送されている戦隊モノというやつらしい。内容は地球を征服しに来た侵略者をこの5人、3人、6人……年によって違うが撃退する番組だ」
「なんだそれは!予言ではないか!」
偶然だぞ。
俺がいたころも特に攻められたことはなかったぞ。まぁ後年に実は同じ世界観だってことになったんで毎年侵略されてるし一度は世界征服されてたんだって思ったけどな。
「そんな物があってここまで負けたのか?何を考えているんだ!?」
世界的には有名じゃないし……。
「技術力は敵組織は我々に劣る組織も上回る組織もいる、兵力ですら上回る奴らがいたぞ!しかもこれは日本で作られたものだ!アメリカにも輸出しいたらしい!」
「「「「なんだと!」」」」
話の都合だよ、と言ってもなぁ……侵略者側だと毎年そんなことを想定した番組作ってるの怖いわな。どれどれ?ライダーは……あーこっちの世界でも前世と同じやつがある!うおー懐かしい……。このサーベル欲しいな、作ってくれないかな?
「しかも宇宙の警備隊が地球防衛で戦うものやバイクに乗ったライダーとかいうのもいるらしい、合計4種類あるぞ!シリーズだ!」
布教かな?
「それだけあるのだからパターンも読まれているか……」
「負けるべくして負けたか、技術で押してるに過ぎんか……だがなぜ日本はここまで押されたのだ?首都だけ守りきったのか?」
「カナダ、スペインが言うには地球防衛軍はやはりアメリカの組織だったらしい。この戦隊モノは国際組織のようなものだが司令官がだいたい日本人だ、トップも日本人だ。つまり日本が指導力を発揮できていたらまずかった可能性がある」
いや、日本が舞台なのにやたらアメリカやら英国やらエジプトやら出しても困るだろうし……。まぁ昔のやつだとたまに海外出張で事件とかあるけど……。
初代のバイク載ったやつなんて欧州とかに行って2号と交代したはずだけど……たしかに魔法少女は海外とかでてきても困るから?
ポルノ扱いになるんじゃない?変身シーンとか。
「つまり、この変身モノは……事前の模範教本だったというわけか」
「いや、全部が全部では……それに偶然かも……」
「世の中は必然のほうが多いかと」
シーザが説得力をもたせてるけど偶然だぞ。
「シタッパー、君が言ったのではないか。エデソンは日本にいるのではないかと。これが答えだ。これを元としてピュアハーツを作り上げた違うかね?」
「いや、私もそう思う。その設定だけだとそう考えてもおかしくない」
「でも巨大化とロボは……」
「ほう!私はまだ説明してないが……何故知ってるのかね?ハワイ攻略前に巨大化出来ないか聞いてきたねぇ……しかも追い詰められたらとか……これを見た時びっくりしたよ……キミは何を知っているんだい?シタッパー」
本来なら裏切りを疑われるような場面だが皇帝陛下を含めて俺を見る目は不審ではなく心配だ、どう切り抜けるんだこれは……どうする?
「ハワイ前に……ピュアハーツ勝利前に……この話を知っていたとして……信用しただろうか?」
そう言えば、なるほどとあっさり納得してくれる皆。やっぱ一緒に過ごした時間がキズナになるんだね、俺達も戦隊みたいなものだな。
パーフェクトコミュニケーションやったね。みんなが信用してくれてるよ。
「まぁ、確かに……実際巨大化案に関しては速攻で却下したしな、見た上でも我々が無慈悲な侵略者と印象付けるから反対しただろうが……」
「私も口を出せるなら反対したでしょう、巨大化自体は色々シュタインがやればできるかもしれんが同化政策に差し障る」
「騎士団としても巨大化は反対だ、空挺降下装置が使えんから平押ししかできなくなる、それなら存在意義がない。高速機動と痛撃の打撃力、同時編成で離れた100の大都市を落とせるほどの能力を持つ騎士団が平押しでは帝国軍と合併した方が良い」
「帝国軍としては賛成ではあるが……宣撫工作は絶対に失敗しただろうな、巨大化は具体的にはどれくらいなんだ?」
「地球の情報サイトを見たら50m~100mだそうだ」
「幅が広い!」
「絶滅戦争するしかなくなるではないか!友邦国との関係も崩れるじゃないの!なんでそんなに巨大化できるのよ!」
「落ち着け!ナポレーン!たいてい世界征服とか闇の世界にするとか地球を食うとか……ろくでもないことだから宣撫しなくてもいいらしい」
「ただの侵略で……!!何しに来たのよ!」
ただ単に滅ぼしに来るパターンあるもんな。
「侵略だ、自分が住みやすくするために」
「じゃあ余等と変わらんの、移民にきたり植民に来ただけだ。全員が移民できれば植民地ではなく国家にできるが……ここに骨を埋めるか増える人口を考え宇宙の土地をまた探しに行くか……」
単純で倍増えるからな。たしかに寿命の関係もあるかも知れないけど。
同化するまでの間に減るか?
「まずは地球が先ですよ、陛下」
「ああ、そうだな……我々が住みやすい環境でよかったな。原生住民を殺して住み替える必要があったら……どうしただろうな?」
「我々は虐殺者にはなりたくはないですね、仕掛ける側はごめんです!結果的にすることになっても自分からそれをしに行くようでは……団長は退任しますよ。もう懲り懲りです」
「帝国軍は臣民を守る盾であり槍である、まぁ今の武器はたいてい槍でも盾でもないですが……科学の進歩ですね。新しく臣民になる相手を殺し回るのは御免被ります、相手がその気でやるかやられるかならともかくね。虐殺ありきなら辞表を出しますよ」
「我々も住める場所を探しに来たわけで……極論滅ぼすなら旗艦主砲でも撃てば良い。だが敵対してない相手ごと対話もなしにやれと言われたら……宇宙軍トップとしてとして辞任いたします」
「元老院も全員反対するでしょう。自衛戦争の結果でそうなったことはたしかにありますが……もはや大半を占領し、統治も良好。ここから絶滅戦争に移行したとしたら……その場合は私も職務返上して退任します」
「私はそもそもそれをできる地位にないが一人の科学者としては反対する、本当なら誰も殺したくはないのは共通だろう。今まで殺してきたからと言って殺す選択肢が真っ先に出るような相手はもう殺し合ってるだろうしな」
そりゃ伊達に宇宙を彷徨ってるわけではないからな。
荒廃した星で数百年、数千年、宇宙をさまよい探し続けて、とうとう惑星の命が尽き彷徨って100年、たった100年程度だがずいぶん人は減った。
宇宙では猫も杓子も戦争ばかり、同じ船団国家なぞ勝っても利益もないし一度倒しても復讐してくるばかり。惑星国家も惑星ごと移動して特攻自爆をしかけてきたり。最後の最後に母星を完全に汚染しきって逃げたり。
同化してくれる国家も最後まで殺し合う国家もいた。年はとっても戦争に快楽を感じたことなぞ一度もない……本当にね。
「終われば我々が防衛側か……」
「終わればですね……」
「終わらせましょう……」
「終わらせよう……」
「これを最後にしよう……」
100年、短いが長かった。あれだけ死んでも今でも覚えてるような奴らもいる。それが終わるのだ。俺達はこれを最後の侵略戦争にしたい。同じことを何千年といい続けてここに来たんだけどな。
流石に打ち止めでいいだろう、前世の故郷に骨を埋められるのは贅沢すぎるかもしれないけど。
「………………戦略を転換する。インドは降伏した。新たな臣民に同等の権利を」
「陛下の命、帝国元老院は必ずや実行します」
「インドは指定区域の占領統治、インド旧政府の顔を立てるよう。攻撃された場合は反撃してもいいのだろうな?」
「主戦派ごと潰してくれて構わないとのことです」
「自分のケツぐらい自分で拭いてほしいものだがな……」
「アッサー!うら若き乙女だろう!」
「すまん……」
口挟めなくなるから辞めて欲しい。乗れないし、いじれないんだよ!
「では中東方面、アジア完全制圧、ロシアへの攻撃に切り替え、欧州攻略を延期するとしよう。インドを落とす手間が省けたから一旦トルコから圧力をかける。ロシア東を攻撃してEUに再編できるかわからん地球防衛軍がどれだけロシアを助けるか高みの見物でもしようか……」
団結できるなら現実というものはもっと優しく合ったと思うがね。
前世も今生も俺には微笑まなかったしな。
ま、地位も仲間もあるだけ前世よりはいいだろうさ。
「作戦決行は来月辺りにしましょうか?」
「いや、明日インドを抑えておきたい、海兵隊の移動はしてないんだろう?」
「大西洋強襲のための移動はまだです。中国に回します」
「よし、欧州計画のみ凍結、アジアを押さえロシアを攻撃して様子を見ろ!」
「ロシアも連邦制度ですから崩壊するかもしれません」
「かまわん、降伏するとしたら遅すぎる、構成国から降伏交渉はないのだろう?」
「ありません」
「なら構わん、どちらにせよ国連主要国は討たねばならん。アメリカ以外は受け入れるつもりはあったんだがな……」
「日本はどうしますか?」
「騎士団と海兵隊の中国攻略後再度攻撃を開始する、今度は全力でだ!地球防衛軍総司令部が消えた後立て直す隙を与えるな!」
翌日日本は地球防衛軍総司令部として再編したことを宣言し日本攻撃計画は一旦延期となった。国連の管轄にないことと対外交渉権を持つことを宣言したため帝国は一旦見守る姿勢に回ることになったのだった。
「戦隊モノとかもこんな事やってたのかねぇ?」
「提督?いかがなさいましたか?」
「なんでもない、マリン海兵隊総司令官」
「そうですか、配置転換が多いようですが上はなんと?」
「政治的なものだ」
政治に振り回される軍がいいか、政治を振り回す軍がいいか。
殺伐とした世界では悩みどころだな。さて、緊急会議に行くか……。




