安心しろ、相手は多分まだ第1話だ
「それで、どうする?信頼する諸君らの意見を聞きたい」
エリザベートも大変困惑している。
安心して欲しい、この部屋にいる人間は皆同じ状況なのだからな。
「立て直しがあまりにも早すぎる!昨日の今日だぞ!予期してたとしか思えん!あの国は行動が遅い国のはずだろう!事前の評価はどうした!」
開始当日にいきなり計算が狂ってしまった。すでに中東方面軍は進出をしておりシベリア攻撃も開始されている。アッサーは中国海岸線を抑え日本に対して圧力をかけたうえで内部主要都市を占領、海岸部の海兵隊を再編し日本海側全土に強襲上陸。シベリア方面軍は進撃次第では北海道方面に増援を送り東北進撃。
と言う計画だったである。つまり日本を攻撃するべきかどうかでアッサー騎士団の動きは全部変わってしまうのである。
そもそも日本政府が動けないと舐めてかかった作戦であったことは否めないのだがシュタインが強硬的に直ちに終わらせるべきと強くでた面もある。シュタインはニチアサ系のヒーロードラマを予言書だと思っており、それに則ってエデソンが動くと推測しており実際そのとおりになっていた。
俺も想定外だな。
シュタインは日本が侵略者と戦う指揮を取れば行動を読まれているから負けると確信を持っており、エデソンは自分が指揮を執ればシュタインを失脚させることができると思っている。……はずだ。
実際のところエデソンは日本が、地球防衛軍が勝つとは欠片も思っていない。好きにさせてくれたので講和の道筋を作るくらいのことは考えている。腹をくくり、日本政府にも世界の地球防衛軍にも無断で地球防衛軍総司令部を名乗った鉄壁泰造長官に称賛の拍手をし、心を打たれるくらいにはエデソンは彼を買っていた。
当初の逃走を捨てて死出の旅路に付き合ってやってもいいだろうと思うくらいには軽んじていた鉄壁という男の評価を上げていた。
なんならエデソンはキホテを倒した5人も可愛がっており、自分に優しかった皆が安全に、幸せに、穏やかに過ごせる程度には骨を折る覚悟があった。
講話後に自分の身を引き渡し、幹部たちが自分の死刑を訴えても5人を守るなら死んでやろうという覚悟は出来ていた。
降伏で渡されるのはいやだが、講和で友人を助けるために身を捧げるくらいならかまわんと長い人生と戦争経験で開き直っていた。
ひとえに鉄壁泰造が責任感なく辞任するだろうと軽んじていたこと、まるでニチアサのお偉いさんのような覚悟を示したことで考えを改めることになった。
もっとも、その理由でやってきたのなら同じような戦争経験を味わった幹部たちは要求を受け入れるしなんなら死刑にはしないだろう。シュタインですら理解は示す。むしろこの状況になったことを謝罪するかもしれない。
だが、今あるのは日本攻略作戦を中断するべきと言う空気であり、予期していたのだという諦めであり、最後は日本にするしかないという諦めだった。
奇しくもエデソンとシュタインたちは同じ結論に達しており、大抵は日本が最後の攻略目標の時点で話が始まっていると思いこんでいる。他の国は同じようなヒーローがいないから負けてるだろうと。
会議は佳境に入り大事な部分を詰めることになっていた。
「もう巨大ロボは出来ていると思うか?」
1話から出ることはあんまりないよな。最近はどうなんだ?合体できるようになるまで5話くらい使う。10話は越えないんじゃないかな?
まだあっちは流石に1話終わったとこだろ。
「この速さだ、準備ができているだろう……私なら作れるまで待たせる」
「誰か巨大化できるものは?」
「「「「できません」」」」
「陛下は?」
「……多分できん」
そんな都合よく巨大化できる人材もおらず、装置も出来ずどうするべきかと頭を悩ませた。
だよね、いたら戦争の時に使うか戦ってるよ、巨大化と言っても限度あるもん、1.5倍くらいならいるかも知れないけど。
「いっそ巨大化しなければいいのではないか?ロボを出せないだろう?」
「ロボで我々の艦隊……えー宇宙艦隊を攻撃するのでは?」
「なら勝てるだろう、シタッパー?」
「さすがにエデソン博士も旗艦を撃沈させるような兵器はできないと思いますが」
でもお約束だとなんかすごい想いのパワーとか地球の命とかで旗艦を臣民ごとズバーっと殺したりするんだよなぁ……。
でも現状がお通夜なのでとてもいえないわ。俺は嫌な未来想像で不安に倒れそうなシュタインの手を握って励ましつつなんかないかと提案を出すことにした。
「とりあえず……国連管轄外にないし対外交渉をするのなら静観宣言を出せばいいのではないですか?」
「それもそうか……ウルトラCな政治判断というやつだな、シーザにやってもらおうか」
不毛に終わった会議。ただただ静観を決めただけの会議。帝国の幹部たちはため息だけを吐いて任地の指揮を執る。ただそれだけの会議であった。
「我々バルサク宇宙帝国軍は欧州攻略にあたりアジア方面の制圧に入る。新地球防衛軍が対話を尊び、国連と無関係であることは喜ばしいことである。そして戦闘前のインドの降伏を歓迎する。新たな臣民よ、ようこそ!」
抗戦派の基地を破壊するための合図である演説をしてシーザは席についた。
本来の仕事の時間だ。
「議長、日本攻略作戦は中止したというのは?」
「ピュアハーツには万全で挑む必要があるとの幹部陣の会議の結果であります、軍事的な問題であり陛下の御裁可のもと行われたものなので問題はありません」
「議長はどのような主張を!」
「先程言ったように軍務であるのでほぼ専門外です。外交面が必要なら会議で口を出すので」
「専門外ではないのではないですか?」
「現状私に軍事関係の地位はありませんので越権行為になります」
「皇帝護衛官の職がありますが」
「護衛官ごときが戦争指揮を?」
「いえ、そうではなく議長が……」
「次の質問を」
「日本との外交交渉はどうなっていますか!」
「インドに関しても首相としてお話を!」
「日本との外交交渉はありません、新地球防衛軍ともありません!インドの抗戦派は制圧します、他になにか?」
「アフリカ、オーストラリア砂漠地帯のテラフォーミングに関して」
「現地人に対して非礼な発言を行うな!砂漠地域で住んでいる人間もいる!今まで滅ぼしてきた敵国のような言動は慎め!植民化だ!我々は移民である!」
「失礼しました、謝罪します」
「アメリカ大陸の治安に関してですが」
「まだ我々の統治下にないでしょう、南アメリカはなんとかなっています。メキシコ以北は不明、カナダは友邦であるので協力していただけるでしょう。統治に問題はまだ起きていません」
最高幹部の一人ではあるがやってることは完全な中間管理職であり、シーザは今日も議会で働き続ける。実際は問題山積みだが帝国臣民に中継されているので問題はないと言い張っている。
南アメリカ?いまだに兵が動かせんくらい戦ってるわ!
「議長、インド抗戦派の鎮圧が終わりました、定例の地球への全世界中継演説をお願いします」
「わかった、3,2,1……」
「新しき臣民の諸君!君たちの降伏後も迷惑を顧みず暴れていた連中はこの通りだ。旧インドのじゃじゃ馬は綺麗サッパリ掃除された!……中国沿岸部の制圧は終了した!極東ロシア方面は主要部を制圧。今まさに、シベリアに進出している最中だ!」
実際は主要都市落としたり鉱山抑えただけなんだろうけどな、極東ロシアで押さえるべき場所は軍事的にはそうないし……面倒だから何もない土地なんて主砲ぶっ放せばいいのなー。
まぁ植民可能の土地は多く取って置くに越したことはないし手間はかかるが仕方はないなー。
演説内容をひねり出しながらシーザは堂々とした姿を魅せた。
一切の問題もないかのように語るその姿は見ていた地球側にも少し恐ろしい藻を感じさせるほどであった。
「戦争の終わりは近いだろう!我々の勝利によって!君たちの始めた戦争だ、君たち指導者や政府の命を持って終わらせろ!新たな臣民たちよ!繁栄を享受しようではないか!バルサク宇宙帝国万歳!」
「「「「「「万歳!」」」」」」
とりあえず終わらせる時はバルサク宇宙帝国万歳で終わらせるのはシーザの悪い癖である。
幹部陣も終わりに困るとこれを真似てやたらと多用する強制打ち切りの言葉である、さながら戦隊モノの決めポーズだ。
御旗楯無御照覧あれも驚きのキメゼリフであった。




