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転生したらニチアサっぽい世界の敵幹部になってた  作者: MA


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7/10

大国の落日

「あたし達勝ったんだよね?」


 赤井紅子はベッドの上で呟いた。

 勝った割には称賛されることもなく、なにかいい方に変わったという感覚もなかった。

 病室のテレビはカードを買わなければ見ることができず、金欠の紅子はただただ暇になっていた。


「勝ちはしたけど本州以外占領されとるるわ、待合室のテレビで見たけど勝利勝利の連チャン連呼。本当に勝ってるんか?」

「しばらくは入院と検査生活、しんどいですね……」

「で、でも他の国に派遣したがってるみたいな話があるって。なんか、医務官みたいな人が言ってたよ……?」

「いやよ~。世界のためとか言われて日本を守ったのにこれよ~?他国のために命までかけたくないわ~。どうせアメリカとか中国とかロシアとかEUでしょ?扱い悪いでしょ」

「それに……地球防衛軍みたいな扱いされてるけど別に所属はしてないよね?政府に頼まれたから入ったけど地球防衛軍じゃなかったよね」


 それは真実だった。

 鉄壁支部長ですら勘違いしているが彼女たちはエデソン博士と日本政府に頼まれて協力しているだけであり地球防衛軍所属ではない。

 そもそも協力した際は防衛省であり、地球防衛軍は組織されておらずそれを盾に協力を要請することも強制することも本来は出来ないのである。

 エデソン博士が協力している地球防衛軍にエデソン博士が作った専用施設があるので来ているだけで本来は無関係である。事実、地球防衛軍は彼女たちに給与を支払ってはいない。もしそこを突いたら払ったことで所属していたと言うことにするだろうが。

 彼女たちは親に支払われてると思ってるし、彼女たちの両親も流石に国家が動く命がけの仕事で自分たちの口座に支払えとも言わないし、ここまでやっているのにちゃんと支払われてるかということも確認はしない。

 あくまで協力要請に従っただけであり日本政府からは命を懸けたとは思えない金額が政府に協力した際に作られた口座に入金されてはいる。


 最も日本政府も地球防衛軍が引き続き適切な金額を支払ったと思っているので気にしていないのである。

 彼女たちがもう少し金回りに確認するタイプだったり、派手な遊びをしていたりするタイプであれば気付いていただろうし、帝国も他国もそれを利用して日本と地球防衛軍、ピュアハーツの切り崩しに全力を注いだであろう。

 バルサク宇宙帝国側はもし彼女たちが寝返れば幹部として迎えただろう。不幸なことに彼女たちは普通の女子高生であった。


「勝手に所属されたのかしら?」

「違法やないの?違法やろ?」


 憤慨する葵をよそに珊瑚は諦めたかのように爪を磨いていた。


「国が滅びるかどうかだしね~。アメリカなんて残った世界各国政府からも非難されてるし人間てやっぱり自分勝手ね~。滅んだほうがいいかもね~」

「じゃ、じゃあ……利用価値がないって思われたら……どうなるの?」


 不安げな金恵の声で病室は沈黙した。


 奇しくも沈黙を破ったのは会話を始めた紅子だった。


「さぁね、でも敵の偉いやつ倒したんだししばらくは大丈夫じゃない?軍隊って偉い人が死んだら止まるんでしょ」

「まぁ、テレビはそう言ってたな。コメンテーターの芸能人とかが」

「それ信用できるの?」


 エデソン博士が聞いていたら鼻で笑ってたであろう戯言であった。

 だが、彼女たちにとっては博士が見ていたニチアサ戦隊モノの幹部を倒したようなものだと認識していたのでまだ前向きであった。

 あるいはスペインで倒されたのは怪人A程度のやつだと言われたら彼女たちは辞めると強い意志を見せたかもしれない。




 数日寝込んでようやく全員が起き上がれるようになった5人は日本自体が滅んでいないことに安堵し、本州以外が陥落したが攻撃がないことを伝えられ安堵していた。


「地球に住む臣民、及び敵国である諸君!ご機嫌いがかな?」


 突如行われたバルサク宇宙帝国からの世界同時放送が来るまでは。


「余自らがこうして放送するのは宣戦布告以来だったかな?余は皇帝で少し忙しくてな。わざわざ攻略作戦まで告知したのにあっさりと終わってしまって拍子抜けだったわ。さて、我々との戦争を主導した国連の根幹国家の一つであるアメリカ合衆国は先日の我が親愛なるシタッパー提督率いる海兵隊に東西海岸を強襲され主要都市は既に陥落している。国連本部はすでに占拠され、バルサク宇宙帝国の名のもとにビルごと解体された。アメリカ政府は首都ワシントンD.C.を放棄しどこぞへ逃げたが無駄だ!ご覧いただこう」


 映し出されたのはロッキー山脈、様々な作品の題材になり、アメリカを代表する山脈である。


 秘密にされているが地球防衛軍の総司令部があり、州どころかカナダ側まで許可を取らずに調査と公害対策に遺体捜索を理由に技術者を送り込み、勝手に基地を設置した広大な山脈である。


「この短時間で山脈の山々をくり抜き基地化したことは尊敬に値する。前世はきっと蟻だったのだろう。国連参加国の分担金や物資を中抜して作ったことにも、囚人に強制労働をさせたり不法移民を強制労働させたり、逃走者を射殺して行方不明者の死体の発見を成果にしたりとなんとも素晴らしい国家ではないか!自由、平等、博愛にふさわしい行動だ。世界の諸君らもそうは思わないか?地球防衛軍の戦力を苦戦する南アメリカ戦線やアフリカ戦線に送らずこちらの工事に注ぎ込んだこともな!」


 バルサク宇宙帝国はカナダ側にはロッキー山脈攻撃は事前に通達しており、カナダは国民のロッキー山脈周辺からの撤収、避難は完了させていた。

 逆にカナダ側はアメリカ側が勝手にカナダ領土にも拡大して地球防衛軍総司令部を拡張した基地を作ったことを知らなかったため地球防衛軍の総司令部の情報を会議内容、幹部所在基地を一部とは言え()()()()帝国側交渉担当のカバンの中に落としてしまいそのまま帰ってしまった。

 そのためバルサ空中帝国側は協議の結果、本当に大事な位置を把握したうえでその工事の速さで複雑化してるであろう山脈を更地にすることを決定した。


「さて、皆さんも御存知……一般人はご存じないようだが地球防衛軍総司令部だ。先日、帝国第4騎士団長キホテが戦死した時に地球防衛軍の功績であると喧伝していたのはよぉく知っている……。何でも地球防衛軍は被害無しでキホテ団長を討ち取ったとか……彼ほどの人物が被害も与えられず負けたと……彼らは言うらしい。なので我々が把握していた相手側の犠牲はどうやらなかったらしい。地球防衛軍が言うのだ、犠牲はなかったのであろう?いや、全く完敗だ、人類側は強敵だから我々もギアをひとつばかり上げようではないか」


 皇帝は被害にあった地球防衛軍の一般兵や一般国民をなかったこととした地球防衛軍に対して嫌味を飛ばし、不信感を煽った。

 皇帝はこの辺はシーザ議長にやらせたほうがうまくやれただろうと思ったが英雄の弔砲と国葬に自分が出ないのはダメだなと役目を買って出たため演説の下手さを嘆きながら続ける。


「戦力差も技術差でも我々が一方的に負けたという事実は看過できない。彼らがそういうのだから真実なのであろう。よってキホテ団長の国葬と弔い合戦をすることにした、弔砲発射用意……撃て!」


 アメリカ大陸に構えた雄大にして広大な山脈はまるでマシンガンでウエハースを打つかのごとく破壊され擦り切れていき、そして消えていく。

 巻き上がる土砂を吹き飛ばし大気をそのロッキー山脈であったものの土砂が覆っていく。


「おっと、夏のない年は御免であろう?我々は慈悲深いのでな。この巻き上がった土砂は……」


 皇帝は指をクイと動かし巻き上がる土砂を移動させた。


「埋め立てにも肥料にも使えるだろう、せいぜい活用させてもらうとしよう。冷害の危機は去ったことを喜び給え人類諸君」


 鳴り止むことのない砲撃の中で皇帝は指を動かし土砂を何処かへ動かしていった。

 そして、ようやく砲撃が止んだ時……そこにはなにも残ってはいなかった。


「我々が君たちの土俵に立たねばこれくらいで終わるのだ、君たちの始めた戦争だぞ?帝国で戦死した将官クラスの弔砲は実弾でな、相手に撃つのだよ。これでキホテ第4騎士団長の功績は地球防衛軍総司令部殲滅と陥落になったわけだ。キホテ騎士団長を討ち取るのに地球防衛軍総司令部が必要だったが……もし他の団長や将軍や隊長が討ち取られたら何が釣り合うのであろうな?国葬を開始する!」


 皇帝が自信満々にいった国葬。キホテ第4騎士団長の国葬とアメリカ合衆国という国家の葬儀とダブルミーニングで我ながら上手いと思ったのだが人類側は地球防衛軍が壊滅した絶望に押しつぶされて気づくわけもなく、頼みの幹部たちもシュタインは弔砲と称して月面からの攻撃の指揮を取っており、シタッパーは両海岸から攻勢を開始し聞き逃し、アッサーはアメリカ中部空挺降下作戦を開始中、ナポレーンはメキシコから攻め上がりシタッパー、アッサーとの合流を目指していたためロッキー山脈攻撃開始から見ていなかった。


「アメリカ合衆国政府は地球防衛軍総司令部に逃げ込んでいた事は知っている、そして今消え去ったことは諸君たちも確認しただろう。アメリカ防衛軍だったようだな?……次は欧州だ、覚悟せよ」


 そこからはキホテ騎士団長の国葬映像が流れ、シーザ議長の演説を挟み、3時間した頃にはアメリカ合衆国は州それぞれの降伏を持って消え去っていた。2つの国葬は終わった。

 全世界中継で放映させる映像から流れるバルサク宇宙帝国の葬送曲が地球に向けての葬送曲のように鳴り響いていた。

 そして陰鬱な葬送曲の終了と同時に入ってきたニュースはカナダの降伏であった。


「カナダ政府はこの時を持って英連邦王国を抜け、バルサク宇宙帝国に降伏する」

「バルサク宇宙帝国元老院議長、首相シーザです。独立国家カナダの降伏を歓迎する。以降は同胞として地球の統治に協力を願いたい」

「喜んで、お手伝いいたしましょう」

「これは白紙和平である。我らの新しき歩みに!」

「我らが宇宙の同胞に!」




「やはりカナダは裏切っていたか!」


 そのような言葉が世界各国で叫ばれるがなにかが変わるわけでもなかった。


 人類側は地球防衛軍という名の組織とアメリカ合衆国という大国を失いカナダの降伏を持って南北アメリカ大陸を失った。それはバルサク宇宙帝国の幹部を倒せたと喜んでいた既存国家を絶望させるのに十分であった。


 戦争はまだ終わってはいない。

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