相談
久留島類にはあまり関わらない方がいい。医者の薦めであるが、実行できるかといえば否である。
説明するのも憚れる内容だ。お前と一緒にいると頭痛がするし記憶に関わることかもしれないうえ、医者からも関わらないほうがいいって言われているからもう関わらないでくれ、だなんてすごく言いにくい。それに同じクラスだというのに、どうやって関わらないようにしたらいいというのか
さらに、久留島類が素直に聞くかどうか疑問だ。ズバッと言っても、何食わぬ顔で接触する可能性がある。
「と、いうわけでどうしようかと迷っているんだ」
「それ、無理じゃない?」
だよな、と咲夜は肩を落とす。
登校している途中、昨日の病院のことを話すついでに久留島類対策を暦に相談したが、一刀両断された。
「つまり、志津江先生との話の内容を久留島君に言わず、なんか絡んでくる久留島君を避けたいってことだよね? 言った方が手っ取り早いんじゃないかな」
「取り巻きの女子が怖いんだよ」
「ああ……過激派がいるからね」
暦が苦笑する。
そう、言いたくないのは、久留島類が傷つくかも、からではなく、取り巻きの女子の反応が怖いからだ。あの男はそれを言われて、傷付くような男ではないだろう。だが、取り巻きは別だ。
ただでさえ、久留島類がΩである咲夜に構うのを快く思っていないのに、頭痛がするから構うな、と久留島類に言ったとしよう。すぐ取り巻きの女子から「調子乗っているんじゃねーよ」と睨まれるうえに嫌がらせしてくる可能性がある。
それはなんとしても避けたい。
「そうなんだよ。だから、どうすればいいのかなって」
「授業中は頭痛しないの?」
「久留島が視界に入らないから大丈夫だ」
久留島類の席は、咲夜よりも後ろだ。だから授業中は久留島類を見なくてもいいから、頭痛に悩むことはない。
「つまり、休み時間とかホームルーム前の時間に避ければいいんだ」
「まあ、そういうことだな」
放課後は久留島類も用事があるのか、それとも取り巻きの女子に絡まれたくないのか、とっとと教室から出て行く。だから用心するのは、昼休みを含めた休み時間と朝と七限目後のホームルームの前後。その時間さえ久留島類を避けられたらいい。
「休み時間は無理だけど、朝のホームルームならなんとかなるよ」
「本当か!? どうすればいい?」
休み時間はどうとでもなる。予習しているときは話しかけてこないので、授業が終わったらすぐ予習に取りかかればいい。ただ、朝のホームルームは席に着いた途端話しかけられる。だからそれは有り難い。
暦はにっこりと笑った。
「簡単な話よ。わたしのクラスに来たらいいじゃない」
「え」
「久留島君だって、他のクラスには行きづらいでしょ?」
たしかに、久留島類が他のクラスにいるのを見かけたこともないし、他のクラスの女子と話すところは見るが、男子生徒はない。
いくら久留島類でも、他知り合いがいないクラスには入りづらいだろう。
「けど、暦の迷惑になるから」
「やだだなぁ、咲夜は!」
暦が笑い飛ばす。
「迷惑だなんて思わないよ! わたしの友達も紹介したいし」
「ああ。サバサバした子と逞しい子だったっけ?」
「そう! いい子たちだから、咲夜にも紹介したいなって。あっちも咲夜のことが気になっていたから」
「気になっていたって、オレのことなんて説明したんだ?」
間。
暦が咲夜に向かって、にっこりと満面の笑顔を浮かべた。やけに爽やかな笑顔に身震いがした。
「おい、なんて説明したんだ?」
「じゃあ、学校着いたらさっそく紹介するね!」
「話を逸らすなよ! なんて説明したんだ!?」




