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Chaptar:01 プロローグ

 趣味で書いている小説です。はじめての投稿なので誤字脱字、言葉の言い回しがおかしい点があると思いますが、そこらへんはご了承ください。

「あなたの時は終わりを告げたわ。さぁ、夜(私達)の時が動き出す……」

 先程まで明るかった周りが一瞬にして暗闇へと変わっていった。漆黒のモヤモヤした物体が頭上に広がる青空をものすごい勢いで覆っていく。「闇」その例えは正しいだろう。何もかもが「光」を失ってしまい、「闇」に飲み込まれてしまう。人も動物も鳥も魚も木も……誰であってもこの現象を止めることができない。この現象に抗える術を持ち合わせた者がいるならば、それは人知を遥かに凌駕した存在だろう。人々はきっとその者達の事を「神」と呼ぶに違いない……

「アルディシアー!!」

 青白い稲妻と共に衝撃波が周りに広がっていく。誰も想像できないほどの破壊力だった。音速の壁を越えた通常の衝撃波とは違い、その発生源から円状に広がるそれに当たった物はすべて粉々に砕け散っていった。

「ようやく来たか。(ホワイト)騎士(パラディン)よ!」

 衝撃波の発生した場所からとてつもなく速い速度で黒い物体が、垂直に上空へ飛んでいった。そして先程衝撃波を放った者に向かって叫んだ。

「流石に……これほどまで無傷とは……悔しいが激戦が予想されるな……」

「激戦だって?貴様達は私達と対等に渡り合えるとでも思っていたのか?」

「何ぃ?!」

 黒い煙をその場に残して、黒い物体は彼らの前から姿を消した。いや……消えたかのように見えただけだった。気配、呼吸音、殺気……その全てを消し去って黒い物体は、彼らの真後ろである丁度三十センチのポイントに移動していた。

「はぅっ!」

 振り向こうとした瞬間、彼らのうちの一人が闇に飲み込まれた。何も音を立てずただそこからいなくなったかのように消え失せた。そして黒い物体は次から次へと彼らを飲み込んでいった。最後の一人になるまでは……

「キイィィィィンッ!」

 金属と金属がぶつかり合う音が周りに響き渡る。

「やはり貴様だけが残ったか。白き英雄よ!」

「その動き……夜の王か!」

 鍔迫り合いの状態を維持しながら二人は上空へ向かって飛んでいった。白い光と黒い煙が螺旋を描いて進み、上空を覆っている漆黒のモヤモヤに向かって入っていった。

「久方ぶりだな。白き英雄よ!」

「貴様もなっ夜の王!」

 二人の存在を月明かりがそっと照らす。稲妻のように青白く発光する鎧騎士……彼こそが白き英雄と呼ばれる人物だった。そして、その反対側で不気味な笑みを浮かべている黒い物体こそが夜の王。またの名をアルディシア。どのような装備をしていて、どのような防具をつけているのかもわからない。そしてその姿もはっきりと分かっていない。今わかっているのは本名と「夜の王」ということだけだ。

「いつもいつも夜(私達)の時を邪魔してくれるな……そろそろ疲れてきたぞ」

「それはこちらの台詞だ。貴様がこの時に手をかけたおかげで、幾多の騎士達が犠牲となった。その悲しみと憎しみの連鎖をこの私が打ち払おうではないか!」

 白き英雄がもう一度剣を持ち直し、構えた。

「来るがよい。この夜の王に充分抗った功績は末代まで語ってやろう!」

「逝くぞ!」

 再び世界に白き閃光が広がる。それと同時に先程と同様……それ以上の衝撃波が世界を包み込んでいく。ありとあらゆるものが光の中に消えていった……二人の闘いの行方はわからないまま世界は沈黙に包まれていった。


                       *


「ローデル。続きは?」

「それからね、二人共傷ついて引き分けになったのよ」

「それで、それで」

「ヨルダは白と夜の話がとっても好きなのね」

「うん。大好きだよーでも一番好きなのは、ローデルが話してくれるお話!」

「そうかい、そうかい。それは嬉しいね。こんな私でもヨルダに聴かせる話があるのは嬉しいよ」

「ローデルのお話はなんでも好きだよ!ねぇ!続き!どうなったの?それから?二人は?」

「それからはね……あらっこんな時間。もう私行かなくちゃ」

「えぇーローデルどっか行っちゃうの?」

「ヨルダ心配することないわ。少し出かけるだけよ」

「うぅーそう言ってヨルダだけまた置いていくのでしょっ」

「んん~そうじゃないのだけど……仕方ないわね。いつもヨルダにはお留守番してもらっているわけだし、今日は一緒についていくことを許可します」

「わぁ~い!やったー!!ローデル大好き!」

「こらこら!はしゃぐのではありませんよ。痛い痛い……そこは引っ張らないの」

「えぇーいいじゃん。ローデルの髪を触るのは私くらいしかいないからいいんですー」

「それは困ったなぁ……まぁ、いいですか。ここには私とヨルダしかいませんし」

「私、ローデルの長い髪大好きだよ!大きくなったら私もローデルのように長くのばすのが夢なのっ!」

「なんだか照れるなぁ……」

「だって、ローデルは私のお母さんのような人だからねっ!」

「お母さん……ですかー」

 ヨルダの言葉が少し胸に突き刺さる。

 胸が苦しくなるような痛みではないが、この娘の「母親」という言葉がどうも毎度のように胸に突き刺さってくる。

 ヨルダには母親や父親はいる。いるのだが、今この場所にはいない。この場所には私とヨルダの二人だけだ。二人しかいないのだ。

 ヨルダは両親から捨てられた子供なのだ。いや……今の言葉は不適切だ。ヨルダは両親も含む一族から見捨てられた。元から存在していない、そこにはいなかった、産まれていなかったことにされた哀れな子供だ。

 この世界に存在する二大勢力、「白」と「夜」一族のハーフ。それが彼女、ヨルダだ。普通ではこの二種族のハーフは誕生することはあり得なかった。しかし、神の出来心か、それとも悪戯か……彼女は産まれてきた。誕生するべきだったのかもしれない。

 私は彼女の存在をいち早く知り、そして保護をした。彼女が「白」と「夜」達から危害が加えられる前に私が守らなければいけなかったから。今、これからも私がヨルダを守っていく。奇跡に等しい彼女はこの世界にとって大切な存在になるだろう。来るべき時が来るまで私が体を張って彼女を守ろう。そう神に誓ったのだ。


 ヨルダに服の裾をくいくいっと引っ張られた。

「ねぇーローデルーまだなの?ヨルダ準備できたよー」

 黒いフードのついた羽織りもの着たヨルダがまだかと言わんばかりの表情でこちらを見ている。羽織りものの下からチラリと見せる白く輝く純白のワンピースが右に左に揺れる。ついには我慢できずに革靴を履いた状態で足踏みをし始めた。その姿が、無邪気で、可愛くて――気づけば右手がヨルダの頭の上にいって、頭をそっとなでていた。

「どうしたの?ローデルぅ?」

「なっ……なんでもないですよ!決して可愛すぎて見入ってしまったなんて言いませんからねっ!」

「ローデル口に本音が出てるよー」

「はっ!今のは忘れて、忘れて!」

「たまにローデル別の世界にいるよねー」

「うぐぅ……さぁっ!行きますよ!」

 必死に赤い顔を隠しながらヨルダの手を引いて外の世界に足を踏み出した。このような幸せな時間がずっと続けば良いのに……とこの時の私は心に願っていた。しかし、その小さな願いも叶わないとは誰も思ってはいなかった……


                         *


 金色という言葉がふさわしい色の植物が足元に広がっていた。ふと横を見れば地平線まで広がる金色の野原がそこにはあった。丁度私くらいの背丈の植物で、ぎりぎり周りが見渡せる状態である。ヨルダはもちろん地平線など見えない。そのくらい高い背丈の植物だった。

「ローデル見えないよー」

「仕方ないですね。よっと……これで見えるかい?」

「わぁ……すごいなぁ……いつも見ているのと違う……とてもきれいだね!」

「そうかい、そうかい。それはよかった。でもね、ヨルダ……そろそろおろしてもいいかい?」

「どうして?このまま行こうよ!」

「うぅ……いい加減ヨルダも大きいからね、ちょっと言いにくいけど……重たい」

「ローデルゥぅぅ……ヨルダ重くないもん!」

「そういう問題じゃなくてねぇ、ヨルダももう五つになるでしょ?私にとってもう充分重たいレベルなんだよ」

「ローデルのケチぃ」

「ケチって!ほら、ぐずぐず言わずにおろすよ」

「仕方ないなぁ」

「周りの景色が見れたから良いじゃないかい?」

「うん。いいよ、ローデルがそこまで言うんだから」

「あのねぇ……まぁ、いいか」

 そっとヨルダを地面におろした。

 少し不服そうな顔が見られるけど、問題はない……はず。

 ヨルダはもうすぐ五歳になる。

ヨルダが私の元に来たのが丁度三歳の頃。あの頃はあの頃で大変だったけど、今のように元気なヨルダの姿を見ると、彼女を引き取って……保護して正解だったと思う。そして、私が抱き抱えられないほど重たくなった。ようやくここまで育ってくれた。そう思うと嬉しくて、嬉しくてたまらない。


 ヨルダの手をしっかり握り、目の前に広がる無限の金色の荒野に向かって私は歩み始めた。もちろん草をかき分けながら、ヨルダが迷子にならないような速さで歩いて進んでいった。

 ザッザッザッザッ――

 ザッザッザッザッ――

 ヨルダと私の歩く音がリズミカルに周りに広がっていく。それに加えて、草をかき分ける音も入り、なんだか小さな演奏会のような状態となっていた。その音を聞きながら、ヨルダは元気よくスキップしながら進む。

「ねぇ、ねぇローデルぅ。何処に行くの?」

「それは、ひ・み・つ」

「えぇーいいじゃんいいじゃん!」

 つないでいる手をヨルダは力一杯に右へ左へと引っ張る。あぁあぁあぁ――駄々をこね始めるとヨルダは止まらないからねぇ。こうなってしまったら意地でもその答えを聞き出すまで、きっとこの行動をやめないだろう。この子は昔からそうだ。頑固で自分が決めたことは決してやめない。もちろん自分の意見もなかなか曲げてくれない。仕方がないな……このまま黙っていても進展はないだろうし、ここらで外出をした目的をヨルダに話しておこう。そして早くこの振り回されている手を止めて欲しい。そろそろ限界が来る――あぁ……手の感覚がなくなってきたあぁぁ……

「わかった。わかったからその手をブンブン振るのはやめてもらえるかなーねぇ、ヨルダったら!」

「やった!はい、やめた!やめたから教えて、教えて」

 やはりヨルダのこの行動だけはついつい妥協してしまう。妥協せざるを得ない。だってこのまま手を振られ続けたらいつかあらぬ方向に曲がってしまうと思う。今回は手を握っていたから手のことで諦めたが、手を握っていなくても妥協はしていただろう。ヨルダのお願い、教えてのしつこさは今日に始まったものではないから、この行動が始まった途端、私の中の何かが諦めろと叫ぶのだ。やれやれ、これから大きくなると、もっと面倒なことになるのだなと思うとため息しか出てこない。

「今回外に出た目的は大きく分けて二つあるの」

「うんうん」

 興味津々な目でこちらの顔を覗いてくる。

「一つ目は定期的なこの世界の巡視ってところかな」

「どうして巡視するの?」

「ヨルダは私の仕事を知っているでしょ?」

「うーんん」

 ヨルダは首を大きく横に振った。

「ローデルはいつも仕事の話になると誤魔化すからね、聞いても教えてくれなかったよ」

「あらぁ?そうだったかな――あぁ、そうだったかもしれないねぇ。ごめん、ごめん、隠すつもりとかそういうのはなかったんだけど、やっぱり五歳にもならないヨルダにはまだ早い話だと思ったから話さなかったんだと思うよ」

「なにそれー。ローデルの意地悪!」

「意地悪ってね。はぁ、ヨルダは時期尚早って言葉を知らないよね?知らないかもしれないけど、時期尚早だから話さなかったの。これでいい?」

「じきしょーそー?わかんないけど――やっぱりわかんないや」

「時期尚早ってのは、まぁ時期が早いってことだよ。だから、私の仕事の話をヨルダにするのは早すぎってことよ」

「そうなのかーじきしょーそー……難しい言葉だけど覚えた!」

「そうかい。ヨルダは物覚えがいいからね」

「えっへへぇー」

 少し照れを隠しながら再びスキップをする。

「それで、ローデルのお仕事って何?何なの?」

「私の仕事は、この世界を守ることだよ」

「守るって?どうやって?」

「うーん――直接じゃなくて間接的だからねぇ。でも間接的でもこの世界を守ってるのには違いないね」

「何かからこの世界を守っているの?」

「そうね。この世界はいろいろな人達から狙われているからね。それらすべてから私は守っているの」

「ほんとにー?ローデルにそんな力あるの?」

「ちゃーんとあるよ。まだヨルダには見せてないけど、それ相応のちからは持っているからね」

「じゃぁ、ずっと守ってきたの?ヨルダがいる時もいない時も――」

「そうだね。かれこれ三十年以上は守ってきているのかなぁ……時間なんて忘れちゃった。私には時間という概念がないからね」

「なんだか難しい話で頭が痛くなってきた」

 先程までは知りたい、知りたいと言わんばかりの顔をしていたヨルダの表情はしかめっ面に変わっていた。これだから時期尚早だと言ったのに……だもいずれはこの話はしなければと考えていた頃だし、丁度いい機会だったのかもしれない。

「二つ目は?一つ目はわかったから、次の二つ目は?」

 はいはい。わかっているよ。大体の訳はわかったことだからもうこの話は難しすぎて聞きたくないんでしょ?ヨルダの考えていることくらいわかるよ。次の話に切り替えてしまおうという作戦なんだろ?いいだろう、その作戦に乗ってやろうではないか。

「二つ目はね、この荒野の果てにある祠で魔法をかけなおすんだ。まぁ、はっきり言って二つ目も一つ目も同じだけどさ――この世界には必要なことなのさ」

「魔法?魔法?」

 あぁこの眼差し。知っているよ。そこらへんの子供が興味津々になって向けてくる眼差しだよなぁ、コレ。そうだもんな、今までヨルダには本当のことを話していないからね。本当の()の(・)()なんて……

「あのねヨルダ、魔法っていうのはね――」

「知っているよ、知っているよ!ヨルダでもそのくらいのことだてわかるもん!あれでしょ、ローデル。口から炎出したり、氷出したり、雷出したり――」

「私は怪獣かっ!」

 まるで私が怪獣か、化物かその手の類のモンスターみたいじゃないか。きっとヨルダは絵本の影響を受けているんだな。魔法っていうのはね、そんな派手なものじゃなくてね――我々が思っているように派手じゃないものなんだよっ……言ってあげたいな。いや、言わなければいけない。これは義務だ。魔法の「ま」の字の知らないヨルダにこれだけはしっかり教えておかなきゃっ。きっと社会に出てから世間知らず、常識がないだの変な勲章がついてしまうからな。うん、うん――ってこれはこの世界のことじゃなかったな。

「ローデルどうしたの?なんだか自分でボケてツッコんでいるみたいだったよ?」

「あぁ、いやいや。今のは忘れてくれ!」

「う、うん……(この件前にもあったような気が――)」

「おっほん!ヨルダにはちゃんと魔法について教えておかないといけないね」

「本当にローデルは魔法が使えるの?」

「心外だなーちゃんと使えるよー魔法なんて朝飯前だよ!」

「うーん。怪しいなぁ……ローデルがそんな口調の時って決まって嘘だもんね」

「うぅ……(確かに今まではそのような嘘をついてやり過ごしてきた気がするような……しないような)」

「じゃぁ、ちゃんと見せてよ!ねぇ、いいでしょ?ローデルぅ」

「いい?ヨルダ。魔法っていうのはそんなに派手じゃないものなんだよ。しかもホイホイって人に見せるものじゃないんだよ?」

「それって言い訳なの?」

「ち、違いますからね!特に私の使う魔法は地味な中の地味な魔法だからヨルダが納得してくれるかどうか――」

「絶対つまらないとか言わないからさ!ねぇっいいでしょ?」

「うーん。仕方ないなぁ。一回だけだからね、よく見ていてよ」

「うん。早く、早く」

「まぁ、そう急かさないの――待ってね、っとよっと」

 ヨルダと私の目の前にある植物を指さした。

 ん?って反応だろ。わかってるよ、まだ魔法は使ってないからね。ほんと急かすんだから――やる身にもなってくれよ、まったく。

 この植物のしぼんだ花がねってっと……ほらぁっ!

「?」

「その反応は困るなぁ……」

「何が起きたの?このしぼんだお花に」

「ヨルダよく見てみなよ」

 ヨルダはしぼんだ花弁に目を近づける。何が起きたのか必死に探している。いろいろな角度からじっと。

「うぅぅぅ~わかんないーーーー教えてよーねぇ、ローデルぅ」

ふぅやれやれやっぱりこうなったか。なんて思いながらしぼんだ花弁をプチっと摘み取り、ヨルダに見えるように手のひらに乗せた。

「この花はね、元は交配も何もできていなかったんだよ。うーんつまりね、果実を付けることができなかったんだ」

「うん、うん」

「よーく見てみてね」

 花弁を一つ一つ丁寧に取り除き、柱頭を露にする。そして、少し膨らんだ脂肪を指さして説明する。

「ここが前にも言ったように果実になるところで、ここが今膨らんでいるだろ?」

「うん」

「これが私の中の魔法でぱっとしたものかな?」

「……それでいったいどんな魔法だったの?」

 おいおい。今説明しただろっとまぁ、むきになっても仕方がないよね。相手は五歳児。このような話をするのはまだまだ早いんだけど、やっぱり機会っていうものがあるからねぇ。

「命が無かったものに命を与えるって説明したら分かるかなぁ?」

「ローデル……それって」

「ん?」

 今まで見せたことのない喜びの表情でこちらを見てくる。

「ローデルそれってすごいよ!すごい魔法だね!命が無いものに命を与えるって神様くらいしかできないことだよ!」

「そこまで言ってくれるんだね、ヨルダは。うれしいよ」

「すごい!すごい!」

 ま、最もこの力が使えるのは神様かそれに近い存在ってことだからヨルダも気づいただろうね。本当の私を。

「もう一回見せて!」

 やれやれ。さっき言ったのにな。魔法はホイホイっと人に見せるモノじゃないってね。

「さ、行くよ。無駄話が過ぎたし」

「えぇー待ってよーローデルぅ」

 再び私とヨルダは草をかき分けながら歩み始めた。

「ローデルお願い!もう一回見せて」

「嫌だね」

「ケチぃ」

「時が来たらまた見せるよ。むしろ教えてあげてもいいよ」

「ホント?」

「私がヨルダに嘘ついたことあったかな?」

「うん。いっつも嘘ついているよね」

「あぅ」

 そこまですっぱり言われると胸が痛いな……事実だし、仕方ないよな。こればかりは。

「本当に教えてあげるからさ、次回ってことで許してね、今回は」

「いいよ。なんだかんだでやってくれるのがローデルだからね」

「そう言ってもらえるとほっとするよ」

「じゃあ家に戻ったら教えてね」

「ふぁっ?」

「今じゃなかったらいいんでしょ?じゃあ帰ったら教えてよ、魔法」

「簡単なやつからなら教えてあげるよ」

「やったぁ!ね、ローデル。早くやること終わらせて帰ろうよ、帰って魔法教えてよ!」

「仕方がないなぁ。分かったよ。じゃあ早く仕事終わらせようかね」

「うん。早く、早く」

 満面の笑みでヨルダはスキップをして後から進んできた。まぁ、魔法は本当に教えようと思っていたけどね。きっと遅かれ早かれこの時が来ていたに違いない――そういうことに今はしておこうか。


                        *


「ローデルぅー。ねぇ、ローデルぅー」

「はいはい。どうしたんだい?ヨルダ」

「暗くて怖いーもっとゆっくり歩いて」

「怖いも何もないでしょ。ちゃんと私の手を握っていてくれれば迷子になることはないですからね」

「でもでもーもっとゆっくりぃー」

「分かった。ゆっくり歩くからそんなに強く手を握らないでー痛いって。本当に痛いってば」

「ごめんなさぃ……」

 半泣きの表情で、今にも泣きそうな顔で言った。だから祠の前で待っていてねって言ったのにねぇ。そんなこと言っても待たないってわかっていたからね。きっとヨルダなら私について中まで入ってくると思っていたよ。ま、入ったからにはちゃんと見てあげないとね。どこで迷子になってしまうかわかったもんじゃない。

「ひゃあぅっ!」

 甲高い声でヨルダが叫ぶ。どうやら飛んできた生き物にびっくりして、そのまま足元に流れる水溜まりに足を踏み入れてしまったようだ。あーあ。折角の靴がぐちょぐちょだな……

「ローデルぅぅ」

「はいはい」

 重たいけどね、こういう時はやっぱりこうなっちゃうよね。これも仕方ないことだねーやりますよ、やってやりますよ。どうかもってください――私の腰。

「ローデル、もっとゆっくり歩いてー」

「これ以上ゆっくり歩いたらカタツムリにも負けてしまうよ。それじゃぁ日が暮れても家には戻れないよ」

「日が暮れるって……この暗い中じゃあわからないよ。朝か夜かも」

「もうすぐだから騒がずに背中で丸くなっててね」

「はーい」

 それからはヨルダはやけに口数が減り、次第に背中の方は静かになっていった。どうやら寝たらしい。ほんと背負っている側の身にもなってほしいよって幼い子に言っても無駄だね。

「もうすぐだな」

 祠の中はアリの巣のように様々な分かれ道があり、初めて入って来た人にはわからないような構造になっていた。そのためダミーの道筋を通らずに行かなければいかなかった。もっとも私はダミーの道なんかに引っ掛かりはしないけどね。定期的にここの祠には足を踏み入れているからね。でも誰かがこの祠に踏み入れる時なんて来るんだろうか……って思う時もあるけど、やっぱり今の平和な状態が一番だと思う。

 そうこうしているうちに目的地には無事到着した。

 周りには石で造られた祭壇があった。石柱には何やら言葉が書いてあるがはっきり言って読めない文字もある。誰がいつここを造ったのかもわからない。でも、ここは何代も前の人々から受け継いできた大切な場所なのだ。だから私もいつかこの場所を次の世代に受け継いでもらう。きっとそれは遠い未来ではないのではとこの時、私の中の何かがそう言っていたような気がした。

「ん……」

「おや、ヨルダ起きました?」

「おはよ……ろーでるぅ。ここはどこだっけ?あれ?朝ご飯は?」

「ふふふっヨルダ寝ぼけているんだね」

「ん?……あっ!そうだった私、ローデルと一緒に外に出て、それから……あれ?どうだったっけ?」

「ここは祠の最深部、祭壇だよ」

「なんだか不思議な感じがする」

「不思議って?」

「なんて言ったらいいのかな?ここには初めて来たはずなのに、そうじゃない感じがする。あと落ち着くような、なんていうんだろ……心がぽかぁーってするような感じがするの」

「ここはね、ずっと前から――私の前代や前々代の人達が守って来た場所よ。そしてこの世界を守るための大切な場所でもあるの」

「前代?前々代?ローデル以外の人も来たことがあるの?」

「そう。ずっとここは守られてきているの。だから私の代も今まで通りこの祠を守るの」

「そんなに大事なところなの?」

「大事なところよ。私にとってもヨルダにとってもね」

「ローデルにとっても?私にとっても?」

「いずれここはヨルダに受け継いでもらう予定だからね」

「え?」

「そろそろ私の正体を教えないといけないね」

「どうしたのローデル?いきなりそんな話を始めて」

「このお話はもっと早く教えておくべきだったわ」

「えぇ……」

 ヨルダが不安そうな顔で周りをキョロキョロ見始めた。

 仕方ないことだね。いきなり見たことない場所に連れてこられて、そこを将来受け継いで欲しいだの言ってほんと押し付けがましいよね。本当にごめんね、ヨルダ。でも時間は刻々となくなっていくの。丁度今日は良い機会だから私のことを教えてあげなきゃね。これからはもっと多くのことを教えて行かないといけないから、だから聞いてね。本当の私のことを……

 そっと深呼吸をした。深呼吸をすることで心が落ち着くと言われているけど本当にほっとした気持ちになったのは久しぶりかもしれない。これからヨルダに話すことはとても大切で重要なことだから。心臓がドキドキしても仕方がないことだ。

「私の正体――いや、私の本当の名前をヨルダには言っていなかったね」

「ローデルはローデルじゃないの?」

「そうローデル。だけどただのローデルじゃないの」

「?」

「ヨルダは【時女神】って言葉知ってる?」

「んーん」

 ヨルダは首を思いっきり左右に振った。

「【時女神】っていうのはね、この世界の時間を操作できる神様のことなの。時間が操作できるって言ってもそこまでだいそれたことはできないけどね。少なくともこの世界の時くらいは簡単に操作できるわ」

「世界の時間ってどういうことなの?」

「この世界はありとあらゆる生き物達が暮らしているのはヨルダも知っているよね。その生き物一つ一つが違ってもそれらに流れている時間は皆平等なの。通常だとこの時間は誰にも操作できないのだけどね、【時女神】ならそれが可能なの。今の時を遅くしたり速めたり――もちろん過去や未来といった時間も操作できるの」

「すごいねぇその――なんとか女神とかっていうの」

「【時女神】ね」

「それそれ。ローデルはその【時女神】の仲間なの?」

「違うよ、ヨルダ。【時女神】はこの世界でたった一人しかなれないの」

「じゃあローデルは【時女神】のお友達ぃ?」

「それも違う」

「うーん……もしかして……ローデルが?」

「そう」

「えぇぇええぇぇっ!」

 目が今にも外に飛び出しそうなくらい目を見開いてヨルダは驚いていた。まぁ、驚いて当然だよね。全知全能に限りなく近い神のような存在が、今まで隣にずっといたと知ると誰もが驚いてしまうよな。

「ローデルは本当に【時女神】なの?」

「うん」

 そっと首を縦に振る。

「どうして【時女神】になったの?」

「その昔ね、私もヨルダみたいに孤児だったの。そして前代の【時女神】さまがやってきて私を導いてくれたの。ちょうど今のヨルダくらいの年頃からだったかなぁ?」

「ローデルも私と同じなの?」

「そうよ。私もヨルダも違いなんてこれっぽちもないわ」

「じゃぁ、ヨルダみたいにローデルも皆から悪いことされたの?」

「うーん……私はあまり覚えていないけど、前代が言うには一人だったそうよ」

「誰もいなかったの?」

「そう。本当に一人だったの。周りには誰もいない。でも寂しくなかったわ。前代に出会って、それから【時女神】の力を受け継いで、それから――ヨルダに出会ったんだもの」

「私もローデルに出会って嬉しかったよ!それまでのことなんて忘れてしまうぐらい毎日が楽しかったの」

「よかった。私にちゃんとできるかわからなかったけど、こんなにヨルダは立派に育って……本当に嬉しいわ」

 頬を一筋の涙が流れ落ちる。それを見たヨルダはポケットから布を取り出してそっと拭いてくれてた。

「ありがとう――」

「ローデルはずっと頑張ってきたんだよねっ!これからは私がローデルを支えてあげるよ!」

「まだ五歳なのに……もうちょっと大きくなってから頼もうかな」

「えーちゃんとできるもん!」

「じゃぁこれからもよろしくってことも含めて――」

 ヨルダにそっと腕を伸ばす。ヨルダもそれに反応して反対側の腕を出す。そしてぎゅっと握手をした。これからもよろしくねっという願いと、これからもずっと一緒に居ようねっというささやかな願いを込めて……


                        *


 その頃、祠の上空では漆黒に染まった雷雲が渦を巻きながら周囲を飲み込んでいた。一見ゆっくり飲み込んでいるように見えたが、近くで見れば見るほどその速さが分かる。時折雲の間から見せる雷は更に見ている者の恐怖を掻き立てる。そうこうしているうちに荒野全体を漆黒の雷雲が埋め尽くした。ピカっと一瞬当たりに閃光が放たれたかと思った瞬間、ゴロゴロと雷鳴が轟く。ごく普通の自然現象のように思えるが、何やら怪しい感じがする。広大な荒野のみに広がるこの漆黒の雷雲というだけで不気味さを感じさせるが、更に青い白い雷が走った時はこの世の終わりかと思わせるようだった。

 しばらくすると漆黒の雷雲の中から、純白と漆黒の球体が複数地上に向けて落とされた。もとい、表現の間違いである――落とされたのではなく、降り立った(・・・・・)の間違いだ。着陸した時周囲の植物たちは塵のごとく吹き飛ばされた。また周りに強烈な突風を発せさせて、地面を数メートルに渡ってえぐりとった。バゴボゴッと今まで聞いたことのないような鈍い音を立てて、土が、石が、泥が、そこに生えていた植物が――空へと舞っていった。その姿はまるで人にあらず。人の形をした人を超える存在。人々はそれを天使や悪魔、神といった信仰上崇められる存在に例えるだろう。それだけとてつもない威圧を放つ存在がなぜこの地に降り立ったのかは不明だ。しかしこれだけ大規模な数の力を持つ存在がここに集まっていること間違いない。

 その中で一際ドス黒い気のようなオーラを放っている者が祠のある方角に向けて指さした。

「この先から感じるぞ。【時女神】の存在を感じるぞ」

「少し休まれては……」

「確かにここに入るために、展開してあった何重もの結界を破るのは骨を折ったわい。だがここで休んでいれば【時女神】に逃げられてしまう。一分一秒でも早く奴を殺さなくてはなっ」

「【時女神】を倒したい気持ちはよくわかった。しかし、焦りは禁物だぞイェーラ」

「それぐらい儂が一番わかっているわっ!白の若造には言われるほど儂の腕は鈍ってはおらんわ」

「そうか。それはこちらとしては頼もしい限りだぞ」

 なんとこの場にいる彼らはあの「白」と「夜」だった。誰もがこの未来を予測することはできなかった。一生分かり合えずにお互いが潰しあっていたはずの「白」と「夜」が、いつの間にか同盟を組んでこの場にいる。神様もきっと驚きが隠せないはずだ。

 イェーラと呼ばれる髭を伸ばした者は「夜」一族の軍勢の老将に当たる人物に違いない。全身を青紫色の甲冑で守り、背中には身の丈ほどの大刀を背負っていた。顔や手に残っている傷は歴戦の証。とても一言で表すことのできないほどの実力の持ち主に違いないはずだ。

 白い若造と呼ばれた「白」の騎士こそが、「白」と「夜」の戦いの中で英雄と呼ばれていたあの白き英雄だ。若造と言われる通りまだ若い青年で、腰には様々な鉱石で装飾された聖剣と呼ばれる剣がぶら下がっていた。純白の鎧を身に纏い、時折鎧から発せられる青白い電気が強さを物語っている。

「イェーラ様。全員地上に降り立ちました」

「良し。それでは奴のいる祠に向けて侵攻しようではないか」

「おぉ!」

 次々と「白」と「夜」の戦士たちは祠に向けて進み始めた。

 前衛に「夜」達。そして後衛に「白」の騎士達が配置した。前衛に「夜」達がいる理由はいたって単純だ。考えなしに力任せで殴りこむ。それが「夜」だが、そのような理由ではない。ただ「白」より先に【時女神】を殺し、その力を手に入れるためだと思われる。

「アスウェル様。本当によろしいのですか?あやつらを先に行かせて。これ以上あいつらが力を手に入れたら、力の均衡が崩れてしまうと私は考えております」

「いいのだよ。私はもともとこの作戦に疑問を抱いているから……疑問を抱いているなら、後衛で様子見でも良いと思ったからこうして後衛を務めているんだよ」

「しかし……」

「皆が言いたいことは分かる。確かに【時女神】が死に、その力が手に入れば奴らはとんでもない力を入手したことになるだろう。だが本当にこの戦いに義はあるのだろうか……」

「アスウェル様!もうここまで来てしまったのです。今更引き帰すわけには行かないのです!どうか、この戦いでご自分を見失わないでください」

「すまない。心配をかけさせてしまったな」

 「白」の騎士の一人が敬礼をするとその場を離れていった。

 白き英雄――アスウェルは未だにこの作戦の真の意義を考えていた。自問自答していた。しかしいくら考えてもその答えにたどり着けぬまま、ついに【時女神】の祠まで来てしまった。仲間の言ったことは確かに間違っていない。今更引き帰すことはできない。折角「夜」と休戦協定を結び、ほんの少しの平穏が訪れたのだ。この小さな平穏を守るためには奴らに協力するしかないのだ。それしか我々が生き残る術はないのだと、この時自分の中では答えが出ていた。

「本当に【時女神】は奴ら達の情報通りの存在なのだろうか……」

 「夜」達の情報によれば【時女神】はこの世界の時間を思うがまま操作できるため、この世界を支配している。我々が気づかないうちに【時女神】によって歴史が改変されて来たのかもしれない。これ以上【時女神】の好き勝手にはできない。我々の二大種族が力を合わせればきっと【時女神】の愚行を止めることができるっということだった。どこまでが真実で、どこまでが偽りなのかは分からない。それを確かめるためこの作戦に参加した。ここに入るための何重にも展開された結界から、その力量のすごさが分かる。あれほどの結界を張る力があるということだ。実際戦えば我々が束になっても勝てないのかもしれない。勝利するためには我々が一つとなって戦う道しかないと思われる。はたして今まで憎みあっていた相手とお互い協力し合って戦うことはできるのだろうか……

 そうこう考えているうちに祠の前にたどり着き、皆が臨戦態勢に入った。

 イェーラ率いる「夜」達はイェーラの号令と共に武器を持った。それに遅れをとらないよう「白」の騎士達も武器を構えた。

「いよいよ……始まってしまうのか……」

「さぁて、宴の始まりだ!」


                        *


 同時刻――祠最新部にて

「わぁっ!また揺れた!」

「この感じは……まさか!」

「怖いよー!ローデルぅぅぅ……」

 鳴き声で必死にヨルダがしがみつく。ぎゅっと引っ張られるローブを見ればどれだけヨルダが怖がっているのかが分かる。怖い、恐ろしいといった感情がひしひしと伝わってくる。

 そっとヨルダの頭を撫でてあげた。

「大丈夫だよ。何があってもヨルダを守ってあげるわ」

「うん……ローデルは強いもんね、きっと悪い奴を倒してくれるよね!」

 倒す……倒すことができたらの話だけど、ここで「うん」ははっきり言えない。だってあれじゃないか。私の実力をもってすればどうにかなるかもしれないけどね、相手が相手だし。よりにもよって「白」と「夜」の二大一族とはね。苦戦が強いられるかもしれない。ヨルダを無事守り通すことができないのかもしれない。だから倒すことはできない。きっと彼らも撤退してくれないだろう。だから撃退も不可能。となったら……あとはヨルダを連れて逃げるだけか……な

「ヨルダしっかりつかまっていてね」

「うん」

 ヨルダを後ろに隠れさせて、しっかりローブにつかまってもらった。幼いなりにもヨルダは頑張っているんだ。ヨルダを守れずにして何が【時女神】だ。きっと守って見せる。

「ローデル……」

「絶対離れちゃいけないよ。何があってもしっかりつかまっていて」

「うんっ‼」

 さぁ……来るぞ。前に十名ほどの「夜」一族。後ろに同じくらいの「白」一族か。この狭い祠では彼らも上手く動けないはずだ。勝負は一瞬で決まるはず……落ち着かなきゃ。落ち着かなっ……

「ローっ」

「しーっ静かにしていて!」

『ジャリッ』

 私達が来た道からゆっくり歩み寄ってくる影。だんだん近づいてくるのが分かる。先頭の気配が「夜」一族の中で一番強いな。もしかしたら中々の腕の持ち主かもしれない……

「ほぉ。貴様が【時女神】か」

「っ⁈」

「そこまで警戒されてもな……ま、今から貴様を殺すのだがな」

 身長は私とヨルダを足してもまだ足りないくらい。ざっと二メートル近くあるかな?青紫の甲冑に身の丈ほどの大刀。老将イェーラか。噂は本当だった。「白」の騎士達が三桁以上の数で一斉にかかっても倒すことのできないほどの実力の持ち主。いたるところについている傷から見ればどれだけ強いのかが察せれる。

「命が惜しかったら、【時女神】の力を渡してくれたら見逃してやろうと考えているが、どうかな?」

「断る!」

「……っていうと思ったぜ!儂を楽しませてくれよ【時女神】‼」

 大刀を抜刀。そのまま手首を三六○度に回転し、大刀をまるで扇風機のごとく唸らせながら突進してきた。

 ありえないでしょ。だって三六○度だよ?人間なの?手首どうなってんだよーっ!ってツッコみを入れる隙なんてあるわけないね。ほんと容赦ないんだから、「夜」一族は。

「ヨルダ下がっていてね」

「うおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉっ!」

 ヨルダが少し後ろに下がった瞬間に、イェーラは雄叫びを上げながら迫って来た。その距離実に三メートル前!

「鋼よ!我を守る盾となれ!」

 イェーラと私の距離のちょうど真ん中に、鉄壁が瞬時に現れた。

「なんぞ?これはっ」

 イェーラが扇風機のように回転している大刀で鉄壁に切りつけるが全くビクともしない。その代り金属と金属がぶつかって生まれる、耳が痛くなるような高音域の音が辺りに響き渡った。

「大刀が駄目なら……これでどうだっ!」

 イェーラは大刀を持っていたのと反対の手で鉄壁を殴り始めた。

「ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらほら――」

 鉄壁はみるみるへこんでいき、今にも破壊されそうな状態となった。

「イェーラ様!加勢します」

「おぉよ。助かるわい」

 次々と現れる仲間達がイェーラと共に鉄壁を殴る。

 あぁ……これ以上は鉄壁が持たない。どうにかしなければ。

 鉄は駄目だ。ここにあるのは土……そうか、土で!

「ほらっ!破れたぞ!」

「おぉぉ!」

 あれほどの鉄壁が一分も経たずに鉄くずへと変わり果ててしまった。

「土よ!侵略者どもを閉じ込めよ!」

 檻という例えが正しいだろうか。とりあえず土塊で四方八方から壁と言う名の檻を配置した。これでしばらくは時間を稼ぐことができるはずだ。

「なんのっ!」

『ごっ……ごっ……』

 土の箱から再び殴って削る音が聞こえてくる。

 これは流石にピンチだ。

 力任せであらゆるものを破壊する「夜」一族に対してはこのような足止めは効かないだろう。

「ローデル。逃げようよ!」

「そうだね。えっと――そうか。上に行けば!」

 ヨルダを抱きかかえて頭上の天井を見上げた。

「土よ!我らの通る道となれ!」

 するとあれほどの土塊達が自由自在に動いて大きなトンネルを形成した。トンネル……いや煙突の表現が良いか。とりあえず地上に脱出する道が切り開かれた。

「行くよ。ヨルダ」

「うんっ」

 ヨルダを抱えたまま体が上に向かってふぅーっと浮かんでいく。これも魔法の一つ。浮遊魔法だ。

『ボッゴォゥッ』

「ハハハッ貴様の土壁なんざ簡単に壊せるわっ!」

 下からイェーラの笑い声が聞こえる。

「ローデル!」

「分かっている」

 自分達が通り抜けた後の部位から側面に避けた土を崩していく。

「生き埋めにしようたって無駄だぞ!崩れる前に登ってやる!お前ら!」

「うぉぉぉ!」

 落ちてくる土塊を振り払うかのように「夜」一族は私達の下から登って追ってくる。

「水よ!邪悪なる者達を洗い流す聖水となれ!」

 詠唱した瞬間、足元から大量の水が下に向かって出た。とても言葉で言い表せられるような速さではなかった。水と土が混ざり、濁流となった水は登ってくる「夜」達をいともたやすく壁から引きはがし、下にある祭壇へと押し戻した。

「何をやっている!お前達!」

「イェーラ様!このままだと溺死してしまいます!」

「くぅぅぅ!【時女神】めぇ」

 祠内部はあっという間に濁流に飲み込まれていった。濁流に捕らわれた「夜」一族は、手も足も出ずにその大半が溺死してしまった。水死体の中には先ほど叫んだイェーラの姿はなかった。まだ彼はどこかに身を潜めているに違いない……


 祭壇の丁度上にある地上部ではローデルとヨルダが息を切らしながら走っていた。

「ローデル、ローデルぅ」

「ごめんね、ヨルダ。もう少し走るよ」

「う……うん」

 今さっきの濁流でどれだけの戦力をそげたのだろうか。あの濁流で「夜」一族が全滅してくれていればとても嬉しいのだけれども……きっと全滅していないだろう。特に老将イェーラはきっと生きている。あの程度の濁流で死ぬ人物ではないのは分かっている。だからこそ、少しでも時間が稼げている今に逃げるしかない。

「そこの者。止まれ!」

「あららっ……イェーラ達だけで完全に忘れていたわ。あなた達もいたのね……「白」の騎士さん」

 気がつけば周囲を八人ほどの「白」一族に囲まれていた。完全に包囲された状態からヨルダを連れて逃げることは不可能に近かった。

「ねぇ。ローデ……」

「しっ……何とかするから大人しくしていて」

「う……ん」

 つないだ手が震えていた。厳密に言えば繋いでいたヨルダの手が震えていた。

 これほどの人数。どうやって切り抜けたら良いか……

「気を付けろ!先ほど祠の中を水浸しにして、同朋が何人もやられたからな!」

「包囲戦術で行くぞ!」

『サァーッ‼』

 じりじりと歩み寄ってくる。どうする……うかつに魔法は使えない。きっと詠唱した瞬間一気に歩み寄られて、やられる。多分私よりヨルダを狙うはずだ。もしくは殺さずに捕らえて私を降伏させようとするはずだ。さぁ、どうする……

 考えているうちに彼らとの距離は五メートルをきった。

 隙が作れればいいのだけど……ほんの数秒――一秒でもいいから……

 繋いでいたはずの手にヨルダの手の感触がないことに気が付いた。

「⁈」

 「白」の騎士も私も驚いた。たった数秒の間にいたはずのヨルダが消えたからだ。消えた……というよりも「白」の騎士達の足元まで瞬間的に移動していた。

「ヨル……」

「いっだぁっ!」

 ヨルダは「白」の騎士の鎧のない部位に思いっきり噛みついた。

 その瞬間、私の魔法は発動した。発動させた。ヨルダが身を挺して作り上げたこの数秒間を無駄にはしなかった。

「木々よ!我らを守る城となれっ!」

 足元から巨木が生える。ぐんぐん伸びる。「白」の騎士達はそれを唖然とその場で見ることしかできなかった。

「おい!そのガキを捕まえろ!」

「あっ!」

 大木から伸びた枝がヨルダを丁寧に巻き取り、彼らがヨルダを目標に切り替えた瞬間既、ヨルダは大木の上方へと連れて行かれていた後だった。

「くぅ!」

「ヨルダ‼」

「ローデルぅ‼」

 抱擁。涙が止まらなかった。無事ヨルダを大木の上に連れてくることができた。

「心配したんだからね!ほんとにもぅ!」

「おかげで使えたでしょ?魔法」

「そうだけど――ヨルダ、もうあんな危ない行動はしないでね。私心配で心配で……心臓が止まっちゃうかと思ったんだよ」

「ごめんな……さい」

「いいんだよ。さぁここから逃げようか」

「どうやって?」

「とりあえずこの一帯を火の海にするわ。きっと彼らはこれで撤退をしないといけない状態になると思うの」

「でも……あそこにはローデルのお家が……」

 ヨルダが指差した方向にはヨルダとずっと過ごしてきた我が家があった。ヨルダにとって物心がつくまで過ごした大切な家だ。簡単に切り捨てれるものではないことは知っていた。

「いい?ヨルダ。この場所は彼らに見つかったけど、きっと次の平穏な場所はあると思うの。だからしばらくの間だけど、ここからお別れしようと思うの」

「うん……少し悲しいけど、ローデルがいてくれるなら嬉しい。だkらいいよ。私なんでもするよ!またローデルと二人で暮らすんだよね!」

「そうね。そのためにも、ここで何が何でも彼らには引いてもらうわ」

 ぎゅっとヨルダを抱きしめたまま詠唱をする。

「炎よ!すべてを焼き払う地獄の業火よ!この大地を無に帰せよ!」

 それまで金色の荒野が――真っ赤な炎に飲み込まれた。次々と可燃物が飲み込まれては炎が大きくなっていく。もちろん私達のいる大木も燃えてしまうけど、今は私が魔力を供給し続けているので燃えることはない。

「あぁぁあぁぁっ!」

「撤退!撤退!」

 「白」の騎士達は炎に巻かれながらも撤退し始めた。中には逃げ遅れて火だるまになる騎士もいた。

「見ちゃダメ、聞いちゃだめだよ」

 ヨルダの耳をふさいで、下の惨状見せぬよう胸に顔をうずめてあげた。

 炎の魔法は全てを焼き尽くしてしまうものだ。しかも今回使ったのは炎魔法の中でもかなり上位の破壊力を持つものだ。

「【時女神ローデル】‼」

「はっ!」

 刹那――私の左腕は宙に舞っていった。右でしっかりヨルダを抱きかかえながら、下に広がる炎の海に身体が落下しているのを感じた。感じたときには既に遅かった。

「くっはずしたか!だが、次の一撃で仕留めて見せる!」

 白き英雄――アスウェル。彼がいたことを忘れていた。忘れてはいなかった。まさかこの場にいたことに驚いた。確かに強力な反応はいくつか感じたが、アスウェルの存在は感じなかった。いや――感じ取ることができなかった。これほどの力の持ち主の殺気を感じることができなかったのは初めてだった。

「白き英雄――!」

 痛覚が反応を更に鈍らせる。流石白き英雄だ。英雄と言われるだけの実力を持っている。殺気を完全に消し去り、そして瞬きをするよりも早い斬撃。

「【時女神ローデル】!我らが同朋の敵を討たせてもらうぞ!」

 空中で何かを踏みながらものすごい速さで接近して来る。

「光よ!」

「遅い!」

 アスウェルの放った斬撃をぎりぎりの所でかわす。詠唱はうまくできず魔法は放たれなかった。アスウェルは薙ぎ払った体勢から蹴りを繰り出した。

「うぐぅっ!」

 背中に激痛が走る。そのまま地面にたたきつけられた。

 衝撃が全身を襲う。何せヨルダをかばうような状態で落下したのだから、当然無事では済まない。左肩の付け根から血が溢れてくる。もはやここまでかもしれない。その前には――

「ふんっ!」

 轟音を上げながら飛んできた大刀が背中を切りつける。

「っ――」

 ヨルダと目が合う。その瞳は涙でぐちゃぐちゃになっていた。言いたいことは分かるよ。あれだけ長い間一緒に暮らせば言いたいことだって分かるさ。

「【時女神】!流石に濁流に飲み込まれた時はどうなるかと思ったぜぇ‼」

「イェーラっ……やはり」

「結局残ったのは儂と若造だけか」

「イェーラ。既に何人かは撤退させてある」

「そうか。やはり後方に残していて正解だったな」

「感謝してもらうのは後だ。今は目の前にいる敵を倒すのが先決だ」

「そうだったな。よっと。こいつもしぶといなー若造の斬撃を受けてまだ生きているからな」

「外しただけだ。だが、次は当てて見せよう。イェーラと俺の二人なら【時女神】を倒すことも可能だろう」

「そうだな。では逝くぞ!」

 イェーラが大刀と振りかざす。

 アスウェルが剣を切り上げる。

 ヨルダに当たらないようにその両方の斬撃を右腕と背中で受ける。もはや痛覚もない。熱い何かが流れ出るのは感じた。

「こいつ……この状況で笑っていやがる!」

 熱いのはきっと周りが燃えているからなんだな。

 痛覚がないのはきっと当たってないからだ。

 流れているのはきっと汗。

 何か悪い夢でも見ているんだな。きっとそうに違いない……

 いや、これは夢でもない。現実だ。きっとこの戦いの後私は死んでしまう。この未来はもう知っていたのだから。だからこそ、次の世代にこの力を……せめて一つでも力を継承するために。ヨルダを安全な場所に逃がすために!

「光よ!我らを包み、彼方へ運びたまへ!」

「光魔法!」

 閃光がその場を支配する。そのあと衝撃波がイェーラとアスヴェルを襲った。

「ぐぅっ……逃がすか!儂の儂の時の力を!あっあがぁっ!」

「イェーラ⁈」

 衝撃波でイェーラの身体が崩れていく。一番ローデルに近かった彼はその力を全身で受けたため砕け散っていった。

「くそっ!光魔法なら俺でも!」

 ローデル達の光を追うようにアスウェルも一つの光となってその場から飛んでいった。


                        *


「ローデルぅ、ローデルぅ!しっかりしてよ、ね!」

 あぁヨルダか……やっぱり身体が言うことをきかないな。もうヨルダの姿を見れないと思うと悲しいな。

「いやっ!いやっ!ローデルぅ!死なないで!」

 はははっこうなることはもう分かっていたんだよ。分かっていて君を……ヨルダ、君を助けて今日まで育てて来たんだ。それが正しい未来だから。

『ザッザッ』

 おやおや。あの転移魔法の衝撃波で無事にここまで追いかけてくるとは……この感じは……アスウェルだね。

「【時女神ローデル】……」

 やっぱりね。ようやく思い出したよ。私はここで彼に頼むのだったね。

「おやっ?こんなガキはいなかったはずだが……まぁ、いい。おいガキ。そこをどけっ」

「ガキじゃないもんっヨルダって名前がちゃんとあるもん‼」

「ヨルダぁ?よし、ヨルダ。そこをのいてもらおうか。俺は君の後ろにいる人に用事があるからね」

「だめぇ!」

「……」

「聞き分けの悪い子は嫌いだぜ――」

 抜刀。そして必死に両手を横に広げて、とうせんぼうしているヨルダの首元に剣を突き立てる。

「のきなっ。じゃないと死ぬぞ?」

 むっとした顔でヨルダは微動だにしない。

「本気で殺るからなっ!」

 それでもヨルダは動かない。

「くぅ……ここまで頑固だとこっちも殺るのにためらうじゃないか」

 アスウェルはそっと剣をヨルダの首元から下して納刀した。

「うぅ……」

 ヨルダも緊張が解けてその場にしゃがみこむ。そして泣き始めた。まだ五歳にこのような試練は厳しすぎたのだ。

「【時女神ローデル】これはどういうことだ?」

 どうもこうもないよ。あんたらがいきなり攻めて来たんだろーが。私達の幸せを奪ったのはあなた達でしょーが。

「何か訳ありって所か」

「一つ……一つだけお願いがあります……」

 もう命が長くないこともわかっている。だから伝えるべきことを伝えなければ死のうにも死ねない。

「ローデルぅ!もうしゃべっちゃだめだよぉ!」

「いい子だね……ヨルダは」

 血濡れたその手でヨルダの柔らかい頬に触れる。

「願いってのは何だ?」

「私が死んでしまうと……この世界は再びバランスが崩壊します」

「バランスだと?」

「世界の時が終わりを迎えてしまいます。これからは再び「白」と「夜」が前のように戦いを繰り広げると思います。それだけではありません……もっと多くの、多くの者達を巻き込んだ世界大戦が始まってしまいます」

「なんだと⁈どうやったらそれが止めれる?」

「私のような【時】を操作する……【世界の時】を守る【時女神】の力をもってすればこの崩壊したバランスを元に戻すことができます」

「ということは……俺達は……とんでもないことをしてしまったってことなのか⁈」

「大丈夫です……この状態になる未来を私は見てきました。私が死んでも次の【時女神】は生まれます」

「次?次は一体誰なんだ!どこにいる!」

 そっとヨルダを見つめる。

「まさか、このガキ……いやヨルダって子供がか?」

 そっと頷く。

「こんなに幼いのにか?幼いのに【時女神】なのか?」

「まだヨルダには荷が重すぎる役割だと思います……ですが、ヨルダは年齢の割にしっかりしている子です。どうか……ゲフッ」

「ローデルぅ!もういいよ!」

「いいえ、大丈夫よ……ヨルダ」

 もう少し、もう少しだけもってほしい。もってくれ!私の身体……

「この世界のバランスを維持するためには九つの力が要ります。私が死ねばその力達はあるべき所に戻るでしょう……大変だと思うけど、ヨルダ……その九つの力を手に入れてこの世界の……【世界の時】を守って……」

「うん。ローデル。ちゃんと私、約束守るよ」

 涙目だがいい笑顔だ。笑顔が一番だよ、ヨルダ。

「それで……俺はどうしたら?」

「あなたには……この子を守ってほしいの」

「⁈」

「この子は……あなた達「白」ともう一つの「夜」一族の血を引いているの」

「ハーフ……聞いたことはあったが本当に存在していたとは」

「お互いの種族から忌み嫌われて、私が保護してきたの。でもそれも今日でおしまい……押しつけがましいけど、あなたには私が死んだ後ヨルダを守って導いてほしいの」

「……承知した。白き英雄の名においてその願い……必ず守って見せましょう」

「ありがとう……」

「ローデルぅ……」

「ヨ…ダ…………めんね……」

 ふっと今まであった手に力が抜けて地面にぽとりと落ちた。【時女神ローデル】は死んだのだった。

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!ローデル逝かないで!逝かないで!ローデルぅぅ!」

 アスウェルがそっと泣きわめくヨルダを抱きしめる。自分のせいでヨルダの大切な人を奪ってしまったことを後悔しているのか。それともこの戦いの真の意味を見極めることができなかった自分に責任を感じているのか……それはアスウェル本人にしかわからないことだ。少なくとも喜んでいる感じはもちろん見受けられない。その表情には後悔を感じさせるものではなく、これからの決意に満ち溢れたものだった。

「あっ」

 ローデルの身体は白く光った。そして小さな光の玉となってその場で散っていった。ヨルダは泣きじゃくっていたがその様子をしっかり見守っていた。きっと彼女は【時女神】の役目を終えて、この世界に還るだろう。それは次世代へ受け継がれていくことを意味している。

「今までありがとう……ローデルぅ。これから私頑張るよ……」

 複数の違う色の玉が様々な方角に向かって飛んでいくのを感じた。あれが彼女の言っていた力の分散だろうか。それぞれどこに飛んでいったのかはわからなかった。しかしなぜだろう……ヨルダと一緒ならそれをすべて集めることができると思った。

「おーい!アスウェルー!」

 遠くの上空で仲間が呼んでいる声が聞こえて来た。

「ヨルダ……行こうか」

「うん……」

 ヨルダを抱きかかえて俺は仲間のいる方へ向かって歩いて行った。あれだけ泣いていたのに、震えていたこの小さな身体からは微弱ながら強い力を感じた。これがきっと【時女神】の力だろう。世界は次の【時女神】に力を与えたのだろうか……

 遠い空に展開されていた漆黒の雷雲はいつの間にか晴れていた。この戦いは終わったのだ。俺達の勘違いをしたまま。誰かの思惑がそこに働いていたことは確かだった。彼女と約束した通り俺はこの子を守って見せる。そして、この出来事を影から糸を引いていた奴を見つけ出してやる。白き英雄の名と誇りに誓って――


 いままで趣味で小説は書いていましたが、こうして投稿することはありませんでした。今回は新たなる挑戦ということで、投稿させていただきました。

 これから長期に渡って投稿していきたいとおもいます。(できれば定期的に)

 空いた時間に書いているのでなかなか投稿間隔が遅いとおもいますが、気長に待ってもらえると嬉しいです。

 それでは次話でまたお会いしましょう。


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