知り合い
彼女たちに引きずられ辿り着いた店の名前は”B:G”、Bと比べGが大きく書かれている。
間のコロンは比率を表しGの要素がBに比べ大きいということなのか、はたまた特に意味はないのか。
看板の意味を知ったところで俺の運命が変わるわけではないため考えたところで意味は無いのだが…。
売られている品に目を向けると女性も……………いや、男性物——レディースならぬメンズらしき衣服が並べられていた。千籐さんが間違えるわけではないのでこれは…ボーイッシュな女性服専門店…?
「お、その顔はこの店が何なのか理解したとみて構わないだろうか?」
俺の顔を見てどうやって察せたのか気になるのは放っておいて間違っていないため「うん」と返事をする。
既に腕を解放されいつでも逃げることが可能な状態なのだが、今の俺ではこの二人から逃げれることは無いだろう、そして昨日までの俺だったとしても今日の小鳥から逃げることは不可能だ。
数時間前の戦闘で知ったことだが、確実に俺より走る速度が上である。
「その姿だ、どう見たって小学校低学年レベルの女児の外見だ。その身長にあったものを探してみてもどこか女の子っぽさが大半……、少数の中から選ぶってのもなかなかきついから今後のことを踏まえて結城君にはこの店を紹介しようと思い連れてきた」
服にはそこまで拘らない…と言いたいところだが、今朝ザ・女の子というような服を渡されたのが嫌だったというあたり拘ってるんだよなあ。
結局女の子?……女の子か、という服を仕方なく着て今に至る。
そうすると女の子らしさがわからないのであれば構わないということだ。
しかし…大半といえど一緒に見た中で俺として全て女の子の服だなあと思ったのだがその感じ方の差が男女の感覚の違いなのか、俺が見えるか見えないかを考えすぎていたか…。
「あらやだ、燐華ちゃんじゃないのお~!久しぶり~、元気にしてた~?」
俺がそんなことを考えているうちに店内からがたいのいい男性が声に合わない口調で近づいてきた。
言葉の内容からしてこの人が千籐さんの知り合いだろうか、予想と真逆の人だ。
理性的ですらっとした男性と思ったんだけどな。
「ああ、ああ。元気にしてたよ、ただしここに来た理由はアンタの願いを聞くためじゃなくてこの子の服を買いに来ただけだ」
千籐さんが人をアンタと呼ぶことは滅多にない。
よっっっっっっっっっぽど仲のいい人か個人的に嫌っている人に対してのみ使うと聞くが、覚えている内で聞いた覚えはない。
「えーそれは残念だわあ~。いいじゃないのよおー貴女がアタシの取り寄せた服を着たら絶対似合うと思うの。それに……この店は男性客はお断りなのは知っているわよね?」
女性服専門店だ、俺のような男性が入ることを禁ずることは仕方ない。
男として女性ものだけが取り寄せられた場所に佇むというのは苦痛である。なにか…こう、入ってはいけない場所い入ってしまった感覚…昨日の小鳥の下着を買いに来た時のような。
……待って、この男性一目で俺の性別を当てやがった!
「ああ、知っているとも。それでもここしかないから連れてきた」
一度口を噤み、俺の方を向いて再び口を開く。
「結城君、此奴にとって外見は本性を隠すものとしてしか見てなく、本性を見ることに長けている。だから君の本性――性別を外見に惑わされることなく言い当てたということだ」
「そーいうこと。外見はアタシにとってはただの裸体を隠す全身タイツのようなもの、その布の向こう側にある裸を見ることぐらい朝飯前よ」
この人、凄い。
雰囲気で俺が結城真樹であることを理解した小鳥の数段階先の存在であるかのようだ。
しかし例え方が全身タイツというのがなんとも…、どういうものなのか理解できたので構わないがもっと良い例えがあっただろうに。
「んーで、この子をアタシたちの仲間にしてくれというわけじゃないのでしょう?ならこちらをずっと見ている男の子を始末してから理由を聞こうかしら」
誰かに追跡されていた!?
誰なのか見ようとしたら「振り向くな」と小声で千籐さんに言われたのでなんとか踏み止まる。
「気づいていたのか…」
「ええ、もちろん。その口ぶりだと貴女も既に気づいていたようね。でもどうして先に潰しておかなかったのかしら?」
「アンタへの手土産だ、奴らの一員だから煮るなり焼くなり好きにしな。」
「そう…じゃあ好きにさせてもらうわ。そろそろ改造が始まる頃と思うけど数日後には堕ちているはずね。いったいどのような味がするのか楽しみだわ…」
改造…メカメカしいものに変えられるのを連想してしまうが、さすがにそのようなことではないだろう。
あと、彼の言い方だと既に追跡者を捕らえているということになる。
しかし先程「男の子を始末してから~」と言ってからまだ十数秒しか経っていない。どういうことなのだろうか。
気になるので後ろを振り向いてみたら怪しげな人物はどこにも見当たらない。
千籐さんがウソをつくような人で無いことは知っている。
つまり追跡者は捕らえられたということだろう。
「……悪趣味ね」
俺が目線を前に戻すと千籐さんはそう言葉を漏らした。
「なに、燐華ちゃんの腕前がどれだけ上達したか試してみたかっただけよ。でもまあ、まだまだね。背後だったとしてもいるかどうかの気配は察せないと。女のコなんだから背後も気を付けないとネ☆」
背後の気配を感じろって………漫画かよ。
「んで?いつ捕らえたわけ?」
「君たちがこの店に来て私が会いに来る前よ。さて、邪魔者は消えたから服を選んであげましょ。話は選びながら。普段男性はダメだけど君は特別よ?」
そして俺の方を向いて熱い?ウインク。
こちらに向けてウインクをしてきたからか、その返しは何とか礼の言葉を返せた程度だった。
そういえばこの店に来てから小鳥が話さないなと思って小鳥の顔を伺うとまるで観音菩薩のような真顔だ。
話についていけなかったんだな。




